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■ ★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★

1 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:41
はい。こんなの作っちゃいます。
要するに、正式なストーリーとして投稿するほどの長さでない、
小ネタ、ショートストーリー投稿スレッドです。(長文も構わないですが)
常連様、一見様問わず、ココにありったけの妄想をぶち込むべし!
投降原則として、

1.なるべく設定に沿ってくれたら嬉しいな。
2.該当キャラの過去ログ一応見て頂いたら幸せです。
3.isweb規約を踏み外さないでください…。
4.愛を込めて萌えちゃってください。
5.空気を読む…。

とりあえず、こんな具合でしょうか〜。
基本、読み切り1作品。なるべく引きは避けましょう。
だいたい50行を越すと自動省略表示になりますが、
容量自体はたしか一回10キロくらいまでオッケーのはず。
(※軽く100行ぶんくらい…(;^_^A)、安心して投稿を。
省略表示がダウトな方は、何回かに分けて投稿してください。
飛び入り思いつき一発ネタ等も大歓迎。

あと、援護挿絵職人募集(;^_^A  旧掲示板を仮アプロダにしますので、↓
http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi target=_blank>http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi
にアップして、画像URLを直接貼ってくださいませ〜。
作品に対する感想等もこのスレ内でオッケーですが、なるべくsage進行で
お願いいたします。

ではお約束ですが、またーりモードでゆきましょう!

2 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:42
■■朝の風景■■


 少女たちの朝は(わりと)早い。
 全寮制である蒼天学園において、就寝時間は各々なれど、起床時間は決まって7:00。
 山の斜面沿いの、高層マンション群と見まごうほど密集した超巨大女子寮中に、
いつも通りのけたたましい起床ベルが鳴り響く。
 ――この朝も、穏やかな晴天であった。

「おはよーっ」
「おはよ…」
 珍しく朝練のない夏侯惇が、二段ベッドの下からはい出てくる。上から顔を覗かせて、
同室の曹操が元気よく挨拶。血圧低めの夏侯惇は、まだ眠そうだ。
「先トイレいく…」
「おっけー」
 曹操はパジャマ代わりのジャージ(※萌えポイント)を畳みながら、元気よく答えた。
(彼女は、効率がいいのか面倒くさがりなのか、枕元の手が届く範囲に着替えやポットや
ドライヤー一式を持ち込んでおり、二段ベッドの上はほとんど巣と化している)
 狭い空間で手早く着替えをすませると、曹操はひらりとベッドを飛び降りた。
「今朝は食堂で食べるよー!パン切らしてるから」
「わかったー」
 洗面所から顔を洗う音と歯を磨く音が聞こえる。
 やがて、眼帯をまきながら夏侯惇が出てきた。
「ちょっと遅くなったかな…」
「急げば間に合うよー」
 
 朝の寮食堂は、昼時の学食ほどでないにせよ、混む。
 モーニングセット(コーヒー付)400円は、多くの面倒くさがりの女子高生にとって
魅力的な料金設定だ。朝から果てしないお喋りを続ける者、新聞を広げてくつろぐ者、
遺恨でもあるのか殺気走った目で睨み合う者など、様々な連中が、わずか30分足らずの
朝食時間をそれぞれに過ごしていた。
 行列の最後尾に到着した曹操と夏侯惇は、トレーをひょいっとつかむと、そのまま行列を
無視して先へ行く。
 ムッとしてふたりをにらみつけた少女たちは、一瞬後、慌てて目をそらした。夏侯惇の
胸元の二千円章(※希少)と曹操の壱万円章は、彼女らにとって雲の彼方の存在なのだ。

3 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:42

「おっはー!」
「ああ、おはよーさん」
 曹操が挨拶した相手は、新任の豫州校区総代、劉備だ。関羽と張飛も両隣にいる。
「なんや曹操はんも、寮食派やったん?」
「いつもはちゃんとパン焼いて食べてるよ? 劉備こそ関羽がいるくせに寮食?」
「はは、今朝は三人とも寝坊したんや」
 他愛ない朝の挨拶。
 屈託ない二人の笑顔。
 だがそのふたりの頭上で、はやくも夏侯惇と張飛の闘気が交錯しはじめている。
「ホラ、いつまで突っ立とるんや、後ろがつっかえるやろ」
 と、不意に劉備が振り向きざま肘鉄を張飛の脇腹に突き刺した。張飛、無言でしゃがむ。
「じゃ、ウチらは、あっちで人待たせとぉから」 
「うん。あ…朝イチの現国、一緒の教室だよね。席並べよ」
「ノート写させてくれるんやったら」
「いーよー。その代わり、また四コマ漫画書いてね〜」
 ふたりは、分かれた。

 適当に空いている席(上級幹部専用エリア)に着いた瞬間、夏侯惇は頭を押さえた。
 長湖部領袖の熱血少女・孫策が、黙々とマヨネーズトッピングのサンドを頬張って
いたからだ。
 曹操は、それへ気づいた風もなく、平然と斜め向かいの席にトレーを置いた。
「おはよ、揚州」
 実にさり気なく挨拶する。このところ曹操が孫策の体育祭実行委員長就任の自薦書を
握りつぶし続けているため、ふたりの関係はよくて武装中立維持くらいである。
「…あ」
 曹操を視認した孫策、一瞬、底光りする目で曹操を見据えたが、次の瞬間、
「おはようございます!」
 と爽やかに笑った。よく日焼けした顔に、白い歯がひときわ目立つ。
「今朝は寮食ですか!」
「うん」
「ここのマヨネーズは最高ですよ! 副会長もいちど試したらどうです!?」
「い、いまは普通に食べるから…」
 無邪気な、しかしどこか挑発的な孫策の気迫には、さすがの曹操も辟易気味だった。
横ざまに突きつけられたマヨネーズを、どうやって引っ込めさそうか迷っているらしい。
 ――と。
 ふわり、とした風情で一人の少女が間に入った。
 びっくりするくらい、綺麗な肌。黒絹のような長い髪。人の容姿を気にかけたことのない
夏侯惇でさえ、思わず息をのむくらいの端整な顔立ち。
 長湖部副主将・周瑜だ。
「孫策、そうやって誰にでもマヨネーズを薦めないの」
 ぴしゃりとたしなめるその横顔に見とれていた曹操、夏侯惇の方へ、とびきりの美少女は
不意に顔を向けた。精神的に後ずさる二人に、周瑜は軽く会釈をすると、はにかむように
ほほえんだ。
「すみません、副会長。朝からご迷惑をかけました」
「い、いいえ、こちらこそ」
 なぜか恐縮する曹操に、妙に高貴な頬笑みをむけ、周瑜は席を立った。
「じゃあ、例の件、よしなにお願いいたします!」
 孫策も立ち上がりざま、周りがぎょっとするくらい大きな声で曹操へ言い、会釈した。
 長湖部の二人が去った後、曹操は呟いていた。
「あのコ、苦手…」

4 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:46
「それにしても、周瑜ってコはじめて近くで見たけど、びっくりしたねーっ!」
「話してないで走りなさいっ!」
 結局、ふたりは、何やかんやで出遅れた。かばんを小脇に抱えて、猛ダッシュ中である。
 別段、遅刻必至という時間ではないのだが、先週の週番である夏侯惇が遅れては、日誌
を次に渡せなくなる。朝のHRの二十分前には、教室に着いておかねばならないのだ。
「あはは、ごめんごめん、忘れてた」
「あんたね…」
 時間帯が早いということもあって、路面電車の停留所は空いている。
 と、いままさに一両の路面電車が、第19女子寮前駅から発車しようとしているところ
だった。二人は全力でダッシュすると、車外ステップへ飛び乗った。
「ああ、危なかった」
「今も危ないわよ…」
 路面電車は学園敷地内を五分刻みに行き交い、タダで乗り降りできる。
 時間帯によっては、乗り切れない人間が、このように車外のステップや窓枠にしがみつく、
という光景も見られるのだった。落ちれば死ぬ、というほどのスピードではないが、危ない
といえば危ない。
 次の停留所の直前で二人は飛び降り、改めて車内に乗り直した。 


「あ…」
「あ」
 飛び乗ったとたん、曹操はさっき走ったことを後悔した。夏侯惇も心の中で曹操に謝った。
 こともろうに生徒会長・袁紹が、真っ正面の席に座っていたのだ。
 かつて曹操と理想を共有し、一緒に学園を変えようと許攸や張バクたちと誓い合ったのが、
1年ほど前である。
 が、事態は複雑に骨折し、いまでは袁紹と曹操は絶交状態なのであった。
「……。」
「………。」
 …気まずい。
 袁紹も曹操に気づいてないはずがないのだが、おかしなくらい無心に単語帳を見ている。
 曹操は曹操で、必死になって天井の広告を眺めていた。
 ――夜の司州回廊で、雨に濡れながら互いの背中へ決別を言い合ってから、まだ二月も
経たない。
 あの夜から生徒会の執務も何もかも、人を介するようになり、もう差し向かって顔を
合わせる事もないと思っていたのだ。
「……………。」
 しばらく妙な空気が流れる。夏侯惇では、ちょっとこの空気を何とか出来そうになかった。

5 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:47
 と、緊張に耐えかねたのか、短い溜息をついて袁紹が単語帳を閉じた。
「――しばらくぶりね、曹操、夏侯惇」
「…うん」
「お、おはようございます」
 正副会長の思わぬエンカウント。ブン屋が乗り合わせていたら嬉々としてスクープにした
だろうが、幸い車内の誰も気づいた様子がない。あるいは、そのフリをしている。
「"そっち"の様子はどう?」
 袁紹の言う「そっち」とは、生徒会室のことだろう。蒼天会と公文書発行機能を掌握し、
事実上学園の支配権を偸盗してのけた曹操に対し、袁紹は生徒会分室を冀州校区内に移し、
徹底抗戦の構えをとった。いま学園の機能は完全な二頭状態になっていた。
「……。」
「聞いちゃいけないことだった? じゃあ私の方から言うけど、こっちは極上よ」
 袁紹はわざとらしく高慢な口調で言った。こうなると曹操、負けじと
「こっちだってばっちしだよ! みんなよく働いてくれるもん!」
 と噛みつく。
「でも、人材が足りなさそうねー? ああ、幹部クラスじゃなくて、中堅連中のことよ?」
 袁紹はいちいち曹操の弱みをつく。新興勢力の曹操に較べ、袁紹の方は中堅クラスの人材
に物理的に恵まれている。
「まあ、頑張れるところまで頑張ってよね」
 と、だめ押しの一言を曹操のちいさい胸に刺し通して、袁紹は立ち上がった。正門前に
到着したのだ。
「そっちこそ!」
 袁紹の背中に、曹操は挑戦状をたたきつけた。
「夏休みが終わる頃まで、分室があると思わないでよね!」

 …曹操と夏侯惇は、豫州校区前で路面電車を降りた。
 曹操は、もういつもの曹操に戻っていた。
「まずは、劉備からかよね…連中、飼えるか飼えないか」
 歩きながら、曹操は次の次を考えている。
「生徒会室にも評議会にも怪しいのがいっぱいいるわよね。董承先輩とか、王服とか」
「でも袁紹の下だって、一枚岩じゃない。必ず閥が出来てるはず。どうやって掻き回そう」
「長湖部の連中はどうしよう。いまは陳登ひとりで大丈夫だけど――うわっ」
 ぶつぶつ言っていると、石畳の段差で見事に蹴つまづいた。
 そのおでこが地面にたたきつけられる直前に、夏侯惇がひょいと片腕を伸ばして襟首を
掴まえた。
「イロイロ考えるのはいいけどね…」
 呆れたように、夏侯惇は言った。
「あんたはきちんと前を見ろ、前を。後ろとか横は、荀揩竓s嘉たちが見てくれるから」
「あ…」
 曹操は、一瞬だけ考え込んで、ニッコリ笑った。
「うん、前だけ見てる」
「よし」
 夏侯惇は曹操の頭をポンとたたくと、スタスタと先を歩き出した。
「急ぐわよ。――それにしても、大変な登校風景になったなぁ、今朝は」 
「ホント、誰のせいよ」
「アンタだ、アンタ」
「そうなん?」

                                  ■おわり■

6 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:48
何で長くなるんだ!?
サンプルとして「朝の風景」で終わらせるつもりだったのに!
ああ、投稿される方、これくらい長くなるようでしたら、メール
でも承ります(;^_^A

7 名前:japan:2002/02/07(木) 12:00
SSへの感想もこちらに記入して宜しいのでしょうか?
(それとも「読書感想文」スレの方が?)

惇姉さん、相変わらず格好良いですね。
終幕の台詞に痺れました。
あと、
>――夜の司州回廊で、雨に濡れながら互いの背中へ決別を言い合ってから、まだ二月も
経たない。
このシーンを是非読みたいです、ぐっこ様!

8 名前:香香:2002/02/07(木) 15:25
マヨネーズをすすめる孫策が、私の中でちょっと神楽と被ります(笑)。
周瑜にビビる?曹操も可愛いですねぇ(笑)。
私もjapan様に同意です!
あの名台詞を聞きたい!

9 名前:岡本:2002/02/07(木) 17:48
孫策との水面下の争いや、袁紹との官渡決戦を控えて自軍勢力
の把握を画策する曹操がいいですね。

10 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 21:48
感想はこちらでよろしいですよ〜。

>周瑜
japan様の蒼天クリスマスでの初(!)出演に続き、2度目。
曹操がこのまま弱くなりそうで怖いです…(;^_^A まあ、官渡連作があるから…。

>あのセリフ
形にするとクサくなりそう(;^_^A TOPのアレが一番のできです…。

さー、次はどなたがショート書いてくださるのかなあ〜(←期待中)

11 名前:ジーク:2002/02/09(土) 17:42
■第一回紙幣章所持者親睦会■

- 某日夕刻 徐州棟食堂『張・来来軒』 -

……
「…あ、これおいしー。」
「おばさまこれ美味しいですわよ。」
「公達、オバサマはやめてってば…。」
「ちょっと孟徳。こんなに頼んで大丈夫? 経費で落とすったって限度があるでしょうに。」
「何いってんの惇。生徒会長に不可能なんてないのよ。」
「ただでさえスズメの銅像とか色々訳わからない物を作ってばかりなのに……。…頭痛が。予算が。」
「ラーメンとスープとシューマイ追加ね〜!」
「食べすぎじゃないの、子桓さん…?」

徐州棟一階、張遼の母が主を務める寮食堂でのひとコマ。彼女らは予算折衝だか蒼天通信幹部総会だかよく分からん理由をつけて現在経費で宴会中である。メンバーは曹操、曹丕及び生徒会高官達と、蒼天通信幹部勢、勢力下の各校区総代、各サークルの主要メンバーなど曹操の部下がズラリと並んでいる。要するに曹操勢力下の紙幣章所持者が勢ぞろいという奴である。ちなみにこの食堂で宴会…もとい食事付き会議が招集されたのは生徒会副会長曹丕の好物がここの料理であることと、この食堂が学園有数の大きさを誇っている為である。最も、これも曹丕が幾つか部室をつぶして食堂を拡張した為だが…。

なんやかんやで小一時間。
「ところで、これって何の会議でした?」
「さぁ……。始めのほうに何かいってた会長選挙についてじゃないの?」
会長選挙。既に死語になって久しい言葉である。
「…え、あれだけ?」
「まあ、親睦会って事にしといてくれればいーわ。
生徒の親睦を深めるのも生徒会の立派な役目なんだし。」
とは曹操。
「そうそう。仲が悪いと色々と支障がありますし。ね、徐州さん、マンセーさん。」
「全くです…。アタタタ…思い出したら腹痛が…。」…張李調停役になって久しい楽進。
最近よく神経性の腹痛に悩まされている模様。その腹痛は元はといえば張遼と李典の所為である。
張遼と李典のあまりの仲の悪さに両方と親しい楽進は心の休まる時が無いのだ。
もっとも血で血を洗うような凄惨な争いではなく、黒板消しを扉に仕掛けたり、
ブーブークッションをいすに仕掛けたりといった、或る意味平和な争いではあるが。
以前は李典がやや戦局を有利に進めていたようだったが、
最近では張遼も李典の繰り出す攻撃を見極めだしたのか、互角の争いを繰り広げている。
「私は李典サンが謝るっていうのなら仲直りしてもいいですけど。」と張遼。
「………。」無言の李典。しかしその体は「ふざけないでよ!」と猛烈な闘気を発している。
「そーいえば李典ちゃん、さっきからあまり食べてないみたいだけど、どうかしたの?」
「マンヘーはん、ほほのほーひはほれもふっごくおいひいへふほ!
はへはいいなんてほっはいはい。」
という曹丕の前には既に山と積まれた皿の山―。マダ食べる気か、この娘は。

