ロボットによるスパムを排除するため、全板でキャップ必須にしました!

書き込みをされる方は、必ずメール欄に #chronica と入力してください。

お手数をお掛けしますが、ご理解ご協力の程、よろしくお願いいたしますm( _ _ )m


■掲示板に戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 801- 901- 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理

レス数が950を超えています。1000を超えると表示できなくなるよ。
■ ★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★

1 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:41
はい。こんなの作っちゃいます。
要するに、正式なストーリーとして投稿するほどの長さでない、
小ネタ、ショートストーリー投稿スレッドです。(長文も構わないですが)
常連様、一見様問わず、ココにありったけの妄想をぶち込むべし!
投降原則として、

1.なるべく設定に沿ってくれたら嬉しいな。
2.該当キャラの過去ログ一応見て頂いたら幸せです。
3.isweb規約を踏み外さないでください…。
4.愛を込めて萌えちゃってください。
5.空気を読む…。

とりあえず、こんな具合でしょうか〜。
基本、読み切り1作品。なるべく引きは避けましょう。
だいたい50行を越すと自動省略表示になりますが、
容量自体はたしか一回10キロくらいまでオッケーのはず。
(※軽く100行ぶんくらい…(;^_^A)、安心して投稿を。
省略表示がダウトな方は、何回かに分けて投稿してください。
飛び入り思いつき一発ネタ等も大歓迎。

あと、援護挿絵職人募集(;^_^A  旧掲示板を仮アプロダにしますので、↓
http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi target=_blank>http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi
にアップして、画像URLを直接貼ってくださいませ〜。
作品に対する感想等もこのスレ内でオッケーですが、なるべくsage進行で
お願いいたします。

ではお約束ですが、またーりモードでゆきましょう!

316 名前:おーぷんえっぐ:2003/08/04(月) 00:41
雪月華さん>孫権たちの合宿読みましたw 以前自分が絵描きBBSで、予定していた
      ”長湖部・海獣大決戦”の大まかな荒筋で、符合するとこがあったので
      こっちは、もうちょこっと煮詰めてからネームを一考したいと
      思いますです。 しかし、おもろかったw 一文だけで想像すると孫策が
      半分死んでるような感じが・・・・w

教授さん>雷同の登場、果たして偶然だったんでしょうか?(雷同キックで爆笑w)
     お絵かきで描いたばっかりだったので・・ついついw
     そしてトドメはやっぱりあの二人ですか・・・^^;
     この学園では、夏場は(いつも、かw)どこも修羅場ってイメージがついて
     しまいましたw

317 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/04(月) 23:19
水着祭りキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
教授様グッジョブ!!!(b^ー°)

まず雷同キックワロタ。わかる!非常によく分かる!プールでしか繰り出せない大技!
脳天気な少年役ができそうな声優が似合いそうな雷同たんが想像できるなあ…
妙にガキっぽいのが揃ってる帰宅部連合のなかで、大人な黄忠&厳顔コンビいいな。

そして法正たん…。いつもの事ながら気の毒に(;´Д`)ハァハァ…
ヤパーリウソ胸2割り増しなのかしらん…?

318 名前:★教授:2003/08/05(火) 23:36
 少し数えてみたら何と25本も駄文を書いている事が判明。
 ここまで恥を晒すと却って開き直りそうな自分に危機感を憶える今日この頃です。

おーぷんえっぐ様>

 実は雷同の登場は偶然ではありません。
 お絵描きBBSをふと拝見してたら…

『雷同…この娘は使える!』

 と、衝動的に登場をしてもらいました。厳密に言えば、張飛の他にやんちゃなキャラが欲しかったんですけどね。
 雷同キックが概ね好評のようですが、元ネタは某特撮ヒーローの必殺技です。
 最近の特撮とかアニメには疎いので…あの設定が分からなかったのですネ、これが(涙)

ぐっこ様>

 夢も希望もない事を言いますが…ズバリ、ウソ胸です。(爆)
 裏話的な事言うと、実は投稿前に修正してるのです。内容が少し大人向けに傾いちゃってたので…。(切腹)

319 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/05(火) 23:49
>教授さん
初めまして。前々からここにお世話になっていながら、数ヶ月間来れなくて色々変わっていてビックリのヤッサバ隊長です(長いなぁ)。
今後ともよろしくです。

それにしても雷同キックは、やはり狙っていましたか…。
俺も技の一号は大好きですw
なお、おーぷんえっぐさんがお絵かきBBSで紹介してた例の特撮作品についてですが、
比較的(というよりかなり)古いヤツばっかりだと思いますですよ?
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!」の名口上を残している仮面ライダーストロンガーとかね。
しかし本放送が昭和50年って…俺生まれてないし!w

320 名前:★アサハル:2003/08/06(水) 00:04
乗り遅れますたー!

>雪月華様
某ネコ型ロボットとダメ少年と首長龍の長編版を思い出しました…。

それにしても何してるんですか孫シスターズ(w
二人の凶悪姉妹喧嘩(戦争)をモロに受け止めてきた孫家の実家の
耐久性が妙に気になりました。
続き…どうなっちゃうんでしょう?まさか折角生まれてきたのに
喰われるなんて事は(ry

>教授様
あ、ああー(゚∀゚;)
雷同たん、ご愁傷様です…惜しい人を亡くされ………(死んでない)
それにしても水着姿にも性格が出てて藁いました。特に諸葛亮。
何気に麋竺が萌え…

321 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/11(月) 21:58
■■魏文長、その密やかなる趣味(1)■■

 魏延は生来より、豪胆かつ粗暴な女傑であった。
 しかし、蒼天学園へと入学した直後より、彼女はその性格を改め、真なる淑女…つまり乙女への道を志した。
 その経緯は、中学時代(蒼天学園中等部に非ず)剣道部に所属していた際、腰を痛めた為に一線を退く事になり、大そう悲しんだ。
 しかし、その時彼女の先輩より「女は武のみに生きるに非ず」と諭されたが故であったという。
 ともあれ、彼女は武骨な性格を正し、「乙女」として行きようと決意したのである。


「ふんふんふ〜ん♪」

 荊州校区蒼天女子寮。
 朝、誰もいない調理室で、魏延は鼻歌とともに何やら洋菓子を作っている。
 どうやらクッキーのようだが、何とその形状は「クマさん」。
 確かに、クマというところがある意味彼女を象徴するクッキーであるが、武辺者として既にその名を蒼天学園中に知られつつあった魏延が、そのようなモノを作る趣味を持っている者は、皆無と言えよう。
 いや、彼女は意図的にそのような趣味がある事をひた隠しにしてきたのである。

 かつて、このような事があった。
 まだ、魏延が帰宅部連合に参加する前の事だ。
 当時一年生だった彼女は、参加する部活を決めかねていた。
 最初は中学時代のように剣道部に入部するのが筋だと思っていたものの、「乙女を目指す」という大目標が出来た手前、体育会系の部活に入る訳にもいかない。
 そこで、荊州校区の文化系の部活に入ろうと決意したのであるが…。

「こんなんちまちまやってられっかぁぁぁっ!!」

 …と仮入部した茶道部で、あまりの退屈さに苛立ち、ついには茶釜をひっくり返すという剛毅なマネをしでかしたのだった。
 当然すぐさま追い出される魏延であったが、彼女は諦めない。
 続いて美術部へと仮入部するのだが…。

「こんなんちまちま描いてられっかぁぁぁっ!!」

 …と、例によってカンバスをビリビリと豪快に引き裂き、周囲を凍りつかせてしまう。
 当然美術部も追い出された彼女は、最後に料理研究会に入ろうとする。
 だが、既に魏延の勇名は荊州校区全体に広がっており、

「あ、あの…料理研究会に入りたいんですけど…」
「結!構!です!!」

 …と、恐る恐る尋ねた魏延を、研究会代表・趙累が一蹴してしまうのだった。
 さらに、当時魏延が所属していた長沙棟の棟長・韓玄は、粗暴な性格の魏延が大そう気に喰わなかったらしく、わざわざ魏延を呼び出してこう言い放っている。

「あんたに文化系の部活なんざ務まる訳無いでしょ。相撲部や牛乳部や魚拓部がお似合いよ」

 このセリフに逆上しそうになった魏延であったが、

(ガマン、ガマンよ文長…こんなところでキレたりしたら、あたしはこれから一生乙女でいられなくなっちゃう…)

 と、じっと怒りを抑え、悶々とする日々が続いたのである。
 だが、皮肉な事に魏延は「乙女」ならぬ「漢女」と言う異名と、武名を轟かせてゆく事になってしまうのだった。




 そのような彼女であったから、「クマさんクッキーを作る」事が趣味であるなどとは、口が裂けても言えなかった。
 それは、劉備が荊南棟群を平定し、その際に劉備に降り、名実共に「帰宅部」の仲間入りを果たした後でも変わらなかったのである。

「焼けた焼けた、っと」

 オーブンから焼きあがったクッキーを取り出し、その一つを口に運んだ。
 ポリポリとしばしクッキーを味わった後、魏延の表情が思わずほころぶ。

「んん〜、おいひぃ♪」

 正直言って、「普段の魏延」を知る者がこのシーンを見せ付けられれば、気味悪がって逃げ出してしまうだろう。
 それほどまでの変貌ぶりであった。
 魏延は焼きあがったクッキーを小さな紙箱に入れ、包装紙で包んで部屋を後にするのだった。

(このクッキー、今日こそ部長に食べてもらうんだ〜♪)

 魏延は、ルンルン気分(死語)で学園に登校する。
 しかし、そんな彼女に思いもよらぬ災難が待ち受けていようとは、この時まだ知る由も無かった…。

(2)へ続く。

322 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/11(月) 22:08
脱字発見しますた(T_T)

>既にその名を蒼天学園中に知られつつあった魏延が、そのようなモノを作る趣味を持っている者は、皆無と言えよう。

の、「趣味を持っている者は、」の部分は、
正確には「趣味を持っている事を知る者は、」が正解です(^^;

323 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/11(月) 22:12
…と言う訳で、先刻より周知しておりましたSSがようやく完成しました。
と言っても、まだ導入部分ですけど(^^;

この続きは、またの機会という事でよろしくです。

324 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/13(水) 17:18
…っΣ(´Д`;)
むう!魏延たんが人知れずクッキーを! 漢乙女の面目躍如!
戦闘時のバトル少女との落差がハァハァもの。
ところで韓玄たん、牛乳部って何でつか…(;´Д`)

続きを期待!

325 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/13(水) 23:56
■■魏文長、その密やかなる趣味(2)■■


 放課後。
 蒼天学園の生徒達がそれぞれの課外活動に精を出している中、魏延もまた荊州校区風紀委員の一人として、長沙棟内の巡回を行っていた。
 だが、一方で帰宅部連合部長という重役である劉備は、その魏延の数倍の作業をこなしている。
 無論、諸葛亮や馬良、ホウ統といった総務役も部長のサポートに回っていたのだが…。
 益州攻略の時が近づいていた今、劉備の双肩には、多大な責任が圧し掛かっていたのである。

「うー、孔明…ちったぁ休ませてんかぁ〜」
「いけません。今日中に、各予算の配分を完了してしまわねば。
 この荊州の地盤をしっかりと固めねば、長湖部に背後を襲われるやもしれません」
「さよか…ま、しゃーないなぁ」

 ブツブツと文句をたれながら、劉備は鉛筆を片手に頭を悩ませている。

「せやけど、こーゆー仕事は庶務の三羽ガラスがやるもんやろ。
 何でうちが…」
「仕事を部下に任せて、主は椅子に座って命令するだけというのは、三流の組織の体系です。
 それに、部長自らが雑務をこなす姿を見れば、おのずと部下もついてくるというものですよ」
「うう〜…」

 孔明は、お得意の舌先三寸で劉備を上手く丸め込んだ。
 しかし、問答をしている諸葛亮自身も山のような書類と格闘しており、劉備にぐうの音も言わせない。
 そんなこんなで、その日の雑務を終えた時には、既に時計は夜6時を回っていた。

「う〜、やっと終わったわ…」

 へとへとになり、思わず机にうつ伏せになる劉備。
 諸葛亮は、そんな彼女の目の前に栄養ドリンクのビンを置いた。

「部長、お疲れ様でした。
 この『スパビタンX』を飲んで、元気を出して下さい」
「おおきに、そんじゃお言葉に甘えて遠慮なく…」

 劉備は、諸葛亮に渡された栄養ドリンクを一気に飲み干す。
 しかし、直後劉備の顔が真っ青に染まり、苦しみの表情へと変わってゆく。

「ぐぁっ…!!
 な、なんやコレ!? 一体ナニが入っとんねん…?」
「ああ、それでしたら…私が市販の栄養ドリンクをベースに冬虫夏草と高麗人参、さらにはマムシやスッポンのエキスをブレンドした特製品ですが?」
「!!!?」

 それを聞いた劉備は、口を両手で抑えながら真っ直ぐトイレへと駆け込んで行ってしまう。

「…やはり、栄養を重視しすぎたかな…?」

 諸葛亮は、さして罪の意識を持っていない様子で、『スパビタンX』のビンを眺めるのだった…。



「あ〜、えらい目に遭うたわ…」

 暫くして、劉備は余計疲れたような表情でトイレから現れた。
 そんな時、偶然巡回をしていた魏延とばったり出会う。

「あっ、部長。こんな時間までお疲れ様です」
「おう、文長か。あんたもこんな時間まで大変やな」

 劉備は苦しそうな表情を必死に隠しながら、魏延と普段どおりに会話しようと努めた。

「いいえ、あたしは見回りですから。いつもデスクワークに追われている部長達に比べたら…」
「せやなぁ。孔明や士元、季常にいっつもせっつかれるんや。
 おまけに、今度益州校区まで行かなあかんやろ。大変や〜」

 劉備は力で益州を攻める事に、乗り気では無かった。
 だが、漢中の張魯が益州への侵攻を開始した為に、劉備は益州校区生徒会長である劉璋の援軍として出陣する事になったのだ。
 しかし、その裏では諸葛亮を始めとする謀臣達が益州攻略の策を練っており、一方の劉璋陣営でも親劉備派が帰宅部連合を迎え入れる準備を始めていた。
 劉備の思惑に反するかのように、時勢は激しく動きつつあったのである。

「心配しないで下さい。
 この魏文長、部長に同行する事が決まった以上、必ずやお役に立ってみせます!」

 不安を抱えていた劉備を、魏延が励ます。
 魏延は、今度の遠征で劉備と一緒に戦える事が大そう嬉しかった。
 勿論、新参者である彼女にとって、理由はどうあれ劉備の下で武功を上げられるチャンスだったからでもあるのだが。

「元気やな、あんたは。
 うちも、もっとシャキッとせなあかんな」
「部長…」

 魏延に励まされ、劉備はようやく心の迷いを僅かながら消し去る事が出来た。
 その様子を見て安心したのか、魏延の表情も綻ぶ。

「そうだ、部長に渡したいモノがあるんです。
 受け取って貰えますか?」
「お、おう」

 魏延はそう言うと、スカートのポケットの中に忍ばせておいた小さな紙の箱を取り出し、劉備に手渡す。

「開けてみて下さい」
「ん…分かった」

 劉備が箱を開けると、そこにはクマさんの形をしたクッキーが入っていた。
 だが、流石の劉備もまさかこのようなモノが入っているとは思いもしなかったようで、

「な、何やコレ!? く、クマさん…!!?」

 そう言った直後、思わず口から笑い声が噴き出してしまうのだった。

「ギャハハハハッ! あ、あんた、こないなモンどないしたんや?」
「あ、あたしが一生懸命作ったんです!
 部長に食べてもらおうと思って、誰にも見つからないように、必死にお菓子の勉強をしながら…!」

 魏延の真摯な態度に感銘した劉備は、どうにか笑いを止めて魏延に向き合う。

「す、すまん笑ろたりして。
 いや〜、それにしても『漢魏延』がクマさんクッキーたぁ、なんちゅーミスマッチやねん。
 せやけど、あんたにこんなモンを作る趣味があったなんてな」

 劉備の言葉に対し、魏延は顔を真っ赤にして俯く。
 やはり、相当恥ずかしいのだろう。

「うう〜、それについては話せば長くなるんですけど…。
 と、とにかく食べてみて下さい」
「ああ、分かった…」

 劉備は、箱の中にあったクッキーの一つを手に取り、口に含んだ。
 そして、ゆっくりとそれを噛みしめてゆく。

「んん〜…」
「ど、どうですか?」

 恐る恐る、劉備に尋ねる魏延。
 だが、劉備は満面の笑みでそれに応えた。

「うん、美味いわコレ」
「ほ、ホントですか!?」

 その言葉を聞いて、思わず喜び舞い上がる魏延。
 やはり、憧れの人物に手作りのクッキーを食べてもらい、さらに「美味しい」と言って貰えたのが余程嬉しかったのだろう。

「ああ、ホンマに美味いわ。
 よう考えてみたら、こないな手作りの菓子なんざ、もう10年は食べてへんな。
 おおきにな、文長…」
「部長…」

 感激の余り、両目が潤む魏延。
 しかし直後、薄暗い廊下に眩い閃光が走った!

 パシャッ!!

「な、何や!?」
「えっ!!?」

 二人が同時にその光の方を向くと、何とそこにはカメラを持った簡雍の姿が!!

「遂に捉えたぁ、決定的瞬間!!」
「ああっ!! け、憲和ッ!!?」
「ヒューヒュー! お熱いねぇ、お二人さん!」
「……!」

 見事にイチャイチャ(?)現場を押さえられた劉備と魏延は、驚きの表情を隠せない。
 特に、魏延は自分の一番見られたくない姿を見られたショックで、声も出ない…。

「それにしても…『漢魏延』と恐れられた魏延に、そんな趣味があるなんてねぇ〜♪」
「ぐぐぐ…!!」

 魏延は、必死に怒りを抑えて俯いているが、全身が激しく震えている。

「な、なぁ憲和…その写真のネガ譲ってんか…頼むわ」
「ん〜、どうしよっかねぇ〜」

 簡雍は、内心してやったりと大喜び。
 そして、わざと劉備達に対してそっぽを向き、二人の反応を見て楽しんでいる。

「うううう〜ッ!! 憲和様、この通りでございますッ!!
 何卒、その写真をバラ撒くのだけはお止めくださいッ!!」
「あたしからも、どうかッ!!」

 劉備と魏延は、揃って床に手をついて簡雍に懇願する。

「へいへい。んじゃ、一人2千円づつお恵みを頂きましょ〜か」

 劉備達の情け無い姿を見て満足したのか、簡雍はようやく二人を許すのだった(と言っても、しっかり金は取っているのだが)…。

「毎度あり〜♪ んじゃ、あたしはこれで」
(く〜っ!!堪忍やでぇっ!!)
(きばると文長! こげん試練も真の乙女になる為じゃッ!!)

 悠々と廊下を後にする簡雍の背中を見ながら、怒りに打ち震える劉備&魏延。
 その夜、劉備は魏延と共謀し、簡雍の部屋に忍び込んで眠っている彼女の額に「肉」の文字を黒の油性マジックで書き入れ、ささやかなる復讐を果たすのだった。

「ああ〜っ!! な、何よこれぇっ!?」



 終

326 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/14(木) 00:14
てな訳で、ついに完成しましたです。
当初は広…もとい楊儀を出して、魏延を徹底的に叩かせる展開にしようと考えていたのですが…。
それだと全然コメディにならないので、かような展開になりました。

しっかし何だか方言関連が全然ダメですな…特に魏延の薩摩弁(汗
親戚に実家が鹿児島の人がいるのに、すっかりそっち系の方言を忘れてしまいましたわ(^^;

拙作ですが、どうかお楽しみ頂ければ幸いです。

PS・諸葛亮の栄養ドリンクネタは、アサハルさんのイラストに。
   そのドリンクのネーミングは、某カンフー映画のタイトルに影響されましたw

327 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/15(金) 15:26
ヤッサバ隊長乙!
ふー。楊儀が出てこなくてよかった…(^_^;) 漢魏延たんのヨサゲなところだけで…
ナニゲに庶務三羽ガラスの呼称がツボ。ていうか、その一羽は簡雍たんなわけだが。
しかし今回、おそらく初めて簡雍たんの敗北!やはり劉備がその気になって反撃すると
簡雍たんもしれやられるということですねえ…

>某ドリンク
私はゲームの方かと。

328 名前:ヤッサバ隊長:2003/08/15(金) 17:17
考えてみたら、簡雍たんってば帰宅部連合(それ以外の陣営もですが)の機密の数々を激写してきた、かなり重要な人物ですよね。
もし彼女が生徒会に捕らえられてしまったらと思うと…(ガクガクブルブル
まぁ、劉備も彼女を信頼しているからこそ、かのような重任を命じているのだとは思いますが。

>簡雍敗北のオチ
もうちょっとその辺を詳しく書いとくんだったと激しく後悔(^^;
そうすればオチの面白さも倍増しただろうに…。

>ドリンク名称
うぃ、自分もゲームで知りましたです!w
ってか、俺が小学一年の時に初めて買ったFCソフトだったり(爆

329 名前:★教授:2003/08/18(月) 21:58
■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第二章〜 ■■


「うりゃっ」
「わっ! やったな〜」
 燦燦と降り注ぐ暑く眩い陽の下。乙女は水と、そして仲間達と戯れている。
 薄く涼しげな衣に身を包み、一時の休息を愉しむ。
 日が沈み、そしてまた日が昇るその時まで――



「だーっ! 義姉貴! 反則だぞ!」
「こういうのはアタマ使った方の勝ちや!」
 プールサイドを楽しそうに逃げまわる張飛。そしてウォーターガンを両手にガンタタスタイルの劉備。
 玩具での攻撃…と言えば聞こえはいいのだが。ウォーターガンから射出される水の勢いは明らかに玩具の粋を脱していた。
「うりゃっ!」
 劉備の放った一撃がコンクリートの壁に当たる。――穴が開いた。
 張飛はその様を見て急速に蒼褪めていく。
「な、なな…何だよ、その規格外の破壊力は!」
「孔明に改造してもらったんや。アンタは頑丈やさかい、被験体になってもらうで」
「ひでぇ! 義理妹への愛が感じられねーぞ!」
 今度は本気で逃げ出す張飛。その後ろを本気で追い掛ける劉備。
 殺人ウォーターガンを作成した孔明はリクライニングチェアーに腰掛けながら、のんびりと義理姉妹の修羅場を眺めていた。威力の確認も兼ねているようだ。
 その横でビ竺が本(恋愛小説)を広げている。その優雅な姿は正しく『深窓の令嬢』という言葉がピッタリだった。
 更にビ竺の隣では雷同が目を回してうなされている。
「鬼が…歳食った鬼が…」
 そんなうわ言を繰り返しながら痙攣していた。不憫な娘である…。
 プールの中では黄忠と厳顔が浮き輪を手にぷかぷかと漂っていた。
 無邪気に泳ぐでもなく、ただ流されるままに漂っているのだ。
 そんな二人の横を法正が泳ぎ抜けていく。
 長い髪を綺麗にまとめて華麗なフォームで水をかき分ける。
 …と、法正の横に並ぶもう一つの影――簡雍だ。
(憲和!? 負けられない!)
 簡雍の姿を確認した法正がペースを上げる。
(やるじゃん、法正)
 にやりと口元を歪めると簡雍もギアを上げた。
 そして――二人の手がほぼ同時に縁に触れる。
「ぷはっ。…ちぇっ、法正の勝ちだよ」
「憲和の方が速かったよ…」
 お互いに勝ちを譲り合う。二人の顔に自然と笑みが零れた。
 そんな二人の近くに先ほどの漂流している黄忠と厳顔が漂ってきた。
「青春ね〜…」
「そうね〜…」
 ぼーっとそんな事を呟きながら再び遠ざかっていく。
「年増舟だ! やっぱり力無く漂ってる!」
 簡雍がとんでもない発言をする。
「誰が年増だ、こらぁ!」
「いい度胸してんじゃないの!」
 この発言は年増コンビに聞こえたらしく、物凄い勢いで戻ってきた。
 身の危険を感じた簡雍は法正を盾にすると…
「…って、法正が言ってました♪」
 と、身代わりにしてさっさとプールサイドに退却。
「え? え、ええっ!?」
 法正は自分が何を言われたのか、そして何をされたのか理解し切れずに、ただうろたえるしかなかった。
「法正! テメー、死なす!」
「無事に帰れると思うなよ!」
 年増コンビはうろたえる法正を捕獲すると、浮き輪の中に押しこめてプールの中央まで拉致しはじめた。
 ここに来て自分がスケープゴートにされた事に気付く。
「憲和ーっ! 覚えてなさいよーっ!」
「生きて帰って来れたらね」
 簡雍は喚き散らす法正にひらひらと手を振って、デジカメのシャッターを切った。
 芽生えかけた友情という芽はいともあっさり摘まれてしまった…。


 法正がお仕置きという名の粛正を受けてから一時間。全員が遊び疲れてプールサイドで休憩を取っていた。
「それにしても今日は暑いなぁ」
「そうですね、私の予想では明日もこのような天気かと」
 劉備の言葉に白羽扇を口元に孔明が太陽を見上げる。ちなみに黄忠から借りたサングラスを着用しているので眩しくはないようだ。
「……………」
 孔明の隣ではビ竺が小さく寝息を立てている。そしてそんな彼女をほっとけない二人がいた。黄忠と簡雍だ。
「気持ちいい天気だから眠たくなっても仕方ないな…」
 黄忠はビ竺を膝枕しながら髪を優しく撫でている。母性本能をくすぐる寝顔についつい黄忠の顔も綻んでいた。
「夏は最高な場面に出くわす事が多いしね♪」
 周りでは簡雍が忙しく動きながらビデオ撮影中。かなり際どい画像も撮っているようだ。
 ほっとけないというニュアンスがかなり食い違っている二人である。
「ビ竺は寝てるんだ、あっちの方で撮影してくれ」
 大人の余裕を見せながら簡雍を張飛の方へ押しやる厳顔。
 分が悪いと算段した簡雍も渋々その場を離れた。年の功が悪魔を遠ざけたのだ。
「雷同…何だソレ?」
「これが無いと落ちつかなくて」
 張飛が覗きこむその先には、雷同が手にした護身用武器。
 基本的にか弱い女性が犯罪から己の身を護るべく持つ代物――そう、スタンガンである。
「ふ、ふーん…それをどうするんだ?」
「しびれる為に使う」
 ごく当たり前のように、かなり危険な返答をする雷同。
 流石にこれには引いた張飛。一歩ずつ後ずさりしながらほくそ笑む雷同から離れる。
 後日、何の因果か雷同は張飛の下に付いて従軍する事になる。時折スタンガンを手にしてニヤニヤ笑う雷同に頭を振って悩む張飛の姿が戦場で見うけられたとか…その話はまた次の機会にでも。
 そして、法正はどうなったのか――
「憲和〜…もう許さない〜…あ…年増の鬼が…」
 雷同同様うわ言の様に恨み言と恐怖に慄く言葉を繰り返しながら、うつ伏せに寝かされていた。
「簡雍殿、法正の写真を撮ってもらえないかな?」
 うろうろと動きまわりながら撮影を続ける簡雍に声を掛ける孔明。
「いいよー。あ、そうそう…ここだけの話だけどね」
 簡雍がちょいちょいと手招きして孔明を呼ぶ。
 孔明も面倒くさそうに立ちあがると簡雍の傍に近づく。
「実はね、ダンナ。法正のちょっとした…俗に言う『ポロリ』な写真もゲットしてんですよ…一枚300円でどうっすか?」
 こそこそと悪事を耳打ちする簡雍。黒いシッポと羽が生えてる…。
「ほほう…買った。そちも相当の悪よのぅ…」
「いえいえ、お代官様ほどでは…」
 邪な笑みを浮かべる二人の悪魔がプールサイドに降臨。
 B級の時代劇の悪人のような二匹の悪魔の下で法正が更に魘されていた…。


