2009.01.01

第十五章   交州春秋

 

 建安八年、夏四月。

 永安太守法正の独断専行により、益州・荊州の勢力バランスがにわかに崩れ初めた!

 法正は軍を南方へ進め、荊南の一角・武陵を占拠。後続を待つ。

 これに対して軍師・陳宮は法正の太守更迭を決断し、武陵の太守として「陥陣営」高順を派遣した。

 さらに後詰めとして永安太守に勇将・張遼を急派し、劉表軍の逆撃に備える。

 ……一方、彼らの大親玉たる南蛮王・呂布は、南の海沿い侵攻作戦に備え、久しぶりに本貫の地たる雲南へ移動していた。

 

 

 雲南に到着した呂布、ぽか~んと口を開け、上を見上げている。

 

呂 布な、なんじゃこりゃああ!?

陳 宮:ホラ驚いた。

 

 ぱお~~~~ん!!

 

 呂布を出迎えたのは、おびただしい数の象・象・象・象・象・象・象・象・象・象・象・・・・・。

 これぞ、昨年夏から密かに編成が進められていた南蛮軍団の切り札「戦象部隊」なのである!

 

孟 獲:ははははッ、兄者! 象ッ! いいだろうっ!

 

 ひときわでかい戦象の上ではしゃいでいるのは、若き南蛮王孟獲。横にはその伴侶・祝融夫人、弟の孟優。さらには木鹿大王の姿まである。

 みんな、象兵であった。 

 

呂 布:お、おおおおおお……!陳宮~ッ! (ばきっ)

陳 宮:な、なぜ私を殴る!?

呂 布:どうして俺には象がいないんだ!? 孟獲、降りてこい! 俺に象の飼い方を教えろ!

孟 獲:わ・わかった!あ・兄者!

陳 宮:そ、それはまた後にしてください! 今は金も無いんです! ひとりあたり金一万もかかってるんですから!

 

 とにかく呂布をなだめた陳宮、まずは公孫楼とともに政庁へ入る。続いてドカドカと象ごと孟獲らが入城したため、雲南の城市はしばらく混乱が続いた。

 

陳 宮:南海へ出るためには、まず士燮を破って交趾を抜かねばなりません。

呂 布:それなんだよなあ。士燮ってジジイ誰なんだ?そんなヤツ三国志に出てきたっけ?

陳 宮:まあ、交州(今のベトナムあたり)の土着勢力みたいなもんですな。「三国志」本編とはまず関係ないんですけど、息子の代に孫権に地盤を奪われてますね。

呂 布:ふ~ん。

 

 聞き覚えのない人物だから、あまり興味がないらしい。

 陳宮にしても、こういう手合いを相手に本気で戦争するつもりは毛頭ない。

 

陳 宮:調略を使います。

呂 布:またアレやるのか?

陳 宮:もう流言は終わってます。来月から引き抜きを始めますよ。

 

 顔をしかめる呂布。ひたすら敵領内に「流言」を仕掛けまくり、ズボズボ敵将を引き抜くという情報戦術は、さすがに呂布の趣味に合わない。だが士燮勢力は、これでも配下七名、兵力は十万を越すれっきとした軍閥である。正面から攻めるとなれば、まず万余の損害は覚悟せねばなるまい。

 六月に入って、交趾城はにわかに呂布の間者で溢れかえった。軍師の許靖をはじめ、士燮の息子である士微、士祗などという一族武将が次々と呂布軍の勧誘を受けて城を出てゆく。

 陳宮、ちとこれは欲を出しすぎた。

 陳宮にしてみれば、ここは彼我の戦力差を一気に拡大させ、降伏勧告で穏便にカタをつけるつもりだったのだろう。

 ――だが、現実はそう甘くなかった。

 

伝 令:交趾、陥落です!南海の孫策軍がすでに同城の占拠を終えた模様!

陳 宮:ああっ!?

呂 布このド阿呆~~~ッツ!!(ばきいっ)

 

 当たり前である。もともと交趾の兵力は合計十万に達していたものを、呂布軍が将を引き抜きまくったせいで三万程まで落ち込んでいた。隣接する孫策にしてみれば、タナボタものである。

 

陳 宮:ごめんなさ~いいい!

呂 布:お前法正のこと偉そうに言える立場かッ!

 

 ごんごんと陳宮の頭を小突く呂布。

 と、そのもとに、もと交趾の支配者・士燮たちが出頭してきたという報告が入る。孫策軍に解放されたのだろう。

 呂布は、彼らを迎え入れるよう命じた。

 

士 燮:敗残の身にかくの如きご厚意、かたじけなく存じまする――。

呂 布:ふん、1ターンも保たなかったか。情けないヤツらだ。

士 燮:……。

 

 さすがに恨めしそうな目で、呂布とその両隣の列将を眺めやる士燮。その中には、我が子・士祗、士微や軍師の許靖の姿もあった。

 

陳 宮:ま、まあ、将軍。……とにかく交州殿、この雲南で石林など見物してごゆるりと過ごされよ。いずれ孫策を追い払って差し上げますゆえ。

士 燮:かたじけない…。 

 

 こうして、交州王・士燮と弟の士壱は、不本意ながら呂布の軍門に降った。

 

陳 宮:それにしても面倒になったなあ

公孫楼:……あなたのせい。

 

 南海に到るまで、今度は孫策軍と連戦せねばならないのだ。兵数、それに将の質もこれまでの相手とはまるで次元が違う。

 

陳 宮:ま、孫策だの周瑜だのいうバケモノがこちらに居ないことを祈って、流言を始めますか?

呂 布:まだやるのか!?

陳 宮:だって、せっかく交趾の治安ゼロなんですよ?今くらいしか流言は通用しませんぞ。

 

 計略「流言」の効き目は、ズバリ都市の「治安」値による。治安90代の都市ではまず成功しないのだが、荊州にしても揚州にしても、ほぼ全て90以上であった。 

 

呂 布:ううむ。……なら、やってみる価値はあるか。

 

 気が進まないまでも流言工作を開始する呂布軍。――と、その月の内に、思いも掛けない事態が転がり込んできた。

 桂陽の劉表軍がにわかに軍を発し、南海を占拠してしまったのである。

 交趾の孫策軍は、本国との連絡を絶たれてしまった!

 

陳 宮:おっしゃあ!ラッキーっ!

呂 布:ど~するんだ?

陳 宮:流言工作は中止です!攻めますよ!

呂 布:なんか行き当たりばったりの軍師だよな…

陳 宮:臨機応変!

 

 

 激動を続ける南海戦線!舞台を交州へ移して、南蛮王・呂布の獅子奮迅の活躍がはじまる!痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、けっこうスピーディーになってきます!

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