12 名前:ジーク:2002/02/09(土) 17:43
「い、いえ……ちゃんと食べてますよ。」
いきなり曹操と曹丕に話題を変えられ、気勢をそがれた李典。
慌てて料理を取ろうとするが、知らぬ間に周りに料理が無くなっている。
「あれ、李典ちゃんのとこ、料理が無いじゃない。あ、文遠。
あの赤いすーぷ李典ちゃんにとったげて。」
ギクッ。李典の視線が一点にくぎ付けになった。『赤い』スープ……。
何故か一皿だけ置いてある『益州棟名物激辛すぅぷ』のことだ。
噂では張遼と仲の良い関羽が特別に調理法を教えたのだとかどうとか。
誰も食べなかったのは……何故かこっそり『李典曼成用』とかかれていた為だ。
まあ、書いてなくとも多分誰も食べなかっただろうが。
「はい、どうぞ。このすぅぷはとっても美味しいですよ。
リテンさん、どうぞ遠慮せず全部食べてくださいね〜。ふふっ。」
張遼が曹操の一言に追い討ちをかけるが如く笑みを浮かべて李典にそのスープを渡す。
「え、……えっと……あの…それは……」
必死で断りの言葉を探す李典だが、張遼ならばともかく曹操にきつい事は言えるわけがなく、
思うように言葉が出てこない。
「どうしたの? あ、わかった。食べさせてほしーんでしょ。
それじゃ〜私が食べさせてあげるね。はい、ア〜ン。」
カチャ。
曹操は悪魔的な笑みを浮かべてスープの皿を手に取った。
やばい、逃げないと―。
ガシッ。
蒼ざめた李典は席を立って後ずさる……ろうとしたが、後ろには何故か張遼が……。
「あ、わっ、はなせっ。……い、いやぁ〜。」
ゴクッ……一秒……二秒………ぼぅっ!
口から火焔を吐く李典。必死になって水差しとコップを探す。が、何故か水差しは姿を消していた。
張遼―。薄れゆく意識の中、李典は張遼の笑みを見た…ような気がした。
曹操は李典の末路(?)をみて腹を抱えて笑っている。
その笑いは収まる様子を見せない。そして……。

べちゃ。

食堂の床にノックダウンしている李典。対李典戦に勝利を収め、満足げな表情の張遼。
例の腹痛が再発した楽進。麻婆豆腐を顔一面にくっ付けた曹操。あきれる夏侯惇。
彼らを尻目に宴会はなおも続く……。

……

-了-

13 名前:ジーク:2002/02/09(土) 17:44
というわけでショートストーリー書いてみましたです。
疲れた…(;^^A
かってにスズメの銅像立ててしまいましたが(笑) 何か違う気もいたします。

>朝の風景読感
マヨネーズな孫策(←?)が…(^^

決別のせりふ…聞いてみたいなァ。

14 名前:項翔:2002/02/09(土) 19:58
>■■朝の風景■■
学園実力者達の緊迫したやりとりに、一気に全て読んでしまいました(^^) TOP絵の再現を大期待です!

>■第一回紙幣章所持者親睦会■
ああっ、折角の親睦会がぁ…!
…結局こうなるんですね、あの二人。(^o^)
しかし、マーボーで顔一面を濡らす曹操をもう見られるとわ!
ジーク様、大感謝です!!

15 名前:項翔:2002/02/09(土) 20:01
すみません、"学園タ力メ達の緊迫したやり謔閧ノ"→"学園実力者達の緊迫したやり取りに"です…。

16 名前:★ぐっこ:2002/02/09(土) 22:21
うーむ…今日は項翔様が祟られてる!? ちなみに昨日は私でした…(;^_^A
管理機能の修正で直せますので、よろしければメールか画像アップローダのほうにでも、
修正文あげてくださいー!

それはともかくとして!
ジーク様! ストーリー投稿ありがとうございます!
最高!不協和音有りすぎの曹操陣営! 珍しく張遼が先攻したバトル!
しかも知謀の李典の先手先手を取る手腕! ただの体育会系ではないということか!?
曹操達のちゃらんぽらんさがたまりません!(;^_^A

17 名前:玉川雄一:2002/02/11(月) 03:53
  ■まじかる☆イリュージョン■

 辺境の微動か、京師を揺るがす激震か。
 帰宅部連合実働部隊総帥・諸葛亮が企図する北伐の成否は、
ある辺鄙な校舎の去就に懸かっていた。
 荊州校区新城棟。現在この棟を預かるのは孟達、子敬。
 かつては帰宅部連合に所属しながら、故あって生徒会に身を投じていた。

 彼女は当初こそ新蒼天会長となった曹丕の覚えめでたく、
破格とすら言える待遇を受けてきた。
 しかし、得てしてこの類の栄達は凋落も早い。
 曹丕の早すぎる引退と共に、孟達の立場も微妙になっていた。
 そこへかつての僚友、李厳の私信に続いて、
諸葛亮から誘いの手が差し伸べられたのである。

 曰く、
  近々帰宅部連合は生徒会への行動を開始する。
  ついては貴方も旧に復し、我々と共に生徒会打倒を図って欲しい。
  我々は漢中アスレチックより雍州校区を目指す予定であり、
  貴方には荊州校区より司州棟を突いてもらいたい。
  これが成就すればかならずや生徒会に痛撃を与えることができる。
  その時は、貴方も安心して帰参が叶うはずだ、と。

 …ちなみに、引き続いて“同人誌界の支配者”だの、
“世界征服”だのといった意味不明な文言も見られたが、
その部分は孟達には今ひとつ意味が図りかねたのである。

 それはさておき、孟達の心は確かに揺れ動いた。
しかし、事態は彼女の予想をはるかに超えて滑り出す。
 諸葛亮は、意図的にこの情報をリークしたのである。
 新城棟に隣接する魏興棟主・申儀は孟達と折り合い悪く、
彼女を通して、「孟達に不審の儀あり」との報が密かに走った。
 孟達はそれを伝え聞き、とうとう腹をくくったのである。

 とはいえ改めて考えるに、この計画は余りに魅力的だった。
 彼女の預かる新城棟は荊州校区の西北端にあり、
現在は漢中アスレチック方面への備えの役目を果たしていた。
 しかし、この刃が翻されれば… 荊州校区北部を一気に突破し、
現在生徒会が置かれている洛陽棟を直撃することが可能だった。

 だが、一にも二にも、この作戦には迅速な行動が不可欠である。
 いかな予想外の造反とはいえ、生徒会の対応より早く事を運ぶ必要がある。
 孟達の要請受諾の連絡に折り返し、諸葛亮はくどいほど念を押していた。
 だが、孟達はこの件について何故か楽観的だった。
 悠々と決起の時を図っていたのである。

 そこへ、生徒会側から孟達を慰撫する手が打たれた。

 曰く、
  貴方は劉備を棄て、生徒会に身を投じた。
  生徒会は貴方に要地を委ねており、
  また益州校区の生徒達は貴方のことを恨んでいるだろう。
  諸葛亮の企みなど成功するはずがない…

 孟達はこれを聞いてすっかり安心し、諸葛亮の度重なる督促にも耳を貸さなかった。
 生徒会は油断しきっている。我々が本当に背くとは思ってはいまい。
 この計画は必ず成功する、そのはずだった…

18 名前:玉川雄一:2002/02/11(月) 04:00
「そ、それが…なんでこんな事になるのよ!」
 急報を受けて、棟長室から窓下を見下ろした孟達は我が目を疑った。
 新城棟を取り巻くように、生徒会の実働部隊が布陣していたのである。
 一面に広がる女生徒の群の中に何故か古風に翻る旗。
 それには「司馬」と記されていた。生徒会驃騎将軍(仮称)・司馬懿、仲達。
 孟達が進撃するはずだったルートの途上、宛棟にあって、
荊、予二校区の威力行動を司る少女である。

 孟達の楽観は、いかに成功を期された今回の状況下とはいえ、
ある意味では仕方のないことだったのかもしれない。

 原則として、大規模な威力行動は生徒会の承認を必要としていた。
 …もちろん、学園内でも生徒会の勢力下においてのみ通用するルールだったが。
 宛棟から司州校区の洛陽棟まで出動許可を得るのに1時間…
 ネットワーク環境の整った学内(ただし携帯電話等は使用不能)とはいえ、
この類の手続きはアナログ方式というのが不文律である。
 生徒会は自分を疑っていないことは先の報せからも明らかであり、
この1時間の空隙があれば有利に状況を展開できる。
 そう考えるのも無理はないだろう。
 だが、彼女の敵はそのような枠には囚われなかったのである…

 孟達の叛意を伝え聞き、司馬懿の部下達は口を揃えて様子見を進言した。
 だが、彼女は躊躇わず、独断で動員をかけたのだった。
 そして密かに宛棟を進発、急行して新城棟を囲んだのである。


「アタシが事を起こして20分、あいつらはもうここまで来てる…
 まるで、神速じゃない…」

 −異聞によれば、この時生徒会側には剣道部の俊英、徐晃が参加していた。
  孟達はなお力戦し、徐晃を昏倒させたというが…
  当時の記録によればこの時すでに徐晃は現役を退いており、
  この説は帰宅部連合贔屓の何者かが孟達にせめて華を持たせようとした、
  虚構であるとされている。
  学園史を編纂した陳寿も、それに異聞を註釈したハイショーシ君も、
  この説は黙殺している…

 司馬懿麾下の生徒達は、勇躍新城棟に殺到した。
 孟達も果敢に抵抗するも、麾下の搆ォ、李輔は昇降口から投降。
 孟達自身も捕らえられ、司馬懿の前に引き出された。

「……………」

 孟達とて、敗れたりとはいえひとかどの少女である。
 乱れた髪はそのままに、やや細くつり上がった目で司馬懿の顔を睨み付けた。
 司馬懿はそれが常のように冷然と孟達を見下ろしていたが、
やがてポツリとつぶやいた。

「戦いは…決断と瞬発が肝心…それが判らないあなたは、蒼天会には必要ない…」

 それきり、プイと身を背けて歩き出したのだった。

 無念そうにうなだれた孟達の制服に生徒会執行部員の手が掛けられ、
階級章が剥奪される。こうして、新城の叛乱は潰えた。
 諸葛亮が送り込んだ増援も生徒会に投降し、
彼女の雄図はその根本において挫折することになったのである。


 −それでもなお、諸葛亮の北進は続行された。
  だが、生徒会にとってはある意味予想外な、
  弱小部の思わぬ攻勢がさらに想像を超えた状況を作り出す。
  新星の輝きが更なるドラマを生み、学園史を飾ることになるのだが…
  それはまたいずれ語られることとなるだろう。

 今はまだ、諸葛亮の前に司馬懿という存在が立ちはだかる、
その予兆が見え始めただけだった。

 ■続く…のか?■

19 名前:玉川雄一:2002/02/11(月) 04:03
ああん、ダブルで省略… 3分割すれば良かったか。

何だか内容の割にタイトルが浮きまくってる気もしますが(^_^;)
そう、このシリーズ(?)の主人公は司馬懿だったんですね〜。
っていうか続くの?
しかし、「将軍」っていう名称の問題、解決しませんかねえ…

20 名前:三国狗:2002/02/11(月) 22:48
ん〜、どれも面白い。
小ネタとして終わらすのは何か勿体ないくらいです。
特に「親睦会」、もう笑いっ放しでしたよ。
こういうの、自分でも書けたらイイなあ・・・。

21 名前:★ぐっこ:2002/02/12(火) 00:37
おお〜っ! 司馬懿VS孟達がとうとうテキスト化されたですね!?
司馬懿のなんぞそれ神速なる! 司馬懿のセリフがまたカコイイ!
しかしタイトルが「まじかる☆イリュージョン」(¨;)…このギャップがたまりません。
密かに戦死してそうな徐晃の注釈が泣かせます…。

22 名前:玉川雄一:2002/02/12(火) 01:06
それでも見直すと直したいところがあって鬱ですな。
ま、何かの機会にでも…

そうそう、参考にしたのは晋書宣帝紀とぐっこさんに頂いた北伐小説(のそれぞれ当該部分)です。
実は北伐小説で確認するまで、晋書宣帝紀を思いっきし誤解釈してました(-_-;)
ぐっこさんアリガト〜<(_ _)>

…さすがにタイトルは誤ったやもしれぬ(-_-;)

23 名前:ジーク:2002/02/12(火) 20:39
う〜ん、最後の司馬懿の台詞が渋いっス!
将軍……棟長とか? …なにか違う。
班長(;^^A…地区長(自治会みたいだ…)…隊長…司令…荊州方面軍団長…軍曹(←!?)
ありそうで良い名前無いものですね(汗)
最後のほうは何故に軍隊に…

24 名前:★ぐっこ:2002/02/14(木) 23:40
 2月14日――
 2月14日である。
 すなわち世で言うところのバレンタイン・デイ!
 …そもそもこのバレンタインデーとは、若者達に恋の美しさを語り続け、それ故に時のローマ皇帝
クラウディウスII世(在位268-270)によって処刑された、聖ヴァレンティヌスの悲劇に由来する。
 恋人の守護者・聖ヴァレンティヌスの名を冠したこの日、ある国では男→女の本命貢物合戦、
ある国では女→男のチョコレート商戦が繰り広げられるのだ。

 ……そして、この蒼天学園では――

「なあ張飛、何で何回焼いても焦げ付いてまうんやろ!?」
「もうちょっとミルク足したらどうやろか?」
「あかんあかん。また端の方が変な色になる!」

 さして広くない寮のキッチンを、バタバタと二人の少女が右往左往している。
 この日――バレンタインデーは、彼女らにとっても特別な一日であった。
「女子校なのに何で?」
 などと言う次元ではない。女子しか居ないというこの密閉された世界に於いてこそ、この種の
イベントは果てなくヒートアップするのだ。
 まして二月中旬というと、ちょうど学年末テストも終了し、長い春休みに入る直前の期間である。
日頃まじめに単位を取っている連中なら、もう四月までほとんど授業がないという状態が普通だ。
 何でもお祭りにしてしまう蒼天学園が、こんなイベントを放っておくはずがない。

「あっ!また焦げはじめてる!真ん中の方は溶けてもないのに!」
「下手くそ! 俺に貸せよ!」
 フライパンを取り合う。半液状のチョコが飛び散る。もう周りは無茶苦茶であった。
「だから言っただろ!素直に製品モノ買っておけって!」 
「せやかて、曹操が関さんに手作りの本命渡すって、わざわざ言いに来たんやで!これは挑戦や!」
「だったらせめて前日までに仕上げろ!」
 ギャアギャア言いながら、二人は次々と買い置きしていたチョコ材料(二〇〇〇円相当)を
フライパンへザラザラと流し込む。
 一瞬、チョコレートの芳香が漂い、数秒後には胸が悪くなるような脂の臭いが取って代わった。
「なんでや! あり得へん!」
「あるやないかい!」
 不毛な罵声を浴びせ合いながら、二人のドタバタはまだまだ続きそうだった……

25 名前:★ぐっこ:2002/02/14(木) 23:41
 ――その頃。
 当の関羽は、常山神社に居た。
 正確に言えば、逃げ込んでいた。もう、学園に彼女の居場所は無いのである。
「正直、今日ばかりは困った……」
 大鳥居の基石に呆然と腰掛け、関羽は呟いていた。
 杜は、相変わらずシンとしている。時刻は午前10時を回った頃で、穏やかな冬の朝だ。
 ――傍らでは、巫女服に身を包んだ趙雲がせっせと箒を動かしている。
「ふつう、女→女という発想はないよな…」
 と、関羽。彼女は生徒会に身を置いていた頃、あまりに目立ちすぎたのか、全校生徒から露骨な
「本命狙い」のターゲットにされているのだ。
 下駄箱を開けた瞬間、明らかに下駄箱の容積をオーバーしていると思われる量のチョコが、彼女の
足もと(※彼女の下駄箱は一番下段です)からあふれ出た。彼女の上履きはもはや見る影もない。
 そして、廊下の辻辻、階段の踊り場、あらゆる教室の入り口に、意を決した表情でチョコを抱いて
待ちかまえている少女達…。これが男なら本懐というべきだが、関羽のようなノリの少女にとって、
もはや地獄であった。
 …で、とにかく目立たないように学園を逃げ回り、なんとか常山神社へ逃げ込んだ、というところ
である。

「私はダメだ…ああいうのは」
 心底疲れているらしい関羽、ぐったりと鳥居にもたれかかった。
「はい、どうぞ」
 趙雲、いつのまにか厨から、盆に小綺麗な茶碗と茶菓子を乗せて持ってきている。茶碗をとると、
上品な香が立った。 
「ああ、ありがとう」
 趙雲も関羽の隣に腰掛けると、自分の茶碗を取り、ニッコリ微笑んだ。
「先輩はああいうのお嫌いでしょうけど、私は結構好きですよ」
「意外だな…」
「だって、今年はチョコをあげたい人がいるから…」
「何!?」
 関羽は心底びっくりした表情で、この常山流薙刀術の達人を見遣った。
 趙雲、べつだん悪びれる様子もなく、悪戯っぽく笑った。
「阿斗ちゃんですよ」
「ああ、なんだ…」
 露骨にホッとした顔で、関羽はお茶をすすった。趙雲の阿斗ちゃん好きは有名であった。
「阿斗ちゃん、甘いもの好きだから喜ぶだろうなー。もう昨日から作ってるんです。あ、もちろん
先輩の分も」
「わ、私は要らないよ…」
「そんなに身構えないでください。こっちが照れるじゃないですか」
 関羽の様子に苦笑する趙雲。ちょっと他では見られない状況であった。
「友チョコっていって、普通に女の子がチョコを交換してるんですよ。本命義理抜きで。それに…」
「それに?」
「もう、先輩、私のつくったチョコレートたべてます」
「あ…」
 出された茶菓子。和菓子風に甘餅に包まれていて気付かなかったが、確かにチョコの味が口に
残っている。
「これで先輩も仲間ですよ。このお祭りの」
「………」
 関羽が何か言おうと、口を開けたその瞬間――
「いた――っ >>関羽タン――っ! ハァハァ」
 黒い人だかりが、もの凄い勢いで石階段を駆け上がって来るのが見えた。

