南征北伐
魏延の北伐【第九章】 五丈原へ
一 李平にしても、策もなく思い付きで行動しているわけではなかった。 (そろそろ丞相に知らせが届いていよう) 彼がどれほど激怒しているか、李平は容易に想像できる。 (丞相は、きっと成都へ戻り […]
魏延の北伐【第七章】 陽谿の会戦
一 「魏が、大兵を催して攻めてくる」 どうやらそれが確報らしいとわかったのは、同年の九月に入っての事であった。 この四月、これまで形式上は魏王朝の藩国王という立場であった呉王の孫権が […]
魏延の北伐【第六章】 北伐みたび
一 ただ一人の若い独走が、取り返しようの無い結果を蜀漢王朝へもたらした。 まず、街亭から長駆して祁山本営を衝いた張郃軍が、さらに折り返して隴西と漢中との連絡路を遮断しようとしたため、 […]
魏延の北伐【第五章】 馬謖
一 魏の右将軍、張郃は字を儁鑛といい、冀州河間の産である。 もはや四十年以上もの昔話となった黄巾一揆のおりから軍籍に身をおき、以後つねに最前線で働きつづけた宿将中の宿将であった。 […]
魏延の北伐【第四章】 第一次北伐開始
一 孔明には、実戦経験がない。あるいは足りない。 少なくとも文長はそう考えていた。実際、孔明の軍将としての初陣は劉備の益州詐取作戦のときで、その後は軍師将軍として内国の軍政全般を […]
魏延の北伐【第三章】 北伐前夜
一 年が明け、建興四年(二二六年)。 蜀漢王朝の帝都、成都宮にもようやく新春年賀がおとずれたようであった。 建国帝の喪明けの年であるとともに、ここ二年のあいだ諸人の神経を圧迫し […]
魏延の北伐【第二章】 南征始末
一 「――この度の不祥事、臣らの不明によるもの。誠に慚愧に堪えませぬ」 丞相諸葛亮と中都護李厳はそろって参内し、皇帝へ謝罪した。 登極したばかりの皇帝劉 […]