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■ ★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★

1 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:41
はい。こんなの作っちゃいます。
要するに、正式なストーリーとして投稿するほどの長さでない、
小ネタ、ショートストーリー投稿スレッドです。(長文も構わないですが)
常連様、一見様問わず、ココにありったけの妄想をぶち込むべし!
投降原則として、

1.なるべく設定に沿ってくれたら嬉しいな。
2.該当キャラの過去ログ一応見て頂いたら幸せです。
3.isweb規約を踏み外さないでください…。
4.愛を込めて萌えちゃってください。
5.空気を読む…。

とりあえず、こんな具合でしょうか〜。
基本、読み切り1作品。なるべく引きは避けましょう。
だいたい50行を越すと自動省略表示になりますが、
容量自体はたしか一回10キロくらいまでオッケーのはず。
(※軽く100行ぶんくらい…(;^_^A)、安心して投稿を。
省略表示がダウトな方は、何回かに分けて投稿してください。
飛び入り思いつき一発ネタ等も大歓迎。

あと、援護挿絵職人募集(;^_^A  旧掲示板を仮アプロダにしますので、↓
http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi target=_blank>http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi
にアップして、画像URLを直接貼ってくださいませ〜。
作品に対する感想等もこのスレ内でオッケーですが、なるべくsage進行で
お願いいたします。

ではお約束ですが、またーりモードでゆきましょう!

351 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:25
前編>>265  前編の2>>273  前編の3>>276 前編の4>>279 前編の5>>349 前編の6>>350

 ▲△ 震える山(前編の7) △▲

その頃裏門では、脱出体勢を整えた帰宅部連合本隊がいよいよ行動を開始しようとしていた。最前列にはなけなしの射撃班が銃口を揃え、押っ取り刀で駆けつけた生徒会勢の小隊へと狙いを定める。
「…撃ちます」
夏侯覇が前方を見据えたまま投げかけた起伏を欠く声に、姜維もどこか冷めたような表情で応じた。
「では、始めよう」
それを合図に、夏侯覇は差し上げた手を前方へ向かって振り下ろす。タタタンッ、という一連の銃声と共に生徒会勢が倒れ伏したのを見届けて、姜維は麾下の総勢に向かい直ると今度こそ辺りを圧する声を放った。
「突撃開始! 先鋒は夏侯覇、続いて傅僉! 中軍は句扶、後衛は廖化! 殿は私が引き受ける!」
号令一下、一団、また一団と裏門を飛び出てゆく。この中でどれほどが帰還することができるか… そう思うと、姜維の口は我知らず動いていた。
「…みんな、南鄭まで生きて戻るのよ!」
「おーーーっ!」
次々に駆け抜けてゆく女生徒達の顔には皆、深い疲労の色が浮かんでいる。だが、彼女らを辛うじて奮い立たせているのは意地と、気力と、そして奮戦する張嶷の雄姿だった。誰もが全て、彼女のような超人的な活躍ができるわけではない。だが、その姿は多くの少女達の目に焼き付き、胸に刻み込まれた。そして今、挫けそうな心を支える巨大な拠り所となっていたのである。
−それはもう、ひとつの新しい伝説の始まりでもあった。
(貴女には、まだみんなを導いてもらわなければ… だから、必ず…!)
姜維は今一度、張嶷が残っているであろうグラウンドに視線を向ける。そして強く念じるように胸の前で手を握りしめると、最後尾の集団に加わって走り出した。