26 名前:★ぐっこ:2002/02/14(木) 23:42
 そのナゾの集団が趙雲の前を通過する頃には、関羽の姿はもうどこにも無かった。
「>>関羽タン――ッ! ハァハァ…!」
 口々に奇声を発しながら、彼女らは関羽の姿を求めて離合集散を繰り返し、それでもまとまった
集団を保ったまま常山神社の杜を去っていった。
「……何、あれ?」
 趙雲が知らないのも無理もないが、彼女らは「羽厨(ウチュウ)」と呼ばれる連中で、巨大匿名掲示板
「Gちゃんねる」に突如発生した、ナゾの暴走集団であった。ひたすら関羽を追いかけるらしい。
 さしあたって趙雲の身に危害は加えられなかったが、去り際にひとりが集団を抜け出して、
「巫女タン…ハァハァ」と呟くのをハッキリ耳にしてしまった彼女は、限りない不安に駆られたという。

「――チョコの要はココロやっ!そうやな、張飛!」
「いや、味だろ」
 重々しく呟く張飛の顔に、劉備は無言でチョコ生地をべしゃっと叩き込んだ。
「ええい、燕雀にはウチの志がわからん! とにかく、ハート形のが一個できたっ!…」
「このペースで行くと、予定個数つくるのにあと2週間かかるぜ」
 口のところだけ穴をあけて、チョコ生地を貼り付けたままの張飛が毒づいている。
「ああもう!日が暮れてまうやんか!関さんが帰ってきてまうやんか!」
「俺に言われてもなー」
「どないしよ、もう曹操が手ぇ出してるころやないか!」

 …劉備の想像は当たっていた。
 生徒会へ荊州校区の書類を提出にいった関羽は、曹操においしいお茶をごちそうになっていた。
「ね、おいしい?」
「はい…」
 曹操の無邪気な問いに、関羽は素直にうなずいた。実際、おいしいのだ。
 控えめな青を基調にしたチャイナボーンのセットに、高価な紅茶、曹操お手製のチョコ・ババロアが
乗せられている。
 それに、学園の制服の上からメイドが着るような白いエプロン(※萌えポイント)を付けて、
くるくるとお茶の用意をして回る曹操は、関羽が思わずぽーとなるほどに可憐であった。
 夕刻を過ぎている。冀州校区にある生徒会施設の中の、品のいいラウンジに、客は関羽と曹操の姿が
あるのみだった。
「――ところでさ、関羽」
 ふいに、曹操が関羽の向かいに腰掛けた。
「想像はついてるだろうけど、生徒会に戻るつもりはない?」
「……ありません。帰宅部連合は、貧乏所帯ですけど、楽しいところですから」
 ここに招かれたときから、こういう話になることは予想がついていた。が、曹操は食い下がる。
「あれだけの才能の集団が、学園から一銭も部費が出ないなんて、おかしいと思わない?」 
「会長が出してくださらないだけの話です」
 関羽が、なるべく失礼にならない程度に冷淡な答えを返すと、曹操はニッコリ微笑んだ。
「本当にそう思う?」
 黄昏の残照が逆光になって、曹操の顔はよく見えない。でも、その奥の双眸が、怪しいくらいに
鋭く輝いているのが、関羽には見てとれた。
「豊富な資金が有れば、帰宅部連合のみんなも、もっともっと、好きなこと、やりたいことが出来る。
もっともっと、才能が伸ばせる。そうだよね?」
「…………」
「そうしてあげた方が、帰宅部連合みんなのためだよね…?」
「……」
「簡単だよ。私がひとこと、出す、っていうだけで。……この意味わかるよね?」
 要するに関羽が生徒会に戻れば、帰宅部連合に部費を出す、という脅迫だった。
 大人しいが剛毅な関羽である。普通ならこの種の脅迫を受けるや、相手構わずはり倒している
ところだろう。
 が、その相手が悪い。静かに関羽の顔を覗き込んでいる曹操には、関羽の上体をテーブルに貼り付
けるだけの迫力がある。
 それに、曹操が言うことも一理ある。
 帰宅部連合と通称されるような集団だが、本来は一国一城も堅いほどの俊傑ぞろい。まともに部活
を続けていたら金メダルも軽いのではないか、というくらいの連中が、首領の劉備が反生徒会運動を
続けている、というだけの理由で流浪の集団になっている。
 劉備と、自分たちのわがままで…このまま彼女たちの未来の可能性を摘み取っていいのか…?
 …………。

27 名前:★ぐっこ:2002/02/14(木) 23:55

「ハイ、そこまでや」
 関羽が自分の中で答えを出すより一瞬早く、一つの声がラウンジの静寂を破った。
「……ち、もう来たの!」
 舌打ちしたのは曹操である。この瞬間、関羽の身体が不意に軽くなった。まるで不可視の緊縛が
外されたようであった。
「あのなあ、曹操はん。帰宅部連合は同好会やで。部費は必要ないし、生徒会の承認を得なかん事は
せえへん。みんながお気楽にやってる集まりや〜」
 ラウンジの中に入ってくる劉備は、飄飄としているが、曹操へ向けた視線を外しもしない。
 曹操も距離をとるようにジリジリとテーブル沿いに移動する。
「…外にいた娘たちは?」
「あんなん護衛にもならへんで、曹操はん」
 曹操は内心で舌打ちした。変な嫉視反感を避けるために側近連中を遠くへやっていたことが、今回は
裏目に出た。
 もっとも、仮に劉備と曹操が激突すれば、どう考えても曹操が勝つ。だが。ここには関羽がいる。
「…私はマスターキー(※玉璽)を持ってるんだよ。退学処分も出すことが出来るんだよっ…」
「やれるもんやったら、やってみるか……?」
 曹操の脅しを、劉備はあっさり無視する。
 と、睨み合いを続ける二人のまんなかに、関羽がすっと立ちふさがった。
「はい、そこまでです」
 来たときの劉備と同じセリフで、関羽は二人を分けた。顔に苦笑がうかんでいる。
「もうやめましょう。部長、それに会長。…」
 一瞬だけ睨み合うと、劉備も曹操も、体中から緊張を抜いた。
「そうだねー」
「せやな」
 ふう、と溜息をついてふたりは腰を下ろした。
「あ、せやせや、ふたりにチョコ持ってきてん。手作りやで」
 チョコ、と聞いて一瞬身構える関羽だが、曹操は嬉々として駆け寄った。
「え、どれどれ!?」
「はい、コレ」
 包み紙から、よく言って鹿せんべいクラスの外見をもつチョコを取り出し、曹操に手渡す劉備。
 曹操、薄っぺらく伸びたハート型(?)チョコを見て、
「あははははははははははははははははははははははははははは」
 と大笑いを始めた。
「なんや! チョコの要はココロやで!」
 さすがに嚇っとなって怒鳴る劉備に、曹操はちゃうちゃう、と手を振り、
「劉備ねえ。あんた、湯煎って知らないの?」
「へ……何?それ」
「湯煎っていうとねえ…ああ、今度説明するわよ、もう」
 まだおかしいのか腹を抱えている曹操。その横を通って、関羽は劉備の方へ手を伸ばした。
「……いただきます」
「おっ、貰ってくれるかー!
 劉備は、ちょっと照れたように関羽へチョコを手渡した。よくみると、
「本命・関羽へ 姐より」
 と書かれていた。関羽、苦笑すると、いただきますと言って、パリパリに焦げた薄っぺらいチョコ
を口にした。脂が抜けきったカカオの苦い香りと、焦げた香りが口の中に広がる。
 でも――
「どや、おいしいか?」
「はい、おいしいです」
 関羽は、心の底から、そう答える事ができたのだった。

28 名前:★ぐっこ:2002/02/14(木) 23:59
 

◆おまけ

趙雲「おいしい? 阿斗ちゃん」
劉禅「おいしーよー!」


張飛「……もう喰えねえよ…」


孫権「ボクたち何か出番ないよね…」
陸遜「じゃあチョコあげます」
孫権「ありがとー」

29 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 00:07
◆追撃。

魏延「先輩、劉備せんぱーい! クソッ、どこ行ったんだよ!
   …そうか、またあのメガネ○○の仕業だな…」

30 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 04:02
 
 ◆あの姉にして…◆

 生徒会幹部の懇談会。
 …ぶっちゃけた話、お茶菓子摘みながらダベってるだけではあるが。
 そんな席の一コマ。


 司馬師がふと、同席した鍾毓に軽口を叩いた。

「ねえ、稚叔。皐“ヨウ”はどんな人物だったかしら?」

 その言葉に、陳泰、武ガイ(武周の妹)がクスクスと忍び笑いを漏らす。
 皐ヨウとは学園伝説の名会長・舜の補佐役で、校則や罰則を司った人物である。
 その実司馬昭は、鍾毓の姉にして生徒会の功労者、
 鍾ヨウと同名なのをダシにからかっているのである。

「……………」

 鍾毓は一瞬悔しそうな表情を浮かべたが、
 何事もなかったかのように司馬師を見遣る。
 少々予想外の反応に躊躇う彼女に、鍾毓は涼しい顔で言い切った。

「そうですね… いにしえの“懿(よ)き”人物ですわ」

 切り替えされてたじろぐ司馬師を後目に、陳泰、武ガイへと向き直る。
 既に気まずそうな表情を浮かべている二人ににっこりと微笑んで…

「君子は“周”して比せず、“羣”して党せず、ってとこかしらね?」

 −君子は真心を尽くし(周)ておもねりへつらう(比)ことなく、
  集まって(羣)も私心を以て助け合う(党)ことはしない− 

 この当意即妙の受け答えに、司馬昭らは声もなかった。
 鍾毓の機転が利くことはこのようだった。

31 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 04:06

 ◆この妹あり…◆

 今日も今日とて学園の朝は始まる。
 司馬昭は陳騫、陳泰らと寮の廊下を歩いていた。
 そこへちょうど通りかかったのが鍾会の部屋である。
 司馬昭は廊下からドア越しに呼びかけた。

「ねえ、士季、いるんでしょ? 一緒に行きましょうよ」
「は、はーい、今行きます!」

 実は、鍾会はまだ着替え中だった。
 年齢に比して少々(かなり)発育過剰気味の体
 −潁川鍾家の遺伝である−をもてあましつつ、
 何とか身支度を整えると廊下に飛び出す。

「ごめんなさい、遅れました…って、ああっ!」

 そこには誰もいやしない。
 実は司馬昭、鍾会を呼ぶだけ呼んでおいて、
 置いてきぼりにして先に行ってしまったのだ。
 鍾会はすぐさま駆け出すと、ひとっ走りして一行にようやく追いついた。
 両手を膝についてハアハアと息を整えている彼女に、
 司馬昭は意地悪く尋ねる。

「あら、やっと追いついたのね。
 行こうって言っておいて、なんてグズなのかしら?
 私達待ってたのに、“遙遙”として全然来なかったじゃないの」

 言うまでもなく、“遙遙”は鍾会の姉、鍾ヨウの名に引っかけた言葉である。
 だが、鍾会はニヤニヤしている陳騫、陳泰らをキッと見据えると言い放った。

「矯(たか)くすぐれて懿(うるわ)しく実(まこと=寔)ある人は、
 どうして羣(むれ)をなして行く必要があるのかしら?」

 一同、これには返す言葉もなかったという。

 そうこうして校舎へと向かう道すがら、司馬昭がまた尋ねた。

「皐“ヨウ”さんってどういう人だったか、あなた知ってる?」

 鍾会、済ました顔で答えて曰く、

「上は堯、舜には及ばないし、下は周公、孔子には及ばないけど…
 まあ一代の“懿(よ)き”人物、ってとこでしょうかね?」

 この少女、頭が切れるのは結構な事ながら、少々根に持つタイプのようで。
 のちのち足下をすくわれなければ良いのだが…

32 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 04:08
むー… 世説新語のネタをそのままパクってきたんですが、
面白くないですな。原文のテンポが生きてないし。
漢字がちゃんと当てられないと意味も伝わりにくいし。
失敗の巻♪

33 名前:岡本:2002/02/15(金) 09:40
ちらっと、顔を出します。岡本です。
久しぶりに伺いますと、更新、更新また更新と、
1つ1つ拝見できないのが残念なくらい。
玉川様、文章、プチ絵と大活躍!!!
上のネタは、結構好きですが。

34 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 22:54
 ◆まじかる☆イリュージョン◆

  番外編・仲達の愛犬万歳!


 さて、司馬懿には春華という愛犬(土佐犬)がいた。
 その出自は、山濤の実家からもらわれてきたものだという。
 どういうわけか司馬懿に「だけ」はよく懐いており、
 かつて司馬懿が曹操のスカウトに対して仮病を決め込んでいたとき、
それをチクろうとした生徒に噛みついたという伝説すらある。


 だが、その反面他人にはとことん愛想が悪かった。
 司馬懿の超然とした態度とも相まって、飼い主に似たのだという声が囁かれていた。

 そしてまたこの春華は贅沢なことに軟らかく煮た鶏の肉しか食べないというのである。
 噂では、生徒会特別顧問たるあの司馬懿が門限間際に寮を飛び出し、
近所の深夜営業のスーパーに駆け込むこともしばしばだという。



「フン、同じ“イヌ”同士、気が合うってことでしょ?」

 曹爽は小馬鹿にした様子でそう語ったという。
 生徒会という「主」に(少なくとも表面的は)忠実ではあるが面白みもなく、
煙たい存在である司馬懿を揶揄したのである。
 だが、それを伝え聞いた司馬懿は相変わらず動じた風もなく、

「どちらが狗かは、いずれ分かること…」

 と呟いただけであった。


 そして、司馬懿はまさしく狗の皮を被った狼だった。
 生徒会を掌握して奢る曹爽一派にクーデターを起こすと役職の返上を勧告したのである。
 この時、桓範は曹爽を諫めた。曰く、
 ここで弱みを見せれば、必ず司馬懿は容赦ない処断を下すはずだ。
 職務権限を発動して、司馬懿を打倒するべきである、と。

 しかし、曹爽はその言葉には従わなかった。
 おとなしく引退して生徒会OBとして残りの学園生活を送れるのならそれで構わない、と言うのである。
 桓範は天を仰ぐと悔し涙に暮れた。

「ああ、曹子丹は立派な人だったけど… その妹たちは、豚や犬にも及ばないのね!
 こんな奴に連座することになろうとは、夢にも思わなかったわ…」

 かくして、曹爽一派はことごとく階級章を剥奪された。
 司馬懿は曹爽に替わって生徒会長の地位を提示されたが、固く辞去したという。
 これを本心と見るか、パフォーマンスと見るかは意見の分かれるところだろう。
 だが、少なくとも彼女はやがて訪れる妹達の時代へと続く、強固なレールを敷いたのである。

 その心の内を余人が推し量るのは至難の業ではあったが、
 司馬懿は今日も今日とて春華のために鶏肉を煮るのだった。

35 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 23:02
いかん、読み切りっちゃあ読み切りだけど、
シリーズ化してはる…

ああ、勝手ながら、司馬懿は生徒会長にはなってないことに
しちゃいました。史実でも、丞相にはならなかったらしいので…
太傅ってことで、生徒会特別顧問あたりが妥当かな、と。

ところで、正史註の魏氏春秋だと桓範は曹爽のことを「子牛」
呼ばわりしてますが、演義だと「豚や犬にも劣る」と言っているらしいですね。
どこかで、ボンレス曹真ちゃんが紛れ込んだんでしょうか(^_^;)

36 名前:玉川雄一:2002/02/15(金) 23:05
あー、「OB」じゃねえ、「OG」だ!

37 名前:★ぐっこ:2002/02/15(金) 23:50
うを!? 玉様がこちらにも!?
うーむ、晋前後の話となると玉様の独壇場ですが、鍾姉妹…
発育過剰!? 着替えに手間取る!?(;´Д`)ハァハァ…
それはさておき、諱をつかった言葉遊びみたいなやりとり。
新語からですか〜。司馬姉妹もワンパターンというか…陳泰が腰巾着!?

