第1章 「南の国の呂布奉先」


 ――益州の治府、成都。
 この当時から、広大な四川地方(蜀)の政治・文化の中心地と して栄えていた大都会である。

 その成都の主、益州牧の劉璋は、ある書状を一読して眉をしかめていた。

 

劉 璋:雲南の呂布からだと……知らないな。

 

 この世間知らずのお坊ちゃまは、呂布の名を知らなかった。

  

劉 璋:それにしてもひどい字だな。なんとかならないのかな。

劉 璋:さて、どうしたものかな。

 

 知力40代の劉璋ですら心底呆れるほどへたくそな文字で「とてもよろしく」と書き出してある書状は、最近になって南中(いわゆる南蛮)で旗揚げした呂布という男からのものであった。

 せめてもうすこし親密度が高ければ、ペン習字通信講座のアレを強く薦める返書をしたためていただろうが、まだ呂布とは面識がない。 

 

劉 璋:先方が会いたいというなら、こちらから門を閉ざす必要はないな。

 

 劉璋はひとりごとをつぶやくと、それきり、この手紙のことは忘れた……。

 

 

 

時は建安十五年◇西暦二〇〇年ジャスト。

処は中華の最南端◇益州雲南で御座居ます。

 

第一章  南の国の呂布奉先

     バカ君主             苦労人間

 

呂 布:おいっ!

陳 宮:ど、どうなさいました!?

呂 布:いや、案外快適なところだと思ってな。南蛮ってゆうくらいだから物凄いトロピカルな風景を想像していたんだが。

陳 宮:この昆明のあたりは、どちらかというと高原地帯ですからな。平均気温は15、6℃といいますから、まあ常春の楽園です。

呂 布:衛星放送でやってたドラマじゃあ、ワニとかピラニアとかが出てきそうなジャングルだったぜ。 

陳 宮:まぁ、もう少し南の方へ下ってゆけばベトナムあたりに着きますからね。そのへんでロケしたんでしょ。

呂 布:調子狂う事ぬかすなあっ!(ばきっ)

陳 宮:な、なぜ私を殴る?

呂 布「南蛮=高山説」は以後禁止!!

陳 宮:ご、ごめんなさい。ここはジャングルでした。

     

 

 建安5年。

 黄河以北の全域を支配する事実上の天下人・北方の覇王・大将軍袁紹は、いよいよその覇業の完成を見るべく、圧倒的兵力をもって南下を開始した。その景観、まさに工事用ローラー車輌がアスファルト舗装を圧し潰すが如し(図)。

 

 

 これに対するは、中原と後漢王朝の皇帝の身柄を擁する新興勢力・司空曹操。

 大黄河に沿って絶対防衛線を展開する曹操は、数少ない津(渡河地点)を死守する方針をとり、袁紹軍団の南下を容易に許さない。その間にも右へ左へと身軽に戦線を飛び回り、時を稼ぐ。

 2月。渡河を強行した袁紹軍大先鋒の顔良軍は白馬の津で、文醜軍は延の津で、それぞれ時間差をつけてのあざやかな各個撃破を喰らい、全滅。

 同月。作戦の遅延に苛立った袁紹は、全軍挙げて黄河を押し渡ってしまう。曹操軍は半ば潰走しながらも戦線を南へ移動させ、官渡城に籠城する。

 これを追い、官渡城塞を囲む袁紹。

 防禦を固め、徹底抗戦の構えを見せる曹操。

 これまさに天下分け目の大合戦。「鉄騎渡河シ官渡ニ大戦興ル」の始まりであった。

 

呂 布:……なんか、北の方がいいカンジで盛り上がってるようだが。

陳 宮:逃げたのあんたでしょうが。

 

 そう!