校舎裏手から聞こえてくる微かな喊声に気付いたとき、張嶷は再び徐質と対峙していた。双方とも右手にナイフを構え、間合いを保って睨みあったまま互いに機を窺っている。そんな中、張嶷は目の前の少女の言葉に思いを馳せていた。
(いい気概ね。腕の方はまだまだ伸びるでしょう。後はあの気持ちを忘れなければ、あるいは本当に…)
そこまで考えて、不意に笑いがこみ上げてきた。とんだ迷い言を… 現にあの娘の目の前には、“私”がいるではないか。単身での要人救出という華々しい学園デビュー以来築き上げてきた功績は数知れず、今や帰宅部連合でも五指、いや三指に数えられるまでに上りつめた。徐質に比べれば、『頂点』は遥かに近いはずだった。だが彼女もかつては輝かせていたはずの大望は、日々の忙しさにかまけていつしか心の奥底に澱んでしまっていた。それを、この少女が再び揺り起こしたのだ。
(もっとも、頂点を目指すだけが『華』じゃないわね。自分が満足して戦えるなら、今ここで…)
「学園の頂点を極める、か。案外と、手に届く夢かもよ… でも、負けないッ!」
万感の思いを込めて全身に闘志を充填し、張嶷は真っ直ぐに徐質へと向けて駆け出す。この一撃で決まる− 徐質も自然にそれを悟った。ナイフを握った右手を振りかぶり、一気に距離を詰める。その瞬間、張嶷が地を蹴って覆い被さるように飛びかかってきた。
「!!」
徐質を驚愕させたのは、明らかに実態以上に視界を圧する張嶷の姿− 否、厳密にはそうではない。まったくのガラ空きとなったその体… 乾坤一擲というにはあまりにも無防備すぎるその体勢に、考えるより先に体が反応した。防ぐもののない張嶷の左脇腹めがけ、ゴム製のナイフがしたたかに打ち付けられる! だが…
「勝ったぞ!」
その声を発したのは張嶷だった。徐質の背にゾクリと走る悪寒。そして頭上に響くエアガンの連射音。
タタタタタッ!
「きゃあああああっ!」
「しまった!」
最後の一連射、その射線が吸い込まれてゆく先には、狙撃兵301嬢。

肉を切らせて骨を絶つ、文字通り捨て身となった張嶷の一撃は狙い過たず最後の狙撃手を葬り去った。だが同時に、何の防御も考慮していない左脇腹への一撃は徐質の名誉に賭けて『致命傷』たり得ていた。詰まる呼吸、薄れる意識… 刹那、南中校区での日々が頭をよぎる。苦難の末に結ばれた固い友情の絆、皆の笑顔… そして張嶷は己の最後の戦果を確認すると、意識を闇に委ねる。
(伯約、約束は守ったぞ… 後は、アンタ、が…)
張嶷はそのまま崩れ落ちると、乾いた地面にひとしきり砂埃を舞い上げた。


−停止した時間の中で、徐質は時間の感覚はおろか一切の外部情報から途絶していた。恐怖すら抱いた敵への確かな一撃と、『護るべき者』の悲鳴。その二つの事実の整合性が取れずに頭の中でグルグルと回っている。勝利− 何が我々の勝利か? 喜びの浮かばぬ勝利があるというのか…
やがて真っ白になっていた彼女の中で少しずつ時間が流れ始める。最初に目に映ったのは、右手に握りしめたナイフ。続いて、眼前に横たわる少女。己に課せられた責務を成し遂げたその顔は埃にまみれながらも安らかで、意識こそ失っているが胸元は規則的に上下動を繰り返していた。
「そうだ、私が、倒したんだ、この人を…」
いまだおぼつかない足を数歩踏み出し、跪く。バトルでうち倒した相手からその身の証を奪い取るのは学園の規則、バトルのルール、そして勝者の権利。青いジャージに留められたゼッケンを丁寧に取り外すその瞬間、いまだ目覚めぬ体がピクリと震えたのは気のせいだったろうか? 徐質はゆっくりと立ち上がり、新たなる伝説の体現者に一礼する。

帰宅部連合所属盪寇主将、張嶷、字を伯岐。仁・智・雄を折り重ねてきた学園活動は、そのおそらくは本分とするところをもって幕を閉じた。

−彼女の最後の死闘は新たなる伝説として、これ以後学園の歴史の中で長く語り継がれることになるだろう。
(私は、伝説に名を連ねるだろう。でも、それは添え役として… 私が、自身が、主役となるためには、まだ…!)
そこに駆け寄ってくる仲間達の声が、急速に徐質を現実へと引き戻してゆく。
「主将、無事だったか!」
「アイツを… 倒したんだね! やったじゃないか!」
「でも、狙撃班は…」
そう、局地戦は一つの幕切れを迎えたが、まだ敵は、敵の『本隊』は残っているのだ。目の前の敵を一つ一つうち倒し、そしていつかこの手に栄誉を勝ち取る日まで。戦いの道を志した少女の前に開かれた修羅の道、その終着点は遥か遠くか、あるいは一寸先か… 今また新たな一歩を踏み出す徐質の全身に、一回り強さを増した力がみなぎり始めていた。

