第十三章   大南蛮国成立

 

 

 建安七年、五月。

 領下の悉くを呂布に調略された馬騰は、涼州牧としての最後の勇戦を飾るべく、自ら万余の騎兵軍団を率いて出撃した。

 従うのは、馬超・馬休・馬鉄・馬岱・馬雲緑のほか、韓遂、徳、楊秋。さらに旧劉璋陣営からの亡命者である黄権、呉班の姿もあった。

 陣容は惨憺たるものだった。将帥の質は呂布軍団にもひけをとらないのだが、彼らの率いている兵数が少なすぎた。各々がにわかに掻き集めた千や二千の小部隊が、戦場に点在するのみである。

 馬騰は、「奇襲」を選択した。それ以外に起死回生を望むチャンスはない。

 

陳 宮:……悲しいけど、これ戦争なのよね…。

呂 布:何をカッコつけてるんだ?

 

 奇襲作戦の指揮を執ったのは、馬騰軍参軍の黄権であった。かつては劉璋陣営にあって法正の次席にいた知謀の人だが、やはり陳宮には遠く及ばなかった。

 

馬 騰:奇襲は見破られたか!各自、全力を挙げて迎撃せよ!

 

 馬騰の叫びもむなしい。馬騰軍は全部隊が混乱状態に陥り、その無防備な姿を呂布軍の目前にさらしている。

 それだけではなかった。陳宮の打つ手は早い。

 

呉 班:…皆の者、かねて申し渡したとおりである!いまからこの呉班は呂布殿にお味方する!

 

 馬騰軍の客将であるはずの呉班の隊が、呂布軍先鋒呉懿隊の索敵範囲におさまった途端、ふいに矛を逆しまに馬騰軍を襲いはじめたのである。

 

馬 超:おのれっ、裏切りか!!

 

 怒号する馬超、すかさず傍らの楊秋隊に迎撃を命じるが、

 

楊 秋:我が隊も呂布殿に従う!

 

 と、これもまた部隊ごと呂布軍に寝返ってしまった。

 

馬 鉄:ゆるせ父上、兄者!これも国のためじゃ!

 

 さらに、馬兄弟・末弟の馬鉄までもが、軍をひるがえして呂布軍の旌旗を掲げる始末。

 

馬 超:バカな……

馬雲緑:兄上……無念です……!

 

 高順隊の突撃により馬雲緑隊、全滅。次いで韓遂隊、馬休隊、全滅。

 …この時点で、呂布軍6万4千に対し馬騰軍1万4千。このうち1万は馬騰の直衛軍である。

 

呂 布:この戦は仕舞いだ。馬騰、俺様と勝負せよ!

馬 騰:……よかろう。

 

 猛将馬騰の大部隊を正面からねじ伏せる愚は犯さず、呂布は一騎討ちを申し込む。混乱中の馬騰隊は、これを断れない。

 敵味方の雑兵を蹴散らしながら陣頭に立つ呂布の前に、魁偉な体躯をあらわす馬騰。

 

馬 騰:フフフ…呂布よ。総大将どうしの一騎討ちで勝敗を決するなど、これほどすがすがしい戦争は古今にあるまい。

呂 布:おう。なんかドラマみたいで面白いじゃね~の。

 

 同時に馬腹を蹴り、突進をはじめる両大将。

 ……建安七年(二〇二年)、夏。涼・雍二州を長らく支配し続けた大軍閥・馬一党は、その騎馬軍団と共に中国大陸から姿を消した。

 

 接収のおわった天水の主城(冀城か?)では、論功行賞が行われている。

 渡された軍功表を見て眉をひそめる呂布。

 

呂 布:さて、このたびの軍功序列だが…なんでいつも俺様が第一位なんだ?

陳 宮:あんたが前に出過ぎてるんです……。

張 遼:フフフ、御大将らしいぜ。

高 順:……。

孟 獲:俺、第三位。

 

 呂布軍の列将にすれば毎度見慣れたことが繰り広げられるのだが、馬騰軍の面々にとっては度肝を抜かれるような光景であろう。いちまいの紙片を囲んで、呂布と諸将が車座になってギャアギャア騒いでいるのである。

 

馬 超:小学生の席替えか……。

 

 たまりかねたように呟く馬超。

 ニヤニヤと状況を眺めている馬騰は、何か吹っ切れたの様子であった。

 やがて、虜将たちの裁断が始まったが、このたびは随分とスムーズに話が進む。

 まず総大将たる古豪・馬騰寿成が呂布の前に跪き、生涯忠誠を尽くすことを誓った。

 

馬 騰:わが五体が滅びようとも、鬼となって呂布殿を護り申そう。

呂 布:おうおう。これからは俺のためだけに生きるよ~に。

 

 …この契約は違えられる事はなかった。

 馬騰は北方戦線の総司令として安定城で曹操軍団と対峙し続ける。そしてわずか一年後の第一次長安攻略戦のおり、潰走する呂布軍団の殿軍となって踏みとどまり、散々に斬り暴れた挙げ句、曹操軍に捕殺される運命を辿ることになる……。

 

馬 超:おそらく地球人類であんたより強い男はおるまい!俺が仕えるのは最強の武!