>司馬懿
なんかどこかの国の軍務尚書が混ざってるような…(^_^;
彼女は生徒会長に就かなかった、と。なるほど〜、じゃあ、評議長くらいで。

38 名前:japan:2002/02/16(土) 18:01
出た! バレンタインネタ(笑)
女子高って、本当にこういう感じのノリらしいですね。
曹操ちゃんのベルジャン生チョコ使用(←推定)ババロア&フリフリエプロンよりも、姐者のこげちょこを選ぶか、関羽…まさに忠義の鑑ですな。

39 名前:japan:2002/02/16(土) 18:05
腰巾着ってゆうな〜っっ! せめてパシリと…(泣)
いや、でもこのストーリー大好きですv
何故司馬ブラザーズや陳騫ちゃんはパパの諱だけなのに、
陳泰だけはパパとひいじいちゃんまでネタにされたのか?
士季たんに小一時間(以下略)

40 名前:japan:2002/02/16(土) 18:06
<聖帝と小四姫>


「元常、ちょっといい?」

 放課後、いつものように生徒会室で事務を取っていた鍾ヨウの前にふらりと現れたのは、
生徒会の二代目会長――曹丕だった。

「あなたの妹達は学園の有名人らしいじゃない。
 一度会ってみたいから、高等部に連れてきてくれないかな?」

 一応依頼の形式をとってはいるが、あからさまな命令口調。
 鍾ヨウに拒否できよう筈がない。
 戸惑いながらも彼女が頷くと、曹丕は姉譲りの鋭い目をきらりと光らせ、
「頼んだわよ。」と念を押した。

(…まさか、ね)

 最近、学内の巨大掲示板に出没している「聖帝」なる大仰なコテハンの正体は――
 以前から薄々抱いていた疑惑を、鍾ヨウは強く頭を振って消し去った。




 数日後。
 妹達を小等部へと迎えに行った鍾ヨウを、生徒会の面々は今や遅しと待ち構えていた。

「子通は見た事あるんだよね、噂のダイナマイト小学生。」
 デジカメのメモリーカードを念入りにチェックしながら、曹洪が蒋済に尋ねる。
 
「うん。会報に『瞳を見れば将来が判る!?』って占いの記事を載せたら、
 元常さんが妹を占って欲しいって連れてきたの。」

「どうだった? 可愛かった? も、萌えだった?」
 突然二人の会話に割り入る孟達。驚いて振り返った蒋済は、
「う、う〜ん…まぁ、並外れた子だったかな。いろんな意味で。」とだけ答えた。

「よく判らない説明だなぁ。もっとこう、具体的に…」
「しっ! 来たよ!」

41 名前:japan:2002/02/16(土) 18:08
<聖帝と小四姫・その2>


 少女達が鵜の目鷹の目で見守る中、小等部の制服に身を包んだ鍾毓・鍾会の姉妹は
姉に率いられて生徒会室へと入ってきた。
 早熟なこの家系の出身に相応しく、二人とも出るべきところは出て、
引っ込むべきところは引っ込むという見事なプロポーションである。
 特に末子の鍾会は白いセーラー服の丈をぎりぎりまで詰めている為、歩くたびに
夏服の裾や袖の隙間から素肌がちらりと覗き、同性でも目のやり場に困ってしまうような
有様だった。


(くっ、負けたわ…)
(で、でかっ! 何食えばあんなに育つ訳!?)
(あんなに肌を露出するなんて、はしたないわ。そもそも制服の改造は校則違反なのに…)
(きょ、巨乳小学生…(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ)


 様々な思惑が闇鍋の如く渦巻き、生徒会室は女子高にあるまじき異様な雰囲気に
包まれた。
 沢山の視線に囲まれた鍾毓は、居心地悪そうに冷や汗を流している。
 一方、鍾会は嫉妬と羨望と萌えの交じり合った空気にもけろりとしていた。


「会長、こちらが妹の鍾毓と鍾会です。」
 何だかんだいって妹馬鹿な鍾ヨウが、誇らしげに二人を紹介する。

 生徒会長の肘付き椅子に座した曹丕は、鷹揚に頷いて語り掛けた。
「初めまして。…ところで、どうしてそんなに汗をかいているの、鍾毓ちゃん?」

 緊張に汗びっしょりになっていた鍾毓はしゃちほこばって答えた。
「『戦々惶々として、汗出(いず)ること漿の如し』です。」

「それなら、何故鍾会ちゃんは汗一つかかないのかしら?」
「『戦々慄々として、汗敢えて出でず』ですわ、会長。」
 こちらは平然とした顔で言葉を返す。

 詩経からの引用をもじった、当意即妙な問答。
 小学生の身にしてこれ程までとは――曹丕は一瞬、驚きのあまり目を見張った。
 しかし、元よりこの種の言葉遊びを好むが故に「文サマ」と称される彼女は、
すぐに満足そうな微笑を浮かべる。

「…気に入ったわ…二人とも。」


 栴檀は双葉より芳し。
 後に「魏の最終兵器」として学園中に勇名(悪名?)を轟かす鍾会は、
齢十にしてかくのごとく並外れた少女であったという――いろんな意味で。

42 名前:japan:2002/02/16(土) 18:14
玉川様に続けーっ!
ということで、元ネタは『世説新語』言語編11&G−ちゃん(汗)より。

…しかし、まさか曹丕があんな芳ばしいコテハンになるとは思いませんでした。
G−ちゃんで集めたネタを編集して、文学史上初の志怪小説「列異伝」を
著したりするのでしょうか。

43 名前:玉川雄一:2002/02/16(土) 19:37
おお、冷汗ネタですね!? 聖帝(サ○ザー?)頑張る!
…なんだか、彼女の「…気に入ったわ…二人とも。」
が違う意味(って何さ)に聞こえてしまふ(>_<)
ビバ・潁川鍾氏!

44 名前:★ぐっこ:2002/02/17(日) 01:15
うひょー!japan様感謝!
>(きょ、巨乳小学生…(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ(´Д`;)ハァハァ)
ひたすらに笑いました…Gちゃんねる恐るべし…。
しかし小四姫たん、大活躍! 新語も大活躍! ネタの宝庫ですモノね…。
厳密に言えば、すでに鍾会たちは高校生なんでしょうけど、いっさい問題なし!
小四姫たん…。

45 名前:takayuki:2002/02/26(火) 17:36
                                  /      /
                          _,,-'~''^'-^゙-、/       /
                          ノ:::::::::::::::::::::::::::゙-_ ∧ ∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     _   i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::i(´Д`)<  巫女タンハァハァ・・・             
                   / /|  i:::::::::::::::::::;;;;;;::::__,,-''~i、 /   \_______    ∧_∧
                  / //   ゞ:::::::::::::::::::::::|.レ/:::::::i                   (´∀` )   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                / //   /ヾ_:::::::::::_,,-''ソ/::::::::::;/                   (つ趙,ノつ< コワイヨー
               / //   /   ゙-、_::: i;;;;//::::::::,-'~                   / ゝ 〉    \_______
                | ̄|/   /       ゙ヽy /_,,-''~                    (_(__)
             | ̄| ̄|  ̄   / | ̄| ̄|  /|i:|                                                               
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |  |    / ∧|  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             |  |  |    /∧∧|  | [常山神社]
         .ゾロゾロ |  |  ∧∩(´Д.|  |  
             |  |  |∧∧`)=| | |  |
             |  |∩(´Д`)  .| | |  |
 ______|_∧ ∧ _⊃_/∧..|_|____________________________________
          ∧ ∧´Д`)  ∪
         (;´Д`)ハァハァ∩
      ‐=≡ /  ∧ ∧─
   ‐=≡ / ̄  (;´Д`)ハァハァ
    ‐=≡ _____/ /_‐=≡ ∧ ∧       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ‐=≡  / .__   ゛ \_∩(;´Д`)ハァハァ <>>関羽たーん!チョコ貰って!
 ‐=≡  / // / 羽  /_____/ /_       \________
‐=≡  ⊂_// / 厨  // .__   ゛ \   .∩
  ‐=≡   | /    // /  / 羽  /\ \//
   ‐=≡  \|  _⊂_/  / 厨  /  .\_/
    ‐=≡ / \__ \ /    /
      ‐=≡ /‐=≡ / |  _|__
     ‐=≡  //‐=≡  \__ \
    ‐=≡ / | / ‐=≡ / / /
    ‐=≡ / /レ ‐=≡ // /
  ‐=≡ (   ̄) ‐=≡ / | /
        ̄ ̄ ‐=≡ / /レ                 (((羽)))
          ‐=≡ (   ̄)                 (;´Д`)  キモイヨー
                ̄ ̄                  / つ_つ
                                   人  Y
                                   し'(_)


関羽ターン!です。ケッコウ上出来・・・かな?
ASCII Art Editorで書きました。以上です。

・・・ズレてたら誰か治して(他力本願)

46 名前:takayuki:2002/02/26(火) 20:03
 曹操の涙 前編

曹操はもう二年を終えようとしていた。
官渡公園の戦いで袁紹を倒し、生徒会長になった曹操。
曹操は順風満帆だった。いつも笑っていた。
だが・・・
今日は違った。
今日の顔は悲しそうである。まるで幼馴染の友がしんだかのよう・・・
「郭嘉、元気でね・・・」
曹操は涙をこらえて言った。
郭嘉は曹操の参謀として活躍した。蒼天新聞の部費集めのため、競馬をしたこともあった・・・
「私は大丈夫です。会長もお元気で。」
郭嘉は言った。後ろには郭嘉の親がいた。
「郭嘉、ぜったい帰ってきてね・・・」
「もちろんです。会長。会長のために再び学校へ帰ってきます。」
郭嘉は静かに言った。
「郭嘉・・・ぜったいに・・・ぜったいにだよっ・・・」
「わかっています・・・会長。もう行かないと・・・」
郭嘉は後ろを向いた。車が用意してある。郭嘉と親は車に乗り込んだ。
「郭嘉、本当に元気でね・・・」
「わかっています。会長。心配なく。会長もお元気で。」
郭嘉の乗った車は校門を出て・・・遼東の方へ向かった。
「郭嘉ーーーーーー元気でねーーーーーーーー!!!」
曹操はできる限り手を振った。しかし、車はどんどん小さくなり・・・とうとう消えてしまった。
「郭嘉・・・あっ!!」
曹操は自分が手にしているものを忘れていた。郭嘉にプレゼントしようとしていた、あるものだった。
「どうしよう・・・そうだ!!淵!!淵!!・・・ああ、もう!」
すると後ろから夏侯淵がバイクに乗ってやってきた。
「淵!!ちょうどいい・・・あのね・・・」
「曹操、わかってるって。乗りな。飛ばすよ!!!」
夏侯淵は走り屋として有名だった。案の定、時速百数十キロで走り出した。

続く

47 名前:takayuki:2002/02/26(火) 20:05
 曹操の涙 後編

「早く!!早くっ!!」
「わかっている!曹操!!」
少し先に車が見えてきた。
「淵、もうすこし!!」
「わかってる・・・いくわよッ!!!」
やっと追いついた。さすが走り屋夏侯淵。車は止まり、郭嘉が降りてきた。
「郭嘉、これ!!」
曹操はてに持っていたあるものを手渡した。
「ありがとうございます。会長。最後にこれだけ言わせてください。公孫姉妹はかならず降参してきます。無駄に攻めないようにしてください。」
「わかった。郭嘉。言うとおりにするよっ!」
「会長、行かせてもらいますよ。」
「郭嘉・・・ほんとうに元気でね。」
曹操は言った。
「郭嘉・・・もどってこいよ。」
夏侯淵も言う。
「夏侯淵先輩も会長もありがとうございます。かならず戻ってきますから。」
ふたたび郭嘉は車に乗る。そして・・・車は走り出した。
「郭嘉ーーーー絶対帰ってきてねーーーーー!!!!」
車は再び進みだした。曹操も夏侯淵も手を振っていた。郭嘉も手を振る。そして・・・車は消えた。
「淵、かえろ。まだ仕事がのこってるわよ。」
「帰りも飛ばすぜ!!」

数ヵ月後・・・

曹操は赤壁島の戦いで敗北した。
悲しむ曹操にもっと悲しい知らせが入ってきた。
「郭嘉死亡」
の知らせの手紙だった。
「えっ・・・郭嘉が・・・」
曹操は気絶した。
数分後、曹操は気を取り戻した。
「ああ、哀れや郭嘉、痛ましや郭嘉、口惜しや郭嘉・・・グスン・・・郭嘉がいれば・・・こんな無駄な戦いはしなかったわよね・・・」
曹操は泣き出した。そしてみなが・・・泣き出した。
この知らせは各地に届いた。かつて郭嘉を厳しく取り締まっていた陳羣も、曹操のためにバイクを走らせた夏侯淵も、曹操の元に推薦した荀揩爭・・
そして手紙には写真が同封してあった。
郭嘉が死ぬ前の写真・・・それには曹操が郭嘉にプレゼントしたあるもの・・・曹操が自分で作ったぬいぐるみがあった。
「郭嘉・・・」
曹操は再び泣き出した。

----------------------------

・・・なんかおかしいところがあれば変えてください。
今回は悲しいお話ですね。

ではでは〜

48 名前:★ぐっこ:2002/02/26(火) 23:52
おお〜! サリゲに郭嘉のお話が!
とうとうですか〜。(T-T)
曹操との別れ…それが永遠のものになろうとは…。
夏侯淵もいい味です!
嗚呼郭嘉さえ居てくれれば…

49 名前:★ぐっこ:2002/02/26(火) 23:54
おっとお、そういえばナニゲにAAが…(^-^; これいいなあ…
趙雲萌え。

50 名前:ジーク:2002/03/02(土) 20:57
(T_T)…最後の『ぬいぐるみ』がいい味だしてます。
宿敵陳羣よ、貴方は何を思うのだろうか…。
はっ…やばい。期末テスト前にもカカワラズ書きたくなってしまった! ヤバイですよ!

51 名前:ジーク:2002/03/02(土) 20:58
■ 晩夏の黄昏- 陳羣の涙 - ■

蒸し暑い夏休みの夕暮れ。とある校舎の一室。夕陽の差し込む薄暗い一室に、一人の少女が佇んでいた。電灯をつけるでもなく、ただ書類で埋まる机の前にぼんやりとすわっている。

「……どうして。」
机中央の僅かなスペースには、一通の手紙と、ダンボール箱に入った赤ボールペンとMDプレイヤー及び…恐らく数ヶ月前の物であろう、くしゃくしゃになった競馬新聞があった。
『……派に病と闘い、あの子らしい最期を遂げました……』
…既に幾度も読み返したこの文面。だが、震える手と溢れる涙で思うように読み進める事が出来ない。
『……学校の者には伝えないで、とあの子は言っていましたが、やはり仲の良い方々に……』
少女は震える手つきで、何とかその手紙を綺麗に折り畳むと、机に突っ伏し、押さえ切れなくなった想いを溢れさせた―。
その脳裏によぎるのは、喧嘩ばかりしていたあの取り戻せぬ日々か、或いはいつかの思い出か―。

……陳羣の座る机にのっているMDプレイヤーその他2点は、病気療養のため学園を中途退学した郭嘉の物だった。この間の十月、新聞部の予算調達の為、部費を賭けて競馬をしていた郭嘉から風紀委員会の権限により取り上げた物である。荀揩フ諭しにより己の間違いに気付いた陳羣は、それを返すつもりでいたのだが…。運命とは因果なもの、その後どういう神の悪戯か陳羣と郭嘉は文字通り擦れ違いを繰り返し、郭嘉が病気療養で学園を中途退学するまで一度たりとも会う事は出来なかったのだ。
そして、郭嘉が中退すると聞いた時も、陳羣はすぐさまその場所に向かって走り出したのだが、MDプレイヤーを持ってくるのを忘れたのに気が付き、取りに戻った。そして、風紀委員としての役目を全く無視し、全速力で校内を駆け巡り、目的地にたどり着いたのだが、その時には既に郭嘉の姿は無かったのである。
「そんな…。」
MDプレイヤーを持って呆然と立ちつくす陳羣に曹操は言った。
「きっと、きっと奉孝は戻ってくるから。戻って…来る。必ず。ね?」

―手紙が届いたのは今日の放課後。風紀委員会の部屋に閉じこもって、こっそり郭嘉宛の小包を送ろうとしていた時だ。送る中身は勿論件のMDプレイヤーその他2点。長文の名に相応しく、恐ろしいまでの分量の手紙を添えて。手紙の末尾には、郭嘉に言おう言おうと思っていて結局言う事の出来なかったあの一言、
――次回からは、ちゃんと私に断ってから競馬を聴きにいくこと!
との文面。この一言に全ての思いを込め、郵便局に出しに行こうと思っていた矢先の事だった。
送り主の名前を見て、陳羣は全てを悟った。
思わず天を振り仰ぎ、神を呪った。我が身の運命を呪った。最後の最後まで打つ手が手遅れになった己の不甲斐なさを、郭嘉を容赦なく襲った死神を、全てを―。