「皆さん〜、アイス買ってきました〜」
 暫く休憩していると孫乾が両手一杯に紙袋を抱えて現れた。
「お、ご苦労さん。大変やったやろ?」
 紙袋を受け取りながら労いの言葉を掛けてやる劉備。
「いえ、皆さんが喜んでくださるのなら全然苦にはなりません〜」
 にこにこと太陽に負けないくらいの笑顔を見せる健気な少女、孫乾。
 その眩しさに目を背ける張飛と雷同と簡雍。眩しすぎる程疚しい事があるのだろうか。
「…えらい! そや、アンタも泳いでいき!」
 感動して滝の様な涙を流す劉備が孫乾の肩を掴む。
「え、えーと…」
 あたふたしながら動揺する孫乾。アイスを届けに来ただけなので水着も持ってきてないので返事に困っている様子だ。
「アイス落ちてるって!」
 張飛と雷同がコンクリートの地面に落ちた紙袋をかっさらっていく。
 そして、その動きを二匹の老鷹…失礼、二匹の鷹が追いかけていった…。

 一名増えそうな勢いのプールサイド――
 乙女達の夏はまだ終わらない――

330 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/18(月) 22:15
水着祭り第二段キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

むう、やはりガンカタで張飛を射殺せんとする劉備たんに萌えるべきだが、
防戦一方の張飛たんにも今回は萌えた。
そして密かに麋竺たんの活躍も光ってるなあ…(;´Д`)ハァハァ…
案外運動神経いい簡雍たんも法正たんもツボですが、ゆらゆらと漂い去ってゆく
年増舟二艘も可愛いかも…。
つか、雷同、そこまで…
最後はお使い乾ちゃんでトドメさされました…

331 名前:おーぷんえっぐ:2003/08/19(火) 02:50
やっぱり、学三の夏(特にプール)では、どこも、こんな感じのい修羅場
なんでしょうかね。  法正・・・ゴチュージョーサマ・・基い
ご愁傷さまw

332 名前:彩鳳:2003/08/19(火) 02:58
 >皆様方へ
 どうも、長々と姿を消していた彩鳳です。(覚えてる方いらっしゃいますか?)
 SS未完成のまま消えてしまって面目無い次第です。何はともあれ、復帰の御挨拶に参りました。

 >教授様
 電気ビリビリの雷同(雷銅?)がここまで強烈なキャラになるとは・・・
 何故か電撃文庫の某小説に登場する銀髪の戦士を思い出します。(電気以外に特に共通項は
無いのですけど・・・必殺技のサ○ダーヘッドが格好良すぎて)
 簡雍&法正、黄忠&厳顔のコンビも以前と変わらぬ活躍振りですが、活躍の幅が広がっていますね。
 

333 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/20(水) 22:28
ワショイー!彩鳳様おひさしぶり! 復帰おめ&ありがとうございますっ!
げ、彩鳳様の最後の作品を拝見してから、もう半年近くになるのかΣ( ̄□ ̄;)!!
マジ戦略と萌えと笑いの三拍子揃った彩鳳作品を、また読むことができるならば
これに勝る幸いはありません…。
ともあれ、今後も宜しくお願いします〜

334 名前:彩鳳:2003/08/22(金) 00:51
 >教授様
 お節介なのは百も承知なのですが、勢いに任せて描いてしまいました。一応、

「ほほう…買った。そちも相当の悪よのぅ…」
「いえいえ、お代官様ほどでは…」    

 http://gaksan1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upboard/upboard.cgi target=_blank>http://gaksan1.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upboard/upboard.cgi

 のシーンなんですが・・・とても見えませんね(滝汗)。てか、某文和さんの時といい
なぜマトモな表情にならないのか(嘆息)
 魘されてる筈なのに無邪気に寝ている誰かさんに至っては・・・(^^;
 

335 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/22(金) 01:19
いえいえカワイイ!(゚∀゚) 彩鳳さまありがとうございます!
なんか悪代官と越後屋っぽい「目」が二人のマジ度を思わせます(^_^;)
法正タン…

336 名前:★教授:2003/08/22(金) 22:35
彩鳳様>

孔明タンと憲和タンが悪人っぽいマジな目と口元がイイ!
真剣、そして本気と書いてマジと読む。素晴らしいです、感謝の嵐でございます。
書き手冥利に尽きる一枚…頭が上がりません。

337 名前:彩鳳:2003/08/23(土) 11:35
 何を今更の感がありますが、水着の紐描き忘れてました( ̄▽ ̄;;;
 元々平面的ですが、にしても立体感に欠けると思ったら(今ごろ気付いてどうする@冷汗)
  
 ま、うつぶせな状態の訳ですから、大騒ぎするほどの問題では(ドキューン)
 

338 名前:雪月華:2003/08/29(金) 09:53
ひと夏の思い出 ─そして現実へ─
そんなこんなで、4人に一匹を加えたサバイバル生活は続いた。
島内の滝で、滝の飛沫と満月の光の組み合わせでできる白い虹『月虹』を見たり、島の北東部で偶然発見した謎の遺跡の探検中、孫策のヘマで遺跡が崩れて生き埋めになりかけたり、突如飛来したUFOらしきものに孫権がさらわれかけ、それを孫堅と孫策の連携技───超○覇○電○弾といい、後に孫策はスタンドアローンでこの技を放つ事ができるようになる─で撃墜したり(船体に『諸葛』と刻んであったようだが、長湖の藻屑となった今では確認のしようが無い)…例年に比べ、驚くほど平穏のうちに時の大河は流れ去り、夏休みも、残すところあとわずかとなった。
キャンプ最終日の前日の夕食後のことである。

「なあ、孫権」
「なあに?伯符お姉ちゃん」
膝の上で寝息をたてている首長龍の背中を、飽きもせず撫でながら孫権は上の空で返事をした。時折、のどのあたりを優しくくすぐってやると、くるる、と甘えた声を上げる。
益州校区の山々の陰に沈む夕日の、最後の光が、焚火を囲む4人をオレンジ色に染め上げている。孫策と周瑜は何やかやと冗談や悪口雑言を応酬しており、孫堅は先日の遺跡探検の際に持ち帰った壺や、怪しい偶像を磨くのに余念が無い。別に学術的熱意や考古学的愛情に駆られての事ではなく、「きれいなほうが高く売れるだろう」と抜け目無く考えた上での事であったが。
「そいつ、名前決まったのかよ?」
「うん、あゆみって決めたの」
「へぇ〜、ま、母親格のお前が決めたなら文句は無いけどよ。長湖からとって『チョーさん』って考えがあったんだけどな。首も長いし」
「伯符ったら、あいかわらずネーミングのセンスがないのねぇ。それに、なんか似たような響きの存在がある気がするから却下」
酷評に失望した孫策は、じろりと周瑜を睨むと、妙に慇懃な態度をとった。
「情け容赦無くキツイ事言ってくれますなぁ、周瑜さん」
「いえいえ滅相も無い。己の欠点を知り、屈辱をばねにして、よりいっそう成長してほしいと願う純粋なオヤゴコロですよ、孫策さん」
「いやいや、それは親心ではなく老婆心というもの。うら若きオトメでありながらババアの心を有するとは、その精神の老け方…いやいや成長には恐れ入ります。されどこの不肖孫策、もう充分にオトナであるゆえ、余計な気遣いは無用というもの」
「あらあら、そういうことはせめてバストが75を超えてから言うものですよ、伯符ちゃん」
「んな…!?」
「73・55・77。この数字は五ヶ月前からまったく変化していませんわ。伯符のことなら、もう隅から隅まで知っていましてよ。オホホのホ」
「な、何で知ってる!?身体測定の結果は全て焼き捨てていたはずなのに…」
「そんなこと、赤子の手を捻るより簡単よ。伯符って一旦寝付くと絶対に朝まで起きないから、その隙に服…」
「周瑜!それ以上言うな!」
羞恥と怒りで顔を真っ赤にした孫策が、抗議の声を上げて周瑜につかみかかった。
ひらりとそれをいなすと、跳ねるように立ち上がった周瑜は砂浜のほうへ駆け出した。
「ホホホ、捕まえてごらんなさ〜い」
「待ちやがれ!」
「終わりない鬼ゴッコを楽しむのが恋愛というものよ〜」
「いつから俺達は恋人になったんだよ!?」
周瑜にいなされてうつぶせに倒れていた孫策も、その後を追って猛然と駆け出していった。
「ったく…見てて飽きない連中だよ。ま、それだけ仲がいいってことなんだろうけどねぇ」
壺を磨く手を休めて、孫堅が苦笑した。そのまま孫権の方を見て何気なく、そして一番重要なことを質問した。
「仲謀。このキャンプが終わったら、その子はどうするつもりでいるの?」
「え…その、寮で飼え…ないか」
「育て上手のあんたのことだから、ペット管理能力に疑いは持ってないわよ。今まで拾ってきた動物、しめて5羽と22匹。いずれも老衰以外では死なせてないし、エサ代も自分の小遣い切り詰めて出している事だしね。…あたしが心配してるのは徐州校区生物部のことよ」
「生物部…最近徐州校区で興った天帝教っていうインチキ宗教に染まったっていう…」
孫権はうそ寒そうに首をすくめた。
「そう。最近、とみに汚染具合がひどくなってきたらしくてねぇ…『解剖するぞ解剖するぞ解剖するぞ』って呟きながら尋常じゃない目つきで小川を浚ってる姿も良く見かけるわね。解剖が学術的手段じゃなくて目的にすりかわっているから、その子、見つかったらただじゃすまないでしょうねぇ…」
「それじゃ、この島に残していくしか…ないのかな」
「まあ、さしあたって、それ以上の手はないわね。幸い、この島にはそう危険な動物もいないし、食べ物だって沢山ある。明日の朝十時頃に、迎えに来るから、今夜のうちに別れを惜しんでおく事ね」
そう言って、再び孫権は壺を磨き始めた。

深夜、孫権はふと目を覚ました。
赤壁島の夜は蒸し暑く、蒸し風呂という表現がぴったりだが、なぜか蚊の類がいないため、慣れてしまえば結構快適ではある。
時計が無いため正確な時間はわからないが、遠くに僅かに見える揚州校区校舎群の常夜灯も消えている事、月明かり以外に光源が無い事から、午前三時頃である事がわかった。世間一般でいう逢魔ヶ時の真っ只中である。
「…あれ?」
孫権は、半身を起こしてあたりを見回し、自分の手元から首長龍の子供…あゆみが消えている事に気づいた。
なんとなくそのまま眠ってしまおうかと考えたが、ひとつ頭を振って睡魔を追い出すと、立ち上がって、あゆみを探す事に決めた。
なにやら這いずった跡が孫権の傍から300mほど離れたところにある砂浜に続いており、それを追っていけば容易に発見できそうだ。
熟睡している姉達と周瑜を置いて、しばらくその跡を辿っていった孫権は、ふと、砂浜に立って遠い対岸のほうを見ている人影に気づいた。
ありえる話ではない。今、この島には、孫姉妹と周瑜の四人しかいないはずである。だが不思議と恐怖は無く、好奇心がそれに勝り、孫権は足を止める事は無かった。
ようやく人影が何者か判別できる距離に近づき、それが小学3年くらいの少女である事がわかった。身長は125cmくらい。白い帽子と同じく白のノースリーブワンピースを身につけている。肩の下あたりまでの、つやのある髪は、月光を浴びてやや青みがかっているように見えた。
孫権は気づいていなかったが、このとき、注意深く観察していれば、這いずった跡が少女の手前3mほどのところから人間の足跡に変化しているのに気がついたであろう。
少女が振り向いた。その表情に驚いた色は無く、ただ、優しく微笑んでいる。
大きな目をした美少女ではあるが、生徒数十万人を誇る蒼天学園には、目の前の少女以上の美人はいくらでもいた。ことに孫策の親友である周瑜は中等部三年の身でありながら、中等部、高等部に並ぶ者の無い美女であるため、孫権は美人を見慣れているはずであった。
いや、孫権の心を惹いたのは、その美貌ではない。優しさ、穏やかさ、温かさなど、人の世に存在する柔らかい単語を擬人化したようなその雰囲気が、孫権の心を引いたのである。
なんとなく立ち尽くしていると、少女が孫権に語りかけてきた。
「ありがとうございます…そして、お待ちしていました」
「え…?」
かける言葉を見つけられずにいると、少女がさらに話を続けた。10歳ほどの少女とは思えないほどの丁寧な言葉遣いである。それでいていやみが無いのは、言葉の根底を成す、その優しさからだろうか。
「…明日で、お別れですね」
「お別れって…キミは誰?どうしてここにいるの?確か初対面だよね?」
質問をしながら、孫権は急に睡魔が勢いを取り戻してきた事に気づいた。視界が揺れ、立っているのが困難になりつつある。
「別れるのは寂しいですが、お互い元気であれば、いずれまた会えます。…いつかまた、必ず会いに来て…」
「え…ちょ…ちょっと待って…キミは…誰?」
今や睡魔の勢いは孫権の全身を席巻しつつあった。視界が霞み、立っていられなくなって孫権は砂浜に膝をついた。
「私の名は、あなたがつけてくださいました。私は……」
孫権が憶えていたのはそこまでだった。

暗い夜空を駆逐して、東の空に姿を著した太陽が、空という名の山を中腹あたりまで踏破し、緩やかに波打つ長湖の湖面を、数万の宝石を浮かべたかのようにきらめかせている。キャンプ二日目の朝から見慣れた光景ではあるが、その日は少し様子が違っていた。
砂浜の端に備え付けられた粗末な桟橋には、二艘の手漕ぎボートが係留されており、六つの人影が忙しく立ち働き、キャンプ道具や発掘品を積み込んでいる。孫堅ら4人と、彼女達を迎えに来た、韓当と祖茂である。
「しかし周瑜。今朝の孫権は一体どうしたんだろうな?」
「目が醒めたらベースキャンプにいなくてびっくりしたわね。まさか砂浜で寝てるなんて」
「夢遊病の類でもないしなぁ。あそこまで寝返りを打ったってことも無いだろうし…」
二人の視線の先では、孫権がしゃがみこんで、首長龍の子供と無邪気に遊んでいた。
全ての積み込みが終わり、いよいよ別れの時がやってきた。
孫権は最後の別れを惜しむように、首長龍の子供を抱き上げると、ありったけの思いをこめて抱きしめた。規則正しい鼓動が、優しく伝わってきて、ともすれば悲しみに沈みそうになる孫権の心を励ましている。
「また、逢えるといいね…」
そう呟くと、首長龍の子供を砂浜に降ろし、船のほうに向かって駆け出した。
孫権が飛び乗ってくるのを合図に、ボートが桟橋を出た。一艘目には孫策と周瑜、最初の漕手には祖茂。二艘目には孫堅と孫権、漕手は韓堂という割り振りである。
船尾から身を乗り出た孫権の視界の中で、赤壁島と、湖岸でじっとこちらを見つめている首長龍の子供の姿が、どんどん小さくなっていく。不意に、昨夜見た不思議な少女と、首長龍の子供の姿が重なって見えた。視界が滲んだ。孫権は自分が泣いているのに気がついた。
「絶対、絶対来年も来るから、それまでボクも頑張るから!それまで待ってて!絶対だよー!」
そう叫んで、孫権は赤壁島に向かって身を乗り出すと、ちぎれんばかりに手を振った。
首長龍の子供のほうも、孫権を真似てか、小さな前ヒレをぎこちなく振っていた。
口元をほころばせ、その様を肩越しに見ていた孫堅は、韓当のほうに向き直り、少し照れくさげに言った。
「もっとゆっくり漕いでやって、義公」
「ふふ、了解しました」
韓当も柔らかく微笑み、船を漕ぐ手を少し緩めた。

その頃、少し先行するもう一艘の船では、滑稽だが、ある意味深刻な問答が交わされていた。
「頼む!周瑜!一生のお願い!宿題写させてくれ、いや下さい!」
「伯符…あなたの「一生のお願い」はこれで…ええと21回目よ。小学一年生の頃から全然成長してないのねぇ。長期休みの恒例になってるじゃないの?」
船底に這いつくばる孫策を見下ろして、周瑜はあきれたようにため息をついた。実際、心の底からあきれ果てている。
「お姉様も孫権ちゃんも、合宿始まる前に全部終わらせたのに、どうしてあなただけ毎年毎年…」
「頼む!何でも言う事聞くから!」
そう言ってしまってから、孫策は心の底から後悔した。
「何でも…ねぇ。うふふ…」
小学校入学以来、長期休みの終わり近くには毎回繰り返されてきた問答である。よく飽きないものだと思いつつも、周瑜は魔界の大魔王すら恐れおののく邪悪な微笑を浮かべながら、さて、どういう要求をしてやろうかと、その怜悧な頭脳をフル回転させていた。
ちなみに始業式は明後日である。

339 名前:雪月華:2003/08/29(金) 09:55
いや、ども、おひさしぶりです。お盆休みを5日取れたのはいいんですが、体調を崩してしまって、休みの殆どを通院する羽目に(T_T)
キャンプ関連SSとして「願いの橋」「レイダース」「魔人襲来!揚州校区最後の日」というタイトルで考えてたんですが(どういう内容かは後編の冒頭を読み返していただければわかるかと)、なんか夏が終わりそうなので急遽完結。石を投げないで下さい(^^;
学園版歩夫人詳細設定も人物設定スレに上げておきましたので、そちらのほうもご一読を…
一応、孫権の江夏攻め直前を舞台とした再開編へと続く予定ですが、長編も二つ掛け持ちしているので、いつになるかは…

ちなみに人間モードのあゆみタンのモデルは、修学旅行一日目の大阪さんだったり…ちゃんぷるー!
できれば玉川様に、こども大阪を描いていただけたらと…

老婆心ながら、正史における歩夫人の紹介を…
○歩夫人
孫権の筆頭側室。のちの丞相である歩シツの一族。その美貌と優しさを孫権に永く愛された。
その地位にも関わらず、嫉妬を知らない優しい性格であり、むしろ積極的に、後宮の他の女性たちの後ろ楯になったりしていた。
孫権が皇帝を称した際、皇后に冊立しようとしたが、太子の孫登らに、側室だからという理由で反対された。ちなみに孫登は、母親が卑賤の女であったため、孫権の正室であり、こちらは烈女として知られた徐夫人に扶育されていた。(烈しい正室と、温和な側室。長男は正室に育てられる…誰かの家庭環境と似ているような気が…その長男が早死にして、後継者争いが起きるところもそっくり。こちらの場合は、孫権の日和見によりかなり深刻な事になってしまった)
しかしながら、親戚や重臣からは中宮(皇后の尊称)と呼ばれ、宮中では皇后同然の扱いを受けていた。
問題が解決しないまま十数年が経った頃、ふとした病で急死してしまい、孫権はその墓前に皇后の印綬を供え、その死を惜しんだと伝えられている。

ちなみに孫権との間に二女をもうけており、姉が魯班、字を大虎。妹を魯育、字を小虎といい、姉の魯班は重臣の全ソウに嫁ぎ、母親の歩夫人の死後、その寵が薄れることを恐れ、個人的に対立していた王夫人や、その息子の孫和を讒言して遠ざけさせ、孫権の生涯の汚点のひとつである「二宮の変」における、孫覇側の黒幕となった烈女であった。
それ以前にも、魯班は母親の威を笠に着て好き勝手に振舞っていたらしく、どうやら歩夫人は、良妻ではあっても賢母ではなかったらしい。その全責任を歩夫人にかぶせるのは酷というものだが

340 名前:★ぐっこ@管理人:2003/08/30(土) 00:54
雪月華作品キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

うーん。さすがの一言!小ネタのバランスもいいなあ…。冒頭で三度ワロタ。
そして案外さばけてる周瑜たんハッケーン。なるほど、孫策たんとはそういう仲だったのか(^_^;)
まさに主従逆転。堅姐ェも孫姉妹の中で無敵。ええなあ…

でも今回は孫権たんに激烈に萌え。やはり動物好きなのね(゚∀゚)
心温まるエピソードや…


それにしても、あゆむタンときましたか! 人化!? 今後もしょっちゅう現れるということですが、
どういうタイミングで人化するんでしょう?あゆみたん(;´Д`)ハァハァ…

341 名前:雪月華:2003/09/03(水) 18:55
書き忘れた事 追記(人物設定スレの内容も含む)
>周瑜
やっぱり孫堅・孫策時代の周瑜はこれぐらいハイテンションじゃないかなって思います。
個人的な印象では、意外と喧嘩好きで、激昂する孫策を一応なだめているうちに、いつのまにか孫策が引くほど自分が怒りだしてしまう(笑)。
やたら鋭い勘と勢いで突進する孫策と、同じ勢いで突進しつつ、悪魔的な策をめぐらすため、敵にとっては孫策よりも厄介な存在(笑)
でも、孫策あっての陽気さというやつで、孫策リタイア後は本来の生真面目な部分が現れた、という感じですか。

>あゆみタン
・背中に二人ほど乗せて、長湖を泳げます。とはいっても、孫権と谷利以外は乗せようとはしません。
江陵棟近くの湖畔から、長湖さんの背中に乗って長湖を行く孫権の姿を見て
「いいなぁ…長湖さんいいなぁ…」と呟いた人がいたりします。
・人化の仕組みは…謎です(笑)。長湖さん本人にもわかっていません。
基本的に、初対面時以降は人化していません。ある意味、作家にとって扱いやすい設定(笑)

>>歩騭とのカンケイ
正史では同族、ということで結構悩んだのですが、
他の部員と比べて仲が良かった、というぐらいでしょうか…

>教授様
帰宅部連合夏の陣、大変楽しく読ませていただきました。
ある意味、任侠と友情だけで結束している(褒め言葉?)帰宅部連合の特徴が良く出ていると思います。
成都棟攻囲の話も楽しみにさせていただきます。遅レス失礼を…

>ヤッサバ隊長様
周瑜、魯粛と並ぶ諸葛亮伝説の犠牲者、魏延への愛情がひしひしと伝わってまいりました。
魏延と諸葛亮の関係は、いわば三国志の黒歴史というべきものですので、これからも楽しみにさせていただきます。
でも全ての事情を知ったうえでも、私は魏延が好きになれない…失礼。
同じく遅レス失礼しました。

今、関羽の長編が煮詰まってしまっているので、とりあえず、新しい構想に取り掛かっております。
無口っ娘倶楽部会長の左慈提唱、シチュに萌えるで、
「貂蝉を排除しようとしたために露骨に董卓に疎まれてしまうが、それでも「健気に」尽くす李儒と、彼女をいたわる世捨て人、皇甫嵩・盧植。その頃、董卓の副官になるのを嫌がって洛陽に逃げた朱儁は…」
また後漢ズ(李儒含む)に萌えてきました。将軍位や戦シーンなど、かなりifを含んでおりますが…

おまけ
ttp://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/1994/
「書庫」にGo! 見つけた瞬間「玉川様のサイトかな?」と思ってしまいました

342 名前:★教授:2003/09/14(日) 23:09
■■ 帰宅部連合夏の陣! 〜第三章〜 ■■


「あの〜…これでいいんでしょうか…?」
 孫乾がもじもじと恥ずかしそうにプールサイドに現れる。
「スレンダーでええなぁ…うん、よく似合っとる」
 劉備の微妙な褒め言葉。しかし、それも孫乾には嬉しかったらしく素直に安心したようだ。
 ちなみにこの水着は孔明が『こういう事もあろうかと…』とか言いつつどこからか取り出したのだ。
 しかし、その水着はスクール水着。明らかに萌えを狙ったもので『そんかん』と平仮名で書かれたネームラベルが綺麗に縫い込まれていた。その場にいた一同が変な汗を流した一時であった。
「うむ。萌えポイント1000点を献上しよう」
「う、嬉しくないです〜…」
 満足げな孔明の言葉には複雑な顔をする孫乾。
 そんな彼女を二人の刺客が挟撃する。
「よーし、第二ラウンドだーっ!」
「いぇーっ!」
 張飛と雷同が絶妙なテンションで孫乾を担ぎ上げると、そのままプールの中に拉致していった。
「ふぇぇ…」
 困ったような泣き出しそうな表情で大人しく攫われる孫乾。彼女らしいと言えば彼女らしい。
「さて、私達も泳ぎにいきましょうか」
 黄忠と厳顔もゆっくり立ちあがると軽く柔軟体操を始める。
「孔明と子仲はどうするの?」
 すっかり回復した法正が何故か着崩れしていた水着を物陰で直しながら二人に尋ねた。
「私は遠慮しておきましょう」
「私も…もう少し眠ります」
 やんわりと遊泳を拒否する孔明とビ竺。一体何しに来ているのだろう。
「ウチはそろそろ泳ごかな…」
 ストレッチを入念に行いながらメガネを外す劉備。その途端、孔明の目の色が変わった。
「総代! 今日は泳がれない方がよろしいかと!」
「な、なんやねん。ウチが泳ぐくらい別にええがな」
「いいえ。今日のプールには不吉な空気が漂っております! 何かに取り憑かれますぞ!」
 ずずいと劉備に迫る孔明。目がかなり真剣だ。
「さ、さよか…。でも、今泳いでるあいつらにも言うたらな…」
「彼女達ならば大丈夫でしょう。紛がりなりにも我等が帰宅部の強者、凶兆など撃退する事です。しかし、総代にもし何かあれば…私は悔やんでも悔やみきれませぬ!」
「孔明…ウチの事をそこまで考えてくれてんのやな…。よし、分かった! 今日はここで日光浴してる事にするわ」
 孔明の言葉に感銘を受けた劉備はメガネを掛け直すとビニールシートの上に横になった。
「………(ふぅ…これで総代がメガネを外すという緊急事態を回避する事が出来たな。流石は私、見事な口上だ)」
 単にメガネを外されたくなかったらしい孔明は安心しながら自画自賛を脳内で行っていた。
「あっつぅ…」
 簡雍はアイスキャンディーを口にしながら気だるそうにプールサイドで足だけ水に浸けていた。元々インドア派の彼女にはそろそろ夏の日差しがきつくなってきている模様。
「それそれ〜っ」
「きゃーっ!」
 一方、プールでは猛烈な勢いで泳ぐ張飛に引張られる孫乾が可愛い悲鳴を上げていた。
 少し離れた所では雷同が黄忠にラリアットを、厳顔にドロップキックを食らっている。鬼神と化した二人の攻撃によって沈められた雷同の手には二人分の水着の上が握られていた。
 固く握り締められた手を無理矢理こじ開けようと奮闘する黄忠と厳顔。相当焦っている事が誰の目にも明らかだった。当然、こんなおいしい演出を見逃すパパラッチはいない。
「ナイスショット。連写モードで撮るよ〜」
 だらだらとアイスを咥えていた簡雍が突如覚醒。デジカメとビデオを構えて激写し始める。
「こらぁっ!」
 やっと雷同の手から自分達の水着を取り戻した黄忠と厳顔が簡雍に向かって猛然と水を掻き出した。
「あははっ。捕まるようなヘマは私はしないよ〜」
 悪戯っぽく笑うと手提げバッグから『ある物』を取り出して二匹の野獣に投げつける。
「な、なんだ…コレ。…いいっ! 誰の下着だよ!」
 黄忠は掴み上げたその『ある物』…誰かさんの下着に動揺と驚きを隠せない。大人っぽいその黒の下着に完全に困惑しきってしまう。
「ああああっっっっ!!!! それ…私の下着だーっ!!!」
 簡雍と反対側のプールサイドで法正が真っ赤な顔をしながら叫び声を上げた。
「今日は楽しかったよ♪ じゃ、また明日ねー」
 全員に向けて投げキッスを贈ると簡雍はさっさとプール場から出て行く。
「ま、待てえええぇっ!」
 怒りと羞恥で完全に紅潮しきった法正が簡雍を追っかけていく。
「法正まで行っちゃった…。…これ、どーしよ」
 びよーんと下着を広げながらまじまじと見つめる黄忠と厳顔。後で返せばいいと思う。
「もう一本いくぞーっ!」
「うう…もう勘弁してくださいー…っきゃー!」
 半べその孫乾を引張りながら縦横無尽に泳ぎまくる張飛。楽しそうではあるが中々に可哀想な光景だ。
 そんな喧騒を目を細めながら見ている劉備と孔明もいそいそと撤退準備を始めていた。