「遺憾ながら、狙撃班は全滅した… 今、追撃の先鋒は我々だ。 …行くぞ!」
「おーっ!」

学園の戦雲は、いまだ果てることなく激しく渦巻いていた。

『震える山(前編)完』

352 名前:★玉川雄一:2003/11/09(日) 21:34
はい、お粗末様でした。
何度でも強調しておきますが原作を丸のままトレースしてますので、
オリジナリティのカケラもございませぬ。

ラストがジャンプの「第一部・完」みたいになってますがまさのその通りで、
この後に『震える山(後編)』がこないといけないのですが…
今度はさすがに元ネタとは別の話になるのですが、どう続けるかは未定でして。

ぶっちゃけ、今後の追撃戦で徐質は姜維に飛ばされちゃうんですよね。
せっかく前編で徐質がイイ感じに目覚めたのに速攻であぼーん、つうのもアレですが…
まあせいぜい姜維と華々しい一騎打ちでもやってもらうかしら…とも思いつつ、
バトルシーンの描写はちょっとネタ切れ気味(今までさんざパクってたくせに)でして、
いずれ再開するとしても後編は絶対短いです。

353 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/10(月) 01:00
くわっ! 何か今回は徐質たんが凄い主役ッ!
…て、確かに次回あぼーんでしたわな(^_^;) 姜維てずからの反撃で…
うーん。彼女らの世代になると、往年の「武力90代」の少女達はもはや伝説の
領域になってしまうわけで。
義兄上、相変わらずのド迫力SS乙であります!
いっぺんこのスレの正史該当作品を年表に入れ込んでいかなきゃなんないな…

そして…張嶷たん…・゚・(ノД`)・゚・
私、学三玉絵の中では、この娘が一番好きなんだなあ…


サチーソ…
帰宅部連合の華だったのに…。

やはり義兄上の続編に激しく期待しまつ。せっかく徐質たんのキャラも立ったこと
ですし、もうひと活躍の場を与えてあげて欲しいです〜

354 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/14(金) 22:59
アサハル様の神絵が!


くそ、出遅れた。張嶷たん…・゚・(ノД`)・゚・

355 名前:★玉川雄一:2003/11/15(土) 00:19
ううっ… 私のへっぽこ作品にはもったいないご真影を…
感謝の至りでつ。散っていった彼女もさぞや喜んでいることでしょうて。

しかし、この続きホントにどうしましょう_| ̄|●

356 名前:★教授:2003/11/18(火) 22:49
■■突発ショートショート 〜場繋ぎでごめんなさい編〜■■


▲ある日の光景

「あ…」
「あーっ! 入稿2日前なんやでーっ!」
 インクまみれの原稿用紙。劉備のハリセンで星になった張飛。

「音悪いなぁ…ぐええっ!」
「なんですって!?」
 孫策が周喩のチューニングにケチを付けた結果が首締めだった。

「…煙草やめよっかな…」
「ね、熱でもあるの?」
 ぼそっと呟いた郭嘉に変なツッコミを入れる陳グン。

「法正〜、何読んで…」
「………見たわね」
 法正がゆらりと簡雍を追い詰める。その手には『究極のバストアップ術』が…。

「闘魂注入!」
「ぬぁ…」
 甘寧の平手打ちが凌統に炸裂。

「今年こそ張遼を葬りたいです」
「今年は李典を滅殺したいです」
 李典と張遼の書初めを見ながら胃薬を飲む楽進。

「義真…おねーさまから電話だよ…」
「んなっ! 切れ! 若しくはいないって言え!」
 姉からの電話に本気でびびる皇甫嵩。朱儁も小刻みに震えてた。

「………」
「………」
 明りも付けずに部屋の隅。黄忠と厳顔が20本の蝋燭の立つケーキを無表情に見つめていた。

「興覇のマネ」
「びみょー…」
 甘寧のコスプレをする魯粛。苦笑いするしかない呂蒙。

「待った…一生のお願い!」
「一生のお願いを一日に何回してんだよ…諦めろって」
 将棋盤を前に曹操、渾身の土下座。呆れる夏侯淳も仕方なく了承。


▲ちょっと気の早い正月ネタ

「………くー…」
「………ぐぅ…」
「…蜜柑美味しいですね」
「…うん」
 麻雀牌が転がるこたつを囲んで法正と簡雍の寝正月、蜜柑を頬張る伊籍と馬良。新年早々やる事はないのだろうか。

357 名前:★玉川雄一:2003/11/19(水) 19:49
>一生のお願いを一日に何回してんだよ
激しくワロタ。
乱世の姦雄たるもの、こうでなくっちゃね! ……ね?

