第二〇章   第二次長安攻略戦(下)

 
 
 

 

于 禁:全軍、長安まで後退せよ!

 

 夏侯淵が斬られ、士気値が一挙に激減した曹操軍は、それぞれ戦場を放棄。長安をさして後退を開始する。この場合、呂布軍は敵の「撤退地点」を塞いで殲滅を図るべきなのだが、さすがに余力がない。

 かえって敵将・于禁の〝乱射〟によって逆に馬鉄隊が全滅させられてしまう。

 ――こうして、曹操軍は無事に長安城へ帰還を果たした。

 

呂 布:ちと辛いが、攻城戦へ移る! 全軍、このまま長安を攻めるぞ!

黄 権:いけるでしょうか……。第一次攻略戦では、攻城戦で我が軍は敗れたのですぞ。

 

 と、そこへ漢中軍団から教母自らが使者となって訪ねてきた。

 

教 母:攻城戦はお任せ下さいね、呂布将軍。

 

 ニコニコと言うその背後には、呂布たちが今まで見たこともないような巨大兵器が控えている。

 ――教母以下、五斗米教団の鬼卒はただの歩兵にあらず、全隊が「霹靂車」を曳いてきていた!漢中は数少ない「学術都市」であり(えぢた~済み)、教母自身、特技「発明」を保有しているのである。

 

教 母:あらあらあら~。将軍、顔色悪いですわ?

呂 布:はははは…は…。

 

 さすがに呂布も身震いせざるを得ない。

 ともかく、攻城兵器を前面に押し立てて南蛮・漢中連合軍は長安城を包囲した。

  

鍾 :全軍総攻撃! 呂布も相当に疲れているはずだ!

 

 長安に籠城する曹操軍は六万余。攻撃側よりもやや多いほどである。

 敵主将の長安太守・鍾は、曹操が特に西方面への抑えとして抜擢しただけあって、全ての能力値が90前後というバケモノじみた万能男である。一騎討ちを除けば、軍事・政治・外交・計略、この男に出来ないことなど無い。

 このまま兵力同士がぶつかり合えば、まず呂布軍は壊滅的な打撃を与えられるであろう。

 ……が、今回は漢中軍が持ち込んだ大型の攻城兵器がある。 

 

呂 布:敵兵にかまうな! ひたすら城門の破壊に専念せよ!

 

 天を覆うほどの飛箭をかいくぐって長安城へ肉薄すると、呂布軍は攻撃を開始した。銅鑼がじゃ~んと鳴るたび、うなりをあげて巨石が撃ち出され、次々と長安の城壁へ吸い込まれてゆく。ぱぁっと土煙があがり、一瞬遅れて轟音が荒野にこだまする。

 

于 禁:太守。このままでは……。

鍾 :霹靂車は我が軍の秘密兵器ではないか! なぜ敵があれほどの数を所有しているのだ!

  

 石がぶちあたる衝撃で揺れに揺れる長安城の中、さすがに蒼白になる首脳部。曹操軍はますます苛烈な攻撃を繰り広げるが、呂布軍はひたすらに城壁・城門への攻撃に専念する。

 そして……

 

呂 布:ようし! 城門が開いたぞ!

 

 残りわずか4ターンというところで、とうとう長安城の防御力がゼロになった!

 まだ城内には6万を越す大部隊がいるというのに、曹操軍は潰走を開始する。

 

呂 布:この辺が不思議なんだよな~。いま正面からぶつかったら、絶対に曹操軍が勝つと思うんだが。

黄 権:まあいいじゃありませんか。それより、追撃なさいますか!?

呂 布:当然!

 

 長蛇をなして逃げ去る曹操軍に追いすがる呂布! 反転して向かってきた敵のシンガリと激烈な戦闘を開始する。

 

徐 晃:そこにいたかッ、夏侯将軍の仇っ!

馬 超:ぐわッ!

 

 敵殿軍の将・徐晃は得意の大斧を縦横に振り回し、まず夏侯淵戦で疲弊している馬超に重傷を負わせた。呂布、馬休、馬鉄らもかなりしつこく追い回したが、徐晃は戦いつつ後退し、後退しつつ戦い、見事な撤退戦を演じてみせ、とうとう呂布軍を打ち払って戦闘領域を離脱してのけた。

 ――呂布軍の追撃は、ものの見事に失敗に終わった。

 

  …………

 

呂 布:……つ、疲れる戦いだった~!

黄 権:ご苦労様です、将軍。

    

 次々と帰投してくる諸隊を収容し、旧都長安は呂布軍の制圧するところとなった。

 安定を進発した呂布軍、十一万余。いま、無事に祝杯を受ける者、四万。

 ……未帰還率60パーセント。天下の趨勢を占うにふさわしい大会戦であった。 

 

呂 布:それにしても長安か――。まさか西からここへ入る事になるとは思わなかった。

馬 超:そういえば呂布殿は長安とも旧縁浅からぬと聞くな。ウワサの鳳儀亭というのは、どこだ?。

馬雲緑:あ、兄上……。

呂 布:――ああ、なんか石が命中して潰れてた。まあ、その方がよかったかな。

 

 懐かしそうに、ちょっと寂しそうに長安城をあるきまわる呂布。馬兄妹がそれに従っている。

   

呂 布:――さて。俺はいったん成都へ戻る。長安は馬超、貴様に任せる。

馬 超:俺にか!?

呂 布:おう。呉懿、韓遂らとともにこの地を守れ。誰か手が空いたら軍師クラスの参謀をひとりよこしてやる。

馬 超:……わかった。この方面は馬一族に任せてくれ!

 

 攻めるも早ければ退くも早い――。

 南蛮王・呂布は長安方面を馬超らに委ねると、自らは成都に戻って張に会い、大評定の意志を伝えた。

 これからは呂布は後方にあって諸将を督戦するというのである。

  呂布が、戦争が、天下が変わろうとしていた……。 

 
 長安を手中に収め、中原への玄関を確保した呂布奉先! いよいよ第三部終了して、痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は折り返しです! 
 

呂 布:中華の歴史も、あと1ページ。

陳 宮:まだだろ。