 こうして、騒がしくも楽しい一日が終わりを迎える。
 乙女達を照らしていた太陽が沈み、再びその姿を現す。
 それは飽くなき戦いの日々の訪れを乙女達に知らせる。
 これより後、今までよりも過酷な運命が彼女達を待ち受けている事を誰も知らない――


――翌日
「待てっ! 憲和ーっ!」
 怒りのオーラを発しながら簡雍を追いかける法正。
「そんなに怒るなよー。…あ、そうだ」
 逃げながら何かを思い出した簡雍。その直後に彼女の口から飛び出した言葉は法正の怒りに油を大量にぶちまける結果になる。
「昨日…『のーぱん』で帰ったの?」
「こ、ここここ…コロスーっ!!!」
 髪を逆立てながら簡雍を追う鬼女、法正。その目は殺意に満ちていた。
 いつもの鬼ごっこを繰り広げる二人が劉備の横を走りぬける。
「…本当にいつも通りやなぁ。さ…漢中制圧作戦、気張ろか…」
 ふぅと溜息を吐くと劉備は静かに会議室のドアを開く――

343 名前:★ぐっこ@管理人:2003/09/15(月) 00:32
>>341
見のがしたっ!スマソ、10日遅れのレスですが…
むう、確かに周瑜のキャラ造形、それくらいのアクがあった方がいいですねー!
どうも、私の中のキャラだといい娘ちゃん過ぎて。いわばキルヒアイス。
孫策と同レベルのバカ騒ぎしながら、常に二手先を読む知将ぶり!曹操がたじろく
ほどの美貌!…案外、学三は凄い周瑜像を世に送り出すやもしれぬ…(;´Д`)
あと、長湖さん(^_^;) あ、わたし乗れますよーって孫権たんが! 首長竜いいなあ…
歩騭たんとの絡み、ちょいと設定で考えてみますね〜。
おまけ…本家のガンダムスレでネタとして借用します、今から。

>>342
教授様グッジョブ!
以前の水着祭りの続きか〜。サリゲに悲惨な目にあってるライダー雷銅たん…
そして予告通り、お使い乾ちゃんの虜のようですな!教授様!
あっはっは!ヤッサバ隊長! 旧すくですよ旧すく!萌えポイント1000点!?
孔明め…さすがにあなどれんわ…!
しかしやはり学三における萌えは、法正が持っていってしまうのか…(;´Д`)ハァハァ
黒い下着…そしておそらく黒ストも所有しているでありましょう…
将来、手に負えない娘になりそう…。

344 名前:ヤッサバ隊長:2003/09/16(火) 08:45
>>342
旧スク…旧スク…旧スク……。
やってくれすぎですぞ教授殿!
俺の萌えハートは爆発寸前!! いや、今爆発!!

…暴走失礼しました。
想像しただけで、余りにも強烈なモノが脳裏に浮かんでしまったもので。
とにかく教授殿グッジョブ!!でしたw

345 名前:★教授:2003/10/10(金) 23:21
■■ 成都棟制圧 劉備と簡雍の決意 ■■


「…ちゅーわけで、これから成都棟を包囲するって事でええか?」
「異議無し。うー…燃えてきたぜ!」
「力に物を言わせて陥落させるんじゃないですよ、張飛さん」
 ここはラク棟会議室。最前線に立つ上将達が、今まさに成都棟に立て篭もる劉章達を降伏させる術を話し合っていた。
 論場で説き伏せようと意見する者、攻め落としてしまおうと意見する者。様々な意見が飛び交う中、最終的に決定されたのが『取り囲んで降伏させちゃおう』作戦だった。
 圧倒的な戦力差を見せつけ、アテもなく篭城を決めこむ生徒達の恐怖を煽る――そこはかとなくシンプルな手段だが、これ以上に効果的な手段もない。
 先日から法正が幾度と無く降伏を促す黒手紙を書きつづけているのも相乗効果をもたらしている。結構毒々しい内容なので割愛させてもらう事にした。
「ふむ…まあ伏線も引いてある事ですから、降伏して出てくるのにそう時間は掛からないと思いますが…」
 白羽扇を口元に当て、劉備一同及び会議室全体を見渡す諸葛亮。そして天井を仰ぐ。
「長引くと士気の低下、及び周辺組織の攻撃…特に曹操辺りでしょうか。…その辺りが心配になりますので…その際は諸将の方々、頼みます」
「…そうはならないようにしたいなぁ。劉章はんも頑張らんと降伏してくれればえぇんやけど…」
 劉備は溜息を吐くと窓を開けて成都棟の方角を哀しげな眼差しで見つめた。


「ふー…」
 簡雍は溜息を吐きながらラク棟をとぼとぼと歩きまわっていた。
 いつもの感じとは違う、少しアンニュイな表情を浮かべている。傍目から見ても悩みを抱えている事が誰の目にも明らかだった。
 彼女の心の中にあるのは、『益州校区成都棟総代』劉章の事唯一つ。
 劉備達と共に益州校区に入ってすぐに劉章に気に入られ、いつ何時でも彼女は簡雍を誘ってきた。色々な所へ連れて行ってもらったり色々な物を貰ってきた。自分達が益州校区を乗っ取るつもりで来た事も知らずに――。
 それだけに気に入られた自分が劉章を追い落とす…未だかつて経験した事のない『恩を仇で返す』事。それに戸惑いを覚えていたのだ。
「あの娘には法正同様裏切り者だって思われてるんだろーな…」
 ラク棟の中庭、池の側のベンチに腰を掛ける。自然と溜息が零れた。
「…玄徳の事だから降伏論で制圧論をねじ伏せてるんだろうけど…」
 そう呟きながらちらりと会議室のある棟を見上げる。丁度同じ時間に会議が終わっていた。簡雍の読み通り、劉備の降伏論で締めくくられて。
「最初は私もノリノリだったんだけどなぁ…らしくないや」
 ごろんとベンチに横たわると青々とどこまでも広がる空を、雲の流れを見ながら目を閉じる。
 浮かんでくるのは劉章の笑顔、声、そして哀しげな後姿。その背中が自分を『裏切り者』、『恩知らず』、『卑怯者』と蔑んでいる様に映った。
(違う! 裏切るつもりなんて…なかった!)
 心の中で全てを否定する。しかし、声は尚も簡雍を締めつける。木霊の様に、残響を残しながら全身を駆け巡る。
(違う! 違う! 違う!)
 何が違うのか、それすらもどうでもよくなっていた。とにかく否定する事しか出来なくなっていた。
 劉章の体がこちらを振り返る。哀しくも憎悪に満ちた目を向けながら。
『何が違うの? 仕方なかったなんて言わせない!』
 怒号が体の中に染み渡る。切り裂かれるような、引き裂かれるような…そんな痛みが突き抜けて行く。
 逃げ出したかった。形振り構わず、自分の立場もプライドもかなぐり捨てて遠く…遠くまで逃げ出したかった。
 だが、出来なかった。自分にしか出来ない事があったから――
 簡雍は心の中の劉章に真っ直ぐ目線を向けた。
(私は…君を…)




「…劉章はん。何で出てきてくれへんのや…」
 成都棟を取り囲んで既に何時間も経過していた。
 周囲には張飛、趙雲、馬超、黄忠といった名だたる将…そして帰宅部連合に降ってきた益州校区の雄将達が、攻め込む為の最終調整を行っていた。
 劉章の降伏をひたすらに待ちつづけた劉備にも焦りの色が強く浮かんでいる。
 そんな劉備に諸葛亮が最後通告を言い渡す。
「…部長。そろそろ…攻め込む時間です。これ以上は待てませんぞ」
「…仕方あらへんな…」
 最後通告、即ち劉章への死刑宣告に等しい言葉を劉備は苦々しく受け入れる。
 そして手を高らかに挙げると率いる全ての隊に号令を下した。
「全軍…とつげ…」
「あーあー…物々しいったらありゃしない」
 号令は最後まで続かなかった。眠そうなトボけた声が軍の中を割って飛び出してきたのだ。
 全員が声のする方を振り向いた。
「何? そんな大勢で取り囲んじゃ降伏できるものも出来ないっつーの」
 軍を割って簡雍が酒瓶を片手に劉備の前に立った。
「憲和…何しに来たんや? 今はあんたの出番とちゃうで」
 きっと簡雍を睨みつける劉備。しかし、それを涼やかに受け流す。
「玄徳。すこーしだけ時間ちょーだい。私が行って口説いてくるからさ」
「は、はあ? そ、そんな事したらあんた階級章取り上げられて追い出されるで!」
「大丈夫大丈夫。まあ、仮にそうなっても別にいいんだけどね」
 ぐいっと酒をラッパ呑みする。景気付けのつもりかどうかは分からないが豪気である事には違いない。
「憲和…あかんて」
 劉備は心配そうな眼差しを向ける。長い間ずっと自分に付いてきてくれた友人を失いたくはなかったのだ。
「あー…もう! 大将がそんなツラしてどーすんだよ、周りの士気も考えろっつーの。じゃ、行ってくる!」
「あ! 憲和!」
 簡雍は劉備の制止の声を聞かずに成都棟に向かって歩き出した。
 うなだれる劉備の肩に諸葛亮が手を置く。
「…今は簡雍殿にお任せしましょう。もし、簡雍殿の身に何かあった時は…」
「分かってる。でも…ウチはまだ憲和を失いたくない」
「…簡雍殿の仰られた通りですぞ。貴方がそのような顔をされると貴方に付いてきた全ての生徒が不安になられます。貴方は…我々の担ぐ神輿なのですから」
「…そやな。よしっ! 全軍、このまま待機! 指示があるまでそのままの態勢やで!」
 パシッとハリセンで地を叩く。その顔に迷いの陰はどこにもなかった――


「劉章…」
 簡雍は成都棟の正門前に立っていた。窺いを立てるので暫く待っててくれと言われているので大人しく待っているのだ。
「君は…私が…」
 天を仰ぎ、そして酒瓶を投げ捨てる。
「私が救ってみせるから!」


 ――簡雍が成都棟に入って1時間余り後
 劉章は簡雍に連れられて成都棟から出てきた――

346 名前:★ぐっこ@管理人:2003/10/11(土) 21:22
(゚∀゚)簡雍たんが初めて活躍らしい活躍を!
劉璋とは妙にウマがあったんですよねえ…。
しかし…孔明の前で堂々と酒をあおれるのはこの娘だけ。
あの自由奔放な生き様の裏には、イロイロと悩みも葛藤も
あったわけで。

ところで学三演義にて、簡雍たんにちょっとした設定追加予定。
たぶん皆さんが簡雍萌えになること間違いなし。

347 名前:★アサハル:2003/10/12(日) 16:19
簡雍たんはきっと普段のちゃらんぽらんな「萌え請負人」は仮の姿で
実は帰宅部連合の初期メンバーの一人として(或いはジャーナリストとして)
真面目で熱い娘なんだろうなあ、と思いました。
しかし降伏勧告に行くのに酒の香り漂わせてるのはマズいぞ簡雍さん!!(w

そういえば劉璋とか劉表辺りってまだキャラ絵ありませんでしたよね?

348 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:15
とりあえず、以前書きかけてた『震える山(前編)』のケリつけちゃいます。
相変わらず元ネタモロパクリでお恥ずかしい限り。

349 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:21
前編>>265  前編の2>>273  前編の3>>276 前編の4>>279

 ▲△ 震える山(前編の5) △▲

その頃、張嶷は徐質と対峙しつつ姜維たち本隊の脱出のタイミングを計っていた。しばらくは体勢を立て直した徐質の斬撃をいなしていたが、頃合いはよしと見計らうと地を蹴って猛然と反撃を開始する。
「それじゃ、そろそろ仕掛けさせてもらうよ!」
「くっ…」
先程までの守勢が嘘のように積極的に打ち込んでくるその鋭い太刀筋に、一転して徐質は防戦一方となってしまう。辛うじて左腕のシールドで受け止めてこそいるものの、このシールドというものはあくまでも補助的な装備であって連続した打撃を完全に防ぎ止めるための物ではない。打ち込まれた衝撃は吸収しきれずに腕にまで届いており、このままでは骨折、とまでは行かないにしても腕を痛めるのは確実だった。
「くうっ… 離れろーっ!」
徐質は隙を見計らって後ろに跳び、距離を空けるとエアガンを放つ。だがその射線は張嶷のシールドに弾かれて空しく飛び散るばかり。本来ならその時点で速やかに射撃を中止せねば無駄に弾を消耗するだけなのだが、徐質はトリガーから指を離せなかった。張嶷を相手に白兵戦を挑むことを心のどこかで恐れているのだろう。そして程なくしてガリガリッ、という嫌な音を発したかと思うと案の定エアガンは沈黙してしまったのだった。
「弾切れ!?」
双方は睨みあった体勢のままでしばらく時が流れる。徐質は相手の様子を窺いつつ腰のベルトに装着した予備弾倉のパックにそっと手を伸ばすが、張嶷がそれを制するようにエアガンを構える。身動きがとれないままでさらに沈黙が続いたが、再び張嶷から距離を詰めると嵩に懸かってナイフを振るう。弾切れを起こした徐質も接近戦で応じなければならず、弾倉交換のために距離を取るだけの余裕は皆無だった。しかし度重なる衝撃に耐えかねたのか、シールドを腕に固定するバンドの一本がバツン、と弾ける。こうなると効果的なガードはもはや不可能となってしまい、腕への衝撃は一層激しさを増す。だがそれでもなお斬撃をシールドで受け続けることができているのは彼女もまたいっぱしの格闘センスを有している証でもあった。
「はッ、反射神経だけはいいようね!」
張嶷も相手がそれなりの力量を備えていることを確信したが、さすがに業を煮やしたかこれまでの連続した攻撃から一旦呼吸を置くとナイフを持った右腕を振るう。
「だけどこれが… 避けられるかッ!」
瞬間、放り出されたナイフがあらぬ方向に飛んで行くのが徐質の視界に入る。 −そして、ついそれを目で追ってしまったのだ。
(しまった!)
近接格闘戦では、ほんの一瞬でも相手から視線を逸らしてしまえば致命的な隙を生むことになる。その間隙を埋めるべく視線を戻した時にはもう、眼前には急突進してきた張嶷の姿が迫っていた。
「目の良さが命取りよ!」
ズンッ!
「ぐうっ…」
肉薄した張嶷が放った拳が徐質の鳩尾に吸い込まれる。このままではやられる… と遠のいてゆく徐質の意識は、しかし途切れる直前に投げかけられた声で辛うじて引き上げられた。
「まだ終わっちゃいない。悪いけど、もう少し生きててもらうよ」
背後に回った張嶷が、がっちりと徐質の腕を絡め取る。動きを封じられた徐質は、これから自分はどうなるのだろうと考えようとしたが、茫洋とする意識の中でその答えは浮かんでこなかった。


「し、主将!」
「なんてことよ…」
デポ(装備補給所)で弾薬を補充して駆けつけた胡烈と牽弘の目に最初に映ったのは、ぐったりとした徐質と背後から彼女の動きを封じている張嶷の姿だった。
「畜生、弾を補充しに行ってみりゃこのザマか…」
「そのままじゃアンタらもやられてたわよ! 今は狙撃班を死守よ、死守!」
ぼやく胡烈に楊欣が半ばヤケになって応じる。張嶷は徐質の腕を固めながらも器用に自らのエアガンの弾倉を交換していたが、胡烈らがやってきたのを見ると徐質をグイと立たせてその姿を見せつけると、挑発するように言い放った。
「安心しなさい… まだ、この娘は『生きて』いるわよ!」
張嶷は実質上ダウンしている徐質のとどめを刺そうとはしないでいた。彼女の存在を人質をすることで08小隊や狙撃班の行動を掣肘し、ひいては姜維らの脱出へ時間を稼ごうと企図していたのだ。牽弘は不安げに徐質の様子を窺ったが、目立つ傷こそないものの表情は朦朧としており、張嶷から受けたダメージは確実に利いているようである。
「主将… 私達、どうすればいいの…」
残念ながら徐質にその声は届いてはいない。だが、その意識の中では何かが少しずつ浮かび、形を結びつつあった。

 続く

350 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:24
前編>>265  前編の2>>273  前編の3>>276 前編の4>>279 前編の5>>349

 ▲△ 震える山(前編の6) △▲

(あ、ここは…)
朦朧とする意識の中、徐質はある光景を『思い出して』いた。そう、これは現実ではない。半覚醒状態にある意識が辛うじてその事だけは気付かせている。
(そうだ、これは主将の任命式ね)
無数の女生徒で埋め尽くされた大講堂。その壇上に横一列に並んだ女生徒の、さらに筆頭に彼女はいた。蒼天学園生徒会による主将の任命式で、徐質はこの度の首席たる栄誉を担ったのである。通常は各校区、あるいは各所属組織単位で行われる主将位の授与だが、この時は折しも夏侯玄、張緝、李豊らによる執行部中枢でのクーデター未遂が発覚した直後であり、生徒会長である司馬師が自己の権勢を誇示するデモンストレーションの一環として大々的に執り行ったものだった。そんな中、雍州校区代表であった徐質はその成績優秀なるをもって全校区(とはいえ現在蒼天会および生徒会の威令が及ぶのは学園の半分に過ぎないのだが)から選抜された任命者の首席として式に臨むことになったのである。
(あの場所で、あの人たちの前で… 私の実力を、認めて貰えたんだ)
彼女は高等部に進級して以来、いささか腕に覚えのあることもあって体育会系を志していた。進級する以前より高等部の先輩たちのさまざまな活躍の噂は流れてきていたが、彼女の心を捉えたのはやはり『武勇伝』の数々だったのだ。

学園史上最強とも評された孤高の戦士・呂布。
王道を夢見てひた走った顔良と文醜。
万人の敵と称された関羽と張飛。
長坂を単騎駆け抜けた趙雲。
義心あふれる神箭手・太史慈。
湖上を駈ける無頼の女夜叉・甘寧。
無双のファイター・許チョ。
長湖部の心胆を寒からしめた張遼。

中でも張遼の活躍は中等部を席巻し、「夜更かししていると張遼が竹刀持ってシバきにやってくるぞ!」と喧伝されたものであり、皆がその噂を冗談半分に楽しむ中で徐質は一人、“鬼姫”の名に似合わぬお下げ髪だという姿が本当に現れはしないかと密かに期待を抱いてみたりもしたのだった。だが、今やこういった人々はみな既に学園を去っており、『伝説』として語られるのみである。そして昨今の学園においてはといえば、残念ながらあの頃に匹敵する伝説を築くべき者は見られなかった。
(それならば、私がなってみせる!)
徐質は己の鍛錬に務めて主将の座を勝ち取った。そして、あの晴れの場において生徒会長の司馬師から直々に主将の任命書と徽章を授与されたのだった。
『おめでとう。貴女の力、存分に発揮してね。 ……期待しているわ』
『は、はいっ! 頑張りますっ!』
今をときめく学園の支配者の言葉は、いまだ夢見る少女の心をどこかに持ち続けていた徐質に染み渡った。この時の晴れがましい気持ちは強く心に刻み込まれ、支えとなったのである。しかし、あくまでそれは彼女にとって通過点として位置づけられるべきものだった。目指す高みは遥か先にあり、その途中には挫けそうになることもあるだろう。だが、それを乗り越えた者こそが伝説を残す資格を許されるのである。

(だから、こんな所で負けるわけにはいかない…!)

徐質は強く念じた。そしてそれが彼女のスイッチを再び入れる。澱んでいた意識が急速に鮮明化してゆく。辛うじてエアガンを保持していた手がピクリと震えると、それに気付いた張嶷は待ちかねたように不敵な笑みを浮かべた。
「あら、ようやくお目覚めのようね?」
「くっ…… そっ、れーーっ!」
闘争本能を急速に再充填し、全身にくまなく行き渡らせる。異常なく身体が動くと認識できた瞬間、景気づけとばかりに抑え込まれた体勢のまま両脚を跳ね上げると、背後の張嶷に向けて思いきり蹴り飛ばした。予想以上の再始動に思わず二、三歩後ずさった張嶷だが、そうこなくっちゃ、とばかりに体勢を整え、先程放り投げたナイフを回収する。その間に徐質は左腕から半ば外れかかっていたシールドをもぎ取ると、それを振りかざしてしゃにむに打ち掛かった。
「私はっ、勝つッ!」
「くっ… ふんッ!」
この時、徐質の攻撃は技量うんぬんというよりは気迫に支配されている。それだけに先を読むことは困難であり、張嶷はしばし防戦に徹していたのだが、何度目かの打撃とともに徐質の放った言葉が彼女をとらえた。
「勝ち抜いて… 学園の頂点を極めるッ!」
「なにっ!?」
昨今ついぞ耳にしたことのなかったその言葉に思わず張嶷の動きが止まりかける。学園の頂点を? 己の腕一本で? 数年前ならばともかく、この膠着した情勢下で… いや、今であればこそその『若さ』が輝くというわけか…
恐らくは深く意識して発せられた言葉ではなかっただろう。だが、その偽らざる覇気が老練な張嶷に空隙を作った。あるいは彼女もまた、入学当初の自分の姿に重ね合わせていたのだろうか。しかし、その空隙は徐質にとって好機以外の何物でもなかった。続いて繰り出された一撃が張嶷の側頭部を捉える。
「くうっ…!」
もとより決定打とはなり得なかったが、頭を揺らされた張嶷は一旦退いて体勢を立て直すことにした。あるいは、先程の徐質の言葉が思いのほか後を引いていたのかもしれない。
(自分の腕前で、やれるところまでやってみる、か… そういうの、最近忘れてたかもね…)
張嶷が姿を消した後、牽弘と胡質が徐質の元へと駆け寄る。土壇場からの復活を喜び合う三人だったが、楊欣の声がそれを遮った。
「みんな、まだ終わってないわよ! 本隊のお出ましだわ…」
「ええっ!?」
その一言で粛然とする08小隊の面々。帰宅部連合に対する脱出阻止体勢が大幅に崩れつつある今、再包囲を行わなければ大魚を取り逃がす事になりかねなかった。だが、以前その包囲網を単身押し返した張嶷はいまだ健在である…

 続く

351 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:25
前編>>265  前編の2>>273  前編の3>>276 前編の4>>279 前編の5>>349 前編の6>>350

 ▲△ 震える山(前編の7) △▲

その頃裏門では、脱出体勢を整えた帰宅部連合本隊がいよいよ行動を開始しようとしていた。最前列にはなけなしの射撃班が銃口を揃え、押っ取り刀で駆けつけた生徒会勢の小隊へと狙いを定める。
「…撃ちます」
夏侯覇が前方を見据えたまま投げかけた起伏を欠く声に、姜維もどこか冷めたような表情で応じた。
「では、始めよう」
それを合図に、夏侯覇は差し上げた手を前方へ向かって振り下ろす。タタタンッ、という一連の銃声と共に生徒会勢が倒れ伏したのを見届けて、姜維は麾下の総勢に向かい直ると今度こそ辺りを圧する声を放った。
「突撃開始! 先鋒は夏侯覇、続いて傅僉! 中軍は句扶、後衛は廖化! 殿は私が引き受ける!」
号令一下、一団、また一団と裏門を飛び出てゆく。この中でどれほどが帰還することができるか… そう思うと、姜維の口は我知らず動いていた。
「…みんな、南鄭まで生きて戻るのよ!」
「おーーーっ!」
次々に駆け抜けてゆく女生徒達の顔には皆、深い疲労の色が浮かんでいる。だが、彼女らを辛うじて奮い立たせているのは意地と、気力と、そして奮戦する張嶷の雄姿だった。誰もが全て、彼女のような超人的な活躍ができるわけではない。だが、その姿は多くの少女達の目に焼き付き、胸に刻み込まれた。そして今、挫けそうな心を支える巨大な拠り所となっていたのである。
−それはもう、ひとつの新しい伝説の始まりでもあった。
(貴女には、まだみんなを導いてもらわなければ… だから、必ず…!)
姜維は今一度、張嶷が残っているであろうグラウンドに視線を向ける。そして強く念じるように胸の前で手を握りしめると、最後尾の集団に加わって走り出した。