呂 布:どこかで聞いたセリフだが。

張 遼:……。

 

 馬超、馬休の兄弟は呂布に臣従を申し出た。「流言」のせいで、みな忠誠度が60弱まで落ち込んでいた為であろう。

 ただ、馬超の従弟・馬岱と勇将徳だけは、意固地にも二君に仕えるのを潔しとせず、呂布の裁断を待つ事になった。

 そして。

 

馬雲緑:あ、兄上がどうであろうとも、私は貴様なんかには仕えないっ!

呂 布:え~。

馬雲緑:だいたい、私は相性60から80までの間の人にしか興味はない!

呂 布:(ニンマリ笑って)その点は心配ご無用!なぜなら俺の相性は「60」だからな。がっはっは。

陳 宮:あっ!いつの間に……!

呂 布:いっとくけど「スタート前」だからな。南蛮で始めるって事で、劉璋陣営にウケがいいと思ってな。

陳 宮:……ど~りで劉璋やら馬騰やらがホイホイ従うわけですよ。

馬雲緑:う……。60……。そ、それなら……。  

呂 布:がっはっはっは!

 

 彼らだけではない。黄権、呉懿の他、文官の王甫、劉璋の長子・劉循が馬騰陣営に亡命していた。そのことごとくが呂布への臣従を受諾してくれたのである。

 ……結局、ほとんどの武将が呂布に臣従することとなり、呂布陣営としては思わぬ奇勝となった。西涼一帯を吸収合併するのに等しい展開である。

 

陳 宮:これからが大変ですよ……。涼州の都市は軒並み治安0……。

呂 布:その辺はよろしく。

陳 宮:うぐぅ。

呂 布:……。

 

 呂布軍団は、天水からさらに東進して安定郡を制圧する。ここに仮司令部を置き、きたるべき長安攻略の前進基地とするのである。

 とりあえず安定の太守には馬騰を留め置き、馬一党をそのまま残すことにする。涼・雍の要である天水には、旧劉璋派の呉懿・呉班・黄権などを駐留させ、万が一の変事に備える。上党・武威などの涼州ド田舎都市には、劉璋・劉循親子を派遣(左遷とも言う)し、その基盤づくりを託した。

 

 ちなみに涼州戦役の集結直後、南中で唯一空白都市になっていた建寧にも軍が派遣されている。

 

呂 布:なんであそこだけ穴が空いてたか疑問だったんだが。

陳 宮:こ~ゆ~わけなんです。

 

 なんと旧劉璋陣営の人材が呂布の勢力圏を避け、野に隠れていたのである。楊懐・秦であった。すでに「嫌いフラグ」が消滅している彼らは、簡単に呂布の招請にこたえてくれた。

 

 ……そろそろ冬支度のはじまる建安七年(二〇二年)、呂布は涼州から益州・南中にかけての辺境区をことごとく踏み固め、陳宮の提唱する「西方王国」成立におおきく前進した。

 同月、呂布は秘技「勢力名欄で[CTRL]+マウスボタン右ダブルクリック」を用い、わが国名を「南蛮」と公称した。王でもなく公でもない。しかしながら勢力名が存在する奇妙な軍閥の主に、呂布はなったのである。

  

 建安七年、冬。呂布の南蛮勢力勃興により、中国の情勢はにわかに改まった!

 相変わらず四海最強の勢力を誇る袁紹・人材と生産力だけは桁外れの曹操・東呉の安全圏で伸び伸び精兵を養っている孫策・荊州でダラダラしている劉表・汝南でヒヤヒヤしている劉備。

 彼ら中原に縦横する英雄たちに、南蛮・漢中連合の力がどれほど通用するのか。この時点でそれを知りうる者は、(プレイ中の作者も含めて)誰もいない。

 

 ……同年末、遙か彼方の汝南太守・劉備と呉の孫策とのあいだに攻守同盟が結ばれたという報が飛び込んでくる。

 南蛮王・呂布は手にしていた箸を思わず取り落としたという。それを見ていた彼の娘二人は、何が可笑しいのかケラケラ笑った。呂布もまた、それを見て笑った。

 そう。彼らは「箸が落ちるのも可笑しい年頃」だったのである。

 

陳 宮:だから何なんだ……。