…ふと、陳羣は目を覚ました。知らぬ間に眠っていたようだ。日も沈んで辺りは既に闇に包まれている。が、部屋の中は明るい。何故か電灯がついているからだ。
つけた覚えは無いのに―と入り口の方を振り返る陳羣。と、そこにいた人影は―。
―奉孝!? …と一瞬思ったのは目の錯覚か、そこにいたのは悲しげに微笑む荀揩セった。
「先輩…。」
「…郭嘉…残念でしたね……。」
「……あ、あんな……あんなやつ……」
「……そのMDプレイヤー、形見になってしまったわね…。」
「…あ……。」
陳羣はダンボールの中からゆっくりMDプレイヤーを取り出した。知らずラジオのスイッチを入れる。無機質なニュースの音声。ラジオ特有のノイズ。脳裏に走馬灯の如く鮮やかに蘇る郭嘉との思い出。
最早彼女の想いをせき止め得る物など無かった―。

郭嘉奉孝、八月二十一日逝去。病名ALS。享年十六歳―。

- 了 -

52 名前:ジーク:2002/03/02(土) 20:59
…はい、と言う訳で一気に書き終えました(;^^A
期末が…別に勉強しないけど(爆)
途中で切れるかどうかドキドキしながら書き込みました(笑)
japan様、勝手に台詞流用しましてすんません。
勝手に郭嘉の命日設定してすんません。夏休みで赤壁後なんでこれくらいかなぁ…と。

53 名前:チュパキャブラ:2002/03/02(土) 21:29
ジュンユウ混乱す









天気は本日も晴天、気温も暖かくかつ暑くもない。

日向ぼっこをするのにはこの上ない天気であろう。

といってるそばから身を寄せ合って昼寝をしているのが二匹、

いわずと知れたカコウエンの飼っているチンチラシルバーのユキちゃんとフクちゃんだ。

その様子をみて思わず頬がほころんでいるのがふたり、

飼い主であるカコウエンと曹操陣営の参謀の一人でもあるジュンユウだった。



エン「いつみてもかわいいなぁ〜」



ユウ「ホントですね〜」



机にはまだ白紙の化学の課題があるのだがそっちのけで昼寝している二匹の猫を観察している。



ユウ「・・・・・・」



エン「しかしホントかわいいなぁ〜・・・・ってどうした?ジュンユウ。」



ユウ「いや、こっちがフクちゃんだっけ?」



エン「いや、小さい方がフクちゃんだ。そっちは大きい方だからユキちゃん。」



ユウ「え・・・とこっちがユキ・・・フクちゃん。」



エン「?」



ユウ「小さい方がユキちゃん」



エン「小さい方はフクちゃんだってば」



ユウ「いやわかってますよ?わかってますよ?」



陽気な春の午後でした。

54 名前:チュパキャブラ:2002/03/02(土) 21:32
香香様の書いた「張飛猫を拾う」の話みてたら思いつきました。
とりあえずジュンユウはカコウエンに「課題手伝って」と呼ばれてきているとゆう設定
なんですがどうでしょうか?

55 名前:★ぐっこ:2002/03/02(土) 23:31
 >ジーク様
おおお! 郭嘉話の後日談ですか! それも陳羣の…。
やっぱりじーんときますね…。あの二人、ライバルと言うよりじゃれあう
血統書尽き猫と雑種猫みたいな関係だったみたいですから…。
一足違いで届けられなかった、MDプレイヤーとあの一言。本当に一足違いで…

 >チュパキャブラ様
ええと、あずまがネタですか? あの、こちらではちょっと…
それと、できれば漢字で入力していただければ有り難いんですが〜。
コピペして辞書登録すれば簡単なはずです。

56 名前:三国狗:2002/03/03(日) 14:39
学三がお笑い専門じゃないコトにやっと気付きました。
何かしみじみとした話ですね・・・・。

57 名前:チュパキャブラ:2002/03/05(火) 23:58
承知しました。ではコピペで辞書登録しますね。
それでは以後気をつけます。

58 名前:japan:2002/03/07(木) 21:57
郭嘉の臨終SSが二編も…(涙)
本当の三国志では無念の最期を迎えた少女達も、皆「学三」ではその後の人生を謳歌しているというのに
何故彼女ばかりが悲しい宿命を繰り返さなければならないのかと思うと切ないです。

>ジーク様
「黄昏の涙」を読んでいて泣きそうになりました。
出せなかった手紙、伝えられなかった言葉――この二人を象徴するような物語だと思います。
こんな感動的な話に拙作の台詞を引用していただき、本当にありがとうございました。

59 名前:玉川雄一:2002/03/18(月) 22:57
 ◆ 学園世説新語 第3話・前編 ◆

顧栄、字を彦先。長湖部の裏方を支えたかの無口っ娘丞相・顧雍の従妹である。
一家揃って長湖部の重鎮を務めてきたが、彼女が1年生の時に部は解散してしまう。
以後、新生徒会に入り、洛陽棟へと移ったのだった。


顧栄はあるとき、生徒会の定例会議に出席した。
そこでは、生徒会費の幾ばくかを投じて“おやつ”が出るのであるが…
彼女の元へ、雑務担当の女生徒が皿に山と盛られたそれを差し出してきた。

「あの… よかったら、どうぞ」
「あ、ありがと。 えっと…それじゃこれを」

お年頃の女子が揃うだけあり、コンビニをくまなく調べ尽くしたとおぼしきラインナップ。
顧栄はその中から、しかし場違いとすら言える「ビーフジャーキー」を選んだのだった。

「そ、それでいいんですか?」

軽く驚いた表情で女生徒が尋ねる。そもそもこんなおつまみが闖入していたというのも妙な話だが、
それをめざとく見つけてチビチビと囓る顧栄も変わり者と言えば変わり者に見えてしまう。
だが、当の本人はどこ吹く風といった様子で答えるのだった。

「んー? おいしいじゃない、コレ? ウチは一家揃って好きなのよね。従姉さんなんかと、よく食べたのよ」
「はあ、そうなんですか…」

女生徒はやっぱりピンとこないらしく、モグモグしている顧栄を不思議そうに見遣る。
それに気付くと、顧栄は皿をゴソゴソと漁り、数切れのビーフジャーキーを掴むと女生徒に差し出すのだった。

「ほい、貴女もどう?」
「え、わ、私ですか? でも私、ただの雑用だし…」
「いいっていいって! 遠慮しないでいいからさ、ホラ」

女生徒は正規の出席者でないことを理由に遠慮しているらしい。顧栄は笑ってそれを押しつける。
キョトンとしながらも、なし崩しに受け取ってしまう彼女。
そして、ちょっとバツの悪そうな顔をすると、端っこをちょっと囓ってみた。

「あ… おいしい、かも」
「でしょ? まあモノによって差があるけどねえ、これはまあ合格かな」

遠慮しいしいモグモグやっていた女生徒は、コクンと飲み込むとペコリと頭を下げた。

「ありがとうございました」
「いやまあ、そんな礼を言われるほどじゃあないけどね」

女生徒はもう一度頭を下げると、他の出席者の元へ皿を回してゆくのだった。

60 名前:玉川雄一:2002/03/18(月) 23:04
そんな生徒会も、やがて未曾有の大混乱にみまわれる。蒼天会の内紛は拡大し、学園の威光は地に墜ちた。
ついには、今となってはあの伝説の名マジシャン司馬懿に最も近い血族でもある司馬倫が蒼天会長の座を強奪。
しかし程なくして、他の司馬一族が結束して司馬倫を追い落とすというめまぐるしい展開が繰り広げられるのだった。

顧栄はといえば、司馬倫が束の間の至尊の地位を占めた際、強制的に彼女の一派に組み込まれていた。
そのため、司馬倫失脚後に連座してしまったのである。
生徒会の一室には同じ運命の十数人ほどが集められ、もはや階級章の剥奪は時間の問題となっていた…


「すみません、執行部員の顧栄さんはどちらでしょうか?」
「あ、ああ… 私だけど?」

沈みきった雰囲気の部屋の中に一人の女生徒が入って来ると顧栄の名を呼んだ。
憔悴しきった表情で顧栄が答えると、起立を促して手を取る。

「一人ずつ順番に査問を行うとのことです。最初は貴女ということですので、同行をお願いします」
「そうなの。まあ、今更言うこともないけどねえ… じゃあ、行くとしますか」

手を引かれたまま、部屋を後にする。しばらく歩いたところで、女生徒が顔を寄せると耳元でささやいた。

「顧栄さん、こちらです。見つからない内に、早く」
「えっ!?」

驚く顧栄をよそに、手を握って走り出した。様子がおかしいと思いつつ、自分に敵対するでもない風を感じ取ると、
女生徒の導くに任せて後を追う。しばらく走り、人目から離れたところでようやく立ち止まった。

「ふう、ふう、はあ… ここまで来れば大丈夫ですね。ギリギリでした」
「はあ、はあ… 何で、私を? 助けてくれたんだよね?」

息を整え、顧栄は状況を整理した。今にも階級章を剥奪される寸前だったところを、この女生徒のお陰で脱出できたのだ。
行方をくらましたことが発覚すれば追っ手が放たれるかもしれないが、ひとまずの危機は乗り越えたといっても良さそうだった。

「ええ。貴女には以前、お世話になりましたから」

ここでようやく、相手が誰かをじっくり確認することができた。この声、そしてこの顔は…

「まさか、貴女は… あの時の!?」
「はい。私のこと、雑用だってバカにしないで、お裾分けまでして頂いて… いつか、ご恩をお返ししようと思っていたんです」

救いの主は、いつぞやの会議でビーフジャーキーを分けてあげた女生徒だったのだ。
顧栄は感謝の気持ちであふれる涙を抑えながら、女生徒の手を取って押し抱いた。

「ああ、ありがとう… 些細なことがきっかけでも、こうして忘れずにいてくれるなんて… 一宿一飯の恩とは、昔の人もよく言ったものだわ」
「そんな、私は貴女の心遣いが嬉しかったんです。いつか絶対にお役に立ちたい、って思い続けてました」
「そうだったんだ。今度は、私がいつかお返ししないとね」
「どういたしまして。 …でも今は、ここから逃げ切ることが先決です。急ぎましょう」

感謝の念は尽きないが、それはいずれまたゆっくりと味わえばよい。今はただ、身の安全を確保することが第一だった。

「そうね… それじゃあ、久々に帰るか、懐かしい湖南へ… よかったら、一緒に行きましょう」
「はい!」



顧栄と女生徒は、何とか揚州校区へとたどり着いた。道中様々な苦労はあったが、二人は力を合わせて困難をくぐり抜けたのである。
この後も顧栄は数々の動乱をくぐりぬけ、『東晋ハイスクール』設立当初の重鎮に名を連ねることになった。
その傍らには、常にかの女生徒の姿があったという。

この件に関しては、顧栄も従姉にならってか多くを語ろうとはしなかった。
彼女を影で支えた少女の名は、今となっては確かめる術もない…

61 名前:玉川雄一:2002/03/18(月) 23:10
おっ、今回は省略されずに済んだか。
『世説新語』徳行編第25番目のエピソードでした。
といっても、ディテールは註に引かれた『文士伝』から採りました。
こっちの方が話が細かい。

ちなみに、何でビーフジャーキーやねん!っつうのは、
元ネタだと「炙(あぶり肉)」なんですね。
っつうかあぶり肉とビーフジャーキーが似てるかはよく知りませんが(^_^;)
これ書くときにポッキーとかでもいいかな、って思いましたが、敢えてそのままにしました。

ビーフジャーキーをみんなで食べてる顧姉妹萌え♪
ちょびっとずつ囓ってはもそもそ食べてる顧雍姉さん萌え♪

62 名前:玉川雄一:2002/03/18(月) 23:15
しかしコレ、時期的には東晋ハイスクールでしたわ。
そっちに書けば良かった。

63 名前:玉川雄一:2002/03/18(月) 23:24
いけね、>>60が第3話後編ってことで。
ちなみに第1話、第2話は、鍾毓、鍾会の名前ネタです。

64 名前:★ぐっこ:2002/03/20(水) 00:56
うを! 玉様マンセー! またあの新語ネタに追加せねば!
無口っ娘・顧雍の従妹!
ビーフジャーキーをもそもそ…(;^_^A
時期的には確かに東晋ですが…ほんとだ、どっちに分類すれば
いいんだろう。

65 名前:玉川雄一:2002/04/01(月) 00:08
 ◆ 学園世説新語・第4話 〜鍾姉妹のドキドキ☆メイクアップ大作戦!〜 ◆

 草木も眠る丑三つ時。っつぅ言い方は古くさいか。要するに、深夜。
良い子も悪い子も寝る時間、とりわけ女の子が夜更かししてちゃあいけない時間帯のこと。

 ここは蒼天学園学生寮。ゴソゴソという物音に、鍾ヨウは目を覚ました。
もとより、“あの”張遼が寝ずの警備をしているという事実無根の噂が立っているぐらいのことはあり、
誰かが忍び込む、ということは万に一つもありえない。となれば、物音の主は同室の人物に違いなかった。

「ねえ士季、やっぱりやめましょうよ」
「大丈夫だって。お姉ちゃんは心配性なんだから…」

(あら、二人してなにやってるのかしら?)

どうやら、ルームメイト、というか妹なのだが、鍾毓と鍾会が二人して何やらやらかしているようだ。
鍾ヨウは何とはなしに、声を掛けずに密かに見守ることにしてみた。気付かれないように体勢を変え、声のする方に注目する。

「えっと、確かここに…」
「ねえ、本当にあるの?」

鏡の前で、何かを探しているらしい。別に見つかって困るもの… は見つかるような所には置いていない(笑)のだが、
妹たちが何をしようとしているのかはまだ分からない。

「間違いないよ。朝、姉さんがここにしまうの見たもの。 …あ、あったあった!」
「ちょっと、声が大きいわよ! 姉さんが起きたらどうするのよ」

(…まあ、もう起きてるけどね)

鍾ヨウは心の中で苦笑する。ちなみに、鍾毓は姉妹の真ん中なので、鍾ヨウを「姉さん」と呼び、妹は「士季」と呼ぶ。
末妹の鍾会は、長姉の鍾ヨウを「姉さん」、次姉の鍾毓を「お姉ちゃん」と呼び分けていた。
ともあれ、二人は目当てのブツを発見したようだった。窓から差し込む月光のお陰で部屋の中はうっすらと明るくなっており、
目が慣れてきたこともあってその手にしているのが何であるかおぼろげながら分かるような…

「これこれ。新色なんだって。アタシも使ってみたい、って言ったら、
  姉さんたら『あなたにはまだ早すぎるわ』って言うのよ。失礼しちゃうわよね」
「まあ、確かにねえ… でもどんなのかなあ。私にも似合うかな」

(なるほど… ホントに、あの娘は目ざといんだから)

つまり、鍾ヨウのルージュを持ち出しているのだった。まったく大した姉妹である(笑)
いい意味で大人びて見える鍾ヨウには、ちょっと濃いめの色が何とも艶やかなイメージを与える。
美女揃いの姉妹の中でセンスの良さも卓越しており、嫌味にならないのがさすがというべきか。
二人の妹も負けず劣らずで、三者三様の美少女っぷりをいかんなく発揮していた。鍾会は別の意味で特に。
どちらかというと小悪魔系の彼女には少々おマセなぐらいではあったが、素質は十分なのである。

66 名前:玉川雄一:2002/04/01(月) 00:10
(続き)

「お姉ちゃん、コレ、使ってみようよ」
「ええっ! でも、いいのかな…」

まあ、持ち出したからにはそう来るとは十分予想できたが、やはり鍾会はただ者ではない。
躊躇う鍾毓に揺さぶりをかけていく。

「大丈夫! ちょこっとならバレやしないって!」
「う、うーん…」

(いや、もうバレてるけど)

鍾ヨウが一部始終を眺めているのも知らず、妹たちの謀議は続く。何やらヒソヒソと話し合っていたが、
どうやら鍾会が渋る姉を丸め込んだらしい。

「それじゃ、暗くちゃわかんないから電気点けよう」
「姉さん、起きたりしないかなあ…」
「ちょっとだから平気平気! それじゃはい、お姉ちゃん」
「え、私が先? しょうがないなあ…」

姉に先鋒を任せる辺り、無意識ではあろうが何か策士めいた物を感じさせる。ともあれ、鍾毓の方もまんざらではないようで、
妹からルージュを受け取ると、念のため部屋を見回してから明かりを付ける。鍾ヨウは薄目を開けた寝たフリでごまかした。
鍾毓はそこで、何故か鍾ヨウの方に向き直るとペコリと頭を下げ、「姉さん、ごめんなさい」と呟いた。

(?? あの娘、何のつもりだったのかしら)

そして鏡に向き直り、キャップを外して数回ひねると色合いを確かめてからスウッ、と唇に這わせる。

「うわあ…」

大人びた姉、童顔気味な妹の間でまあ年相応の顔つきの鍾毓だったが、唇に引かれたルージュがこれまたよく映えていた。
上下二人がある意味自己主張が激しいので影に隠れがちだが、彼女もまた相当の美貌の持ち主である。
思わず、密かに盗み見ている鍾ヨウも感心してしまう。

(へえ、あの娘もなかなかやるじゃない)

「お姉ちゃんもよく似合ってるよ。やっぱり、もっとメイクに凝ってみたら?」
「そ、そう? それじゃ、考えてみようかな」

やはり満更ではなかったようで、少し照れながら鍾会へルージュを手渡した。
妹はそれを受け取ると躊躇うことなく、あたかも自分の物のようにヤケに慣れた手つきで手を動かす。
と、愛らしいとすら形容できる唇(吐かれる言葉は結構アレだが)が鮮やかな色に染まったのだった。

(うわ、これはまた… 我が妹ながら、侮れないわ)

なんだかんだ言って妹馬鹿の鍾ヨウである。自らの美貌にはそれなりに自信があったが、
妹のそれはまた違った方向性で“そそる”ものがあったのである。

「どう、お姉ちゃん?」
「うーん… なんか、ミスマッチが却って効果的、っていうのかな…」
「えへへ、そう?」

二人はしばらく互いの成果を批評しあっていたが、やがて証拠隠滅とばかりに唇をふき取ると、ルージュを元の場所に戻していた。

(…なんか、ヤケに慣れた手つきねえ。まさか、今までにも…?)