校舎裏手から聞こえてくる微かな喊声に気付いたとき、張嶷は再び徐質と対峙していた。双方とも右手にナイフを構え、間合いを保って睨みあったまま互いに機を窺っている。そんな中、張嶷は目の前の少女の言葉に思いを馳せていた。
(いい気概ね。腕の方はまだまだ伸びるでしょう。後はあの気持ちを忘れなければ、あるいは本当に…)
そこまで考えて、不意に笑いがこみ上げてきた。とんだ迷い言を… 現にあの娘の目の前には、“私”がいるではないか。単身での要人救出という華々しい学園デビュー以来築き上げてきた功績は数知れず、今や帰宅部連合でも五指、いや三指に数えられるまでに上りつめた。徐質に比べれば、『頂点』は遥かに近いはずだった。だが彼女もかつては輝かせていたはずの大望は、日々の忙しさにかまけていつしか心の奥底に澱んでしまっていた。それを、この少女が再び揺り起こしたのだ。
(もっとも、頂点を目指すだけが『華』じゃないわね。自分が満足して戦えるなら、今ここで…)
「学園の頂点を極める、か。案外と、手に届く夢かもよ… でも、負けないッ!」
万感の思いを込めて全身に闘志を充填し、張嶷は真っ直ぐに徐質へと向けて駆け出す。この一撃で決まる− 徐質も自然にそれを悟った。ナイフを握った右手を振りかぶり、一気に距離を詰める。その瞬間、張嶷が地を蹴って覆い被さるように飛びかかってきた。
「!!」
徐質を驚愕させたのは、明らかに実態以上に視界を圧する張嶷の姿− 否、厳密にはそうではない。まったくのガラ空きとなったその体… 乾坤一擲というにはあまりにも無防備すぎるその体勢に、考えるより先に体が反応した。防ぐもののない張嶷の左脇腹めがけ、ゴム製のナイフがしたたかに打ち付けられる! だが…
「勝ったぞ!」
その声を発したのは張嶷だった。徐質の背にゾクリと走る悪寒。そして頭上に響くエアガンの連射音。
タタタタタッ!
「きゃあああああっ!」
「しまった!」
最後の一連射、その射線が吸い込まれてゆく先には、狙撃兵301嬢。

肉を切らせて骨を絶つ、文字通り捨て身となった張嶷の一撃は狙い過たず最後の狙撃手を葬り去った。だが同時に、何の防御も考慮していない左脇腹への一撃は徐質の名誉に賭けて『致命傷』たり得ていた。詰まる呼吸、薄れる意識… 刹那、南中校区での日々が頭をよぎる。苦難の末に結ばれた固い友情の絆、皆の笑顔… そして張嶷は己の最後の戦果を確認すると、意識を闇に委ねる。
(伯約、約束は守ったぞ… 後は、アンタ、が…)
張嶷はそのまま崩れ落ちると、乾いた地面にひとしきり砂埃を舞い上げた。


−停止した時間の中で、徐質は時間の感覚はおろか一切の外部情報から途絶していた。恐怖すら抱いた敵への確かな一撃と、『護るべき者』の悲鳴。その二つの事実の整合性が取れずに頭の中でグルグルと回っている。勝利− 何が我々の勝利か? 喜びの浮かばぬ勝利があるというのか…
やがて真っ白になっていた彼女の中で少しずつ時間が流れ始める。最初に目に映ったのは、右手に握りしめたナイフ。続いて、眼前に横たわる少女。己に課せられた責務を成し遂げたその顔は埃にまみれながらも安らかで、意識こそ失っているが胸元は規則的に上下動を繰り返していた。
「そうだ、私が、倒したんだ、この人を…」
いまだおぼつかない足を数歩踏み出し、跪く。バトルでうち倒した相手からその身の証を奪い取るのは学園の規則、バトルのルール、そして勝者の権利。青いジャージに留められたゼッケンを丁寧に取り外すその瞬間、いまだ目覚めぬ体がピクリと震えたのは気のせいだったろうか? 徐質はゆっくりと立ち上がり、新たなる伝説の体現者に一礼する。

帰宅部連合所属盪寇主将、張嶷、字を伯岐。仁・智・雄を折り重ねてきた学園活動は、そのおそらくは本分とするところをもって幕を閉じた。

−彼女の最後の死闘は新たなる伝説として、これ以後学園の歴史の中で長く語り継がれることになるだろう。
(私は、伝説に名を連ねるだろう。でも、それは添え役として… 私が、自身が、主役となるためには、まだ…!)
そこに駆け寄ってくる仲間達の声が、急速に徐質を現実へと引き戻してゆく。
「主将、無事だったか!」
「アイツを… 倒したんだね! やったじゃないか!」
「でも、狙撃班は…」
そう、局地戦は一つの幕切れを迎えたが、まだ敵は、敵の『本隊』は残っているのだ。目の前の敵を一つ一つうち倒し、そしていつかこの手に栄誉を勝ち取る日まで。戦いの道を志した少女の前に開かれた修羅の道、その終着点は遥か遠くか、あるいは一寸先か… 今また新たな一歩を踏み出す徐質の全身に、一回り強さを増した力がみなぎり始めていた。

「遺憾ながら、狙撃班は全滅した… 今、追撃の先鋒は我々だ。 …行くぞ!」
「おーっ!」

学園の戦雲は、いまだ果てることなく激しく渦巻いていた。

『震える山(前編)完』

352 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:34
はい、お粗末様でした。
何度でも強調しておきますが原作を丸のままトレースしてますので、
オリジナリティのカケラもございませぬ。

ラストがジャンプの「第一部・完」みたいになってますがまさのその通りで、
この後に『震える山(後編)』がこないといけないのですが…
今度はさすがに元ネタとは別の話になるのですが、どう続けるかは未定でして。

ぶっちゃけ、今後の追撃戦で徐質は姜維に飛ばされちゃうんですよね。
せっかく前編で徐質がイイ感じに目覚めたのに速攻であぼーん、つうのもアレですが…
まあせいぜい姜維と華々しい一騎打ちでもやってもらうかしら…とも思いつつ、
バトルシーンの描写はちょっとネタ切れ気味(今までさんざパクってたくせに)でして、
いずれ再開するとしても後編は絶対短いです。

353 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/10(月) 01:00
くわっ! 何か今回は徐質たんが凄い主役ッ!
…て、確かに次回あぼーんでしたわな(^_^;) 姜維てずからの反撃で…
うーん。彼女らの世代になると、往年の「武力90代」の少女達はもはや伝説の
領域になってしまうわけで。
義兄上、相変わらずのド迫力SS乙であります!
いっぺんこのスレの正史該当作品を年表に入れ込んでいかなきゃなんないな…

そして…張嶷たん…・゚・(ノД`)・゚・
私、学三玉絵の中では、この娘が一番好きなんだなあ…


サチーソ…
帰宅部連合の華だったのに…。

やはり義兄上の続編に激しく期待しまつ。せっかく徐質たんのキャラも立ったこと
ですし、もうひと活躍の場を与えてあげて欲しいです〜

354 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/14(金) 22:59
アサハル様の神絵が!


くそ、出遅れた。張嶷たん…・゚・(ノД`)・゚・

355 名前:★玉川雄一:2003/11/15(土) 00:19
ううっ… 私のへっぽこ作品にはもったいないご真影を…
感謝の至りでつ。散っていった彼女もさぞや喜んでいることでしょうて。

しかし、この続きホントにどうしましょう_| ̄|●

356 名前:★教授:2003/11/18(火) 22:49
■■突発ショートショート 〜場繋ぎでごめんなさい編〜■■


▲ある日の光景

「あ…」
「あーっ! 入稿2日前なんやでーっ!」
 インクまみれの原稿用紙。劉備のハリセンで星になった張飛。

「音悪いなぁ…ぐええっ!」
「なんですって!?」
 孫策が周喩のチューニングにケチを付けた結果が首締めだった。

「…煙草やめよっかな…」
「ね、熱でもあるの?」
 ぼそっと呟いた郭嘉に変なツッコミを入れる陳グン。

「法正〜、何読んで…」
「………見たわね」
 法正がゆらりと簡雍を追い詰める。その手には『究極のバストアップ術』が…。

「闘魂注入!」
「ぬぁ…」
 甘寧の平手打ちが凌統に炸裂。

「今年こそ張遼を葬りたいです」
「今年は李典を滅殺したいです」
 李典と張遼の書初めを見ながら胃薬を飲む楽進。

「義真…おねーさまから電話だよ…」
「んなっ! 切れ! 若しくはいないって言え!」
 姉からの電話に本気でびびる皇甫嵩。朱儁も小刻みに震えてた。

「………」
「………」
 明りも付けずに部屋の隅。黄忠と厳顔が20本の蝋燭の立つケーキを無表情に見つめていた。

「興覇のマネ」
「びみょー…」
 甘寧のコスプレをする魯粛。苦笑いするしかない呂蒙。

「待った…一生のお願い!」
「一生のお願いを一日に何回してんだよ…諦めろって」
 将棋盤を前に曹操、渾身の土下座。呆れる夏侯淳も仕方なく了承。


▲ちょっと気の早い正月ネタ

「………くー…」
「………ぐぅ…」
「…蜜柑美味しいですね」
「…うん」
 麻雀牌が転がるこたつを囲んで法正と簡雍の寝正月、蜜柑を頬張る伊籍と馬良。新年早々やる事はないのだろうか。

357 名前:★玉川雄一:2003/11/19(水) 19:49
>一生のお願いを一日に何回してんだよ
激しくワロタ。
乱世の姦雄たるもの、こうでなくっちゃね! ……ね?

358 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/20(木) 01:01
ワロタ! 教授さまグッジョブ!
わあ、なんかこういうショートショートもいいなあ!
なにより姐さん達が。めっさ風景想像しちまう!
誰がローソク立てたんだ!

359 名前:★ヤッサバ隊長:2003/11/27(木) 19:02
ネタ投下。


「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった蒼天にこだまする。
中華(なかはな)の地に集う乙女たちが、今日も(一見すれば)天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、赤いクロスタイは翻らせないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、バイクや自転車に乗って遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。(ごく一部除く)

蒼天学園。
戦後創立のこの学園は、もとは良家のご令嬢が帝王学を学ぶためにつくられたという、
伝統ある超お嬢さま学校である。
華夏学園都市。東に長湖を、三方に山を望む緑の多いこの地区で、鍾馗に見守られ、幼稚舎から大学までの帝王学の一貫教育が受けられる乙女の園。
時代は移り変わり、始会長・政の時代より年号が三回も改まった今日でさえ、
十八年通い続ければ立派な財閥主席秘書、女総帥、大奥様などが世に送られる、
という仕組みが出来上がっている尚武と権道を重んじる貴重な学園である。



学三を「マリみて」風にしてみますた。
しかしグコ兄ィが考えてる「学三演義」の冒頭と被ってる可能性大(^^;
ところで、「学三」の舞台って後漢市なのか、それとも中華市なのか、どっちなのでせうか?

360 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/27(木) 23:41
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル…かぶってるよ…かぶってるよ!
どうしよ…出だし…まあいいか…ガイドラインになるくらいなんだから…

ちなみに後漢市は年代を限定してしまうので、中国史全般に使えるよう、中華市に改名されました(^_^;)

361 名前:★ヤッサバ隊長:2003/11/28(金) 09:23
ぐは…やっぱり被ってましたか(^^;
ただ、漏れのはまだまだ精錬が足りん訳で、グコ兄ィには学三演義で是非「完全版」などを頂けたら幸い。

>中華市
ふむ、やはりそうでしたか。
んじゃ、これからもそう認識させて頂きますわ。

362 名前:★アサハル:2003/11/28(金) 17:25
>スカートのプリーツは乱さないように、赤いクロスタイは翻らせないように、
>ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。

思いっきり「うそぅ!?」(by無双袁紹の中の人with裏声)と叫んでしまいますた(w
いや、間違いなく登校がてら犬の散歩をする人(竇武裏設定)とか遅刻ギリギリでも
ないのに窓から入ってくる人とか(忍者部)セスナで登校する人(誰だ)とか
毎日変な乗り物で参上し毎日墜落させる人(諸葛亮?)とか寧ろ校舎に住み着いてる
人とか何とかその他諸々絶対いる!と思ってました(^_^;

どうでもいいですが「華夏」って「かなつ」だと思ってました。
「はななつ」だったんですね…

363 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/29(土) 14:11
>>361
ドンマイ! ノシ
つうか、現在の党錮SSに、「司隷特別校区」バージョンとして一部採用。
学園全土で言えば、「毎日変な乗り物で参上し毎日墜落させる人w」とかが続出
してそうですが、司州に限っていえば、「古き良き時代」は皆お嬢さまめかして
たんではないかと推測。

>>362
竇武裏設定ゲト。というか、竇武たんの従妹の竇紹たんがマイブーム。元ヤンキー(;´Д`)ハァハァ…
ところで「学三マリみて」たる「仲挙さまがみてる」は、突然「李膺さまがみてる」に
変更になりました…やはり離れて見る観察対象としては、突っ走りやすい陳蕃の方が面白そう。
逆に融通がきかないけどお人好しの李膺さんこそ、主人公のお姉様にふさわしくて…

364 名前:雪月華:2003/11/30(日) 08:39
白馬棟奇譚 ─前編─

 深夜11時。河水のほとり、エン州校区白馬棟の二階の一室には、まだ明りが灯っていた。おりしも曹操が下[丕β]棟にて呂布一党を覆滅し、宛棟の張繍、寿春棟の袁術、揚州校区の孫策らを相手に謀略戦を仕掛けながら、カントにて袁紹勢力との緊張が高まりつつある、まさにそのときである。曹袁両勢力の境目である白馬棟は、いわゆる最前線であり、来るべき決戦に備え、劉延をはじめとする30人が遅くまで居残り、校門やバリケードの補修、新規敷設や、サバゲーの訓練などを行っていた。
 分厚いカーテンの隙間から漏れる明りの質は弱々しく、光源は蛍光灯や白熱灯ではなく、ランプかロウソクの類である事が推測できた。当然、棟の外からは中の様子を窺い知る事はできない。

 白馬棟二階の、今は空き部屋となっている化学準備室。その部屋に漂う妖気は、この世のものではないようであった。ガラスの髑髏や奇妙な形の燭台、出所の知れない骨etcetc……ありとあらゆる黒魔術の小道具が、ある種の法則性に基づいて、いたるところに配置され、複雑な意匠の入った六芒星が描かれた魔方陣のシートが、四方の壁と床、天井に貼られていた。
 床の魔方陣の傍に、制服の上に西洋の魔女、いわゆるウィッチの纏う、人血で染め上げたかのような真紅の裏地を持つ、闇を固めたような黒いマントと、これまた魔女の用いる漆黒のトンガリ帽子をかぶった、つややかな黒髪の女生徒が佇み、怪しさ満点の分厚い書物に見入っていた。
「………」
 左手に書物を持ち、空いた右手で空中に印を結んでいる。ぼそぼそと呪文らしきものを呟いているが、あまりにも小さい声なので、たとえ傍らに居たとしても聞き取る事はできないはずであった。たとえ聞き取れたとしても、書物はラテン語で記されており、必然的に少女の呪文もラテン語となるため、内容を理解できる者は、ごく僅かであろう。
 怪しい彫刻が入った蝋燭の炎が揺らめき、それまで影になってよく見えなかった少女の顔が一瞬、明らかとなった。学園全体でも十指に入るであろう、憂いをたたえた瞳が印象的なその美貌を、蝋燭の心細い光が妖艶に浮かび上がらせている。
「……?」
 突然、少女の動きがぴたりと止まった。その視線は、床の魔法陣に釘付けになっている。それもそのはず、今まで何の反応も示さなかった魔方陣が、淡い燐光を発し始めていたのだ。その光は徐々に強さを増し、それに共鳴するかのように、天井と壁の魔方陣も輝きを発し始めていた。
「………!」
 狼狽し、それでもミクロ単位でしか表情を変えずにいた彼女の目の前で、突如、光が奔騰し、もと化学準備室は無彩色に染め上げられた。

 次の日 夜 深夜10時

 明りの消えた白馬棟の校門前に、二台のMTBが滑り込んできた。
「夜の学校という存在は、どこか得体の知れない雰囲気があるものだな、張遼」
「まったくですね、雲長」
 駐輪場が無いため、校門脇にMTBを止めたのは、先日、生徒会入りしたばかりの、もと呂布部下であった張遼と、現在、許昌棟でかごの鳥も同様の扱いを受けている、豫州校区総代にして蒼天会左主将である劉備の、義妹である関羽の二人であった。
 とりあえずその場にMTBを置くと、護身用の木刀を携え、六時の時点で、居残りの生徒が怖がって帰ってしまったため、全ての明りが消えている校舎に、二人は足を踏み入れた。問題があった、どうやら棟全体のブレーカーが落ちたままになっているらしく、昇降口の電灯スイッチが何の反応も示さないのだ。懐中電灯の持ち合わせも無いので、月明かりだけを頼りに、二人は夜の学校の奥へと、足を踏み入れていった。
 二人がこんな時間にここを訪れる羽目になった原因は、今朝、白馬棟にて、昨夜最後まで居残っていた生徒十四人が、校舎外で折り重なって倒れているのが発見された事にある。全員、二階の廊下の窓から外に落ちたらしいが、幸いにも、誰もが重くとも腕の骨折程度で済んでいた。だが、何者かとの闘争の結果、で片付けるには、奇妙な点が二つあった。
 ひとつは、階級章には手がつけられていなかった事。もうひとつは、落下時の捻挫、骨折以外に外傷が無いにもかかわらず、今朝からずっと、14人全員に昏睡状態が続いている事である。
 まがりなりにも、白馬棟は対袁紹勢力の最前線である。おかしな噂が立っては来るべき決戦に差し障りが出るとして、放課後一番に現場検証が行われたが、2階の落下地点の窓が枠ごと外れていた事以外は、何ら収穫が無かったと言ってよい。一応、落下した窓と、廊下を挟んで対面に位置する、もと化学準備室も調査されたが、もぬけの殻で、壁にかけられた、姿見の大きな鏡以外に、何の発見も無かった。
「それで、会議が開かれまして、深夜に調査員を送ることになったのです。そこで、真っ先に自分が行くと言い出したお調子者が1人いましてね」
「曹操殿だな」
「御名答。まさか副会長を行かせるわけには行きませんので、武道の経験のある者から、くじ引きで決めることになりまして」
「それで、おぬしが選ばれたわけか。しかし、何故拙者を誘ったのだ?呂布時代の同僚で、同じ剣道部の魏続や宋憲がおるであろうに」 関羽の問いかけに、張遼は憮然として答えた。
「下[丕β]棟の陥落以来、彼女達とは気まずくなっていまして。私自身は気にしていませんが、彼女達は、呂布を売った事を過剰に気にしているようで、避けられてしまうのですよ」
 さらに言えば、張遼は剣道部にも上手く溶け込めていない。呂布討伐後、張遼をはじめとする新規生徒会入会者への歓迎会の座興のひとつとして、蒼天会長観覧のもと、公認剣道場『玄武館』で御前試合が開かれたことがある。
 その試合において、張遼は防具をつけずに、李典、楽進、徐晃を、まったく竹刀を打ち合わせることなく撃破し、于禁とは、一度竹刀を打ち合わせただけで、わざと時間切れで引き分けたのである。それ以来、比較的に人あたりのいい、楽進や徐晃とはうまくいっているものの、李典からは血縁者の仇と憎まれ、かたぶつの于禁は、不遜な張遼をあからさまに嫌っていた。また、実戦で剣術を磨いてきた張遼は、剣道の基本である、打ってはポンと跳ね上げる『打突』や、肌の前でピタリと止める『寸止』が上手ではなく、つい、いつもの癖で打ち抜いてしまうため、一般部員からの評判も良くなかった。得物が竹刀であり、防具があるとはいえ、小手を打ち抜けば手首が腫れ上がり、面を打ち抜けば重度の眩暈を起こし、胴を打ち抜けば吹き飛んでしまう。それでいて、受け太刀というものをまったくせず、相手の打ち込みを足捌きのみでかわしてばかりいるので、まったく稽古にならないのである。そのため、一応は徐晃、楽進と同列である剣道部師範の肩書きはあるものの、張遼は放課後、玄武館には顔を出さず、MTB機動部隊の訓練に専念していた。
「音無しの剣か。あの徐晃すら軽くあしらったおぬしに、はじめて竹刀の音を立てさせるとは、于禁殿も伊達で公認剣道部の部長を張ってはおらぬということだな」
「雲長、意外に見る目がありませんね。なるほど、于禁さんの風格や、剣の知識は人一倍ですが、実際はたいした剣士ではありませんでしたよ。ただ、あの状況では、彼女の顔を立てておかないと、ただではすまなかったでしょうから」
「并州の孤狼、『剣姫』張遼も、さすがに命は惜しいか」
「何を勘違いしているのです?袁紹との決戦を目前に控えているのに、剣道部を全滅させるのは、さすがにまずいと思ったからですよ」
 傍若無人ともいえる張遼の放言に、関羽は眉をひそめた。
「不遜だな、張遼」
「他人のことが言えるのですか、雲長?」
「拙者はまだ、おぬしの返答を聞いてはおらぬぞ、何故拙者を誘った?」
「では、あなたは何故ここにいるのですか?」
「色々と、おぬしに聞きたいことがあったからだ」
「奇遇ですね。私も、そういう理由からあなたをお誘いしたのですよ。卒業まで肩を並べているにせよ、今から1分後に、どちらかがどちらかをトばしているにせよ、お互いのことをよく知るにしくはありませんからね」
 数十秒前から、二人の間で高まりつつある殺気が、臨界点に近づきつつあった。近くに誰かいれば、その殺気だけで失神してしまうかもしれない。
「……じつに後者を選択したくなってきたぞ、張遼」
「今、ここで決着をつけますか、雲長?」
「望むところだ」
「仕事を終えてからです。着きましたよ」
 関羽の威圧を、さらりと張遼は受け流した。いつのまにか、二人はもと化学準備室の前に到着していた。廊下を挟んで向かい側の窓には、応急処置のベニヤ板が張り付けられ、外からの月光を遮っている。奇しくも、満月の夜であった。
「カギはかかっておらぬのか?」
「空き部屋ですので、普段はかけていません」
「では、行くぞ」
 そう言って、関羽が、引戸の取っ手に手をかけようとした。

365 名前:雪月華:2003/11/30(日) 08:42
白馬棟奇譚 ─後編─
「……!雲長、危ない!」
 何かを感じ取った張遼が、関羽の肩をつかんで思い切り引き戻したのと、内側から爆発的な勢いで引戸が弾き飛ばされたのは、ほぼ同時であった。弾き飛ばされた引戸は、関羽をかすめ、窓代わりのベニヤ板に衝突し、それを突き破りつつ、3m下の地面へ落下していった。
 室内を覗き込んだ張遼は、驚きの色を隠せなかった。数時間前までは、完全な空き部屋であったはずの、もと化学準備室内は、完全な悪魔召喚の間と化していたからだ。天上、壁、床に貼られた魔方陣は、淡い燐光を発し続けており、室内の各所に幾何学的に配置された小道具の類は、それ自体が生命を持っているかのように、カタカタ揺れ動いている。
 そして、床の魔法陣の中央にうずくまっていた黒い影が立ち上がった。マントの襟をそばだて、とんがり帽子を目深にかぶっているため、その顔は良く見えないが、マントの下には、張遼と同じ制服を着ていることから、同じ高校生と知れた。
「張遼、これは一体……」
「何者かに憑かれているようですね。先程の衝撃波といい、彼女にとり憑いたモノが、今朝の事件の犯人に違いありません」
 そう言いつつ、一歩室内に踏み込んだ張遼に、水晶の髑髏が唸りを上げて飛来してきた。張遼は、それを難なく払い落とし、床に叩きつけて粉砕した。続けざまに飛来する、色とりどりの瓶や、出所の知れない骨も、次々とそれに倣った。
 突然、室内が夕暮れ色に染まった。いつのまにか、天井近くまで浮き上がっている女生徒の両手に、炎が燃えあがっており、熱気が張遼と関羽に向かって吹き付けてきた。
「な、何が起こっている!?どうするつもりだ、張遼!」
 さすがの関羽も動揺が隠せない。一方の張遼も、一瞬驚いたようだったが、すぐにあることに気付き、木刀を右手に下げたまま、無造作に女生徒へ詰め寄っていく。
 宙に浮いている女生徒が、バスケットのチェストパスの要領で両手を前に突き出した。燃え盛る紅蓮の炎が渦を巻いて、張遼に絡みつく。
「張遼!」
 関羽が悲鳴をあげた。だが、張遼はまったく表情を変えず、絡みつく炎を無視し、何事も無かったかように、ゆっくりと歩みを進めている。宙に浮いた女生徒に僅かに狼狽の色が浮かんだ。
 赤一色の世界が、一瞬のうちに白一色に染まった。いつの間にか、女生徒の両手から放出されている炎は、凍てつくダイアモンドダストへと変化している。晴れた日の早朝、低温により空気中の水分が氷結し、まるで氷の妖精のように輝く自然現象だが、これが魔術となると、魂魄をも氷結させる悪魔の業となる。
 しかし、それすらも無視しして歩き続ける張遼に、少女にとり憑いた何者かは、明らかに狼狽していた。そのまま、少女のすぐ傍まで歩み寄った張遼は、右手の木刀を空中の少女に突きつけた。
 張遼の口から、凄絶な気合がほとばしった。
 
 もと化学準備室の扉を開け放った関羽の目に、四方の壁、天井、床に貼られた魔方陣と、幾何学的に並べられた数種類の魔術の小道具類が飛び込んできた。そして部屋の中央の魔法陣の傍らには、黒いマントを羽織った少女がうつ伏せに倒れている。
「い、今、何が起こったのだ、張遼?」
「……一種の精神攻撃ですね。この部屋と廊下の一部を、ある種の魔術的な場で包み、踏み込んだ者を術にかける。先程、ドアを吹き飛ばした衝撃波も、私に対して放たれた火炎や冷気も、実際には発生していません。あの時、精神的に負けていれば、現実の私は、かすり傷一つ無いまま『焼死』もしくは『凍死』していました。ですが、それに打ち勝てば、術の効果はそのまま術者に跳ね返ります。つまり、彼女にとり憑いた何者かに」
「やけに詳しいな」
「こう見えても結構、オカルトに興味がありますので」
 張遼は倒れている少女に歩み寄ると、仰向けに抱き起こし、頬を軽くはたいた。少女が、物憂げに目を開ける。
「我々は生徒会の者です。大丈夫ですか?」
「………」
 こくり、と少女は無言で頷いた。
「まず、あなたはどこの棟に在籍している誰で、ここで何をしていたのですか?」
「………」
 ぼそぼそと何か言ったようだが、あまりに小さい声だったので、関羽には聞き取る事ができなかった。
「え?揚州校区の会稽棟在籍で、名前は于吉?この場所の気脈がピークだったから、死んだお祖父さんを呼び出そうとしていたが、本のページを間違えて、変なものを呼び出した後は記憶が無い?なるほど、わかりました。ここは生徒会にとって重要な場所ですので、できれば、もう来ないでほしいのですが……」
「………」
 再びぼそぼそと何か言ったようである。やはり関羽には聞き取れなかった。
「え?この場所の気脈はピークを過ぎたから、もう来ない?それはなにより。ちゃんとひとりで帰れますか?え?夜目は効くから大丈夫?わかりました。ちゃんと片付けていってくださいね」
 こくり、と于吉と名乗る少女は無言で頷いた。  