358 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/20(木) 01:01
ワロタ! 教授さまグッジョブ!
わあ、なんかこういうショートショートもいいなあ!
なにより姐さん達が。めっさ風景想像しちまう!
誰がローソク立てたんだ!

359 名前:★ヤッサバ隊長:2003/11/27(木) 19:02
ネタ投下。


「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった蒼天にこだまする。
中華(なかはな)の地に集う乙女たちが、今日も(一見すれば)天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、赤いクロスタイは翻らせないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、バイクや自転車に乗って遅刻ギリギリで走り去るなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。(ごく一部除く)

蒼天学園。
戦後創立のこの学園は、もとは良家のご令嬢が帝王学を学ぶためにつくられたという、
伝統ある超お嬢さま学校である。
華夏学園都市。東に長湖を、三方に山を望む緑の多いこの地区で、鍾馗に見守られ、幼稚舎から大学までの帝王学の一貫教育が受けられる乙女の園。
時代は移り変わり、始会長・政の時代より年号が三回も改まった今日でさえ、
十八年通い続ければ立派な財閥主席秘書、女総帥、大奥様などが世に送られる、
という仕組みが出来上がっている尚武と権道を重んじる貴重な学園である。



学三を「マリみて」風にしてみますた。
しかしグコ兄ィが考えてる「学三演義」の冒頭と被ってる可能性大(^^;
ところで、「学三」の舞台って後漢市なのか、それとも中華市なのか、どっちなのでせうか?

360 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/27(木) 23:41
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル…かぶってるよ…かぶってるよ!
どうしよ…出だし…まあいいか…ガイドラインになるくらいなんだから…

ちなみに後漢市は年代を限定してしまうので、中国史全般に使えるよう、中華市に改名されました(^_^;)

361 名前:★ヤッサバ隊長:2003/11/28(金) 09:23
ぐは…やっぱり被ってましたか(^^;
ただ、漏れのはまだまだ精錬が足りん訳で、グコ兄ィには学三演義で是非「完全版」などを頂けたら幸い。

>中華市
ふむ、やはりそうでしたか。
んじゃ、これからもそう認識させて頂きますわ。

362 名前:★アサハル:2003/11/28(金) 17:25
>スカートのプリーツは乱さないように、赤いクロスタイは翻らせないように、
>ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ。

思いっきり「うそぅ!?」(by無双袁紹の中の人with裏声)と叫んでしまいますた(w
いや、間違いなく登校がてら犬の散歩をする人(竇武裏設定)とか遅刻ギリギリでも
ないのに窓から入ってくる人とか(忍者部)セスナで登校する人(誰だ)とか
毎日変な乗り物で参上し毎日墜落させる人(諸葛亮?)とか寧ろ校舎に住み着いてる
人とか何とかその他諸々絶対いる!と思ってました(^_^;

どうでもいいですが「華夏」って「かなつ」だと思ってました。
「はななつ」だったんですね…

363 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/29(土) 14:11
>>361
ドンマイ! ノシ
つうか、現在の党錮SSに、「司隷特別校区」バージョンとして一部採用。
学園全土で言えば、「毎日変な乗り物で参上し毎日墜落させる人w」とかが続出
してそうですが、司州に限っていえば、「古き良き時代」は皆お嬢さまめかして
たんではないかと推測。

>>362
竇武裏設定ゲト。というか、竇武たんの従妹の竇紹たんがマイブーム。元ヤンキー(;´Д`)ハァハァ…
ところで「学三マリみて」たる「仲挙さまがみてる」は、突然「李膺さまがみてる」に
変更になりました…やはり離れて見る観察対象としては、突っ走りやすい陳蕃の方が面白そう。
逆に融通がきかないけどお人好しの李膺さんこそ、主人公のお姉様にふさわしくて…