鍾ヨウの胸にちょっぴり疑念がわき起こったが、始末を終えた二人が電気を消してベッドに潜り込んだのを見届けると、
おとなしく睡魔に身を任せたのだった。

67 名前:玉川雄一:2002/04/01(月) 00:12
(続き)

「ふわあ… おはようございます」
「おはよう、姉さん。 …はあぁ」
「二人とも、おはよう。何だか眠そうね」

翌朝。何事もなかったかのように… にしてはやや眠たげな二人の妹の様子を見て、鍾ヨウはちょっとした悪戯心を起こした。
何気ない風を装って、さらりとカマをかける。

「…あら? 稚叔、パジャマの胸のとこ、何か色がついてない?」
「ええっ!」
「あ、お姉ちゃん…!」

必要以上に驚きを見せた鍾毓、だが、対応がまずかった。胸元より先に、唇に指が行ってしまったのである。
あちゃー、とうなだれる鍾会を横目で見ながら、鍾ヨウはニコニコと問いかけるのだった。

「あらあら、唇の方が気になるの? まあ、あなたにはちょっとあの色は合わないかな? もう少し淡いのが似合うと思うわよ」
「………あっ」

そこでようやく、罠に掛けられたと気付いて真っ赤になる鍾毓。一方の鍾会は、悪びれる風もなく問いかけた。

「姉さん、気付いてたの? 人が悪いんだから」
「まあ… ね。偶然よ。なんだかあなた達、面白そうなことしてたみたいだし」
「姉さん、ご免なさい。勝手に使った分は返すから…」

鍾毓はちょっと混乱気味。鍾ヨウそんな妹を苦笑しながら見つめると、咎める気がないことを示しながら言葉を返す。

「それは別に気にしなくていいのよ。 …それより、あなたそれを使う前に私に頭を下げたわね。どうして?」
「わ、それも見てたの? 参ったな… ほら、メイクも儀礼の一種でしょう?
  姉さんのを勝手に借りてたこともあったし、そうしないわけにはいかなかったの」

いかにも、ヘンに生真面目なところがある鍾毓らしい答えだった。可愛い妹だと思えば自然と笑みもこぼれる。
次いで、相変わらずニコニコしている鍾会へと向き直る。

「士季、あなたはまた平然と使ってくれたわね。どうして?」
「姉さん、それはだって、アタシは姉さんのを盗んだんだもの。盗むのに礼もなにもあったものじゃないわ」
「…まったく、あなたらしいわね。まあ、それなりに似合ってたのが何だか悔しいけど」

いっそ心地よささえ漂うこのふてぶてしさ、将来が楽しみなんだか不安なんだか。
それでも、女子のたしなみと思えば許せる気がするのも、やはり妹馬鹿だからだろうか。

「そうね、今度いっしょに、あなた達に合うのを選びに行きましょうか」
「えっ… 姉さん、いいの?」
「やった、そうこなくっちゃ♪」

思わぬ姉の提案に、驚きを隠せないながらもパアッと顔をほころばせる妹たち。
今日も明日も明後日も、鍾姉妹の美への追究は飽くことを知らない…

68 名前:玉川雄一:2002/04/01(月) 00:16
えー、今回は、世説新語言語編12番目のエピソード。
japanさんの「聖帝と小四姫」の次の話が元ネタです。

もちろん、元ネタではルージュじゃありません(笑)
お酒(薬酒)を飲んじゃった、という話です。
ちなみに別バージョンがありまして、キャストは孔融と二人の子供。
まあやってることは同じですが。曲者親子ってのも共通かな(^_^;)

しかし、鍾さんとこや陳さんとこのネタ多いですなあ、世説新語。

69 名前:★ぐっこ:2002/04/01(月) 00:50
ぐわ〜〜〜〜っ!!!!!!
義兄上、ナイス!! お兄さんこういう頼もしいハァハァをお待ちしておりました!
うーむ、あのエピソードがこうくるか〜っ!
凄い!いいですぞっ!

たしかに、孔融もありましたな(^-^; 伝承作家のミス…?

70 名前:japan:2002/04/01(月) 23:37
か、かか、カワイイ〜っっ!!
あの簡潔な記述を、良くぞここまで萌え萌えなエピソードに…流石です、玉川様。
ラストも最高です。次の日曜に三人仲良くデパート巡りをしている姿が目に浮かびます。
ついでに妹達のランジェリーも選んであげる元常姉様…ハァハァ
(実は昨日こんな話をしてたり・汗)

71 名前:玉川雄一:2002/04/03(水) 02:00

 ◆ 学園世説新語・第5話 〜お茶目さん♪〜 ◆

満奮、風を畏る。(満奮は風を畏れ嫌っていた)

    奮
  (( ;゚Д゚))ブルブル

晋の武帝の坐に在り、北窓に瑠璃屏を作る、実は密なれども疎なるに似たり。

(晋の武帝司馬炎の側に坐しているとき、北の窓が瑠璃の屏になっており、
 実際はきっちり閉まっているのに透いているように見えた)

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
                        |    風
       ____.____    |    が
     |        |  。。゚。°|   |   吹き込む
     |        |  奮   |   |  
     |        |∩´Д`∩ |   |  
     |        |/     ノ |   |  
        ̄ ̄ ̄ ̄' ̄ ̄ ̄ ̄    | 


奮難色有り、帝之を笑ふ。(満奮が困った顔をしていたので帝がそれを笑った)

             奮
          (((( ゚Д゚;)))ガクガクブルブル

  炎
( ´,_ゝ`)プッ


奮答へて曰く、(満奮がそれに答えて言うには)

             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           / 臣は猶ほ呉牛の月を見て喘ぐがごとし
 奮       < 
(;´Д`)ハァハァ    \ (私は、呉牛が月を見てもハァハァするようなものです)
             \_____________________


    /劉\     今で言う水牛は、江淮地方にだけ生息しているので呉牛といいます。
   ( ´∀`)      南方は暑さがひどいので、そこの牛は暑さを畏れて、
  /     \    月を見ても太陽かと思います。だから月を見てハァハァするのです。
  | | 孝標 | |   『蜀犬、日に吠ゆ』という言葉もありますね。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ヒガイモウソウ(・∀・)カコイイ!       |

72 名前:玉川雄一:2002/04/03(水) 02:03
今回は、言語編第20番目のエピソード。
満寵の孫、満奮のお話です。「呉牛、月に喘ぐ」の故事ですね。

ところでコレ、明らかに晋代=東晋ハイスクールネタですけど、
世説新語をタネにした話はこちらのスレで行こうと思います。
東晋ハイスクールスレにはオリジナルの話ということで。

73 名前:玉川雄一:2002/04/03(水) 02:20
っつーか、よく考えたら今回学三関係ないし(-_-;)

74 名前:★ぐっこ:2002/04/03(水) 23:52
マターリ(^-^;
妙にイヤされました…不思議な間だな〜。

75 名前:玉川雄一:2002/04/13(土) 03:15

 ◆ 歴史家魂外伝・口は災いの…もと? ◆

『山陽公戦記(笑)』にいわく。

馬超は益州校区に招かれて帰宅部連合の一員となったが、劉備の厚遇と、
また生来のキャラクター故か劉備と話をするときにはいつも彼女のことを「パンダ」と呼んだ。

「ねえ、パンダぁ。こんどの原稿だけど…」
「あん? 何や、この前話し合うたやんか。いい加減忘れるなや。せやから…」

しかし、劉備との付き合いの長い関羽にはそれが心底我慢ならなかった。
常日頃は怒りを表に現さない彼女が、あの「武装した紫式部」の面もちを浮かべて劉備に願い出たのである。

「姉者、今度という今度は我慢なりません。馬超をシメさせて下さい!」

久々に見る形相だが、劉備としては馬超とのやりとりは一種のコミュニケーションであり、むしろ楽しいものであった。
とはいえ関羽がここまで怒りを露わにするのだからただ事ではない。まずはなだめにかかる。

「なんや、関さんらしくないなあ。 …ええか、あの娘は曹操に追いつめられてきたんや。
 アンタらはあの娘がウチの事をああ呼ぶゆうて物騒なこと言いよるけどなあ、そんなことじゃあ人からの理解は得られへんで」

だが、いくら敬服する劉備に言われたといって今回は承伏できることでもなかった。
そして、関羽以上に怒り心頭に発しているのは言うまでもなく張飛だったのである。

「せやったらなア、ヤツに礼儀っちゅうものを教えたるわ!」

またいかにも彼女らしく、両手の指をバキバキと鳴らしながら気勢を上げるのだった。

「はあ… まあ、気が済むようにしや。だけど、血ィ見るようなことだけはあかんで」

結局、ここまでなってしまうと劉備には二人を止める術はなかった。


翌日、帰宅部連合の緊急集会が開催された。馬超も当然招かれたわけだが、予定変更を余儀なくされておかんむりである。

「ちょっとパンダぁ、ちょおちょおむかつくー! アタシ原稿描かないといけないのにい!」

それでも渋々ながら着席して周囲を見れば関羽と張飛の姿が見えない。

「…あれえ、関Pとヒッキー(関羽と張飛のことらしい)はぁ?」

といって更に見渡すと、劉備の脇に二人が立っていた。しかも、こちらを凄まじい形相で睨み付けている!

「しおしお〜。アタシったら、部長のことパンダって呼んだから二人にシメられるところだったのね…」

馬超は、己の敗北を悟った。そうして、それ以後は劉備に敬意を持って接するようになったという−

(続く)

76 名前:玉川雄一:2002/04/13(土) 03:18

(続き)

「…だって。こんな事が書いてあったけど、どう思う?」

今日も今日とて史料を山のように積み上げて、学園史の編纂にいそしむ陳寿と生き人形(?)・ハイショーシ君。
とりあえずは史料に総当たりだ! となぜかやる気に満ちたハイショーシ君の主張に負けて、陳寿も雑多な史料を漁っていたのだ。
そんな中で馬超に関する興味深い記述を見つけたのだが、ハイショーシ君は彼好みのネタに飛びつくかと思えば
意外な反応が返ってきたのだった。

「あァ? 誰がこんなクソネタ信じるよ? …いいか、馬超は追いつめられて帰宅部連合に参加したんだぜ?
 いくら何でも劉備に対してそんな態度取るはずがねえだろうが!」
「はあ…」

何故か普段以上にテンションの上がっているハイショーシ君。時折、彼はこうしてキレてしまうのである。
いつもの様子からはちょっと想像も付かない鋭さで、彼の分析は続く。

「それにだな、そもそもこの頃関羽は帰宅部連合の荊州校区総代として江陵棟にいたはずだぜ?
 成都棟でやってた会議にどうして関羽も出られるんだよ? だいたい、関羽だって馬超が参加したときに、
 諸葛亮に馬超はどんなヤツかって聞いたぐらいだぜ? ガセネタだよガセネタ!」
「そ、そうかしらね」
「しかも、馬超が劉備のことをああ呼んだってのは、ヤツのキャラクターからすれば自然なんだよ。
 それに、それが原因で関羽と張飛にシメられそうになったかなんてあの脳天気なオツムで分かるはずないんだって!
 …ったくよお、こんなガセネタ引いてんじゃねえよ!」
「そんな、私に言われても…」

言いたいだけまくしたてると、ハイショーシ君は別の史料に没頭してしまった。
何だか理不尽な気がしないでもなかったが、陳寿は内心彼の分析力に改めて驚かされていた。

(やっぱり、見るところはきちんと見てる。これなら、うまく行きそう…)

口では何やかやと言いながらハイショーシ君がこの作業を楽しんでいることが嬉しくなり、陳寿のやる気も一段と増すのだった。


…やがて完成した学園史は、取捨選択を重ねた陳寿のシンプルな記述と、
それを批判精神豊かにフォローしたハイショーシ君の註が絶妙に融合して、稀代の名著と讃えられることになる。
だが、今のところはまだ、二人して喧々囂々のやりとりが交わされる毎日が続くのだった。

77 名前:玉川雄一:2002/04/13(土) 03:19
何だか発作的に書き上げてしまいました。
そういえば、歴史家魂の本編を完結させないといけませんね(^_^;)

78 名前:一国志3:2002/07/20(土) 18:08
一国志3と申します。

学園三國志掲示板では、はじめての書きこみになります。
拙い作品ですが、よろしくお願いします。
まだ、舞台設定を完全に掴みきれていないので、他の皆さんの話と背景が一致しない
ところがあるかもしれませんが、ご了承下さい。
元ネタは、光栄三國志2〜4の能力値(武力)とあずまんが大王の一部分です。

#三國志3の武力70は重要な分岐点ですが、覚えている人います?


定期試験〜赤点ラインの攻防〜

ここ蒼天学園でも、当然のことながら定期試験は存在する。
特に、赤点すれすれの生徒にとっては、戦いの場となるのであった。

剣道部の部員である、于禁・楽進・李典たちの場合はというと…。
于禁「歴史のテスト55点か。なかなか低レベルな争いになりそうだな。」
と言いながら、夏侯惇の机をのぞき込んでみたところ、
夏侯惇「ん、どうした?」
于禁「(93点!?夏侯惇がそんなに頭良かったとは。)
   あ、なんでもない…。」
別な机では、徐晃と張遼がテストの結果を見せ合っていた。
張遼「テストどうだった?」
徐晃「92点だった。」
張遼「あっ、惜しいな。私91点。」
于禁「もしかして、これってすごく悪いのかも……。」
楽進と李典もテストを見せ合っていたのでありが。
楽進「李典〜、テストどう?」
李典「あ、だめだめ。」
楽進「じゃあ、見せっこしようぜ。44点、あたしの負けだ〜。」
李典「えへへ〜、56点。」
于禁「わ〜い!バカたち〜!」
楽進「バカって言うな!だいたいおまえ何点だよ。」
于禁「55点。」
楽進「あたしらと変わらんじゃん。」
張遼「おまえら、これでいいのか?今回のテストは60点未満が赤点だぞ。」
楽進「え〜っ。そんなの聞いてないよ。」
于禁「でも、まだ追試があるしな。」
李典「追試だと合格点が70点だけどね。勉強しなおさなきゃ。」

で、追試が終わり、テストを見せ合う3人であった。
楽進「ひゃほ〜っ!74点だぜ。」
李典「72点か…ぎりぎりでした。」
于禁「…………。今のきみたちがまぶしく見える。」
楽進「ということは、だめだったんか、于禁?」
于禁「60点だった…。留年するかも。」
結局、于禁も再追試で74点を取り合格ラインを超えて、留年の危機を免れたのであった。

79 名前:★ぐっこ:2002/07/21(日) 00:35
うわははは! なるほど、テストの点=ゲーム武力!
学三的にはパロ系はなるべく避けてるのですが(女性読者多いので)、
これはこれでまた面白い!
しかし低武力=ボンクラーズにすると、どうしても李典がバカの仲間入り
になってしまうんですねえ…(;^_^A

80 名前:一国志3:2002/07/21(日) 01:26
さっそくのコメントありがとうございます。>ぐっこ様

実は、テストの点数を武力か知力にするか迷っていたんですよ。
あえて武力にしたのは、三國志2→3→4になるにつれて、魏の名将が真っ当な
評価になりつつある様子を描きたかったためです。
雑魚武将からの転身というテーマでは、韓浩も取り上げてみたかった人物でした。
今回の話にも登場させようかと思ったのですが、描ききれませんでした。
(三國志1〜3では、韓玄の弟という演義設定のせいで兄と似たり寄ったりの能力。
 三國志4では一旦リストラされて消え、5以降では正史修正の入った能力になる。)

81 名前:一国志3:2002/07/24(水) 01:23
一国志3です。

またまた、思いつくがままに学三のサイドストーリーを書き上げてみました。
史実で言うところの蜀滅亡のあたり、学園正史では「第二次漢中アスレチック決戦」の
あたりを題材にしています。
(このへんだと、キャラ設定のない人物が多いですね。)


