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■ 【SS:Ark】めっさ今更なんですが(汗

1 名前: 霧月:2007/11/11(日) 13:31:43 ID:z+Pg/kAk
(2006年03月02日 10時02分20秒)

 
「――箱庭を騙る檻の中で 禁断の海馬に手を加えて
 驕れる無能な創造神にでも 成った心算なの……」


“奈落幻想物語組曲 -Ark-”


「我々…そう、彼や君といった選ばれし者達こそ
 この歪みきった世界から抜け出し、楽園へと往く事が出来るんだ」


意識が朦朧とする中『彼の人』では無い誰かが、彼女に優しく語り掛ける
その言葉は優しく、心の奥底へと染み渡る様な声色は
生きる事に飽いだ彼女のには救いの呪言<コトバ>だった…


彼等から受け取ったのは、楽園へと往く為の『鍵』
神聖なモノらしく、月と同じ輝きを放つ姿は楽園の鍵に相応しい姿をしていた
美しい鍵<ソレ>を胸に抱き、彼女は愛しい彼の人の所へと急ぐのだった――…


[第一幕]


どうして どうしてこんな事になったんだろう…
僕はただあの子に笑っていて欲しかっただけなのに――


貧しいながらも幸せだった
可愛い妹が居て、優しい母さんがいて…


ある日、一人で僕たち兄妹を育ててくれた母が結婚した
父となる人は優しそうで、何よりも母の笑顔を見れただけでも幸せだった
父は真面目な人だった
最初は怯えていたけれど、妹もすぐ父を好きになった
けれども…


あれは確か6月…そう、土砂降りの雨が降っていた日だ
雨の勢いは酷く、台風でも近づいているんじゃないかって話してたんだ
そうしたら、そうしたら義父が…


妹は何も告げず、徒泣きじゃくるだけだった
理由を聞いても何も言わず、涙を流すだけ
その時はいつもの事と思ってあまり気にしなかった
けれど…日が経つにつれ、自体は深刻な方へと進んで行った


食事を取ることも無く、僕の呼びかけも空しく
虚ろな瞳はただ一点を観たまま涙を流していた


「…このままでは」


信じていた
僕も妹も…今でも心のどこかでは信じているのかも知れない
またあの日々に戻れると


気がつけば、当ても無く妹を抱えて街を歩いた
今は徒『あの場所』から逃げれたらそれで良い


一刻も早く…!


けれども、そう簡単にゆくものではなかった
幾日かは乗り越えることは出来たが、それ以上は持ちそうに無い


(あぁ またあの日々へと戻るのか…)


生気の無い瞳 血の気の引いた肌
もたれる様に座る妹はまるで人形の様だった


「せめて妹だけは…」


孤児の様な2人に人々は冷たい視線を浴びせるだけ
何処へ行っても同じだと絶望していた僕達に、その手は差し伸べられた


「我々は君達の様な子を探していたんだ。なぁに、怪しい者ではないよ」


黒で統一された制服を着た男達だった
普段なら関わらない様にするのだが、もう限界だった…


「行く場所が無いのなら、我々と共に来る気は無いかね?」


男達は孤児達を集めて居ると言う
信仰宗教として、恵まれない子供達を保護していると


「…君達に『楽園』を提供しよう」


こうして僕達は、楽園へと足を踏み入れたのだった


[第二幕]


逃げ延びたそこは、まさしく楽園だった


何よりも嬉しかったのは、妹が日を追う毎に以前の様な明るさを取り戻してきた事
ここに連れられた時、妹はもう自分で言葉を発することが出来ないほど衰弱しきっていた
けど、数人の大人たちがずっと看病してくれたおかげでまた、あの笑顔に逢う事が出来た


施設では週に1回ある診察さえちゃんと受ければ、残りは自由だった
診察といっても、いくつかの質問に答えるだけの簡単なモノ
決まった時間に決まった部屋へ行って、1時間ぐらいすればもう終わり
ただ、妹だけはたまに遅れる事があった
そして…
診察から帰って来る時、何かを呟いては微笑むその姿が月を追う毎に増えていくのが解った


――それは小さな兆し
新しい自分<セカイ>へと羽ばたける自己暗示


「ねぇ…私達はどんなことがあってもずっと一緒よね?」


そうだよ


「ずっと私を守ってくれるの…?」


もちろん


「愛しているわ、フラーテル」


……僕もだよ、ソロル


大丈夫、僕達はまた昔のように戻れるんだ
ソロルには僕が必要で、僕にはソロルが必要なんだ!
誰よりも、何よりも大切な僕の可愛い・・・


何十回と繰り返される毎日
ただ、何時もと違ったのは初めて僕達以外の子供に出会ったことだった
久々に会った誰かだったというのもあってか、僕らは色んな事を話し合った
どんな歌が好きだとか どの風景が綺麗だったとか …どうして此処へ着たのとか


「へぇ、フラーテルって妹思いなんだね」


「当然だろ?放っておけないし、何より大切な…」


大切な…?
そうだ、どうして忘れていたのだろう
僕は 僕は妹と…!!


知り合ったばかりの友に別れも告げず
僕は診療室を飛び出し、妹の居る部屋へと駆け込んだ


「おかえり、フラーテル」


いつもの様に抱きつき、唇を重ねて…


「…ソロル」


どうして気付かなかったのだろう
笑顔が戻ればそれで良いと思っていた
逃避の為に僕を愛そうとするのを止めることが出来なかったのは…僕
あの子の為と自分を偽って、愛を囁き続けていたのは…僕


全ては自分を正当化する為に心に嘘をついた僕が――招いた悲劇


「きっと僕は、君の傍に居ないほうが良いんだ」


せめて今出来る事を
この箱庭の様な楽園の中で、君が本当の自分を取り戻すことが出来るまで
それまで僕は君の隣に居てはいけないんだ


「さようならソロル」


[第三幕]


雪が降り、辺りは真っ白なセカイだった
妹と別れたのは何時の事だろう
まだそんなに月日が経っていないのに、遙か昔のことのように思える
僕は今もまだ、同じ施設に居る
事情を話し、遠くの部屋へと移してもらって以来この場所に近づいたことは無かった


時間が経ち、ソロルも落ち着きを見せたらしく
姿を見ることは無いが言葉だけでも交わしてやって欲しいと言われ、この場所へやってきた
また症状が悪化するようなら、二度と会わないようにすると言われたのが一番だった
ソロルの…妹の為にも、今日は大切な日なんだ


約束の時間
時を告げる鐘の音が鳴り響く――


「ねぇ何故変わってしまったの? あんなにも愛し合ってたのに…」


無邪気な笑み、彼女が大切そうに抱えるソレは…


“ドス…ッ”


雪に紅い模様が出来る
何度も何度も鈍い音が繰り返される


「な…ぜ」


彼女はこの上ない至福の笑みを浮かべ、ナイフを突き立てる
その瞳はもう今を視ては居ない…


「さぁ楽園へ還りましょう、お兄様」


暗闇の中彼女の幸せそうな声だけが響く…


彼女を楽園に堕としたのは 僕だったんだ


使い方良く解んなかったので、見辛いカトorz - 霧月 (2006年03月02日 10時07分36秒)

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