 校門を出たところで少女と別れると、関羽が張遼に溜息をついた。
「あのまま帰してよかったのか?」
「拘束してどうにかなるものではありません。とりあえず、副会長には見たままを報告して、もっともらしい理由は、程イクあたりに考えてもらいますよ。それに、于吉と言う名前も、おそらく本当のものではありません」
「何ゆえ?」
「西洋の魔術では、真実の名前を知られると、それに呪いをかけられてしまう恐れがあるので、たいていの魔術師は魔術用の名前を持っているそうです。見たところ、召喚の儀は本格的でしたし、偶然とはいえ、あれほどの精神攻撃を仕掛けられる悪魔を呼び出せた事から、彼女は相当、高位の魔術師と思えましたのでね。それより……」
「仕事は……終わったな」
 二人はほぼ同時に跳び退った。そして7mほどの間をあけて睨みあう。関羽は木刀をしっかりと正眼に構えて張遼を見据え、張遼は両手をだらりと下げ、悠然と立っているように見えた。徐々に殺気が高まり、雲ひとつ無い夜空に浮かぶ月ですら、息を呑んで二人の剣士を見下ろしているように思えた。
 関羽が、すり足で一歩間合を詰め、張遼もそれに応じて間合を詰めた。そして関羽が剣尖を上げようと、やや前傾した瞬間。
「スト────ップ!」
 爽快なほど快濶な声が、一面に満ちていた殺気を吹き消してしまった。関羽と張遼は、ほぼ同時に声のした方を見やり、腕を組んで二人を睨んでいる小柄な少女を見出した。
「曹操殿?」
「副会長ですか」
「二人とも何やってんだよっ!」 
 曹操の声が、憤りのあまりやや震えているように、関羽には思えた。
「いい?アンタたち二人は献サマと蒼天会に仕える身だよ。それにアタシの大切な友人なんだから、こんなところで軽々しく決闘に及んじゃダメだよっ!」
 もっともらしい台詞の中に、関羽は微かに違和感を感じた。
「副会長。今のお言葉、まことの事でござるか?」
「当然だよっ!アンタだけじゃなく、劉備や張飛だって、大切な友人なんだよっ!」
「拙者の疑問は、その前の言葉にござる。……近頃の、蒼天会に対するなさりようを見ていると、その言葉に違和感を感じるのですが」
 関羽が言い終えた瞬間、先程、張遼と関羽との間に発生した殺気とほぼ同種のものが、曹操と関羽との間に発生した。
「……関羽、本当はやりたくない、とは言わないよ。好きで生徒会役員やってるんだし、本当にやりたくないなら、とっとと階級章を返上すればいいんだしね。いい?やらなきゃ、アタシがやられるんだよ。アタシが言えるのは、それだけ」
「それはそうと副会長。どうしてこんな時間にここにいるのですか?」
「え?えーと、それは……」
 突然、張遼が気難しい顔で曹操に話し掛けた。明らかに曹操は動揺している。
「その、何と言うか……」
「おひとりで、夏侯惇さんも、虎ちょもいないようですし……。無断で調査に来ましたね?」
「うぐ……」
「来ましたね?」
「…ご、ごめん。文若や于禁には黙っててね?あの二人、いつまでもくどくどうざったいからさ」
 心から情けなさそうな表情をした張遼は、大きくため息をついた。
「まったく、いち勢力の首領にしては無用心すぎますよ……。わかりました。あの二人には黙っておきます」
「やったー!恩に着るよ張遼!」
「そのかわり、今夜は夏侯惇さんに、こってりと油を絞ってもらいましょうか」
「げ……、か、関羽も何か言ってよっ!」
「張遼。それはいい考えだな」
 関羽は苦笑を浮かべつつ、重々しく張遼に賛同した。
 
 午後11時半。中央女子寮C棟4階。
 黒絹のような髪のもつ、物憂げな瞳をした美少女が、『顧雍&顧譚』というドアプレートのついた扉を開けた。先程、白馬棟で大騒ぎを起こした、于吉である。部屋の中で、クッションにうつ伏せになってティーン雑誌を読んでいた、于吉にそっくりな少女が、驚いた表情で彼女を見つめた。 
「あ、元歎姉さん。昨日は帰ってこなかったけど、どこ行ってたの?龍の巣にもいなかったみたいだけど?」
「………」
「え?憶えてない?まったく、ボーっとしすぎるのも限度があるわよ。まあ、無事だったからいいけど」
「………」
 こくり。
 于吉、いや後の長湖部副部長となる顧雍は、少し恥ずかしそうに頷いた。黒魔術は、彼女のひそやかなる趣味である。
 『学園正史長湖部記 怪異説集』によると、この後、会稽棟に戻った顧雍は、夜な夜な怪しい儀式を繰り返したり、自家製の栄養ドリンクを長湖部員に無償で配ったりしていたが、そのことで孫策に目をつけられてしまった。そして、オカルトや占いを毛嫌いしている孫策に、降水確率0%の日に、雨を降らせる事ができなければトばす、という理不尽な命令を受けてしまう。結果的に、雨雲の召喚は成功し、あたり一帯は豪雨となったが、そのことで逆上した孫策に、秣陵棟じゅうを追い掛け回される羽目になってしまう。そのまま夕暮れ時まで逃げ回り、最終的に更衣室に追い詰められてしまったが、魔法で鏡の中に逃げ込むという荒技により、オバケ嫌いの孫策を失神させ、その隙に逃げ出す事に成功した。
 その後、そのときのショックが尾を引いた孫策は体調を崩しはじめ、夏休み突入後、周瑜や張昭の反対を押し切って参加した部内対抗の紅白試合で、人為的な事故に巻き込まれて重傷を負い、そのまま引退してしまう事になる。
 顧雍自身は、孫策リタイア後、生徒会から長湖部に復帰した張紘により、その吏才を見出され、長湖部の経営に携わる事となる。幸い、顧雍=于吉であると気づく者はひとりもおらず、最終的には副部長職まで務めたが、週3回ほどのペースで、黒魔術は続けていたらしい。

 ほぼ同時刻、中央女子寮B棟5階の自室に戻った関羽に、劉備が深刻な表情で、重大なことを告げた。
「関さんがおらん間に、えらい事あったで…」
「何事でござる?」
「…董承が、訪ねてきおった」
「蒼天会の車騎主将が?いったい何用で?」 
「…曹操打倒のために、勤王の志士を集めてるんやて」
 時代が急速に動き出す音を、関羽は聞いたような気がした。

366 名前:★惟新:2003/11/30(日) 18:12
オカルトキタ━━━━((( ⊂⌒~⊃。Д。)⊃━━━━ッ!!
迫力ある描写にドキドキ(゚Д゚;≡;゚д゚)ガクガク
そして、あの無口っ娘顧雍が魔女っ娘に!
何故だかヤミ帽のリリスファッションを想像して妙に(;´Д`)ハァハァ
顧雍=于吉とはこういうことでしたか〜
なにやらとても新鮮で、面白うございました。

367 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/30(日) 22:25
于吉たんの逆襲キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル…魔女っ娘于吉たんの恐怖…っていうか何殺伐と
してるのですか関羽たん張遼たん…
むむ、前回仰ってた于吉=顧雍説の意味が明らかに…。
ただまあ、顧雍は顧雍で長湖以南累世の名門、というステータス持ちですので、
陳寿の記述からは漏れている説かと(^_^;) そしてハイショーシが注で持ち出して
きたものと思われ。
でも確かに顧雍たんは魔女っ娘姿が似合うなあ…。鏡ネタ…。うーむ。


そして長編短編HTML化したぞ( ゚Д゚)ゴルァ!
…ひととおり確認はしたのですが、当然、採録漏れもあると思いますので、自己申告
よろ。
歴史的事実に基づいたお話は年表に、それ以外・および元ネタキャラのパロ系作品は
「異説」扱いでしょーとれんじスレ編へ収録してあります。
単純にコピペしてるだけなのですが、せっかくだからこれまで寄せられたイラストを
「挿絵」として使いたい、といわれる方、これも自己申告でよろ。

368 名前:雪月華:2003/11/30(日) 23:01
様々なベクトルの反響が大きいみたいで…

>自家製の栄養ドリンク
当時、符水というものは、お札入りのただの水ではなく、薬湯(麻薬?)のような存在だったらしいです。まあ、それを飲んで倒れた長湖部員がいたことから、孫策が乗り出し…

>『学園正史 長湖部記 怪異説集』
蒼天会ver 帰宅部ver 曹氏生徒会verも存在し、様々なオカルト現象を収録している
、といったものです。元ネタは『捜神記』etc…
以前書いた長湖部合宿SS第一話での、朱桓の怪談も収録されています。
ちなみに、地理的条件からいって、帰宅部verが、もっとも内容が充実していたり(^^;

>殺伐とした張遼
まだスチャラカな曹操軍団の雰囲気に溶け込めてないということで。
しかし、魏延、朱桓、関羽、張遼ら、有能な重要拠点軍団長には、
『部下には優しい』『同僚に対しては、やたらと傲慢』『プライドが高い』『気難しい』
という共通点があるのは、なぜでしょうかね。

369 名前:★玉川雄一:2003/11/30(日) 23:51
蒼天航路や無双なんかで張遼と関羽が仲良さげなのに慣れてしまっていたせいか、
一触即発っぽい二人の雰囲気は新鮮でした。

あと、剣道部にヘンに気を遣ってる張遼の不敵さ!
確かに、この手の軍団長クラスってあんなキャラ揃いなんですねえ。
もっとも、そうそう改めようとしないのも立派なプライド?
とはいえそれで身の破滅を招く、というのも考え物ですけど…

ところでグコーさん、私の『震える山』って確かに歴史ネタ絡みではありますが、
モロに元ネタありのパロディなんですけど年表組でいんでしょうか。
確かに、全然「しょーとれんじ」じゃないんですけどね(-_-;)

370 名前:雪月華:2003/12/01(月) 18:18
ええと、ダメ出しという形になりますが、
当スレ245の拙作「長湖部夏合宿 その2」が文庫版に掲載されていませんでした。
一応、揚州校区異常気象の設定が載っているので、できれば掲載していただきたいのですが…

※確認後、このレスは削除をお願いします

371 名前:那御 :2003/12/01(月) 20:06
顧雍タン・・・取り憑かれてるんすかw
しかし、、伯カイさんはこのこと知ってるんでしょうか?
知ってて隠してそうな怖さがある・・・

何気にオカルトに詳しい張遼。
ぶっ飛び曹操軍団に、後々溶け込める理由はこれか?

>符水
そ〜いえば符水=麻薬の話はどっかで耳にしましたね。
飲ませてラリッた教徒に、教祖の洗脳が・・・

372 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/01(月) 23:28
>>368
ぐっじょぶ! その説(・∀・)イイ!
色々出てくるオカルト話を総括することも出来そう…。ハイショーシ君も手広いな(^_^;)

>>369-370
ラジャっ! 速攻で付け加えるです!
ちなみに震える山は「元ネタキャラのパロディ」ではないので、年表組に残しますた。
あれで張嶷が固有結界「枯渇庭園」あたりを使ってたら別ですが(^_^;)
要するに「キャラの元ネタに強く依存」してるかどうかということですにゃ。あんま厳密でもないですけど。

>>370
符水(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

373 名前:岡本:2003/12/02(火) 00:31
>教授様
日常の”クスッ”という笑いを誘われるような描写がお見事です。
こういうのはちょっと書けません。次回の作品を楽しみにしております。

>雪月華様
魔法の自己制御ができない人間を野放しにしていいのか、
陪臣同士が喧嘩した場合、勝つにしろ負けるにしろ上の人間の関係において
ただでは済まないので"飛ばす"という言葉を比較的思慮深いこの2人の間で出るのか?
という突っ込みどころは別にして、ノリを楽しむ感覚で拝読したしました。

ひとつ伺いたいのですが、雪月華様の設定では張遼の剣は自己流とのこと
でしたが柳生新陰流の影響が濃いのでしょうか。基本的に”待ち剣”が多い印象が
ありましたので、騎兵を用いて”先の先”と積極果敢に攻める張遼の印象とはなんとなく
違ったのですが。
まあ、個々人の設定の問題ですが。

音無しの構:一刀流・中西派三羽烏の一人・高柳又四郎で知られる。
起こり(相手の動きの前兆)に対応できないときは間合いを開け、相手が打ち損じた
下がり端を打ち込む。起こりに対応できるときはその出鼻をうつ。結果として竹刀が触れ合わない。
北辰一刀流創始者・千葉周作の免許皆伝祝いの試合では千葉周作の起こりが読みづらかったのと
剣の鋭さのため竹刀が打ち合い、相打ちに。

無形の位:柳生新陰流の位(構え、転じて剣の技量のことも位といいます)のひとつ。後の先を突き詰めた
柳生新陰流ではある意味究極の構えかもしれません。が、典型的な合わせ技狙いの構えです。
自分から攻める場合は全く無意味な構えです。

374 名前:雪月華:2003/12/03(水) 18:19
>373
正史の記述によると、文句なしの軍才だが傲岸不遜だったというので、あえて高柳又四郎をイメージしてみたのですが…
ちなみに、拙作・倚天の剣における皇甫嵩は、薩摩示現流の開祖、東郷重位をイメージしています。
(ちなみに盧植は富田流小太刀の達人で、幽州校区伝統技能の北斗張扇術第19代目正統継承者という、ハァ?な設定)
上意討ちの文書を全て処分していたり、幼年の者に対しても礼を尽くしていたというところが、
皇甫嵩のイメージに合ったので…

関羽→相手の剣を強引に打ち払って隙を作る。いわゆる介者剣術で『道場では』敵なし。
張遼→『待ち』ではなく、相手を動かして、その隙を斬る。無駄な動きがないため疲労が少なく、多人数相手の実戦向き。
といったイメージです。
張遼は、并州校区での対不法侵入者への実戦経験により、見切りというか、間合を極めているとmy設定しています。
がっちりと正眼に構えている相手は斬りづらいので、言葉による挑発や、あえて構えない事で
隙を見せ、相手を自分の思い通りに動かして隙を生み出し、そこを斬るという流儀。
また、対多人数戦が多かったため、構えや流れが崩れる受け太刀や突きは用いない。
それと、先の先とは、ただ単に前に出るのではなく、相手の僅かな動きから次の動きを読み、
いち早くそれに対応する動きをする、というものではないでしょうか。

余談ですが「相手を自分の思い通りに動かす」というのが、兵法の極意ではないでしょうか。
まだ、いろいろと主張したい事はありますが、それは作品中で著します(と思う)ので。

375 名前:雪月華:2003/12/04(木) 08:27
そんなこんなで、放課後は、めっさハードボイルドな張遼ですが、
「気を抜く時は徹底して抜く」というポリシーがあるので、寮生活や休日には結構女の子っぽいです。
静かだが圧倒的な風格を持つ関羽と違い、見た目では人を威圧しないタイプ。
関羽以上の親友である、薄命軍師の郭嘉曰く、
「おしゃれして街を歩けば、10分に1度はナンパされる」とのこと。

376 名前:那御:2003/12/08(月) 02:40
駄文書きました・・・
他の方に比べるとだいぶ劣りますが・・・
公孫サンと劉備は、それほど懇意じゃなかったと聴きますが、
あえて、猛烈に懇意にしてみました(絡みはないですが・・・)

― 信じられた人と信じられる人 ― 〜易京の戦い〜
公孫サンは窮地に陥っていた。
本拠地である易京棟に篭城したものの、四方を袁紹軍に囲まれ、身動きの取れない状況にあった。

公孫サン――字は伯珪。
「白馬委員長」と謳われ、幽州校区劉虞を倒し、総代となった烈女である。
一時期は、あの名門袁紹を脅かすほどに勢力を広げ、幽州、冀州、エン州と、三校区にわたって支配したこともあった。

彼女の快進撃の原動力。
それは、「白馬義従」と呼ばれた精鋭部隊である。
バイクからの射撃に優れた者を集め、制服、バイクなどを白一色で統一した部隊である。
北の鮮卑高との抗争では、この白馬義従が大活躍し、公孫サンの名は一気に知れ渡ることとなった。

しかし、彼女の誤算は、界橋にあった。
当時、郎となっていた公孫サンは、青州の黄巾の残党の討伐へと出陣。
持ち前の戦闘力で、いとも簡単にこれを平定。
返す刀で、袁紹の治める広宗棟へと軍を進め、ここに陣を構えたのである。

これに激怒した袁紹は、自ら出陣。
両軍は界橋で激突した。
この戦いのキーマンは、袁紹配下の麹義であった。
長く涼州でシゴかれ、バイクとの戦いの経験には事欠かなかった。

この麹義に、公孫サン自慢の白馬義従が、木っ端微塵に打ち砕かれてしまったのである。
そのうえ、前線で袁紹に遭遇したにも関わらず、これを取り逃がしてしまった。
公孫サンは大敗北を喫し、幽州校区への撤退を余儀なくされてしまったのである。

その後、劉虞を倒して総代の座を奪ったのだが、この劉虞が袁紹と懇意であったため、
さらに袁紹の怒りを招くこととなったのである。

袁紹は、生徒会長の権限と兵力を以て、北上を開始した。
勢いを失った公孫サンの拠点は、次々と陥落し、遂に本拠地易京での篭城戦にまで追い込まれてしまったのだった。



一人の生徒が、易京棟の一室のドアをノックした。
「・・・失礼します」
生徒の名は関靖。公孫サンの側近として仕え、よき相談役でもあった。
(また痩せられた・・・)
関靖は、公孫サンに会う度に、そう思うようになっていた。
以前は澄み切っていた蒼い眼にも、どこか曇りが見られた。

白馬義従が破られてから、公孫サンはずっとこんな具合だったのである。
自ら全身全霊を込めて育て上げた精鋭。

常にメンテナンスは欠かさないよう指示していた。
戦場も、極力走りやすい位置を選んで布陣した。
なのに・・・なぜ・・・!
公孫サンは、悔しさで頭を抱え込んだ。

(あれほど覇気に溢れた方だったのに・・・)
関靖は公孫サンのこのような姿を見るたびに、悲しくなっていくのであった。

「自軍の物資の残量を調査しました・・・ここに置いておきます・・・」
「・・・ありがと」
やはり、公孫サンは生返事であった。
関靖はファイルを机の上に置くと、そそくさと部屋を後にする他無かった。

公孫サン軍には、もはやそれほど長い時間篭城していられる余裕は無かった。
公孫サンはファイルから書類を取り出し、焦点の定まらない目で眺めた。

(姐さん・・・アンタはこうなることが分かってたってかい?)
公孫サンの頭に、卒業した元執行部員、盧植の姿が浮かんだ。

公孫サンは以前、盧植に学問の手ほどきを受けたことがあった。
学年でも名の通った優等生であった盧植の部屋には、後輩が集まり、小さな勉強会が行われることがしばしばあった。

そして公孫サンは、盧植の卒業に際して、ある言葉を肝に銘じるよう言われていた。

377 名前:那御:2003/12/08(月) 02:41
柔能ク剛ヲ制ス

柔軟な者は、かえって勇猛な者を制することができる、という意である。
盧植は、公孫サンが学問においても、兵法においても、柔軟な考えに欠けているということを懸念して、
この言葉を肝に銘じるよう言ったのであった。

しかし、公孫サンはこの言葉に反し、
領地を増やすために冀州に進入し、総代の座を奪うために劉虞を飛ばすなど、
直情的な行動が多かった。

(そのツケが今頃回ってきたってかい・・・)
こうしている間にも、袁紹軍はいろいろと仕掛けてきているのであろう。

(何か手を打たなければ・・・)
だが、考えれば考えるほど、盧植の言が頭を過ぎり、公孫サンを憂鬱な気分にさせるのであった。



遂に、公孫サンは前線に立つことを決意した。
というのは、遥か遠くに狼煙が上がっているのを確認したからである。
「ようやくご到着かい・・・」
公孫サンは、黒山賊ことBMFに使者を送り、増援部隊の派遣を要請したのである。

BMFのトップには、戦闘力に優れた張燕がいる。
(張燕の元までたどりつければ・・・この状況を打破できる!)
そう考えた公孫サンは出陣を決意した。

公孫サンは、僅かに残った部下にこう下知した。
「黒山の張燕が援軍として到着した!
私は、いったん張燕のもとへ身を寄せ、そこで再起を図ろうと思う!」

そう一声言うと、公孫サンは、愛車にまたがり、薙刀を手にし、弓を担ぐと、
一気に易京棟を飛び出し、狼煙に向かって真一文字に突き進んだ。


だが・・・
狼煙まであと百メートル、というところで、突如公孫サンの目の前に、伏兵が現れた。
「ちっ・・・蹴散らせ!」
公孫サンは、薙刀を振り下ろし、2人を倒した。
目の前が開けたところで、公孫サンはスロットルを全開にし、一気に突っ切った。

そして、狼煙が段々近づいてくる。
50メートル・・・30メートル・・・

「なっ・・・どういうことだっ・・・」

公孫サンが驚くのも無理は無かった。
狼煙を上げていたのは、張燕などではない。
事もあろうに、あの袁紹であったのだ。

「だから田舎娘は単純って言うのよね・・・」
袁紹が不適な笑いを浮かべる。

「貴様ッ!」
公孫サンが袁紹に斬り掛かるも、袁紹の隣に侍立していた文醜が、これを受け止めた。
「生徒会に歯向かおうなどたぁ、いい度胸じゃないかい!」
ナイトマスターと呼ばれ、恐れられた猛将である。

篭城の疲れと、盧植の言葉の苦悩により、公孫サンにもはや戦う余力は殆ど無かった。
一、二合交えたところで、公孫サンは撤退の指示を出した。
(とはいえ・・・もはや易京棟は落ちていよう・・・。かくなる上は、斬り死にするのが武人の名目ッ!)
公孫サンは、悲壮の覚悟で、敵軍に再び突入していった。

公孫サンの姿が見えなくなると、袁紹はとんでもないことを言い出した。
「田豊、易京棟を彼女に返して差し上げなさい。」
「・・・は?」
「公孫サンを易京棟に撤退させなさい、と言ったのよ。」
「なぜです!わが軍の勝利は決定的、それをみすみす・・・」
「あの田舎娘に、思い知らせてやるのよ・・・」
「そのようなことをすれば、わが軍に降伏してくるものはなくなります!」
「今回だけよ、あの女は・・・あの女だけは許さない!」
「・・・」

田豊は呆れ返ってしまった。
袁紹は、一時期公孫サンに苦戦したことを、かなり根に持っているようだった。
(これは・・・諌めても聞き入れて下さらないだろう・・・)
剛直で知られた田豊も、これには矛を引っ込めるしかなかった。

(どういうことだ?)
なぜか無事に易京棟に入ることができた公孫サンは、考え込んでいた。
敵軍の勝利は確実であった。にも関わらず、袁紹は易京棟を取らず、自分に棟を明け渡した。
(侮辱・・・としか思えん・・・)
この露骨な侮辱も、公孫サンの心に大きなダメージを与えた。

(姐さん・・・私は間違っていたんだろうか・・・)
公孫サンの頭に、再び盧植の言葉が浮かんだ。

自分の力、自分の意志、自分の心、それが、この動乱を切り開く唯一の武器である。
そう信じていた。そう信じて突き進んできたのだ。
だから、心から信じることが出来る人間は、殆どいなかった。
逆に、自分を信じてくれる人間も、少なかったように感じられる。

姐さん・・・アイツは・・・劉備は今どうしてるんだろう・・・
アイツらだけだったよ・・・後輩で私になついたのは・・・

玄徳・・・

つかみ所がないタイプの後輩だった。
しかし、不思議と自分と馬が合った。
ともに盧植の部屋で語らったこともあった。
自分が唯一心から信じられた後輩であった。

玄徳・・・アンタは、私と同じ路を辿っちゃならない。
乱世を切り開くには・・・力だけじゃダメだったんだ。
私は身を以てそれを知ったよ・・・

最後くらいは・・・カッコイイ事言わせてくれ・・・
アンタは、間違いなく大物になる・・・そんな気がするよ・・・


翌日、公孫サンは階級賞を自主返済し、群雄割拠の時代から、その名を消した。
心の中に、ひとりの後継者を残して・・・

378 名前:玉川雄一:2003/12/09(火) 22:18
私は長らくピンとこなかったのですが、
公孫サンも一時は袁紹をしのぐ勢力を誇っておったのですね。
しかし界橋の一戦を機に(?)パワーバランスが逆転し、
挽回もままならず易京に潰えた、と…

公孫サンはけして完全無欠の英傑ではないにせよ、
天下の一角を占めるだけの力量は確かに持っていたはずですが、
それを総合力で覆した袁紹というのはやはりただものではないということでしょうか。
(この論法で行けば曹操はさらに…)

盧植先輩と、劉備と、共に机を並べて学んだ奇妙な勉強会というのも興味がわきます(^_^;)

379 名前:★惟新:2003/12/09(火) 22:22
力作乙! やはりアサハル様の神絵にインスパイアされましたかにゃ?
姐さん…っつーか女王様な公孫[王贊]閣下の壮絶なる最期。
盛者必衰の世界が広がっていますね。
彼女もかなりの実力派だったようですが、相手があの袁紹では…

それはそうと性悪袁紹(;´Д`)ハァハァ

380 名前:★アサハル:2003/12/09(火) 22:40
姐さんの最期、実は物凄く好きなシーンでありまして。
こうして改めて文章で見ると感無量であります!!
一瞬「袁紹一発殴っていいですか?」と思ったのは(゚ε゚)キニシナイ!!

ハリセン娘2人に囲まれる姐さんってのもなかなか…
もしかしてあのナリ(自分で設定しておいて)で実はボケですか?