■帰宅部最後の日■

2年前までは放課後の抗争が学園の華となっていた蒼天学園であった。
しかし、司馬一族が生徒会の中枢を占めてからは、部活動に対する締め付けが
厳しくなり、放課後はおとなしく勉強している生徒が多くなってきた。
そんな中、劉備−劉禅と続く帰宅部は異彩を放つ存在であった。
どこぞの光画部のように、放課後の部室にたむろして好き放題に遊びまくって
いたのである。

3学期のある日、時の生徒会長・司馬昭は、ついに帰宅部壊滅作戦を遂行する。
司馬昭「蒼天学園の恥部は、帰宅部と長湖部よ。こんな部が存在するだけでも、
    学校の品位を傷つけているわ。まずは、帰宅部の番よ。
    あの薄汚れた部室を接収して、文化的に作り変えてやるわよ。」

生徒会の不穏な動きは、帰宅部にも伝わってきた。
費[ネ'韋]が馬券購入のかどで謹慎処分を受けた後なので、帰宅部の実質トップは、
姜維であった。(部長の劉禅は飾り。)
張翼「大変〜っ!生徒会が帰宅部解散と部室退去を企んでいるそうよ。」
廖化「生徒会は、実力行使も辞さない構えみたいね。」
[言焦]周「このへんでおとなしく降参したほうがいいかも…。
     星占いの結果も悪いし。」
姜維「ちょっと、なに弱気なこと言ってるのよ!
   あっちが実力行使するなら、うちらだって全力で抵抗するんだから。」
張翼「で、何か作戦あるの?」
姜維「『バリケード剣閣』よ! 孔明さまデザインの難攻不落の要塞!
   数で押してくる生徒会なんて、問題じゃないわね。」
廖化「お〜っ、なんかすごそうだな。」
姜維「というわけで、部長、我々は作戦を遂行するのであります!」
劉禅「よきにはからえなのれす。てへてへ。」

対する生徒会側は、[登β]艾・鍾会を中心にして、人海戦術で帰宅部部室を制圧する
作戦のようである。
[登β]艾「こ、これはすごいバリケードですね。」
鍾会「バカみたいに感心している暇があったら、さっさと作戦考えなさいよ。
   だいたい、2年飛び級の天才美少女のあたしと、どもりでさえないあんたが
   同格だなんて、今でも納得できないんだからね。」
[登β]艾「・・・べ、別行動にしましょうか。」
鍾会「好きにしたら??アタシひとりで充分だからさ。」
人知れず地図マニアであった[登β]艾は、バリケード剣閣の抜け道に気付いていた。
それを顔には出さずに、密かに帰宅部部長室を目指すのであった。

部長室でのんきにお菓子をつまんでいる劉禅であった。
劉禅「なんかうるさいれすね。おちついておかしもくえないのれす。」
そんなとき、部長室の扉からノックする音が聞こえてくる。
劉禅「だれれすか?」
[登β]艾「あ、あの、生徒会の[登β]艾と申すものです。詳しくはこの手紙を。」
劉禅「(手紙を読んで)むずかしいかんじだらけでよめないのれす。」
[言焦]周「『帰宅部を直ちに解散せよ。さもなくは部員に退学を命ず。』
     部長室に生徒会側が乗りこんだということは、姜維ちゃんたちが
     力尽きたということね。……今日が帰宅部最後の日かしら。」
[登β]艾「解散か、退学、どちらを選びます、劉禅さん?」
劉禅「がっこうをくびになるのはいやなのれす。
   きたくぶは、きょうれおしまいれす。」
かくして、劉禅の一言で帰宅部の廃部が決定したのであった。
なお、その後も劉禅はお気楽な学校生活を送っている。

さて、バリケード剣閣で一進一退の攻防を続けていた姜維たちのもとにも、
帰宅部廃部の知らせが届いてきた。
姜維「本日をもって帰宅部解散!?嘘だ!嘘だろ〜?」
張翼「まだ勝負がついていないはずなのに…。何があったのかしら?」
廖化「劉禅ちゃんが先に降伏してしまったらしい……。」
姜維「帰宅部は、これで終わりなんだね。
   孔明さま……私、孔明さまにあこがれて帰宅部に入部しました。
   趙雲さん……もう一度、薙刀のお手合わせしたかったです。
   帰宅部の想い出が走馬灯のように蘇ってくる………。」
廖化「関羽さん〜〜っ。私、かっこいい関羽さんに………。」
鍾会「感傷にひたってるとこ悪いけど、あんたたちに話があってよ。」
姜維「誰……鍾会!?なんであんたがここに?」
鍾会「ねえ、ここで帰宅部再結成しない?」
張翼「エリートコースのきみが帰宅部希望だなんて、変な感じするな。」
鍾会「このままレールに乗っていくのも馬鹿馬鹿しくなってね。
   好きなことやってるあんたらがうらやましくなったってこと。」
姜維「この話乗った!やっぱり、私たちには帰宅部しかないからね。」

当然のことながら、鍾会たちの新・帰宅部は生徒会に承認されずはずもなかった。
失敗するのはわかっていて、バカをやったというところだろうか。
鍾会「生徒会から追放されて、ただの一生徒になったけど、これでいいのよ。
   だってね、好きなだけ漫画描けるし。(他人の真似ばかりなんだけどね。)」
姜維「お〜い、鍾会。この前頼んでた、孔明さまのイラストできた?」
鍾会「あいよっ。」
姜維「やっぱり、孔明さまはいいよね。うんうん。
   でも、誰かの画風にそっくりなんだけど、気のせいかな。」
鍾会「あたしのオリジナルに決まってるわよ。
   (玉川っていう人の絵をまるまる参考にしたよは言えないよな〜。)」

82 名前:玉川雄一:2002/07/24(水) 21:08
…それだ! 「鍾会の乱」をどう描くか考え所ではありましたが、
この筋なら『独立』の動機としてなかなか面白いモノになりそうです。それがコケた所まで含めて。
しかし、「姜維の肝が鶏の…」はうまくネタに入れられないかなあ(^_^;)

ただ、残念だったのは劉禅のキャラが違うかな、と。

83 名前:惟新:2002/07/24(水) 22:24
おお〜! お見事な力作!
なるほど、鍾会の「魔が差した」をそう描かれましたか!
少し路線が気になりますが(^_^;) 面白いです〜!
あ、でも玉川様がおっしゃっている通り、劉禅ちゃんだけはちょっと違う気がしますね。

>姜維の肝
そのものズバリはさすがにできませんものねぇ(^_^;)
では、こんなのはどうでしょう?

失敗したあと捕まり、それでも堂々と生徒会に噛み付く姜維。
こののち、校内で次のような噂が立った。「姜維の肝は10キロはあったに違いない」と。

ちなみに、人の肝臓の平均的な重量は1〜1,5キロらしいです。

84 名前:一国志3:2002/07/25(木) 01:05
コメントどうもありがとうございます。>玉川様、惟新様

「姜維の胆」は入れようがなかったので、無視してしまいました。
鍾会の「他人の筆跡を真似るのが上手い」は、何とか取り入れてみました。
今回の作品では、あまり姜維のキャラを立てることができなかったのですが、
私のイメージでは、夢中に突き進んで空回りするタイプといったところです。
(1年生のときは、『孔明さま』に夢中のレズっ娘ということで。)

劉禅は、2chのとある掲示板から拾ってきたキャラを流用してみたのですが、
どうも学三の設定には合っていなかったようですね。学三歴が浅いもので、
ご勘弁下さい。

85 名前:japan:2002/07/25(木) 21:55
>玉川様

陳寿たんとハイショーシ君の掛け合い漫才、良かったです〜!
令君贔屓のハイショーシ君のことだから、「荀搏`」あたりはさぞや文句たらたらだったのでしょうね。
「何で優れた人間にケチばっかつけたがるんだろうな、凡人って奴はよ!
クソネタは数あれ、これが一番酷い出鱈目だな!」
なんて息巻いてそう。

>一国志3様

はじめまして!
「三国志3」は初めにプレイしたゲームなので、懐かしく拝見させていただきました。
最近の毛カイ・韓浩あたりの再評価は魏のファンとしては嬉しい限りです。
武力=テストの点数というのは新解釈ですね。
文官verを書いてみたい…などと思ってしまいました。

鍾会たんの乱もナイスでした。
冷徹な策士のようでいて、変なところでマニアックですからね、この娘も…
意外に帰宅部生活が水に合っていたのかもしれません。
何かと話題になる鍾会の学年ですが、飛び級にすれば幼い頃から活躍していたのも理由が通りますね。
こちらも素晴らしい解釈だと思います。

86 名前:★ぐっこ:2002/07/25(木) 21:58
うお! これ案外イケル!?
ただストーリーが正史ルートですので、いずれ正式に長文にリメイク
したいところですが、このノリ、イイ!
キャラも上手いですし、ナニゲに道理が通ってます!「あーる」知らないと
キツいところもありますが…
ただ劉禅たんについては、ここの「Gちゃんねる」スレッドで、キャラが
できあがってしまったんですよ(;^_^A 大阪をもっとぼーっとした感じに…。

うーん、蜀滅亡…以前に、孔明たちの活躍をもう一度煮詰め直さないとダメですね…
北伐…どういう形にしたモノか…。
あ、孔明の年齢、設定よりさらに下げるつもりです(;^_^A

87 名前:一国志3:2002/07/26(金) 00:50
>japan様

テストの点数=知力or政治力の文官ver.だと、鍾[月缶系]あたりが
いい題材なのかなと思います。初期の三國志では二流の文官で魅力も
低く、その他大勢だったのですが、最近は政治力が90前後と
評価されています。
あと、鍾会(生年225)と[登β]艾(生年197)は、実は親子ぐらい年齢が
離れているんですよね。

>ぐっこ様
なにしろ、2時間あまりで書き上げた作品ですので、長文リメイク
していただけるとありがたいです。
(戦闘シーンは、ほぼはしょってしまいましたし。)

88 名前:玉川雄一:2002/07/28(日) 09:58
鍾ヨウに目を付けられるとはさすが! ご安心めされ。学三の鍾ヨウは半端なキャラじゃないですよ。
旧掲示板(現仮あぷろだ)の過去ログ…は当の昔に流れてしまいましたが、とりあえず
http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/zinbutu/sousou/zyunikus.html target=_blank>http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/zinbutu/sousou/zyunikus.html
辺りを参照までに。

89 名前:一国志3:2002/12/23(月) 00:57
>>(気が向いたら、ショートストーリースレッドにでも書きこんでみるかもしれません。)

というわけで、長坂坡のくだりを書いてみました。


生徒会が袁紹一派の残党勢力をしらみつぶしにしていた頃、劉備率いる帰宅部連合は、
劉表の好意でプレハブ新野棟を借りて、何とか部室を確保していた。

だが、新年度になって劉表が卒業し、新たに荊州校区の総代となった劉[王宗]は、
生徒会に従属する道を選んでしまった。劉[王宗]・蔡瑁らは生徒会に対して恭順の
意を示すため、荊州校区からの帰宅部の追い出しを謀っているところであった。

劉備「えらいこっちゃやで。今のうちらではこの部室守りきれへんし。」
諸葛亮「いっそのこと、荊州校区の本部を急襲してみてはいかがでしょうか?
    相手が蔡瑁程度なら、私たちの側に充分に勝算があります。」
劉備「そんなのあかんで!
   いくら蔡瑁が嫌な奴いうても、劉表さんの恩を裏切ることはできへん。
   うちら帰宅部のモットーは、義理と人情の浪花節や。」
諸葛亮「次善の策としては、江夏棟に避難することでしょう。
    江夏の劉[王奇]さんなら、私たちを快く迎え入れてくれるはずです。」

帰宅部連合の部員たちは、荷物をまとめて江夏棟に避難する準備をする。
一般部員「劉備部長!私たちも一緒に江夏までついていきます。」
諸葛亮「事態は急を要します。幹部だけが先に避難すべきと存じますが。」
劉備「部員をひとりでも見捨てることは、うちにはできへん。
   帰宅部連合はいつでも一緒や。みんな、行くで〜!」

急に帰宅部連合の全員が一斉に避難を始めたので、江夏棟までの連絡通路は
渋滞してしまう。生徒会がそんな状況を見逃すはずもなく、少なからぬ数の
帰宅部部員が生徒会に捕まってしまうのであった。

荊州校区の本部と江夏棟の中間あたりに用水路があり、長坂橋という小さな
橋がかかっていた。大部分の部員たちが橋を渡り終えたのを確認したところで、
張飛と趙雲がしんがりとして生徒会の進撃を食い止めようとする。
張飛「これで主なメンバーは無事に避難できたようだな。」
趙雲「……劉禅ちゃんが!」
張飛「劉姉貴の妹じゃねえか。
   あいつトロいし、どこかで道草でも食ってるのかもしれんな。」
趙雲「……行ってくる。劉禅ちゃんを助けに……。」
張飛「…って、待てよ、趙雲!ま、いいか。
   生徒会の雑魚どもの相手なら、オイラひとりで十分だし。」

わき道を進んでいると、見覚えのある一匹の猫と出くわす。
趙雲「(あれは……劉備部長のところの……びぃちゃん?)」
猫は趙雲の姿を目にすると、草むらのほうへ駆け出す。
趙雲「(ついてこいってことか…?)」
猫を追いかけると、そこには怪我をして倒れていた劉禅の姿があった。
趙雲「どうした…?」
劉禅「わ〜い!趙雲さんが来てくれたよ〜。
   阿斗ちゃんはねぇ、道に迷って、それで転んで怪我しちゃったの。」
趙雲「もう大丈夫だ。……私に任せろ。」
趙雲は怪我をした劉禅を背負う。
劉禅「趙雲さんってどうしてそんなに背が高いんですか?」
趙雲「…小さいほうがかわいくていいよ……。」
劉禅「ふ〜ん、そうなのかなぁ?
   それとさぁ、びぃちゃんも一緒につれてってくれるよね?」
趙雲「う、うん……。(ドキドキドキ……)」
趙雲は猫を抱きかかえようとするが、逃げられてしまう。
趙雲「………なぜ?」
劉禅「あ〜っ、びぃちゃん、逃げちゃったよ〜。」
趙雲「追いかけなくては!」
謎の声「追ってはいけない。ネコの気持ちを察してあげるのだ。」
趙雲「(……誰!?)」
謎の声「あのネコは、自らの身を挺して阿斗の居場所を伝えに来たのだ。」
趙雲「(ええっ……!?でも、びぃちゃんが生徒会に捕まってしまう。)」
謎の声「君はネコの好意を無にするのか?まずは無事に阿斗を送り届けるのだ。」
劉禅「趙雲さん、どうしたの?ボーっとしちゃって。」
趙雲「いや……何でもない。劉禅ちゃん、しっかりつかまっていろよ。」

迫り来る生徒会の大軍を目前にしながら、趙雲と劉禅の逃避行が始まるのであった。

(つづく)

90 名前:一国志3:2002/12/23(月) 02:48
>>89の続きです。


劉禅を背負いながら、生徒会の手から逃れようとする趙雲であった。
途中、夏侯恩から曹操所有の竹刀「青[金工]」を奪い、この竹刀を振るいながら、
晏明ら生徒会の追っ手を退ける。

劉禅「すご〜い!趙雲さんは無敵だぁ!」
張[合β]「哀れなるものよ。戦場の華となって散りなさい。
     曹操直属の五剣士の一、張[合β]儁艾ここにあり。」
趙雲「……………。」
劉禅「ねぇねぇ、戦場の花ってきれいなの?」
仮面をつけたまま、張[合β]が挑んでくる。
張[合β]「どうです?私と剣の勝負を受けてみませんか。
     美しき戦いになりそうですよ。」
趙雲「(今は劉禅ちゃんを送り届けるのが先だ。)
   ……断る。」
張[合β]「敵を目の前にして逃げ出すとは、美しくありませんねぇ。」
趙雲「しっかりつかまって、劉禅ちゃん。」
劉禅「は〜い!がんばれ趙雲さ〜ん。」

しかし、趙雲たちが逃げた先には落とし穴が仕掛けてあった。
趙雲「ああっ……。劉禅ちゃん、大丈夫か?」
劉禅「ううん、阿斗ちゃんはなんでもないよ。それよりも、上、見て!」
張[合β]「淑女たる私であっても、大義のためならば、時には醜い手段を
     使わざるを得ないのです。」
趙雲「………………。」
張[合β]「あなたがたには、万に一つの勝ち目もありません。
     これ以上あなたの名を辱めたくはありません。潔く降伏しなさい。」
劉禅「ねぇ、趙雲さん。どうすればいいの?」
趙雲「………だめだ。あくまでも帰宅部として……。」
張[合β]「そうですか。あなたに美しき散り際を提供しましょう。」
趙雲「(劉備部長………ごめんなさい。)」
張[合β]の竹刀が振り下ろされたとき、猫型の不思議な赤い光が趙雲を包む。
趙雲「………………!!」
張[合β]「し、竹刀がはね返るとは!?」
謎の声「今のうちに逃げるといい。」
趙雲「あなたはさっきの……。」
謎の声「ああ、名乗るほどのものではないが、阿斗の父です。
    娘が世話になっています。」
趙雲「お父さん…?劉禅ちゃんの?」
劉禅「あたしのパパ?学校には来てないよ。」
張[合β]「くっ、私の剣が通じぬとは…。醜い戦いはやめておきましょう。」
趙雲「(……ありがとう、お父さん。)」