364 名前:雪月華:2003/11/30(日) 08:39
白馬棟奇譚 ─前編─

 深夜11時。河水のほとり、エン州校区白馬棟の二階の一室には、まだ明りが灯っていた。おりしも曹操が下[丕β]棟にて呂布一党を覆滅し、宛棟の張繍、寿春棟の袁術、揚州校区の孫策らを相手に謀略戦を仕掛けながら、カントにて袁紹勢力との緊張が高まりつつある、まさにそのときである。曹袁両勢力の境目である白馬棟は、いわゆる最前線であり、来るべき決戦に備え、劉延をはじめとする30人が遅くまで居残り、校門やバリケードの補修、新規敷設や、サバゲーの訓練などを行っていた。
 分厚いカーテンの隙間から漏れる明りの質は弱々しく、光源は蛍光灯や白熱灯ではなく、ランプかロウソクの類である事が推測できた。当然、棟の外からは中の様子を窺い知る事はできない。

 白馬棟二階の、今は空き部屋となっている化学準備室。その部屋に漂う妖気は、この世のものではないようであった。ガラスの髑髏や奇妙な形の燭台、出所の知れない骨etcetc……ありとあらゆる黒魔術の小道具が、ある種の法則性に基づいて、いたるところに配置され、複雑な意匠の入った六芒星が描かれた魔方陣のシートが、四方の壁と床、天井に貼られていた。
 床の魔方陣の傍に、制服の上に西洋の魔女、いわゆるウィッチの纏う、人血で染め上げたかのような真紅の裏地を持つ、闇を固めたような黒いマントと、これまた魔女の用いる漆黒のトンガリ帽子をかぶった、つややかな黒髪の女生徒が佇み、怪しさ満点の分厚い書物に見入っていた。
「………」
 左手に書物を持ち、空いた右手で空中に印を結んでいる。ぼそぼそと呪文らしきものを呟いているが、あまりにも小さい声なので、たとえ傍らに居たとしても聞き取る事はできないはずであった。たとえ聞き取れたとしても、書物はラテン語で記されており、必然的に少女の呪文もラテン語となるため、内容を理解できる者は、ごく僅かであろう。
 怪しい彫刻が入った蝋燭の炎が揺らめき、それまで影になってよく見えなかった少女の顔が一瞬、明らかとなった。学園全体でも十指に入るであろう、憂いをたたえた瞳が印象的なその美貌を、蝋燭の心細い光が妖艶に浮かび上がらせている。
「……?」
 突然、少女の動きがぴたりと止まった。その視線は、床の魔法陣に釘付けになっている。それもそのはず、今まで何の反応も示さなかった魔方陣が、淡い燐光を発し始めていたのだ。その光は徐々に強さを増し、それに共鳴するかのように、天井と壁の魔方陣も輝きを発し始めていた。
「………!」
 狼狽し、それでもミクロ単位でしか表情を変えずにいた彼女の目の前で、突如、光が奔騰し、もと化学準備室は無彩色に染め上げられた。

