第6話 「ブロッサム・オン・ザ・ヒル【1】」
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1-6 ブロッサム・オン・ザ・ヒル【1】 1 西暦195年、夏6月の第一日を迎えた呉城。 SOS団自慢の文官団のみなさんのおかげで、この月も予想以上の税収だ。郊外に増築した造幣所も景気よくフル稼働中である。 …ここでちょっとおさらいするが、現在のこのマヌケ中華時空の勢力は、このような模様を描いている。 SOS団がいるのは地図で言うと一番右下だ。言うなれば中華の最果て、双六の振り出し地点で、俺たちは毎月ギリギリの資金繰りを行いつつ、はた迷惑な超太守・涼宮ハルヒの目指す「天下統一」なる目標めざして奮闘しているわけだ。
古 泉:…どうにか乗り切りましたね。所変われど、あいかわらず城壁の上で風に吹きさらされている俺のもとへ、また懲りずに古泉がやってきている。 古 泉:毎月の事ながら、為政者としての緊張と幸福をこれほど味わえる時はありません。どっちかといえば、不渡りを出すか出さないかで綱渡りをしている零細企業の社長の方だろ。 古 泉:確かに、早いところ、この自転車操業から脱出したいものです。 疲労の翳を眉間におとしつつ、古泉は苦笑した。 古 泉:臨戦下ですから、むろん武官集めも急務ですが、並行して、一人でも多くの内政官も確保したいですね。一人でも、ね。それは古泉の切実な心境であるに違いない。
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※米の収穫は秋7月にいっせいに行われるが(当たり前だが)、税収は毎月始めに入ってくる。 |
2 ――そんな古泉の願いが天へ届いたのか。その日の正午過ぎである。 華
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華 統率:18 武力:33 知力:82
諸葛瑾さん 統率:75 武力:34 知力:81 ※ちなみに15歳の孔明少年は、この頃まだ叔父さんのもとで育てられている。なお叔父・諸葛玄は、よりによって袁術の客分で、史実だとこの1年後くらいに江南の豫章へ派遣され、その地で勢力争いに敗れて殺害される。 |
賀斉――と言われても、ピンとこない。オリキャラか? 古 泉:演義では登場しませんが、正史の呉書では名将と讃えられる人物です。※ぼそぼそっと古泉が耳打ちをする。顔が近いぞ。 ハルヒ:ふーん。なかなか使えそうじゃない。賀斉さん、あなた、今日から呉郡勤務ね。すぐに屋敷を用意させるわ。 実にあっさりと他郡の人事を壟断する呉郡太守ハルヒ。 ハルヒ:構やしないわ。わざわざ輸送隊の指揮をさせたって事は、あたしに面倒見なさい、って事でしょ?確かに、言われてみればそうかもしれんが… ハルヒ:賀斉さんだって、会稽みたいなド辺境で一生燻ってるつもりはないでしょ?せっかく男子に生まれたのなら、ガンガン前に出ないとね!賀 斉:ははは、無論そのほうが面白うござる。そのド辺境である会稽出身の人間をつかまえて、えらく無礼な放言であるはずだが、賀斉さんはカラっと笑い了承した。やはり異色の人材であるようだ。 |
賀斉さん 率:83 武:78 知:72 政:64 魅:73 昂揚 |
3そんなこんなで、呉越連合たるSOS団が着々とそのメンバーを増強しつつあるその間にも、既に北のかた長江上では、激烈な戦闘が開始されている。 タイミングで言えば、華 この季節、長江下流域の川幅は呆れるほどに広く、日本で言えば軽く瀬戸内海を挟んだ本州と四国程度には懸け離れていて、対岸が見えないとかそういうレベルではない。 ハルヒ:…いよいよね! 報告を受けたハルヒは、鼻息も荒くガッツポーズだ。 ハルヒ:もちろん、同じ江東に住まう為政者として、あたしも遺憾の意を表せざるを得ないわ!などと、心の底から嬉しそうに叫ぶ。 ハルヒ:遺憾の意! みくるちゃん、これ便利な言葉よね! いっぺんこれ言ってみたかったのよね!朝比奈:はぁ…。古 泉:劉
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宰相集団※の中では最も若く、最も新参な諸葛瑾さんが、敢えて面を冒してハルヒに直諫する。 ハルヒ:諸葛瑾さんの言う事ももっともだわ。じゃあ、この戦争は止めるわね。笑顔のままで、そう言った。 諸葛瑾:……。虚をつかれたのか、一瞬息を呑む諸葛瑾さん。俺たちだって同じだ。 ハルヒ:――なんてあたしが言い出したとして、よ。その後どうなるか、解る?諸葛瑾さん。 顔に貼り付けた笑顔とは裏腹に、その問いかけの声にいつもの煥発さは無く、そしてそれが諸葛瑾さんだけに対してのものではないという事は、何となく解る。 諸葛瑾:…劉揚州には、孫策・袁術の輩に拮抗するほどの武略は無く、ほどなく孫策に敗れ、建業は袁術の勢力下に落ちるでしょう。ハルヒ:その後は?諸葛瑾:さらに孫策は、本貫であるこの呉、そして越を制圧しようと試みるでしょう。諸葛瑾さんはそこまで言ったところで、論旨に気づいたか、深々とハルヒへ頭を垂れた。 ハルヒ:そうよね。結局は同じなわけなのよ。…そりゃ、地方の平和を考えるだけなら、テキトーに劉
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※繰り返すが、会稽の許靖さんも含め、SOS団の抱える文官団は、ほぼ全員が将来の宰相級ばかりである。 |
無理もない。ひとたび袁術派の守将を追い払って※劉 このたび、同盟国であるハルヒがそこへ軍を移動させたところで、抗議する名分はない。 ハルヒ:さて、橋頭堡もこうやって確保できたし、いよいよ作戦第二段階ねっ曲阿の政庁を接収するや否や、ハルヒは古泉を顧みた。古泉は軽く頷くと、一同へかねて告知のあったとおりの作戦を述べた。 古 泉:――現在、建業の兵力は1万余。建業城の防衛能力は高く、このまま攻め入っても、まず相当の損害を覚悟せねばならないでしょう。ゆえに、今しばらくこの曲阿城で戦況を見定めます。見定めるったて、いつまで待つんだ。こんなちっさい港町に、いつまでも大軍は駐留できないぞ。 古 泉:おそらく、あと二ヶ月も経たないうちに、次の兵力が派遣されるでしょう。チャンスは、その一瞬です。などと言っているあいだにも季節が過ぎ、収穫の秋・7月が訪れ――
――劉備軍来襲 というとんでもないニュースが、もたらされたのである。 |
※孫策の父方の伯父・孫賁や母方の叔父、呉景たちのこと。孫策が劉![]() |
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