381 名前:那御:2003/12/09(火) 23:30
アサハル様の絵に完全にインスパイアですw
ちなみに、好きな日本文学「平家物語」が大いに影響しているかと。。
「滅び」に美しさを感じる人間ですから(爆

勉強会ネタはお気に入りw
全くテンション、キャラの違う三人の勉強会。空恐ろしいものがあります。

てか、正史の袁紹があまり好きでない、って根性が性悪袁紹の生みの親w
こう・・・裏表があって、しかも自分に手向かう者は、どうしても許したくない、
そういうキャラになっちゃいました、、

業務連絡(何)、
曲は、「皇甫嵩のテーマ・バラードアレンジ」とその他2曲同時進行中。
コツコツやっていきます。

382 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/10(水) 23:08
遅まきながら、読みますた(゚∀゚)!
公孫瓉先輩の、激しくもあっけない、自滅に近い最期。
北上してきた青州黄巾勢力を蹴散らし、幽・冀・青の三校区を圧倒的な武力で支配し、
おそらく袁紹がいなければ、あるいは韓馥がもう少し豪毅であれば、まず河北ブロック
を支配していた女傑であったでしょう。ひょっとすると袁紹が躊躇った中原進出をいとも
あっさり実現していたかもしれません。

そういう狼みたいな彼女のコアの部分には、やはり盧植先生やら後輩・劉備やらの思い出
があるわけで…。やりたい放題やってる彼女ですが、盧植先生が一瞬マジモードになって
ハリセン取り出すと、途端に硬直するものと思われ。
というか、公孫瓉もハリセンを持ってたとか…三人全員ツッコミ。

袁紹さんも、敵と認めた相手に対する底意地の悪さカコイイ! 「自分の中でその人が“どうでも
いい存在”になるまで徹底的にいじめ抜く」を地でいく袁紹お嬢さま(;´Д`)ハァハァ… 呉匡たん
の方が珍しい存在なんでしょうねえ…

>業務連絡
(゚∀゚)! 期待ナリ!

383 名前:7th:2003/12/14(日) 21:04
だいぶ遅くなりましたが感想を書かせて頂きます。

袁紹と公孫サンの対立というのは要するにお嬢様vsヤンキーの戦いなんですよね。
単純な武力主義者の公孫サンと裏表のある優等生の袁紹が理解しあえる事はない…という感じでしょうか。
公孫サンも劉虞をトばした所までは良かったんですけど、その後も同じ路線で走っていってしまったのが間違いだったのかもしれません。
頭の切り替えが出来なかったばかりに、なんとも哀しい最期を迎える事に…。

それはそうと勉強会。あの廬植とあの劉備とこの公孫サンが一つの机で勉強しているのが何か凄いんですが。
「………」
「………」
「…おい劉備、出来たか?」
「…まだです。後200」
「だー、やってられるかこんなモン。大体何でこのトシにもなって漢字の書き取りなぞせにゃならんのだ!?」
「先生は『基本を疎かにするな』って言っとりましたけど」
「アタシはこのテのちまちました作業が死ぬほど嫌いなんだ…お前もそうだろ?」
「そらそうですけど…って伯珪さん、何してるんですか」
「フケる。ここは一階だ。窓を跨げばすぐに…」
窓のすぐ外に廬植の姿。窓を開けた姿勢で硬直する公孫サン。
「すぐに…何かしら?」(ハリセン装備)
「せ、先生、何でここに…」(冷汗)
「そろそろ集中力の限界だと思って。…覚悟はいいかしら?」(いい笑顔で)
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル(滝汗)
といった感じでしょうか。

しかし皆様レベルが高い。いまSSを一本書いていますがSS初書きの自分なんかが肩を並べるのは躊躇われますね。
取り敢えず今週中に上げられるように頑張ってみたいと思います。

384 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/14(日) 23:39
>>383
いい笑顔の盧植先生(・∀・)イイ! タイムまで把握済みとは。
そして、やはりむずかりの公孫瓉先輩。案外真面目な劉備。
三者三様の学窓ですねえ…。
盧植先輩は、どちらかというとクールっ娘っぽい外貌ですが、中身はかなり
弾けてます。普段静かなのは地声がデカイのが気になってるからで、劉備や
公孫瓉は遠慮なく大声で叱責されたり。

そして7thさま、SS期待しておりますっ!

385 名前:那御:2003/12/20(土) 01:50
注)このSSは、全て実話を元に構成されております。

長湖部調理実習  〜禁断の蒲茹でと豚汁入り〜

「あ〜、めんどくせぇ。なんで俺様がこんなことをしなきゃならないんだ・・・」
ボヤきながら米をとぐ甘寧。
その手つきは、ややおぼつかない様子である。
「まぁまぁ・・・数学よりはマシじゃないか。」
その隣でゴボウを洗う魯粛。こちらはなにやら楽しげである。

揚州校区の家庭科の授業。その一環として、今回の調理実習は行われていた。
勿論、一人で調理実習は出来ない。
班分けがあるわけだが――。

2班の周瑜班は勿論、班長周瑜が絶妙な料理の腕を振るうことが予想される。
1班孫権班には顧雍ら。4班程普班には歩シツらがいる。
文科系の彼女らも、なかなかの料理を作るであろう。
だが・・・3班だけは明らかに異彩を放っていた。

呂蒙班。その班員は、班長呂蒙以下、甘寧、魯粛、陸遜である。
陸遜は、この班編成を見て、自分の不運を呪ったという。
案の定、呂蒙は一言、
「伯言は手ぇ出さないでくれよ。お前が関わるとロクなことにならないからな。」
(それはこっちの台詞です・・・)
その一言を飲み込んだ陸遜は、ため息をついてうなだれた。

今回、学園から指定されたメニューは、白飯、秋刀魚の蒲焼、豚汁であった。
「終わり!モーちゃん皮むいて!」
ゴボウを洗い終えた魯粛は、呂蒙にゴボウをパスした。
「おい!これってどれくらいとげばいいんだ?」
「・・・既にとぎすぎです。」
あきらかにとぎすぎといえる米を見かねた陸遜が言った。
「じゃあ、それを水に浸しておいてください。」
「あいよ。」

ニンジン、ゴボウ、大根・・・
一通り野菜を洗い終えた4人。
「じゃあ、次は野菜を切らないとな。」
「よ〜し、ここは俺様の出番だ!これを一番楽しみにしてたんだ。」
そう言うと甘寧は、おもむろに両手に包丁を構えて、まな板の前に立った。
「ちょ、ちょっと!何する気ですか!」
あわてて陸遜が静止する。
「え・・・何って、野菜を切る。」
「そんな切り方って・・・」
「いいんだって!どんな切り方したって、食えないもんじゃないだろ?」
「ま、まぁ・・・」
「じゃあ、行くぜ!うぉらッ!双剣連打!」
ダダダダダダダダダン!
まな板に置いたゴボウを、二刀流で叩き切っていく。
次々とまな板から飛び散っていくゴボウの欠片。
「うわぁ・・・、あの班絶対おかしいって・・・」
1班の朱桓らが、3班を横目で見ながら呟く。
「あの面子じゃあねぇ。」

「おもしろいな!次あたしにやらせて。」
楽しさに気付いたか、魯粛が目を輝かせて言う。
「あぁ。」
「じゃあ、興覇さぁ、あたしに向かってニンジン投げて。」
「は?」
またも予想外の展開に陸遜があわてる。
「投げるって・・・?」
「まー見てなって。」

「とりゃ!」
甘寧がオーバースローでニンジンを投げ込む。
「てぃッ!」

スパッ!

ニンジンが真っ二つに切れて、その半分は調理台のうえ、もう半分は床に落下した。
「あぁ・・・。やると思った・・・」
こうなることは見え見えだったのに、と陸遜が頭を抱える。

386 名前:那御:2003/12/20(土) 01:50
「で、これどうする?」
落ちたニンジンを拾い上げ、呂蒙が訪ねる。
「う〜ん・・・、そうだ!」
魯粛が頭の上に豆電球を点灯させた。
「興覇、モーちゃん、耳貸して!」
(ヒソヒソヒソヒソ・・・)
「ははははは!そりゃあ面白い!」
呂蒙が爆笑して言う。
「で、どこの班にやる?」
甘寧が尋ねる。
(どこの班?一体どういうこと?)
「1班とか?」
「やっぱり?」
(公瑾さんの班・・・何をする気なの?)

すると、甘寧は、落としたニンジンのほうを切り始めた。
ある程度の大きさになったところで、なぜか周囲を見回し始めた。
「さ〜て、細工は流々・・・」
魯粛が、そのニンジンの一欠けらを手に取ると、
「仕上げを御覧じろ〜。」
周瑜班のメンバーの動きを見据えて・・・

ぽいっ。
ぽちゃん。

「!!!」
陸遜が言葉にならない悲鳴をあげた。
「な、なな、何してるんですか!事もあろうに公瑾さんの班の鍋に投げ込むなんて!」
「いやさぁ、あいつ料理上手いから、ちょっとくらい落ちたニンジン入っててもフォローできるって。」
「いや・・・」
「しかも皮付きときた。」
呂蒙が無意味な補足をする。
「あぁ・・・」
陸遜は、昏倒しそうになるところを堪え、
(見なかったことに・・・見なかったことに・・・。気づいてない・・・気づいてない・・・)
一人、言い聞かせ続けるのだった。

(秋刀魚・・・秋刀魚だけは私がさばかないと・・・。
あの人たちにさばかせたら、食べられるものも食べられなくなる・・・)
陸遜は、秋刀魚をさばきに取り掛かった。
幸い、甘寧らは野菜を投げ切りすることに夢中である。

「お〜、割とよさげじゃん。」
ダシ汁の中に野菜を入れて、数分。
湯気がもうもうと上がり、ひとまず食べ物らしくなってきたようだ。
「教科書には、そろそろ味噌とか七味を入れるって書いてあるが。」
「じゃあ、味噌だな。一人分いくらだ?」
「めんどい!いいや適当で。」
そういうと甘寧は、味噌を手掴みで鍋に次々と放り込み始めた。
(うわぁ・・・絶対多い・・・)
一人、調理台で秋刀魚をさばく陸遜の目にも、その光景は映った。
「したら、七味入れるよ。」
魯粛が七味唐辛子の蓋を開け、鍋のうえで振ると・・・

387 名前:那御:2003/12/20(土) 01:51
どさどさどさっ。

「あ・・・」
鍋が見る間に真っ赤に染まっていく。
中蓋が取れて、七味が一瓶、鍋の中に投入されたのだった。
「うわ〜、こりゃあ辛いぞ。」
顔は全然深刻では無い甘寧が、言う。
「あたしは辛いの平気だもん。」
「俺様も平気だが。」
「モーちゃんも大丈夫だったよね?」
「うん。」
彼女らは、調理台で顔面蒼白になっている陸遜には、全く気付かずにいる。
(あぁ・・・舌が死ぬ・・・)
陸遜は、辛いものが大の苦手だったりするのだった。

「これってさぁ・・・どっかの民族料理に近いよな。」
「インド料理だよね・・・誰がやったのよ!」
「子敬がやったんじゃん・・・」
特に深刻さを感じない三人は、ずっとこの調子である。
「そういえば秋刀魚は?」
「あれ、切ってある。残念!これも鍋に投げ込んでやろうと思ったのに・・・」
「じゃあ、教科書にある、蒲焼のタレっていうヤツを作るとするか。」
呂蒙が、教科書を片手に、
「醤油と水と砂糖で作るんだとよ。」
「砂糖醤油じゃんかよ!餅でも焼いて食うか?」
「ハハハハ!」


秋刀魚に小麦粉をつけて、ようやくひと段落、と落ち着いた陸遜だったが、
目の前にある光景を見て、再び昏倒しかけた。
あきらかに、蒲焼のタレが多い。
鍋いっぱいに蒲焼が満たしてあるのだ。
「ちょ、ちょっと・・・蒲焼って焼いてる秋刀魚にタレをかけて作るものじゃなかったですか?」
「ん?しらねぇよ。とりあえず伯言、秋刀魚貸せよ。」
甘寧は、魯粛の手から、秋刀魚の皿を奪い取ると、それを一気に鍋に放り込んだ。
「あ・・・」
秋刀魚の蒲焼は、一瞬にして秋刀魚の蒲茹でと化し、グラグラと鍋の中で茹でられていくのであった。

「ご飯どう?」
「噴いてる噴いてる!」
「火ィ止めろ!」
「え・・・、止めるんですか?」
「当たり前だろ!噴いてるんだから!」
(蒸らさない気だ・・・)
陸遜は、白飯ですらマトモに食べられないであろう、自分の不運をまた呪うのだった。

「いよ〜しっ!かんせ〜い!」
魯粛が大きく伸びをして言った。
「うわ・・・」
陸遜は、わが目を疑った。
豚汁とは思えない、燃えるように赤いスープ。野菜は粉々である。
さらに、蒲焼とは程遠い、煮物に近い秋刀魚。茹で過ぎたために、身はボソボソになってしまっている。
そして、白飯も、水を吸っていないうえ、蒸らしてもいない。かなりの覚悟が必要だろう。

「さぁ〜て、食うか!」
甘寧が音頭をとっての、食事タイム開始である。
まずは、魯粛が、豚汁入り七味スープをすする。

ずずず・・・。

「・・・うげっほ!げふん!げふん!」
むせ込んで座り込む魯粛。
「ありゃ?おい、子敬?」
「げほん!げふん!」
(うわぁ・・・魯粛さんでもああなる代物を・・・)
陸遜は、数分後に自分の身に降りかかるであろう、この惨劇を、三度呪った。

「甘寧・・・ちょっとまずかったんじゃないか?」
「でも・・・子敬が自分でやっちまったんじゃん。」
「まぁね・・・」
「じゃ〜、残りのスープを誰が飲むか、きめようぜ!」
「え!?」
甘寧は、これを飲まない気である。
(ひ、卑怯だ・・・)
「じゃあ、ジャンケンだな。」
「せ〜の、だっさなきゃ負けよ〜、さ〜いしょ〜はパー!」

・・・ぱー?

「よっしゃ!陸遜の負け!」
「やったぁ、助かった〜!」
「そ、そんなぁ・・・」
(今時、「最初はパー」で勝負してくる人間がいるとは、予想だにしなかった・・・)
「さぁ〜て、まだまだたくさんあるからな、陸遜、頼んだぜ!」
「あぁ・・・」
「ってか、俺らこれから魯粛を保健室に連れて行くから、お前一人で全部食べとけ。」
「えぇーーーーっ!!?」
「じゃ、そういうことだから。」
ピクリとも動かない魯粛を抱え、甘寧と呂蒙が走り去っていく。

「・・・そんな殺生なぁ・・・」
翌日、陸遜が喉と胃の痛みにより欠席したのは、言うまでもない・・・

388 名前:玉川雄一:2003/12/20(土) 20:49
第二作おつ。それにしてもこのメンツは動かし易いなあ(^_^;)
これまでほとんどの人が彼女らをネタにしてお話書いてません?

ただ、キャラ的にはそれぞれ上手くさばけていると思ったのですが、
甘寧までミラクル料理作りに荷担しちゃうのはいかがでしょ。
以前、『甘寧は隠れグルメ』っていうネタがあったのですが、
(今は読めないので仕方ないのですがレガッタ大会の話など)
彼女は素がああいうキャラだからこそ、
敢えて正統派に料理を追求させてみるともう一ひねりが利いたかも。

普段の活動とは違って、こと料理に関しては
暴走する魯粛と呂蒙−妙に玄人こだわりの甘寧−(相変わらず)板挟みの陸遜
といった図式もありかもしれません。

ところで、周瑜のナベに投入されたニンジン(皮付き)の行方は…?
リアルの方ともども顛末が気になるのですが(((((;゚Д゚))))

389 名前:那御:2003/12/20(土) 21:04
甘寧や魯粛には、「何をやらせても問題ない」という勝手な図式が浮かび上がっております。
雪月華様の作品の設定を、可能な限り生かしました。

>敢えて正統派に料理を追求させてみるともう一ひねりが利いたかも
そのあたりは加筆・修正を大いに希望します。
(ただしリアルでは被害者は一名)

>ニンジン(皮付き)の行方
いやだなぁw
そんなのバレていたら僕が無事にココにいられるわけ無いじゃあないですか(爆

390 名前:那御:2003/12/20(土) 22:28
てか、甘寧に対するイメージが、僕の意識の中で違ったみたいですね。
ってか、料理番を打ち殺した話のことを考慮に入れてませんでした。
反省・・・

391 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/21(日) 02:16
激しくワロタァ! 那御さまグッジョブ!
本当に悩み無さそうですな、魯粛嬢と甘寧。モーちゃんも加えて揚州の傍若無人
トリオですやね…ひたすらに悲惨な陸遜に哀悼を。
しかし、こういう連中を一瞥で大人しくさせることの出来る完璧美少女周瑜たんに
改めて憧れてみたり。描写がないぶん、異様な存在感があるのですねえ(^_^;)
皮付きニンジンどう扱うんだろう…。無様に取り乱すこともないでしょうし。

>甘寧
たしかにグルメという設定は生きてましたねえ(^_^;) ってレガッタリンク切れてる!?
岡本様の作品と言い、リンク切れ多いな…。次回で必ず復帰させます!

392 名前:7th:2003/12/21(日) 16:20
或る夏の暑い日。
「むー………」
蒼天学園の学食。そこに入るなり、何晏 は形の良い眉を顰めて唸った。
暑い。とにかく暑いのだ。
外の気温は既に35度を超している中、あろう事か食堂の冷房が壊れたというのだ。
直射日光は当たらないとはいえ、厨房の熱と大勢の人の熱がこもり、下手をすると外より暑い。
この環境下で食べるものといえば冷たいもの…素麺なんか良いかも。そう思い何晏は長蛇をなしている行列に並ぶ。
「ふっふっふ…なってないわね、何晏」
突然、後ろから聞こえた声に、何晏は振り返る。
「会長、他人の食べるものにケチを付けるのは如何なものかと思うんですけど」
会長と呼ばれた少女は腕をびしぃっ!と突き出し、人差し指で何晏を指さしていた。
彼女の名は曹叡。この学園の生徒の頂点に君臨する蒼天会長、その人である。
「甘い、甘いよ何晏。この暑い中にソーメン?栄養がないし美容に悪い。そして何より、そんなもの食べたって涼しくなんかなんないわよっ!」
夏の風物詩、素麺に対し何て事を。素麺業者の方に失礼だぞ。と何晏は思った。
「では会長は何を食べるおつもりで?まさか煮麺(にゅうめん)なんて言いませんよね」
「うどんよ。それも熱いやつ」
「………はぁ?」
何言ってんだこの女。暑さで頭がイカレたか?と半分茹だった頭で滅茶苦茶失礼な事を考える何晏。
「逆療法ってやつよ。暑い中で熱いものを食べると涼しくなるってアレね。それにソーメンよりうどんの方がカロリー低くて美容に良いのよ。何晏、あなたもうどんにしなさい。私がおごるから。」
おごると言われては是非もない。曹叡は何晏に席取りをさせ、人もまばらなうどんコーナーへと駆けていった。


………やられた。そう思わざるを得なかった。
目の前には熱々の鍋焼きうどん。てっきり、かけうどんの類だとばかり思っていたのに。
「会長、本当にコレで良いんですか?」
「もちろんよ!見なさい、貧相なソーメンと違うこのボリューム、この栄養価!」
鍋焼きうどんの上に乗っている具材を指さして曹叡は言った。野菜、カマボコ、かしわ、卵。確かに栄養価は素麺を軽くしのぐし、体にも良いのは間違いない。
しかし、しかしである。この溶岩の如く煮えたぎる鍋焼きうどん。食べて涼しくなる前に熱さでもだえ死ぬのではないだろうか。
「コレを食べれば、夏バテなんて絶対しないわ!」
ぱきぃん、と勢いよく割り箸を割り、果敢に鍋焼きうどんに挑む曹叡。
確かに夏バテはしないだろう。だがその前に熱さで…やめた。考えても埒があかない。何晏はそう判断しうどんを食べることにした。
じわじわとにじみ出る汗をハンカチで拭き、熱々のうどんをすすり込む。周囲の視線がやや気になるが、なかなか旨いものである。
何分、いや何十分経っただろうか。とにかく二人は鍋焼きうどんを完食した。
顔は汗まみれであるが、二人とも清々しい表情をしている。
何晏の顔をしげしげと覗き込んでいた曹叡が不意に言った。
「………美白」
「は?何のこと?」
「ほら、何晏の顔って白くて綺麗じゃない。それで、それが化粧か地肌かって事でもめたのよ。それを確かめる為に鍋焼きうどんを食べてもらったんだけど…。いいなぁ…美白」
「…で、会長。いくら儲けました?」
「配当8倍で4ま…っっ!」
慌てて口をふさぐ曹叡。だが時既に遅し。何晏は微笑んでいる…ただし、目は笑っていない。
「ごごご…ごめん何晏!悪気は無かったの!つい出来心っていうか………」
「良いですよ、許します。ですが、代わりに………」
びくぅっ、と身を竦める曹叡に、何晏は目に一杯の笑みを浮かべて言った。
「また、鍋焼きうどんおごって下さい。ただし、今度は冬の寒い日に」
「お安い御用よ」
安堵の笑みを浮かべ、曹叡は何晏に微笑み返した。

393 名前:7th:2003/12/21(日) 16:26
玉川様の世説新語シリーズに触発され、書いてみました。
世説新語・容止篇より、何晏と曹叡のお話です。
初SS故、至らないところも多いとは思いますが、投下させていただきます。

ちなみに上の方で言っていたSSとは別物だったり。
そっちは役職がうまく定まらなかったので後回しにしました。いずれ書き上げると思います。

394 名前:那御:2003/12/21(日) 21:44
力作乙!世説新語を上手く学三化してますね。
曹叡と何晏の、学三ならではの不思議な関係がGoodです!
てか、曹叡は曹操のキャラを受け継ぎまくりですね・・・

>何言ってんだこの女。暑さで頭がイカレたか?
何晏なら絶対考えるw

>ちなみに上の方で言っていたSSとは別物だったり。
>そっちは役職がうまく定まらなかったので後回しにしました。いずれ書き上げると思います。
期待してます!

395 名前:玉川雄一:2003/12/21(日) 22:02
むう、世説新語の完本が手元にないので元ネタを思い出せないのが恐縮ですが。
それにしてもこういうひねったネタが出るのが学三ならでは!
7thさん、初挑戦ながらなかなかやりますな( ̄ー ̄)

確かに、曹操のキャラが見えてくる曹叡がいい!
真夏の鍋焼きウドンとはまた剛毅な…
しかしトータルで見ると、何晏もなかなかいい勝負をしておる模様。
次回作を楽しみにお待ちしております。

396 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/21(日) 23:22
7thさまグッジョブ!
アレですね、可晏の美白っぷりに疑問を抱いた明帝が、真夏にアツアツの料理を喰わせて、
汗で流れるかどうかを観察したという…(^_^;)

何平叔美姿儀、面至白。魏明帝疑其傅粉、正夏月与熱湯餅。既ロ敢、大汗出、以朱衣自拭。色転皎然

マターリしてて、可晏たんと曹叡たん仲良さそう〜。案外おちゃめなのな、曹叡たん。さすがは
曹操の妹と言うべきか。
次回作に期待であります!

397 名前:★教授:2004/01/07(水) 00:29
 三角巾を頭に巻きつけマスクを付けて…ゴミ袋に不要な物品を放りこむ。
 ある者は箒、ある者は雑巾…力のある者は机や椅子の運び出しに粗大ゴミの撤去。
 どこにでもある学校の大掃除。それはこの蒼天学園でも同じだった。
 舞台は益州校区成都棟演劇部部室。関係者以外知る事のない季節外れの春一番が開幕していた――


■■簡雍と法正 -仲良き事は美しき哉-■■


「やー…色んな衣装があるもんだな」
 簡雍が衣装棚をごそごそと漁る。一つ手に取り、またもう一つ手に取る――先刻からこれの繰り返しだった。
「ちょっと憲和。掃除しにきてるんでしょ、衣装見てサボってる場合じゃないわよ」
 真っ白な三角巾に白衣を着こんだ法正がぽんぽんとハタキで簡雍の頭を叩く。ジャージに身を包んだ簡雍が鬱陶しそうにハタキを払いのける。
「分かってるよ、だからこうやって衣装の整理を…」
「見てるだけじゃない。それに掃除を始めて一時間、憲和は箒の一本も持ってないのよ?」
「よく見てるな…」
「総代からしっかり面倒見てやってって頼まれてるのよ」
 これ見よがしに大きな溜息を吐くと簡雍に雑巾を手渡す法正。
 当の簡雍は雑巾を渡されると頭を掻いて少しだけ眺めて、周りでダンボール箱を片付けていた女子生徒に写真を添えて渡していた。勿論、法正の見ている目の前で。
 当然、法正も黙ってるわけがなかった。簡雍の胸座を掴んでゆさゆさがくがくと揺らしはじめる。
「憲和! 何で他のコに雑巾渡すのよ! それに…今一緒に何を渡したの!」
「うぷ…やめろよー。昨晩から今朝にかけて呑み会やってたんだからー…」
 揺らされる度に青くなっていく簡雍。一瞬、法正の脳裏に1分後の凄惨な現場がちらついた。慌てて揺らす手を止めると、簡雍はふらふらと椅子に座りこんでぐったりしてしまった。酒脱人とはいえ、やはり二日酔いになるのだろう。
「もー…一体何を渡したのよぅ」
 肩を竦めて、雑巾を渡された女子生徒を見る――目が合う。と、その女子は顔を赤らめて顔を背けた。
 そのリアクションを見た法正の頭に電気が流れる。ずかずかと女子生徒に近づくと、写真を脅し取る。そして――
「け、憲和ーっ!」
 法正はコンマ何秒の世界で顔を朱色に染めると写真を放り投げ、ぐったりしてる簡雍をハタキでぺしぺし叩き始めた。
「何だろ…」
 その辺で作業をしていた他の生徒達が放り出された写真を手に取り、眺める。
「…………」
 10人前後の生徒が写真を見て、全員が同じリアクションを取っていた。
「…いや、でも法正さんだから…」
「黒下着って大人っぽいよね…ガーターだって…」
「胸なくてもこれはこれで…」
 喧喧諤諤と写真に付いての考察まで始める始末。しかし目ざとい法正がそれに気付かないわけもない。
「お前等っ! 全員でてけーっ! その写真の事を忘れなきゃヒドイ目に遭わせるからなっ!」
 ぶんぶんとハタキを振り回して女子生徒達を部室外に追い出す法正。簡雍も女子生徒達に椅子ごと運ばれて出ていった。
「はぁはぁ…憲和のヤツ、一体何処であんな写真撮ったのよ…」
 大きく息を切らしながら写真を丸めてゴミ袋に投げこむ。
「これじゃ大掃除にもならないわよ…ったく」
 深呼吸、溜息と続けると三角巾を外した。今日はもう大掃除は止めにしたらしい。汗を拭い鏡の前で髪を整える、こうしていると普通の女の子にも見えるかもしれない。
 ふと、法正の視界に簡雍が物色していた衣装棚が飛びこむ。好奇心をそそられるのか徐に近づくと衣装を手に取って眺めはじめた。
「へぇ…憲和じゃないけど本当に色々あるんだ……あ、これ…」
 一着の衣装を手にした時、法正の動きが止まる。少し考えた後、きょろきょろと辺りを警戒しながら部室の入り口に鍵を掛けた――