 次の日 夜 深夜10時

 明りの消えた白馬棟の校門前に、二台のMTBが滑り込んできた。
「夜の学校という存在は、どこか得体の知れない雰囲気があるものだな、張遼」
「まったくですね、雲長」
 駐輪場が無いため、校門脇にMTBを止めたのは、先日、生徒会入りしたばかりの、もと呂布部下であった張遼と、現在、許昌棟でかごの鳥も同様の扱いを受けている、豫州校区総代にして蒼天会左主将である劉備の、義妹である関羽の二人であった。
 とりあえずその場にMTBを置くと、護身用の木刀を携え、六時の時点で、居残りの生徒が怖がって帰ってしまったため、全ての明りが消えている校舎に、二人は足を踏み入れた。問題があった、どうやら棟全体のブレーカーが落ちたままになっているらしく、昇降口の電灯スイッチが何の反応も示さないのだ。懐中電灯の持ち合わせも無いので、月明かりだけを頼りに、二人は夜の学校の奥へと、足を踏み入れていった。
 二人がこんな時間にここを訪れる羽目になった原因は、今朝、白馬棟にて、昨夜最後まで居残っていた生徒十四人が、校舎外で折り重なって倒れているのが発見された事にある。全員、二階の廊下の窓から外に落ちたらしいが、幸いにも、誰もが重くとも腕の骨折程度で済んでいた。だが、何者かとの闘争の結果、で片付けるには、奇妙な点が二つあった。
 ひとつは、階級章には手がつけられていなかった事。もうひとつは、落下時の捻挫、骨折以外に外傷が無いにもかかわらず、今朝からずっと、14人全員に昏睡状態が続いている事である。
 まがりなりにも、白馬棟は対袁紹勢力の最前線である。おかしな噂が立っては来るべき決戦に差し障りが出るとして、放課後一番に現場検証が行われたが、2階の落下地点の窓が枠ごと外れていた事以外は、何ら収穫が無かったと言ってよい。一応、落下した窓と、廊下を挟んで対面に位置する、もと化学準備室も調査されたが、もぬけの殻で、壁にかけられた、姿見の大きな鏡以外に、何の発見も無かった。
「それで、会議が開かれまして、深夜に調査員を送ることになったのです。そこで、真っ先に自分が行くと言い出したお調子者が1人いましてね」
「曹操殿だな」
「御名答。まさか副会長を行かせるわけには行きませんので、武道の経験のある者から、くじ引きで決めることになりまして」
「それで、おぬしが選ばれたわけか。しかし、何故拙者を誘ったのだ?呂布時代の同僚で、同じ剣道部の魏続や宋憲がおるであろうに」 関羽の問いかけに、張遼は憮然として答えた。
「下[丕β]棟の陥落以来、彼女達とは気まずくなっていまして。私自身は気にしていませんが、彼女達は、呂布を売った事を過剰に気にしているようで、避けられてしまうのですよ」
 さらに言えば、張遼は剣道部にも上手く溶け込めていない。呂布討伐後、張遼をはじめとする新規生徒会入会者への歓迎会の座興のひとつとして、蒼天会長観覧のもと、公認剣道場『玄武館』で御前試合が開かれたことがある。
 その試合において、張遼は防具をつけずに、李典、楽進、徐晃を、まったく竹刀を打ち合わせることなく撃破し、于禁とは、一度竹刀を打ち合わせただけで、わざと時間切れで引き分けたのである。それ以来、比較的に人あたりのいい、楽進や徐晃とはうまくいっているものの、李典からは血縁者の仇と憎まれ、かたぶつの于禁は、不遜な張遼をあからさまに嫌っていた。また、実戦で剣術を磨いてきた張遼は、剣道の基本である、打ってはポンと跳ね上げる『打突』や、肌の前でピタリと止める『寸止』が上手ではなく、つい、いつもの癖で打ち抜いてしまうため、一般部員からの評判も良くなかった。得物が竹刀であり、防具があるとはいえ、小手を打ち抜けば手首が腫れ上がり、面を打ち抜けば重度の眩暈を起こし、胴を打ち抜けば吹き飛んでしまう。それでいて、受け太刀というものをまったくせず、相手の打ち込みを足捌きのみでかわしてばかりいるので、まったく稽古にならないのである。そのため、一応は徐晃、楽進と同列である剣道部師範の肩書きはあるものの、張遼は放課後、玄武館には顔を出さず、MTB機動部隊の訓練に専念していた。
「音無しの剣か。あの徐晃すら軽くあしらったおぬしに、はじめて竹刀の音を立てさせるとは、于禁殿も伊達で公認剣道部の部長を張ってはおらぬということだな」
「雲長、意外に見る目がありませんね。なるほど、于禁さんの風格や、剣の知識は人一倍ですが、実際はたいした剣士ではありませんでしたよ。ただ、あの状況では、彼女の顔を立てておかないと、ただではすまなかったでしょうから」
「并州の孤狼、『剣姫』張遼も、さすがに命は惜しいか」
「何を勘違いしているのです?袁紹との決戦を目前に控えているのに、剣道部を全滅させるのは、さすがにまずいと思ったからですよ」
 傍若無人ともいえる張遼の放言に、関羽は眉をひそめた。
「不遜だな、張遼」
「他人のことが言えるのですか、雲長?」
「拙者はまだ、おぬしの返答を聞いてはおらぬぞ、何故拙者を誘った?」
「では、あなたは何故ここにいるのですか?」
「色々と、おぬしに聞きたいことがあったからだ」
「奇遇ですね。私も、そういう理由からあなたをお誘いしたのですよ。卒業まで肩を並べているにせよ、今から1分後に、どちらかがどちらかをトばしているにせよ、お互いのことをよく知るにしくはありませんからね」
 数十秒前から、二人の間で高まりつつある殺気が、臨界点に近づきつつあった。近くに誰かいれば、その殺気だけで失神してしまうかもしれない。
「……じつに後者を選択したくなってきたぞ、張遼」
「今、ここで決着をつけますか、雲長?」
「望むところだ」
「仕事を終えてからです。着きましたよ」
 関羽の威圧を、さらりと張遼は受け流した。いつのまにか、二人はもと化学準備室の前に到着していた。廊下を挟んで向かい側の窓には、応急処置のベニヤ板が張り付けられ、外からの月光を遮っている。奇しくも、満月の夜であった。
「カギはかかっておらぬのか?」
「空き部屋ですので、普段はかけていません」
「では、行くぞ」
 そう言って、関羽が、引戸の取っ手に手をかけようとした。