 三国志上最強最悪の猛将といわれ、ほとんど化け物のように畏れられてきた「狼将」呂布奉先は、南国・雲南にて健在(?)だったのだ!(図)

 

呂 布:ここまでくる道のりは長かった……。

陳 宮:ええ。シナリオ2で初めて、「shift+左クリック+右ダブルクリック」の秘技でマルチプレイに切り替え、史実通り歴史を進め……。

呂 布:折りを見て放浪したら俺様の跡目を貴様(陳宮)が継いじまって。

陳 宮:「4」じゃないんだから。主君が放浪したからといって、部下までついてく義理はありませんよ。

呂 布:そこなんだよなあ。「7」の致命的な欠陥だな。

陳 宮:まァそれはともかく。張どのと高順と張遼のみ、将軍の後を追い慕い……。

呂 布:長かったなあ~。

陳 宮:途中、漢中で学問に精を出したり。

呂 布:益州で虎を退治したり。

 

 で。いらん道草をたらふく喰い散らしながら(ホントは一月で移動できる)、呂布一行は秘境益州のそのまた僻地、雲南にてとうとう旗揚げを果たしたのであった。

 

呂 布:やっと「君主デアル」のだな。

陳 宮:懐かしいフレーズだな。「2」でしたっけ?

呂 布:「3」だったと思うけど……。では軍師。部下状況、確認!

 

軍師

陳宮

古くから曹操に仕え、ブレーンの一人として活躍するが、曹操の徐州大 虐殺を目の当たりにして彼に叛す。以後、呂布の軍師として辣腕を振る い、一時は曹操を脅かすほどの勢力を築き上げる。

 武:61 知:92 政:79 魅:77 (えぢた~済み)

 

呂 布:中ぅっ途・半っ端やなあ~~!!!

陳 宮中途半端のどこが悪い!?

呂 布:…………次。

 

筆頭大将

高順

あまりの戦さ上手ゆえに、「陥陣営」の異名をとる勇将。人柄は謹直かつ剛毅で、戦略眼もよく、呂布にしばしば進言するも聞き入れられなかった。陳宮とは大変仲が悪かったらしい。演義ではザコだが、正史派には高い評価を受ける通好みのキャラ。

 武:90 知:66 政:59 魅:81(えぢた~済み)

 

呂 布:ずいぶん強くなってるな。

陳 宮:シナリオエディットで、相当チューンしてありますからな。

呂 布:うむ。Kz-8さんに感謝だ。

 

主席官僚

若かりし頃からの曹操の親友。実は曹操や袁紹なんか比較にならないほどの超名士で、「八厨」のひとり。誠実な君子だが侠気が妙に強かったらしい。流浪の呂布に惚れ込み、また陳宮の口車と実弟・張超の強引な誘いにのせられ、曹操に叛す。以後、ダメ人生を驀進する羽目になる。

 武:49 知:79 政:81 魅:88(えぢた~済み)

 

 

呂 布:ちょっと過大評価かもしれんな。顔もカッコよくなってるし。(顔ナンバー0。つまり楊奉の顔と入れ替えてある)

陳 宮:なんせウチは人材不足ですしねえ。

張 :言いたい放題言ってくれてますな。

 

武将

張遼

高順に次ぐ呂布軍団の勇将。史実では後、曹操に仕えて五将に名を連ねた。単騎で大軍を衝くほどの猛者だが、一面思慮深く、また関羽との親交もあって、「演義派」にも人気は高い。最近になって「単なる猛将説」が有力になっているが。

 武:91 知:64 政:66 魅:85(えぢた~済み)  

 

陳 宮:頼もしいですな。高順との二枚看板が期待できます。

呂 布:こいつが今ここにいるということは、曹操も大変だろ~な。

 

呂 布:とりあえずはこんなところか。女っ気がカケラもないのが残念だが。

陳 宮:そうでしょうか。だいたい三国志に女っ気も何も……

呂 布:ふん、ないものは作ればいいのだ。俺様のスタンスは、ズバリ「オルド充実」と決まったぞ!

陳 宮:ヤな指針だな。

  

 

 彷徨う北の狼が南の果てに見る夢は、いったい如何なものなのか。

 痛快読み切り三国志Ⅶ活劇・「後世中国の曙!?」は、まだまだ始まったばかりです!