 約10分後――
 衣装チェック用の大きな姿見の前で自分の姿に感動している法正の姿があった。
「一度…着てみたかったんだよね…これ」
 先ほどまで怒り爆発させていた女子と同一人物とは思えない笑みを浮かべる法正、余程着てみたかったのだろう。
「女の子だったら誰でも一度は…って感じかな」
 姿見の前で軽やかに一回転。洋風の花嫁衣装…分かり易く言うとウェディングドレスの裾がふわりと浮かんだ。純白のドレスだけならまだしも、実は唇に薄紅を引いたりと化粧まで周到だった。
 一人、鏡の前で悦に浸る法正。しかし、シンデレラに制限時間は付き物だった。
「何や…鍵かかっとるわ…」
 部室のドアがガタガタと動くと同時に、外から関西弁が飛び込んできたのだ。一瞬にして青褪める法正。
「やば…総代が…」
 慌ててドレスを脱ごうとする法正、しかし焦る気持ちが手に正確な情報を伝えない。
「総代、法正はもう帰ったのかもしれませんぞ?」
「んー…そうかもなぁ…」
 ぼそぼそと聞こえてくる諸葛亮と劉備の会話が余計に法正の心をかき乱す。自分で蒔いた種とは言え、こんな姿は見られたくない――泣きそうになりながらドレスを脱ごうと必死になる。
「まぁ、でも鍵もあるさかいに…一応チェックだけはしとこ」
「そうですな。では…」
 絶体絶命の窮地に立たされる、例えるなら一人分にも満たない足場の断崖絶壁で強風が吹き荒れる――そんな所だろう。法正はじたばたしながら脳をフル回転させた。
 そして――部室のドアが開き劉備と諸葛亮が姿を見せた。
「なーんや…誰もおらん。法正、やっぱり帰っとるわ」
 制服の上からエプロンを着こみ、ハリセン代わりの箒を持った劉備は広くはない部室を見渡すと踵を返した。
「ふむ…仕方ありませんな。この部屋の掃除は明日にでもやらせますか」
 白羽扇の代わりにちりとりを扇ぎながら劉備に続いて部室から出ていく。
 長い沈黙。静かでゆっくりとした時間が流れる。その静寂を破ったのはロッカーが開く音だった。緩々と開くロッカーの中から法正が出てきたからだ。
「あ、危なかった…」
 冷や汗を流しながら安堵の息を漏らす。と、次の瞬間――
「いただき」
「え? うわっ!」
 強烈な閃光、その向こう側に簡雍が立っていた。正にお約束。
「け、憲和…何でいるの?」
 カクカクと口を動かす法正。フラッシュの眩しさ云々よりも簡雍がこの場にいる事の方がショックだったようだ。
「玄徳と一緒に入ってきてたんだよ。何かあるな〜って思って待機してたら…へぇ〜」
 にやにや笑いながらウェディングドレス姿の法正を上から下まで眺める簡雍。法正はただ頬を染めて後ろを向くしかなかった。と、ある重要事項に気付いた。
「憲和!」
「な、何だよ…急に」
「そのカメラ寄越せ!」
「わわっ! やめろって!」
 飛び掛かる様に簡雍に襲いかかる法正。無論、カメラを奪う事が目的だ。
 しかし、簡雍も折角のスクープを無に帰す訳にはいかないから抵抗する。お互いに体力、筋力は似たり寄ったりの性能なので一進一退の攻防になっていた。しかもかなりの低レベル。
 やがて、簡雍が疲れ気味の法正の隙を突いて押し倒してマウントポジションを取る事に成功。
「へへー…観念しろい」
「く、くやしーっ!」
 勝ち誇る簡雍に本気で悔しがる法正。
「さーて…どうしてくれようかな?」
「な、何よ…」
 意味深な動きで法正を翻弄する簡雍。まだ酔ってるのだろうか。
 その時だった、部室のドアが開いたのは――
「憲和〜。鍵渡すの忘れ…て…?」
 劉備が苦笑いしながら入ってきて…凍った。同時に法正も凍っていた。きょとんとしているのは簡雍一人だけだった。
「な、何してんのや…?」
 劉備から見れば『簡雍が法正を押し倒して襲ってる』ようにしか見えない。堅い笑みを浮かべながら劉備が尋ねる。
「いや、見ての通り…私が法正を…」
 簡雍が普通に答える。しかし、冷静さは時に悲劇を招く事もある。
「あ、アンタら…そんなイケナイ関係はあかんって! 同人だけにしときや!」
「は、はぁ? ち、ちょっと…玄徳! それは誤解…」
 ここで初めて簡雍が動揺し始めたが、時既に遅し。劉備は猛烈な速度で部室を後にしていた。
 マウントポジションのまま呆然とする簡雍と法正。我に返ったのはほぼ同時だった。
「ど、どーすんだよ! 玄徳のヤツ誤解したまま行っちまったぞ!」
「知らないわよ! 憲和が押し倒したりなんてするからこんな事になったんじゃない!」
「法正が襲い掛かってこなかったらこんな事にもならなかったんだよ!」
「私のせい!? 有り得ないよ!」
 そのままの体勢でぎゃーぎゃー喚き散らす二人。
 この口喧嘩の果てに得たものは大勢のギャラリーと二人に関するちょっと危ない噂だった――


 数日後の夜――
 簡雍と法正は劉備の部屋で弁解をしていた。
「そやから、二人が怪しい関係なんやっちゅー事は衆知の事実で…」
「違うって言ってるだろ! 玄徳は説明聞いてたのかよ!」
「そうですよ! 私が総代に嘘を吐くように見えますか!?」
 二人して劉備に迫る。ちょっと恐くなってるので一歩後退する。
「そんな二人して真剣やと…余計に怪しいわ…」
 苦笑いしながら二人を逆撫で。
「「そんな事はない!」」
 簡雍と法正の声が重なると、今度は矛先が互いに向き合った。
「大体、憲和が余計なマネしなきゃこんな事にはならなかったの!」
「だーかーらー! 法正が襲いかかってこなきゃ在らぬ噂をかきたてられる事もなかったんだよ!」
 弁解は何処吹く風、二人で責任転嫁を繰り広げ肥えた話術で戦闘している。こちらは高レベルな争いだ。この隙に劉備はいそいそと部屋から脱出した。ドアをゆっくり閉めて溜息を吐く。
「ふー…何やかんや言うても…あの二人、仲ええんよな…」
 苦笑いを浮かべると論争巻き起こる自室を後にした。
 それから数十分後、二人が疲れた顔をして出てくる。
「…コンビニ行く」
「私も…割引チケットあるから…使う?」
「使う…」
「じゃ、行こ…」
 簡雍と法正の微妙に和やかな光景。劉備の言う通り、本当は仲がいいのかもしれない。
 その答えは彼女達しか知らない。

「肉まん美味しいね…」
「うん…美味しい…。あ、これ法正の分のコーヒー…奢りだよ」
「ありがと…」

 コンビニ前の二人、白い息は風に吹かれて儚く消える。
 薄暗い外灯の光が缶コーヒーを持った二人に降り注ぐ。
 この御話はここで終幕。でも二人の舞台はこれで終幕ではない。
 脚本も観客もいない御話。続きが語られるのは、また別の機会――
 

398 名前:★教授:2004/01/07(水) 00:34
復帰一発目に目に悪いものを投下した事を深くお詫び申し上げます。
嗚呼、もっと文章力が欲しい…発想力も…。
ホントはXデー(1/18)用だったんですけども…別ネタが浮かんだので投下。何て安直なんだろう…(凹)
まあ、存在表明みたいな感じになればいいかと思いますし…ここ最近の参加者様に『こんな変な生き物いたんだ…』って認識してもらえれば幸いです。

399 名前:那御:2004/01/07(水) 00:56
直接教授様とお会いするのはお初でしょうか、那御と言いますデス。
過去の作品を読ませていただき、簡雍らに萌えまくったわけですが、、
いやはや、今回もこのお二人というわけで、
大掃除の時に、物を触るだけで仕事しないヒトは、どこにでもいるもんですw
2人の友情が、末永く続きますように・・・(何

400 名前:★惟新:2004/01/07(水) 09:34
教授様キタキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
いやもう待ちに待ってましたって(;´Д`)
泣きそうになりながらドレスを脱ごうともがく法正とか
自爆して動揺したり誤解を解こうと必死になったりする簡雍とか(;´Д`)ハァハァ
んでもってそんな二人の仲をしっかり見抜いている劉備の深さにも(;´Д`)ハァハァ

そのうえXデー用に別ネタが!? これは楽しみに待つしかあるまいて!

401 名前:★玉川雄一:2004/01/07(水) 19:37
憲×孝スペシャルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
マウントポジションハァハァ……でなくて!
ええなあ…これでこそ学三ですわ。
なにげに、メインキャラだけじゃなくてモブ女生徒が出てるのもポイント。
でも、アレ例のセクスィ写真(絵板の旭絵)ですよね…
流出しちゃったらそれこそえらい事ですよ?


さあ、ここでドレス着用版法正を描く猛者はおらぬか!?

402 名前:アサハル:2004/01/07(水) 23:30
(゚Д゚)…

コソーリ(,,・∀・)つ http://fw-rise.sub.jp/tplts/dress.jpg target=_blank>http://fw-rise.sub.jp/tplts/dress.jpg

403 名前:玉川雄一:2004/01/07(水) 23:54
          - - - -=二三⌒ヽ >>402
      - - - - - - -=二三 ´_ゝ`)
        - - - - -=二三_  /  すいません、全速力で通りつつその法正タンをいただきますよ…
⌒;   - - - - -=二三(__   ヽ
)⌒);   - - - -=二三ミ/  ̄彡
  )⌒), , - - -=二三〃 -=二彳

404 名前:那御:2004/01/08(木) 00:08
キタァ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ダメダメダメダメ!討ち取られる!(廃人化)

>>403
一足・・・遅かったようですねw
ならば奪い取るまでッ!(←真性バカ)

405 名前:★惟新:2004/01/08(木) 00:49
さて…無双3諸葛亮伝のごとく、我ら求婚者たちは
コブシで語り合わねばならないようですね…(コキッコキッ

ああもうタマランですよ! らびゅーんですよ!(;´Д`)
おねだりされた玉川様もグッジョブ!
ドレスのデザインも素敵ですねぇ…
私もいつの日か愛しい人にこのようなドレスを着せたいもの…(;´Д`)

406 名前:雪月華:2004/01/12(月) 04:16
草原の小さな恋

 緑色に波打つ午後の草原を、甘ささえ含んだ梅雨明けの風が吹き抜けてゆく。
 7月初頭。午後三時過ぎ。幽州校区と并州校区の境目付近の草原は、輝くような優しい日差しに包まれていた。
 こんもりと盛り上がった丘の上に一本だけ立っている、常緑樹の生い茂った枝葉が作り出す陰に、長ラン・サラシ・高下駄・目深にかぶった破れ学帽に身を包んだ、身長2メートルオーバー・超筋肉質の大男が寝転んでいた。荒削りで精悍そうな顔つきであり、いかにも時代遅れの番長といった貫禄を漂わせている。木の傍には、かなり使い込まれた750tの単車が駐められていた。
 丘から二百メートルほど離れた場所には幾つかの水田が区切られており、并州、幽州の園芸部員数人が、合同で水質調査や雑草の駆除などを行っている。
 草を踏む音が近づいてきて、それが大男の頭上付近で止まった。大男がめんどくさそうに重いまぶたを開けると、そこには見知った顔が、大男の顔をのぞきこんでいた。
「ヒマヒマ星人、みーっけ」
「ち…オメーか、丁原」
 迷惑が五割、安堵が五割といった表情と声で、大男…烏丸高校総番である丘力居は舌打ちした。
「隣、いい?」
「勝手にしろ」
 丘力居の返事も半ばというところで、もう丁原は腰を下ろしている。丘力居も、めんどくさそうに上半身を起こし、そのまましばらく、二人は無言で水田のほうを眺めていた。
「一ヶ月ぶり…か?」
「そだね。黄巾事件の前に会ったきりだから」
 水田のほうを見やったまま、丘力居が短く問い、丁原が応じた。
 烏丸高の丘力居と蒼天学園の丁原は、もう一年ちかくの付き合いになる。少なくとも、恋人ではないと丘力居は言う。一年前、好奇心から、放課後ひとりで蒼天学園に侵入し、昼寝を楽しんでいた丘力居を発見したのが、巡察中の丁原の一隊であった。
 当然のことながら、丁原は退去を命令する。性格から言って、丘力居が応じるはずが無い。命令が反論を招き、それが口論に発展し、実力行使が用いられるまでに30秒とかからなかった。
 激闘は10分近く続き、それ以来、お互いを認め合い『強敵』と書いて『とも』と読む間柄となったのである。
 不意に丁原が、丘力居の顔を覗き込んだ。
「随分とシケた顔してるね?悩みでもあるの?」
「オメーにゃ関係ねえよ」
 そっけなく丘力居が応じたが、丁原はなおも食い下がる。
「やっぱりあるんだ。なに?なに?お姉さんに話してみ?」
「…ち、まあいいか。猫や犬に相談すんのは、もう沢山だからな。少なくともオメーは人間だし」
「なんか、シャクに触る言い方ね」
「気のせいだろ」
 相変わらず水田のほうに目をやりながら、丘力居が悩みとやらを打ち明け始めた。
「先週、そこの水田に農業指導に来てる人に一目惚れしちまってな…寝ても覚めても、あの人の顔が目に焼きついて離れねーんだ」
「…へえ。朴念仁のアンタが恋をねえ。こりゃあ聖母マリアさまの処女懐妊以来の大事件だよ、で、その人って誰?」
「名前までは知らん。その日以来、ほとんど毎日ここで張ってるんだけどな…」
「写真とかある?」
 これだ、といって、丘力居は胸ポケットから安物の定期入れを取り出した。それに収められた写真の中では、柔らかく後ろで三つ編みにされた豊かな髪を揺らしながら、クリップボードを持った長身の少女が、このあたりの風景と似たような草原をバックに微笑んでいる。
「…この写真、随分とアップで撮ったみたいだけど、どうやって撮ったの?」
「…撮ったわけじゃねえ。なんせ俺は、使い捨てカメラすら上手く扱えねえからな。ここの生徒から買ったんだよ」
「幾らで?誰から?」
「…二万だ。ヨレヨレの制服で、耿雍って名乗ってたな。3日くらい前、いきなり話し掛けてきて、いい写真があるから買わないかって…」
「…アンタ馬鹿でしょ」
「そんだけの価値はあるさ。いいか、俺はオメーみてえな、口より早く手が動くような暴力女には、憧れって奴を感じねーんだ…!」
 言い終わった瞬間、その巨体に似合わぬ敏捷さで、丘力居は飛びのいていた。コンマ一秒前まで丘力居の鼻のあった部分を、丁原の裏拳がマッハで通り過ぎている。
「いい度胸してるわねえ?かかってきなよ、純情君?」
「いわれるまでもねえっ!」
 言い終えるなり、丘力居は丁原に掴みかかっていった。

 …3秒後。

「あだだだだだだ!放せ!折れる、折れるって!」
「まいった?」
「ま、まいった!俺が悪かった!」
 実にあっさりと丁原にサブミッションをかけられ、右の肘と肩、手首を同時に極められて、丘力居は情けない悲鳴をあげた。
 一年近くの付き合いのうちに、幾度もド突きあいを演じているが、初手合わせ依頼、未だに丘力居は丁原に勝てないでいる。膂力や体格でははるかに勝っているものの、戦闘技術では遠く及んでいないのである。
「これでアタイの21連勝っと。いつになったら、アンタはアタイに勝てるようになるのかしらね?」
「…ってて。いいか、俺は、オメーがいちおう女だから手加減してやってんだからな。それを忘れんなよ」
「それがホントならいいんだけどねぇ?」
 右腕をさすりつつ、丘力居は憎まれ口を叩く丁原の傍に座りなおした。定期入れも返してもらい、そのまましばらく、二人は初夏の心地よい風に身を任せていた。
「…セッティング、したげようか?」
「あん?」
 唐突に、丁原が思いがけない事を言った。
「実はさ、その人のこと、満更知らない訳でもないのよ。で、アンタさえ良ければ…ね」
 そういう丁原は、どこと無く淋しそうな気配を漂わせていた。当然、そんなことに気付かず、考え込んでいた丘力居が、ようやく口を開いた。
「…そこまでしてもらう必要はねーよ」
「アタイが信用できないっての?」
「そうじゃねえ。あの人と俺とに間に縁ってものがありゃ、また会えるさ。そしてそん時、俺は…」
「俺は?」
「…真正面から」
「真正面から?」
 一旦言葉を切った丘力居が、うつむき、両手を握り締め、やっとのことで声を絞り出した。
「交際を申し込む」
 沈黙した二人の間を、夏の風が吹き抜けていった。しばらくして、丁原があきれたように、溜息をついた。
「でかいガタイに、ド凶悪な面構えの割には、やろうとしていることは、妙にプラトニックね。どうせなら掻っ攫ってきて、無理矢理キスとかしちゃえばいいのに」
「バ、バ、バ、バカ野郎!俺ぁ仁と愛に生きる正義の番長だぞ!あの人に対して、そんな下衆で破廉恥なマネができるわけねえだろうが!」
「冗談よ。なにをバカみたいに慌ててんのさ」
 二人の眼下では、一連の仕事を終えた園芸部員達が、撤収を始めていた。それを見た丘力居が、ひとつ伸びをすると腰を上げた。
「さて、もう帰るか。どうやらあの人は今日も来ねえみてーだからな。じゃ、またな、丁原」
「あ、待って」
 慌てて立ち上がった丁原が、丘力居を手招きした。2mを超える巨体の丘力居と、150cmあるかないかの小柄な丁原が並ぶと、まるで熊と猫が並んでいるかのように見える。
「ちょっと耳貸して」
「なんだよ」
 両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、丘力居が丁原の傍に立った瞬間、丁原の右拳が、完全に油断していた丘力居の鳩尾にめり込んでいた。
「ぐお…!?」
「なんで…なんで気付いてくれないのさ!この…」
 強烈なボディブローを食らって、丘力居は体を「く」の字に曲げ、顎がちょうどいい位置まで下がった。丁原が右拳を、再び後ろに引いた。その両目に涙がたまっているのが、暗くなりかけた丘力居の視界に入った。
「鈍感やろ──────っ!」
 地面を擦るように繰り出された、力石式アッパーカットが、爽快な音を立てて、丘力居の顎に炸裂した。
 ……
 …
 
 午後6時。既に草原は茜色に染まっている。心なしか、吹き渡る風も冷たさをはらみ始めているようだった。
 丘の麓で大の字になってのびていた丘力居が、ようやく目を醒ました。あたりに人影は既に無く、強烈な打撃を受けた顎と鳩尾がずきずき痛むだけであった。
「ってぇ…あの野郎…しっかりヒネリまで加えやがって…」
 顎をさすりながら上半身を起こした時、かさり、と音を立てて、胸の上に置かれていた封筒と、重石として乗せられていた小石が滑り落ちた。どこにでも売っている無地の封筒で、中に紙のようなものが入っているようだった。少々躊躇った後、丘力居は封筒から手紙を取り出した。鞄の上で書いたらしく、ミミズが這ったように字が乱れている。

『丘力きょへ
 たん刀ちょく入にいえば、アタイはあしたから、らくようとうへ、てん校します
 (えいてんだって!ワーイ\(^O^)/。でも、えいてんってどういういみ?(゜_。)? )
 今年ど中には、もう会えないと思いますが、お元気で
                                    丁原』

 読み終わった丘力居の顔に、ほろ苦い微笑が浮かんだ。
「…ち、あの野郎。最後ってんならもうちょっと素直になりゃあいいものを…、ま、ああやって意地を張り合うのが、あいつの持ち味だったんだけどな……ん?続きがあるな」

『ついしん
 アンタの思い人は劉虞さんといって、ゆう州校区総代として、けい棟に通っています。
 おとなしいおじょうさまだから、いじめちゃだめだよ。せいぜいお幸せにね(^o^)/~~~~~』

「劉虞さん…か。そこはかとなく、まろやかさを感じる名前だぜ…サンキュな、丁原」
 丘力居は手紙を封筒に戻すと、上着の内ポケットに大事に仕舞いこんだ。そして丁原がいるであろう、南のほうに向きなおり、学帽のつばを指で弾いた。
「…劉虞さんとは、意地でも幸せになってやるさ。じゃあ、あばよ丁原。オメーは俺の最高の…ダチ公だったぜ」
 そう呟くと、丘力居は丘の上に停めてある単車に向かって歩き出した。
 ひとつの恋が、おたがいの綺麗な思い出となって終わり、もうひとつの恋がこの草原で始まろうとしていた。
 茜色に波打つ夕暮れの草原を、甘ささえ含んだ梅雨明けの風が吹き抜けていった。

 −完−
 
 …その夜、中央女子寮705号室の、皇甫嵩&朱儁の部屋では、酒盛りが始まっていた…
皇「それでは!建陽の洛陽棟着任を祝って…乾杯!」
朱「かんぱーい!」
盧「乾杯」
丁「……かんぱい…クスン」
皇「そうそう、建陽。失恋おめでとう!いや、めでたい!」
朱「なんだかよくわかんないけど、おめでとう」
盧「おめでとう、建ちゃん」
丁「うわーん!しーちゃんまでひどいー!みんな嫌いだーっ!!」
 翌日、三日酔いの丁原は、洛陽棟への転棟初日に3時間の遅刻をしてしまったらしい。

407 名前:雪月華:2004/01/12(月) 04:30
リハビリ代わりに、呂布がらみ以外では今ひとつ目立っていない、丁原ちゃんのストーリーを書いてみました。
学園正史、項翔様の「秋風は遠く」から、丘力居君を友情出演させています。無断借用スマソ。
張純と組んだ丘力居が、青、幽、冀、徐州を荒らしまわったという記述があり、
ハテ、并州は?と思ったところから思いついたストーリーでして…
丁原スレに投下しようと思ったのですが、少々長いのでやはりこちらに。

さて、今回の作品は旭祭のレギュレーション「一月十八日限定シチュ」には外れてますが…
実はもう一本、長湖さんがらみのストーリーを構想しています。
そっちはレギュレーションに合わせるつもりです。構築次第では19日あたりに投下できるやもしれません。

>ドレス法正
>>402→◆⊂( ゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡≡≡ ズザー
ゲット!

408 名前:★ぐっこ@管理人:2004/01/12(月) 17:02
>>397
(;´Д`)ハァハァ…! 法正たんも女の子ってことか!
やはり衣装合わせは基本ですかにゃ!可愛いっ!
そして珍しく動揺する簡雍たん(;´Д`) 何だかんだいって彼女も可愛いところ
あるじゃないか…。

>>43>>407

  _           __  __           〉    待
  l  l  ロロ     l l l l          〈    て
  l  \         l__l l__l /7        〉   い
  |  |\l  l`ヽー―/ \ / /       〈
  l_l    l        /_/         ∨∨∨∨
        l           \        
       l            \      
        l                  \    
       人 <●> <●>  /\ \ 
      / /ヽ、  、_---_,     /l  \ ヽ        /
     / /   \_ `ー' _/ l    l  l       /
    / /       ̄`ー'ヽi \l    し'      ,-^
    し'                     _-‐' ̄
ー―、____          _,-―――'
          `ー――' ̄ ̄ ̄

>>402は、お前たちには早すぎる!一時私が預かろう!

>>406
雪月華さまグッジョブ!
丁原たんの、何とも無骨でほほえましい恋愛未満物語…
サリゲに簡雍たん出てる(^_^;)
楼班の兄貴・丘力居と、その舎弟のトウ頓のトリオ、コイツらなかなか面白い
キャラですし…。いずれきちんと舞台を与えてあげたいですねえ…。
っていうか演義の一話で出すか出さないか…
そして来るべき旭祭に向けて期待をさせていただく。

409 名前:★玉川雄一:2004/01/12(月) 17:33
くっ… この勝負、やはりコブシでつけねばなるまい!
ジャンケンのことだが。


               -― ̄ ̄ ` ―--  _          
          , ´  ......... . .   ,   ~  ̄" ー _
        _/...........::::::::::::::::: : : :/ ,r:::::::::::.:::::::::.:: :::.........` 、
       , ´ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::: : ,ヘ ::::::::::::::::::::::: : ヽ
    ,/:::;;;;;;;| : ::::::::::::::::::::::::::::::/ /::::::::::::::::::: ● ::::::::::::::::: : : :,/ ←敗れ去った>>408
   と,-‐ ´ ̄: ::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::r(:::::::::`'::::::::::::::::::::::く
  (´__  : : :;;:::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::`(::::::::: ,ヘ:::::::::::::::::::::: ヽ
       ̄ ̄`ヾ_::::::::::::::::::::::し ::::::::::::::::::::::: : ●::::::::::::::::::::::: : : :_>
          ,_  \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: `' __:::::::::-‐ ´
        (__  ̄~" __ , --‐一~ ̄ ̄ ̄


>>406
丁原のメールがソレっぽくてカワイイ!
耿雍(旧姓)も昔ッから手広くやってたもんですねえ。でも地元の方なのか。
丁原と丘力居、互いにキャラは異なるけど
どちらも素直になれないもどかしさが堪らんですたい。

410 名前:7th:2004/01/12(月) 18:42
>教授様
教授様の書かれる簡雍と法正はやっぱ良いですわ。
そういえば祭りの発端のSSを書かれたのも教授様でしたしね。

ぬう、>>402が欲しくば儂を倒してから征けぃ!(速攻でやられそうだが)

>雪月華様
確かにあの4人の中で一番男と接触する機会があるのは丁原ですよね。
殴り合いから生まれる恋心…丁原らしいですね。
あと簡雍、アンタはそんなトコにまで進出しとったんかい!

記念日のSS書いてて大ポカ発見しました。
『旭記念日』のSSじゃねぇ!…どーしましょう?

411 名前:那御:2004/01/12(月) 21:41
>>406
雪月華様グッジョブです!
併州校区で繰り広げられる、素朴過ぎる恋物語。
本心を言わずしての別れ・・・切ないですね、丁原。。

412 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:50
よし!こっちでも祭りだ!
いくぞ!!