生徒会の追っ手として、今度は曹洪が現れる。
曹洪「よっしゃ、趙雲ゲット〜!賞金が……。」
趙雲「ん……?」
曹洪「あんたが趙雲ね。おとなしく生徒会に降伏しなさい。
   あんたが生徒会に従えば、あたしも賞金十万元ゲットできるのよ!」
劉禅「ねえ、阿斗ちゃんの賞金はいくらなの?」
曹洪「あんたは無能だから賞金ゼロよ。ってわけで、あたし的には価値ないの。
   曹操さんが惚れこんでいる関羽なら、賞金百万元よ!いつかは説得して…。」
趙雲「悪いが、付き合っている暇はない。」
曹洪「ふふふ………。逃がすものですか。あんたの弱点は調査済みよ。
   行け〜っ、『百万の青州兵』!!」
曹洪の号令とともに、無数の猫たちが趙雲めがけて一斉に襲いかかる。
趙雲「あ……噛み猫!」
劉禅「あ〜〜っ!ネコの爪はバイキンがあって!
   おばあちゃんがひっかかれてすごいはれて!」
猫たちが趙雲に飛びかかろうとしたとき、行方不明だったびぃちゃん(劉備の飼い猫)
が立ちはだかる。
趙雲「……びぃちゃん!?」
びぃちゃんは渾身の力を振り絞って雄叫びをあげる。
その気迫に押されて、猫の大群は四散してしまう。
趙雲「(猫を抱きかかえて)……ありがとう。」
だが、この瞬間、びぃちゃんは息を引き取ったのであった。
趙雲「うそだ………。」
劉禅「死んじゃったの?」
曹洪「まあ、所詮、ネコはネコね。役に立たないったらありゃしない。
   趙雲、今度こそおとなしく生徒会に降伏しなさい!」
趙雲「(睨み付ける)」
曹洪「い、いや、なんでもないです。(せっかく賞金もらえると思ったのに〜)」

生徒会の追っ手を振り切り、何とか長坂橋までたどり着いた趙雲と劉禅であった。
趙雲「……劉禅ちゃんを連れてきた。でも、まだ追っ手が……。」
張飛「よ〜し、あとはオイラに任せとけ!」
長坂橋は張飛に任せ、趙雲は劉禅を劉備の元に送り届ける。
趙雲「……劉禅ちゃんは無事です。でも、びぃちゃんが……。」
劉禅「お姉ちゃ〜ん!会いたかったよ〜!」
劉備「どアホ!おまえは何遍、人に迷惑かけたら気が済むんや!」
劉備は劉禅の頭をハリセンで、これでもかというほどにどつきまわす。
劉禅「え〜ん、え〜ん…。お姉ちゃん、痛いよ〜。」
趙雲「あの……、そんなに叩かなくても。」
劉備「こいつのせいで、危うく優秀な部員を一人失うところやったんや。
   え〜い、叩いても叩いても叩き足らんわ。」
諸葛亮「劉備部長、お気持ちはわかりますが、気を静めてくださいませ。
    ただでさえ足りない劉禅ちゃんの頭の中身が……。」
劉備「…す、すまん。つい、ウチとしたことがカッとなってもうてな。
   そうか、びぃちゃんが亡くなったんか。
   そこらへんに埋めとくしかできへんな……。」
趙雲「私のせいで……。」
劉備「いや、趙雲のせいやない。気にしたらあかんで。」
諸葛亮「気を取りなおして進みましょう。江夏棟まではあと少しです。」

江夏棟にたどり着いた劉備たちは関羽と合流し、舞台は赤壁島に進むのであった。

(おわり)


*張[合β]のキャラは三国無双を参考にしました。(実は未プレイですが)

91 名前:★ぐっこ:2002/12/24(火) 01:21
おお、コレは力作!
オールあずまんがですが…あずまんが知らない人はちとキツイかも…
そういえば、長坂消したままだったな…(^_^;) いや、殺伐よりも、こういう
のんびりした活劇を目指しておりますので、演義のほうは、たぶんこっち
に近いものになるでしょう〜。

ナル張[合β]…その手があったか。

92 名前:惟新:2002/12/27(金) 16:59
ナル張[合β]Σ( ̄□ ̄;)
そこ来るとはとてつもなく予想外でしたが(^_^;)
てか、張[合β]は三人いるという説も…
それはさて置き、私はあずまんがわかりますので(^_^; 楽しんで読ませていただきました。
けっこうパロディって入れられるものなんですね〜勉強になりましたですよ。

93 名前:教授:2003/01/07(火) 23:48
■■親友 〜黄忠と厳顔〜■■



 夕暮れの巴西棟。
 その屋上に一人の女性が物憂げな表情で眼下に広がる景色を見ている。
 大人びた容姿、風に靡く艶やかな髪に凛とした顔立ち。
 彼女の名は厳顔。
 劉備率いる帰宅部連合の中でも名うての人物だ。
「帰宅部連合に加わってから…色々な事があったわね…」
 小さく呟き、柵を背にもたれかかった。
 現在の主、劉備玄徳の益州校区攻め…漢中アスレチック戦…。
 厳顔が活躍した場はそれ程多くはない。
 しかし、それは彼女の中で生涯忘れる事のない出来事。
 大切な記憶なのだ。
「学園生活の最後に楽しい思い出が出来たかな…」
 感慨深く言葉を紡ぐと深く息を吐いた。
 と、屋上のドアがゆっくり開く。
「ここにいたのね。話って何?」
 ドアの向こうから大人しそうな印象のウェーブがかった髪の女性が姿を見せた。
 だが、その格好は少し変わっていた。
 ――弓道着。
 練習中だったのだろう、制服姿の厳顔とは明らかに違う。
 厳顔は親友の姿を捉えると優しくも哀しげな眼差しを向けた。
「漢升…忙しい所呼び出したりしてすまないね」
「それはいいけど…珍しいわね。貴方が大事な用事があるなんて…」
 厳顔は特に大事がない限り自分の用件は後回しにする。
 それが人づてに修練中の黄忠を呼び出したのだ。
 漢升…黄忠は厳顔の心中を察してか茶化すような事はせず、真面目な顔を見せる。
 余談だが二人は3留というかなり不名誉な経歴を持つ。
 それが故か学園内で年増コンビ呼ばわりされる事が多々見うけられた。
 憤る黄忠、それを宥める厳顔。
 無論、厳顔も腹が立たないという事はない、所詮は人間だ。
 しかし、彼女が怒りを露わにする事は滅多にない。
 以前、理由を劉備に尋ねられた。

『厳顔の姐さんは何で怒らんのや? ああも言われ続けたらいい加減キレるやろ…』
『総代…私と漢升の二人ともが怒り狂ってちゃ歯止めが利かないでしょ? だから私が気にしないようにして抑え役に回ってるってわけ』
『そんなん…腹にたまって気分悪いやろ。ウチが言わさんようにしたるさかいにな…』
『気を遣ってもらわなくてもいいよ。人の口に戸は立てられない…昔から言うでしょ。別に諦めてるとかいうわけじゃないわ…ホントの事だし』

 その時は苦笑いをしてやんわりとしていた。
 劉備も大人やなぁと感心した程だ。

94 名前:教授:2003/01/07(火) 23:51
 それから後も、年増発言は後を立たなかったが二人はいつも通り過ごしていた。
 周りからどう言われようとも、二人の仲は間違いなく良かった。
 同じ3留だからとか、年が同じだから…そんな陳腐な理由ではなく、本当に気が合う親友同士なのだ。

「総代よりも…先に貴方にだけは話しておきたかったから」
 厳顔は真っ直ぐに黄忠の目を見据える。
 黄忠もその言葉と真剣な眼差しを受け、それに応える。
 そして続きを促すように頷いた。
「私…ここで引退する事に決めたわ」
 ひどく重圧感のある言葉。
 だが、黄忠は取り乱さなかった。
 いつもと何ら変わらぬ姿勢を崩さない。
「そう…」
「…漢升は驚かないんだな」
 落ち着き払った黄忠を見て、却って厳顔の方が動揺する。
「ここに呼び出された時に…何となくそんな気がしてたからね」
 黄忠がどこか寂しげな笑みを浮かべて付け加えた。
「そっか…」
 厳顔はどこか嬉しいような安心したような気分になった。
 親友は自分の考えてたよりも、ずっと強い。
 引退しようとは前々から考えていた。
 だけど、自分の言葉で親友の心を乱すような事があれば…今後の指揮系統に支障を来たすかもしれない…。
 そんな事が脳裏を過ってなかなか言い出せなかった。
 でもその考えは杞憂に過ぎなかった。
 だが…黄忠はそんな事を言ったのだ。
「それじゃ…私も一緒に引退しようかな。年が年だしね」
 ひゅうと吹いた一陣の風が二人の髪を大きく靡かせた。
 一瞬の沈黙の後…厳顔はその言葉に首を横に振る。
「まだ…貴方は駄目」
 ここで初めて黄忠の瞳に動揺の色が表れた。
「何でなのよ…。貴方が引退するのは自由…私が引退するのも…」
「自由だ…って言いたいの? 貴方にはまだ大事な仕事が残ってるわ」
 厳顔は神妙な表情で黄忠の言葉を遮った。
「大事な…仕事?」
 黄忠は自分の言葉を先に言われ、どうしたらいいのか分からないような顔で聞き返す。
「そう…大事な仕事よ。貴方には…まだ後輩達への指導がある」
「そんな…そんな事なら貴方にだって…!」
 感極まって普段出さないような大声を張り上げて厳顔の肩を掴む。
 その顔は悲壮感で一杯だった。
 厳顔はゆっくりと首を振ると、言葉を紡ぎ始めた。
「貴方じゃないと出来ない事よ…。荊州校区の生徒に関しては私は全く分からない、何よりも貴方の方が私より優れてるし…他の誰よりも経験が豊富だから」
「それなら…二人でやればいいじゃない! それが嫌なら貴方は益州校区の生徒達だけでも…」
「…この校区の生徒達には早く総代達に慣れてもらいたいの。それに私はもう十分役目を果たしたわ…だから、ここで身を引くの」

95 名前:教授:2003/01/07(火) 23:51
「一人より二人の方が指導も…」
「漢升…分かって…」
 確固たる信念と決意、そして哀しく淀みのない眼差し。
 澄んだ瞳から発せられるどこまでも真っ直ぐな想いは黄忠の心を射抜いていた。
「………」
 黄忠は厳顔を掴む手を離すとそっぽを向いてため息を吐いた。
 そしてくるりと向き直る。
 悲壮感のない、苦笑いだ。
「しょうがないわね…貴方の気持ちは分かったわ。後は…私に任せなさい」
 力強く言い放つ。
「頼んだよ……あ、それから」
「何?」
「年増やおばさん呼ばわりされても怒るなよ〜。もう、宥める役はうんざりなんだからさ。引退してから呼び出されても困るしね」
「そんな事、保証できないわよ」
 思わず吹き出す二人。
 彼女達の明るい笑い声が屋上に響いた…。


 翌日、厳顔は劉備の元へ赴き理由も告げず自らの階級章を返上した。
 勿論、劉備や他の幹部達は厳顔を引き止めようとする。
 厳顔は振り返る事なく、ただ一つだけ皆に言い残し…。
「後は若い子に任せるわ、それじゃ」
 そして、静かに去っていった。


「………」
 黄忠は去り行く親友の背中を見送る。
 ――無意識の内にに涙が頬を伝った。
 はっと我に返り慌てて涙を拭う黄忠。
 誰にも見られていないかと内心ひやりとしたが、幸い誰も気付いていない様子に安堵の息を吐く。
 …と、劉備が黄忠の服の裾を引っ張った。
「漢升はん…ちーと話あるんやけど」 
「…総代?」
「ここやとなんやし…ちょっと奥まで来たって」
 黄忠は引張られるがままに会議室の奥の部屋に連れ込まれる。
「総代…何の用です…」
「漢升はん、あんた…厳顔の姐さんの引退の理由…知っとるやろ」
「…っ!」
「やっぱりやな…。理由も言われずにコレを返されても…かなわんわ。…理由…聞かせてくれへんか?」
 劉備の放つ威圧感に気圧される。
 黄忠は重い口を開き始めた。
「彼女…引っ越すんです。ここからずっと遠い所に…」
「そないな事やったら…言うてくれてもええのに…」
「静かに去りたかったそうです…」
「…ウチら騒がしくしたか?」

96 名前:教授:2003/01/07(火) 23:52
「…送別会が嫌だったんじゃないですか? 彼女なりに気を遣ってくれてるんです…『私なんかの為に予算使わなくてもいいよ』って…」
 その言葉に劉備は深いため息を吐いた。
「厳顔姐さん…こないな時にまで遠慮せんでもええやん…」
 呟くように言うと黄忠に暫く一人にしてくれと告げる。
 黄忠は頷くとそのまま部屋を後にした。


「………」
 黄忠の足は部室に向かっていた。
 いつも隣に居た厳顔はもういない。
 果てしない喪失感が心を支配している。
 少しでも気を紛らわせたい。
 そんな一心で部活動に励もうとしていた。
 道場の方からは既に気合いの入った声が聞こえている。
 もう練習は始まっているのだ。
 急いで更衣室に入ると、自分のロッカーを開く。
 そこには…自分の弓道着と弓、そして見慣れない竹刀袋と手紙が添えられていた。
「何かしら…」
 手紙を開く。


『漢升へ

 私がここにいなくても心はずっと傍にいるよ

 辛くなっても漢升ならきっと乗り越えられる

 がんばれ!

 私の竹刀…置いて行くから、使ってあげてね

 その子も喜ぶと思うし

 それじゃ…また何処かで会おうね!

 親愛なる友人、黄忠漢升へ…   厳顔』


「厳顔…」
 手紙の文字がぽつりぽつりと涙で滲んでいく。
 そして竹刀袋を開き、中から竹刀を取り出す。
 見間違える事はない、親友が振るっていた竹刀だ。
「う…うう…」
 黄忠は溢れる涙を抑えられなかった。
 ただ、声を殺して泣いた。
 親友の残してくれた竹刀と優しい別離の手紙を抱きしめて…。
 

「漢升…総代…そして皆…元気でね」
 荷物をまとめたバッグ(大体の荷物は既に小包にして実家に送ってある)を肩に引っさげた厳顔。
 益州校区が見える場所から静かにその景観を眺めている。
「楽しかったよ…こんなに胸が一杯になる程…」
 踵を返すと止めてあったバイクに跨る。
 ヘルメットを手にし…もう一度振り返った。
「漢升…私達はずっと親友だからね…。そう…遠くにいても…」
 厳顔の頬を涙が伝い落ちる。
 その涙を拭う事無く、そのままヘルメットをかぶると勢い良くエンジンをふかせた。
「…じゃあ…またね!」
 誰にともなく言うと、一気にアクセルを絞り込んだ…。

97 名前:教授:2003/01/07(火) 23:54
あとがき

長くなりました。しかも稚拙で申し訳ないです。
厳顔の引退で非常に悩みましたが、引越しという形にしてみました。
多分、これは賛否両論になりそう…。

98 名前:惟新:2003/01/08(水) 18:23
ゲンガ━━━━━━(T∀T)━━━━━━ ン!!!
ええもん読ませて頂きました!
最後の手紙はぐっと来ますなぁ…こりゃ名文や…

えーっと、引退方法ですか?
引越しということは転校なんでしょうか。引越しの理由にもよりますねぇ…
1、家庭の都合(転勤等)
2、特に家庭の都合はなく、自主的な転校のため
問題があるとすれば2で、3留した挙句転校されるのは親御さんが大変ですが…
でもまぁ3留を許した親御さんです、寛大に許してくださるでしょう(^_^;)
というわけで、特に不都合もなく、別にいいのでは? と私は思うのですが。

そーいや3留ってことは私と同級生の年頃なんだなぁ(^_^;)

99 名前:★ぐっこ:2003/01/08(水) 23:03
ええ話や…・゚・(ノД`)・゚・
ていうか親友同士だったんですね…姉さんコンビ…
黄忠もさびしさひとしおでしょうに…

引っ越しは問題ありませーん。というか、そう次々とリタイヤするのも
アレなんで(^_^;) そういうのもアリにしましょう!

100 名前:教授:2003/01/08(水) 23:06
書き漏れで恐縮してます。
家庭の都合(親の転勤)で引っ越す事になってます。
それも国内ではなく海外という事でして…。
投稿した後で気がつきました、大失態申し訳ないです。

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