413 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:52
「か〜ん〜よ〜う〜、あんたもうちょっとシャキッとしなさいよ!」
「………何で?」
だらしなくテーブルに突っ伏していた簡雍に法正が抗議の声をあげる。
髪はくしゃくしゃになり、服はヨレヨレ。おまけにテーブルの周りには酒瓶が何本か転がっている。
「んも〜、よく見れば素は悪くないんだからもっとこう……」
「へいへい…」
法正が説教をたれ、簡雍が生返事をする。彼女たちにとってはごくありふれた光景である。
「う〜ん、そうよね。素は悪くない、そうなのよ、うん。」
「もしも〜し」
何やら自分の発言に思うところを見つけた法正。既にインナーワールドへとトリップし始めている。
「そうよ、もっとしっかり着飾らせればいい感じになるわね」
「…孝直?」
「先ずはその安っぽい髪留めを外して、そんでもって服を………」
「…いや〜な予感が…」
本能的に身の危険を感じてその場を逃げ出そうとする簡雍。誰だって自分の身は可愛い。
「んじゃ、あっしはこれで」
「ま・ち・な・さ・い」
こそこそと逃げ出す簡雍の襟首をぐわしっ、と掴む法正。その目は獲物を狙う猛獣の目をしていた。
猫を持つように簡雍をひっ掴んで自分の前に座らせると、法正はおもむろに口を開いた。
「というわけでここに『第一次簡雍改造計画』の開始を宣言します!」


 〜〜簡雍改造計画〜〜


何が「というわけ」なのか。しかも改造計画!?本人の意思は関係ありませんか。…ありません?そうですか。そうですか。
……冗談ではない。
何でそんな事されないといけないんだ。他人のオモチャになるのは御免被る。
日頃の自分の行いを棚に上げて、かなり身勝手な事を考える簡雍。そんな懊悩はお構いなしに法正は携帯電話に手をかけた。
「みんなにも知らせておかないと。楽しいことは大勢でしろ、ってね」
法正がボタンをプッシュし始めたその瞬間、信じられないような瞬発力で、まさに脱兎の如く簡雍は逃げ出した。法正がそれに気付くより速くドアを通り抜け、愛用のキックボードに乗り、疾風の如く去って行く簡雍。
「ふ…ふっふっふ……イイ度胸してるじゃない」
不適な笑みを浮かべ、今し方かけようとした番号とは違う番号をプッシュする法正。数回の呼び出し音の後、電話は取られた。
「もしもし、部長ですか?法正です。大至急、手の空いてる人全員に召集をかけて下さい!」
「何や、随分と唐突やな。何やらかす気や?」
「大捕物です。詳しくは後で説明しましょう」
かくて前代未聞、帰宅部連合全てを巻き込んだ大捕物の幕が切って落とされた…。



かんかん照りの太陽の下、簡雍は独り道を歩いていた。
どうせ何時もの法正の気まぐれだ。ほとぼりが冷めるまでぶらぶらしていよう。
…それにしても暑い。既に外気は35℃を越えている。何処か涼める所はないだろうか、そう思い辺りを見渡す。…ふと目に付いた喫茶店。丁度良かった。思い立ったが早いか、手で押していたキックボードを店の前に停めて、簡雍は喫茶店のドアを開けた。

カランカラン、とドアに付いたベルが鳴る。と同時に店内の空気がひんやりと肌をなでる。
簡雍はカウンターでアイスコーヒーを注文した後で、クーラーの風が最もよくあたるポジションを確保して座った。
そして改めて店内を見渡す。しっとりと落ち着いた店内に、ゆったりと優雅なクラシック音楽が流れている。そして照明は目に悪くない程度に薄暗く、気分を落ち着かせてくれる。
良い店だった。学園都市という性質上、喫茶店、またはそれに類する店が多数存在するこの中華市において、簡雍が知る限りでも五指に入るであろう。
注文したアイスコーヒーが簡雍の前に運ばれてくる。それにストローをさし、口を付けようとして――――硬直した。
一瞬前まで只の客だった少女達が揃って簡雍を囲み、彼女に銃口を向けていた。
「簡雍さん、ですね?」
その内の一人が簡雍に問う。その全身から放たれる、殺気にも似た圧迫感。下手に答えようものなら即座に撃たれかねない。そう判断し、簡雍は素直に肯いた。
「説明を要するわね。いったい何事?」
「部長命令です。詳しくは後で法正さんに聞いて下さい」
法正、その一言で理解した。
つまり、意地でも着せ替えをさせたい、そういうことか。
…それだけでこんな大事にするか普通?しかも部長命令。劉備がからんでいるということは、捕まったら間違いなくさらし者だ。意地でも捕まるわけにはいかない。
席を立とうとする簡雍。それに合わせて上へあげられる銃口。
簡雍が立ちきったと思ったその瞬間、その姿がまるで手品のようにかき消える。
椅子から滑り落ちるように足下へと転がった簡雍は、そのまま転がり出るように店を出る。
「お客さん、勘定」
「帰宅部の法正にツケといて!」
「了解した」
こともなげに他人のツケにしていく簡雍。それにあっさりと答えるマスター。……いいのかそれで。
後ろから数人が走って追いかけてくるが、キックボードに追いつけるはずもない。ぐんぐんと距離は離れてゆく。
「くそっ、逃がすな!」
叫びはすれども足は動かず。追跡を諦めようとした彼女たちの後ろから、不意に声がかけられる。
「苦戦しているようね。まぁ見てなさい」
その声の主はクラウチングスタートの姿勢をとると、一気に駆けだした。



「待ちなさーい!」
簡雍の後方よりかけられる声。ありえない、さっきの連中は振りきったはずだ。大体、そこらの一般生徒が本気を出した簡雍のキックボードに走って追いつけるはずがない。
「待ちなさいってば!!」
声は遠ざかるどころかさらに近づいてくる。いったい何者か!?と訝しんだ簡雍は後ろを振り向いた。
「あーもう、待ちなさいって言ってるでしょう!!」
赤い髪に虎の髪留め。そして陸上部のジャージ。
「ばっ、馬超!?」
帰宅部連合、いや学園きってのスプリンター、馬超が鬼のような形相で簡雍を追いかけていた。
あわてて地面を蹴る力を強める簡雍。それによりキックボードはスピードアップするも、馬超との距離は依然として離れない。むしろ逆に縮まっている。
馬超はタイミングを見計らうや、一気に簡雍の横に躍り出た。かつて曹操を追いつめた健脚は、帰宅部入りを果たした今なお健在である。
「さーて、もう逃げられないわよ。大人しく捕まりなさい」
「くっ…さすが馬超ね。『錦』の二つ名は伊達じゃない…か。だけど!」
前輪を浮かせ、後輪のみで急ターンする簡雍。その向かう先は階段。
「こんな所で捕まってたまるかー!!」
キックボードのノーズを持ち上げ、階段の手摺りに引っかける。そして90°回転。ボードの腹を手摺りに乗せてそのまま滑りおりていく。金属の擦れ合う音と火花を撒き散らしながら最下段に到達するや、そのままの勢いでジャンプ!空中で両足をキックボードの上に乗せ、そのまま着地し、何事もなかったかのように走り去っていく簡雍。
「あーっ!それインチキよー!!」
階段の上で馬超が何か叫んでいるが簡雍には聞こえていない。追われる者は常に余裕がないのだ。



「待ちなさい。ここから先へは行かせません」
「んげっ、姐さん方」
曲がり角を曲がった簡雍の前に立ちはだかったのは黄忠と厳顔。両人とも胴着に黒袴、そして弓を携えての出で立ち。明らかに本気である。
「てか何で姐さん達まで出て来るんですか!?」
「それは……」
「……ねぇ」
顔を見合わせる黄忠と厳顔。
『一度見てみたいからに決まってるでしょう!』
…一番聞きたくなかった答えだった。しかも二人してハモって言わなくても…。
「一つ言わせて貰って良いですか?」
「ん?なにかしら。最期の一言くらいは聞いてあげるわよ」
「…いいトシしてそういう趣味はどうかなー、と」
………プチーン。
何かが切れた音。実際にはそんな音はしていないのだが、簡雍は確かに聞いた。
『ふ、うふふふふふふふふふふふふふふふ』
黄忠と厳願は笑っている。否、嗤っている。
その表情はまさに悪鬼羅刹の如く。額には血管が浮き、頭からは角が生え、躯からは陽炎のように謎のオーラが立ち上っている……ように簡雍には見えている。
「どうやら」
「お仕置きが必要のようね」
予備動作無しで弓を引き、マシンガンの如く次々と矢を射掛けてくる二人。
鏃の部分をゴムに替えてあるとはいえ、当たればシャレにならないほど痛い。ましてやこの二人の弓はかなり強い。その威力、推して知るべし。
「ち、ちょっとタンマ!待った!ストーップ!!」
文字通りの矢の雨を潜り抜け、簡雍は一目散に逃げ出した。



人を斬る風だった。
とっさに飛び退った簡雍の目の前を、風を切る音と共に白刃が通過する。はらり、と前髪が数ミリ、頬を伝って落ちた。
「ち、趙雲……真剣は反則……」
「何を今更」
随分と物騒なことを趙雲はあっさりと言ってのける。
「銃刀法などこの学園では無意味でしょう?」
「イヤそれ絶対違うから」
誓って言うが、この学園内が治外法権などということは絶対にない。……多分。
「大体何でアンタまでっ!(割と)良識派だと思っていたのにっ!」
「だって…アトさんが見たいって言うから」
……あきれたを通り越してもう馬鹿馬鹿しいの領域である。そんな理由で命狙われるなんてたまったモンじゃない。
「趙雲、アンタもっと行動に主体性を持った方がイイよ」
「そう…ですか?」
「アトちゃんが可愛いのは解るけどさ、それだけじゃなくてもっと自分のことを考えてみたらどう?」
「でも、そしたらアトさんが」
「アンタが何でもしてたらアトちゃんは成長しないよ?それにアンタだって何時かは卒業する。何時だってアトちゃんの側に居られる訳じゃないんだからさ」
「そう……ですよね」
「アンタはもっと自己中心的になってもいいの。きっとその方がアンタのためになるよ。これ、先輩からの忠告。覚えときなさい」
「はい、ありがとうございました」
深々とお辞儀をして去っていく趙雲。彼女が見えなくなった後、簡雍は大きく安堵のため息をついた。
「いやー、まさかアレで何とかなるとはね」
当然、先ほどの言葉は口から出任せである。
「うん、なかなか真に迫った演技だったかも。アカデミー賞ものだね」
命がけでやれば何とかなる、ということの好例だろうか。尤もこの場合、比喩表現ではなくホントに命がかかっていたのだが。
「さて、このまま逃げているのも疲れるし…どっかに隠れようかな」
脳内の簡雍データベースから当該箇所を見つけると、そこに向かって簡雍はキックボードを走らせはじめた。

414 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:53
荊州校区と益州校区のちょうど境界に一つの建物が建っている。
「いや〜助かったよタマちゃん」
「いえ、大したことはありませんよ」
簡雍の言葉に、タマちゃんと呼ばれた少女が返事する。
彼女の名は劉璋、あだ名は季玉。故に簡雍はタマちゃんと呼んでいる。前益州校区総代であった彼女は、総代の座を劉備に譲り渡してから、この建物でまったりしていることが多い。ご多分に漏れず、この日も彼女はここにいた。
「大変だったようですね。…お茶でも淹れましょうか?」
「あ、いいねぇ。お願い」
喫茶店でコーヒーを飲みそびれたことを思い出し、簡雍は肯いた。
お茶を淹れに席を立つ劉璋。それを見送る簡雍。
ふと窓の外を見つめる。その目が捉えたのは違和感。
良く目を凝らして物陰を見遣る。そこにあったのはかすかな人の影。
気付かれたか?いや、それにしては早過ぎる。
5分ほどそうしていただろうか。そちらへ向けていた意識を、劉璋の声によって引き戻された。
「お茶がはいりましたよ〜」
劉璋がお盆の上にのせたお茶を持ってくる。よく冷えた麦茶だった。
やはりおかしい。差し出された麦茶を前に簡雍は考える。
冷えた麦茶。冷蔵庫から出してコップに注ぐだけの手順の筈が、何故こんなにも時間がかかる?
そして向かいに座った劉璋の態度が、かすかだがそわそわと落ち着き無い。
もう一度、窓の外を見遣る。巧妙に隠れてはいるが、明らかに人の数が増えている。
…つまり、結論は一つ。
「タマちゃん、アタシを売ったね?」
じっと劉璋を見据える簡雍。
「…何のことです?」
あくまで平静を装う劉璋。だがその目が泳いでいるのを簡雍は見逃さない。
「…ならアタシの前のこの麦茶、飲んでみせて」
「……っ!それは…」
思った通りだ。多分その麦茶の中には睡眠薬か何かが入れられているのだろう。
「ごめんなさい……私…」
俯いたまま泣き出しそうな声で謝る劉璋。
「ん、いいよ別に。タマちゃんが悪いんじゃないし」
彼女にそんな悪知恵があるとは思えない。きっと誰か……諸葛亮あたりに入れ知恵されたに違いない。
さて、また逃げないと。幸い、まだこの建物の周りの追っ手は少人数だ。何とか撒くことも出来るだろう。
簡雍はそう判断し、ドアを開けた。
『うえるか〜む!』
ドアを開けた先に待ちうけていたのは追跡者の皆さん。開けた早さに倍する速度でドアを閉め、鍵をかける簡雍。
「謀ったね!タマちゃん!!」
一連の劉璋の行動は全て時間稼ぎ。ここの包囲がまだ完成していないと錯覚させつつ、わざとダミーの計略を看破させ、着々と包囲を進めていたのだ。
今更気が付くも既に遅し。出口は既に固められている。
簡雍は部屋の中に入れてあったキックボードをひっ掴むと、窓の方へ向かって走る。
「か、簡雍さん、ここ二階…」
「てりゃっ!」
劉璋が止めるより先に、簡雍は窓から飛び出した。
着地。そして尻もち。落ちた先は幸運にも花壇の中だった。
「…へっへ〜、日頃の行いが良かったせいかな」
軟らかい土にショックは吸収されたせいか、服は汚れたものの、体はほとんど無傷である。
頭上から心配そうに見下ろす劉璋に親指を立てて無事をアピールすると、簡雍は少々痛む体を引きずって逃走を再開した。



「ふんふふふ〜ん♪」
鼻歌混じりに何やらごそごそと物をあさる簡雍。
あまたの監視の目をくぐり抜け、やってきたのは寮の一室…というか簡雍と法正の部屋である。灯台もと暗しとはまさにこの事か。
ポーチにフィルムその他を詰め、カメラのコンディションを確認する。
「よし、完璧」
簡雍、完全装備完了。本気の相手…タイガーファイブ級を相手取るにはこのくらいしないと、逃げ切るのも容易ではない。
「さーて、また逃げるかね」
「そうはいかないわよっ!!」
簡雍の言葉を遮る雄叫び。一瞬の後、大きな音を立てて開けれる鉄製のドア。
「…もうもうと土埃の立つ中、逆光を背負って現れたるは『漢・魏延』!」
「そこ!地の文にかこつけて口に出さない!てか絶対わざとでしょ、それ!!」
竹刀をづびしぃ!!と突きつける魏延。どうでもいいがアンタ乙女志望はどうなった?
…そんなことはどうでもいいとばかりに簡雍から目と竹刀を逸らさず、後ろのドアを蹴り閉める魏延。これで退路は窓だけとなった。
「どうする?また飛び降りてみる?尤も、ここは四階だけど」
張飛あたりならともかく、簡雍にそれは無理だ。例え無事飛び降りたとしても、下に待ちかまえているであろう連中に捕まって終わり、のはずだ。
だが簡雍に動揺はない。にいっと口の端をゆがめて、勝ち誇ったように宣言する。
「甘い」
そう言っておもむろに天井からのびたロープを引っ張る。刹那、ブラインドが下り、さらに暗幕がかかる。部屋の明かりはついていない。すなわち、真っ暗闇。
写真の現像のために、部屋を暗室にするギミックを簡雍は施していた。…まさかこんな用途で使うことになるとは思っていなかったが。
勝手知ったる自分の部屋。ベッドの位置、冷蔵庫の位置、果ては法正の持ってるぬいぐるみの位置までつぶさに記憶している。簡雍にとっては、この暗闇の中でドアまで辿り着くことなど朝飯前だ。
だが魏延は違う。暗闇に慣れぬ目を凝らし、簡雍を見つけようとするも何も見えず。駄目か、と諦めかけたそのとき、目に飛び込んでくるかすかな赤い光。
光の正体はカメラの発光ダイオード。その光の動きで簡雍の位置は手に取るように解る。
竹刀をひと振りして足下に障害がないか確認。足下の安全を確信した魏延は、一足飛びに間合いを詰める。そして竹刀を振り下ろそうとしたその瞬間――――視界が真っ白に染まった。
必殺簡雍フラッシュ。部屋が暗かった事もあって威力は倍増だ。あまりの眩しさにもんどりうって転げ回る魏延。
「あ、散らかしたのは片付けといてね」
そう魏延に告げて悠々と外へ逃げる簡雍。その言葉が魏延に聞こえているかは怪しいが。

さて、どうしたものか。このまま逃げ続けても、いずれ捕まるのは目に見えている。
ならどうするか。臭い物は元から絶つべし。ということで、この騒動の元凶である法正をとっちめて、例の言葉を撤回させれば良い。
結論は出た。ならば後は実行するのみ。
「ふっ、法正。首を洗って待ってなさいよー!」



「魏延の突入、失敗しました」
「呉班のD班、目標をロスト。現在、呉懿のB班・雷銅のF班が周辺を捜索中」
次々に持ち込まれる報告に、劉備はやれやれと嘆息した。
「無理やろな。連中ごときに見つかる程、憲和は甘ないわ」
「ほう、どういうことですかな?」
傍らに立った諸葛亮が問う。
「実戦経験の差やな。考えても見ぃ、憲和は黄巾騒動の時からウチらと一緒だったんやで?踏んだ修羅場の数なら馬超や漢升はん、子龍でさえ及ばんやろな。まして新入りの魏延や争いの少なかった益州の連中ならなおさらやな」
学園一のトラブルメーカー、劉備新聞部の初期メンバーにしてカメラマン簡雍。その役目柄、危険にさらされたことは数知れずある。しかし、彼女はトばされてはいない。
その逃げ足の早さを以て知られる劉備だが、彼女すら逃げ足という一点においては簡雍に一歩の遅れをとると思われる。
「言い出しっぺはどした?」
「法正殿なら何人か連れて外に行きましたが、何か?」
「…ま、あっちはあっちで何か企んどるんやろ」
こと戦略・戦術においては諸葛亮すらしのぐ才を持つ彼女だ。何か罠を仕掛けていることだろう。
「張飛より入電!『我、目標を発見。追いつき次第交戦を開始する』以上です!」
「益徳か!?そら拙いわ。ウチも後詰めに出る!…ちゅーことやから孔明、後頼むわ」
「お任せ下さい」
慇懃に礼をする孔明の姿を目の端に留め、劉備はその身を戦場へと赴かせた。



ばんっ!!
聞こえてきたのは炸裂音。それが聞こえた方へ劉備は走る。
校舎の角を曲がった劉備が目にしたものは、目を回してぶっ倒れている張飛と、その傍らに立つ簡雍の姿。
張飛のことだ。多分、飛びかかっていった瞬間、簡雍に返り討ちにあったと思われる。
「言わんこっちゃ無い…」
先程の音、あれはおそらくスタングレネードを使用した音。至近距離で炸裂したならば、その音と閃光によって一発で戦闘不能に陥るシロモノだ。
「丁度良かったわ。玄徳、法正は何処?」
「知らんな。それよりも憲和、そろそろお縄についた方がええんちゃうか?」
「話す気はない……ようね」
「そっちも捕まる気はないようやな」
どこからともなくハリセンを取り出し、慎重に間合いを計る劉備。
右手にカメラを、左手にスタングレネードを構える簡雍。
凍り付く気配。流れる一触即発の空気。
先に動いたのは簡雍。左手のスタングレネードを劉備に向けて投げる。
「甘いわっ!!」
気合い一閃、弾かれたグレネードは2秒後、劉備の頭上で爆発した。
ハリセンをヒュンヒュンとガン=カタばりに回し、簡雍に近づく劉備。
「さーて、そろそろ年貢の納め時やで?大人しく捕まってゴスロリを着ぃ」
「ごっ、ゴスロリぃ!?待て待てまてマテ、なにゆえゴスロリか」
「決まっとるやん。そっちの方がおもろいからや」
きっぱりはっきり断言する劉備。それを聞いて、簡雍はげんなりした。
この部はアホばっかりか?そう考えざるを得なかった夏の日だった。
「ほれほれ、考え事しとる場合やないで!」
目の前に迫る劉備の顔。そしてハリセン。紙一重でそれを避けるも、続いて二撃、三撃目が飛んでくる。いつしか背後には壁。完全に追いつめられていた。
「今大人しく捕まったら手荒なことはせんが、どや?」
完全に劣勢のこの状況。選択肢は降伏か死かと思われるこの状況下で、あろう事か簡雍は唇の端をゆがめて嗤った。
「断る」
そう言って左手に持った物体を地面に投げつける簡雍。地面にたたきつけられたそれは、凄い勢いで煙幕を吹き出した。
煙に紛れて劉備の横をすり抜ける簡雍。だがそれに気付いた劉備はしつこく簡雍を追う。
不意に、劉備の鼻先に投げつけられたボール。それは破裂すると、辺りにコショウをまき散らした。
「ぶえーくしっ、がん゛よ゛〜!ぶえっくしゅん!」
…涙と鼻水まみれになった劉備は、簡雍の追跡を諦めた。張飛はまだ目を回している…と言うか既にそれは失神から睡眠へとシフトしていた。
世界は平和である。そう思った夏の日の午後だった。

415 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:55
世界は平和だろうが、今の簡雍は平和とはほど遠い所に居た。
一人対数百人。かつて如何なる者も経験していないであろう戦争。タイトルを付けるならば、
まさに『真・三国無双』……シャレにならない。
そしてここに、またしても簡雍の前に立ちはだかる影が三つ。
「さぁ簡雍!!」中央に立つ、『壱』と書かれた赤色の覆面をかぶった少女が絶叫する。
「いい加減に!!」向かって左、青い覆面に『弐』と書かれている少女がそれに続け叫ぶ。
「捕まって下さいね」と、向かって右の黄色い覆面の少女がおっとりと言った。予想通り、覆面には『参』と書かれている。
「○陽戦隊サ○バルカン!?」
「違う!我々は『内政戦隊ショッカン4(−1)』!!」
簡雍のツッコミは、予想を遙かに超えたエキセントリックな答えで返された。
ホントにこの部はアホばっかりか。そう深刻に考えざるを得なかった夏の日だった。
「えーと、取り敢えず左から伊籍、孫乾、糜竺?」
「違う!左からショッカンブルー、ショッカンレッド、ショッカンイエローだ!!」
「……なんだそりゃ」
何か色々とはっちゃけすぎの三人。あきれ果てる簡雍。
ちなみに簡雍が三人を見分けたのは胸の大きさだ。孫乾<糜竺<伊籍である。
「なんかアホくさくなってきたわ。ってことであんたらスルーね」
「こら!逃げるな!」
逃げるなと言われて立ち止まる簡雍ではない。キックボードに乗って、すたこらと去っていく簡雍。
「こうなったら…ショッカンビークル!!」
そう叫ぶや、ごそごそと植え込みをあさる三人。そして取り出される、一台の買い物自転車。
それにさっそうと飛び乗る三人。自転車の三人乗りは違反です。
「待てーい!!」
叫ぶ孫乾…もといショッカンレッド。ただ乗っているだけのイエロー。そして鬼のようにペダルをこぐブルー。いせ…ブルーの中の人も大変…と言うか死にそうだ。哀れなり。
当然、三人乗りの自転車なんぞで簡雍に追いつける筈もない。見る見る距離は離れていく。
「はー、大変だねぇ…」
後ろを振り返り、のんきにのたまう簡雍。しかし次に前を振り向いたとき、その目は驚愕に見開かれた。
前から迫り来る人、人、人。ついに捜査本部は人海戦術に訴えることにしたようだ。
後ろを仰ぎ見れば必死こいて追いすがる伊籍、孫乾、糜竺。…必死なのは伊籍だけだが。
進退窮まったか、そう思って周りを見回した簡雍は細い路地を見つけた。そこに一筋の光明を見出した簡雍はすぐさまそこに駆け入った。

そこまでだった。
急に足を取られ、キックボードごと転倒する簡雍。
「あたた…って何よコレ!」
地面にぎっしり敷き詰められた粘着シート。引き剥がそうとするも、よけいに絡まってしまう。
「かかったわよ!やっちゃて!」
頭上より降ってくる法正の声、そして投網。

捜査開始より3時間57分。  簡雍、捕縛。




白いワンピース、手編みのサンダル、麦藁帽子。
白いテーブル、白い椅子、木漏れ日の影。
さらりと流れる髪、銀縁の眼鏡、手に持った詩集。
どこからどう見ても、生粋の文学少女にしか見えないのだ。あの簡雍が。
「おお〜〜〜〜〜」
ギャラリーからあがる、感嘆のため息。
はっきり言って想像以上だった。
「いや〜見違えたわ」
簡雍をひん剥いて着替えさせた劉備が言った。ちなみに彼女の提唱したゴスロリは多数決により僅差で却下されている。
「グレイトですぞ簡雍殿。どうです、そのまま眼鏡を着用しては?」
と諸葛亮。簡雍が眼鏡をかけているのは、勿論彼女の提案によるものだ。
「うぅ、持って帰りたい…」
「テイクアウトはオッケー!?」
「はうー、何かソッチの道に目覚めそう」
等々、なにやら怪しい声が飛び交う中、簡雍は面白くなさそうに、テーブルに置かれたグラスの氷をストローで突っつく。

不意に、風が吹いた。
麦藁帽子が舞い、簡雍は為す術もなくそれを見送った。それはさながら一枚の絵のようで。
「をををっ!!記録班、今の撮った!?」
「ばっちりです!カメラ、ビデオ共に撮りました!」
「グッジョブ!後でみんなで見るわよ!」
親指をびしっと立てて、法正が言った。
「いやー、それにしても予想以上ね。みんなで追っかけた甲斐があったわ」
「……追っかけられた方はたまったモンじゃないんだけど」
「まぁまぁむくれない。憲和だって乗り気だったでしょ。自分でこんな飲み物まで用意して。で、これ何?アイスティー?あ、レモン入っているからアイスレモンティーかしら?」
「あぁ、それ?ロング・アイランド・アイスティー」

『……って酒かよっ!!!』

簡雍を除く全員の声が、夏空にこだました。





※補足
ロング・アイランド・アイスティー

ドライ・ジン………15ml
ウォッカ………15ml
ホワイト・ラム………15ml
テキーラ………15ml
ホワイト・キュラソー………15ml
レモン・ジュース………30ml
コーラ………40ml
レモン・スライス………1枚

クラッシュド・アイスを詰めたゴブレットに、
上記の順で注ぎ、ステアする。
レモン・スライスを飾り、ストローを添える。

茶なんぞ一滴も入っておりません。

1766KB
新着レスの表示

掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50 read.htmlに切り替える ファイル管理

名前: E-mail(省略可)
画像:

削除パス:
img0ch(CGI)/3.1