365 名前:雪月華:2003/11/30(日) 08:42
白馬棟奇譚 ─後編─
「……!雲長、危ない!」
 何かを感じ取った張遼が、関羽の肩をつかんで思い切り引き戻したのと、内側から爆発的な勢いで引戸が弾き飛ばされたのは、ほぼ同時であった。弾き飛ばされた引戸は、関羽をかすめ、窓代わりのベニヤ板に衝突し、それを突き破りつつ、3m下の地面へ落下していった。
 室内を覗き込んだ張遼は、驚きの色を隠せなかった。数時間前までは、完全な空き部屋であったはずの、もと化学準備室内は、完全な悪魔召喚の間と化していたからだ。天上、壁、床に貼られた魔方陣は、淡い燐光を発し続けており、室内の各所に幾何学的に配置された小道具の類は、それ自体が生命を持っているかのように、カタカタ揺れ動いている。
 そして、床の魔法陣の中央にうずくまっていた黒い影が立ち上がった。マントの襟をそばだて、とんがり帽子を目深にかぶっているため、その顔は良く見えないが、マントの下には、張遼と同じ制服を着ていることから、同じ高校生と知れた。
「張遼、これは一体……」
「何者かに憑かれているようですね。先程の衝撃波といい、彼女にとり憑いたモノが、今朝の事件の犯人に違いありません」
 そう言いつつ、一歩室内に踏み込んだ張遼に、水晶の髑髏が唸りを上げて飛来してきた。張遼は、それを難なく払い落とし、床に叩きつけて粉砕した。続けざまに飛来する、色とりどりの瓶や、出所の知れない骨も、次々とそれに倣った。
 突然、室内が夕暮れ色に染まった。いつのまにか、天井近くまで浮き上がっている女生徒の両手に、炎が燃えあがっており、熱気が張遼と関羽に向かって吹き付けてきた。
「な、何が起こっている!?どうするつもりだ、張遼!」
 さすがの関羽も動揺が隠せない。一方の張遼も、一瞬驚いたようだったが、すぐにあることに気付き、木刀を右手に下げたまま、無造作に女生徒へ詰め寄っていく。
 宙に浮いている女生徒が、バスケットのチェストパスの要領で両手を前に突き出した。燃え盛る紅蓮の炎が渦を巻いて、張遼に絡みつく。
「張遼!」
 関羽が悲鳴をあげた。だが、張遼はまったく表情を変えず、絡みつく炎を無視し、何事も無かったかように、ゆっくりと歩みを進めている。宙に浮いた女生徒に僅かに狼狽の色が浮かんだ。
 赤一色の世界が、一瞬のうちに白一色に染まった。いつの間にか、女生徒の両手から放出されている炎は、凍てつくダイアモンドダストへと変化している。晴れた日の早朝、低温により空気中の水分が氷結し、まるで氷の妖精のように輝く自然現象だが、これが魔術となると、魂魄をも氷結させる悪魔の業となる。
 しかし、それすらも無視しして歩き続ける張遼に、少女にとり憑いた何者かは、明らかに狼狽していた。そのまま、少女のすぐ傍まで歩み寄った張遼は、右手の木刀を空中の少女に突きつけた。
 張遼の口から、凄絶な気合がほとばしった。
 
 もと化学準備室の扉を開け放った関羽の目に、四方の壁、天井、床に貼られた魔方陣と、幾何学的に並べられた数種類の魔術の小道具類が飛び込んできた。そして部屋の中央の魔法陣の傍らには、黒いマントを羽織った少女がうつ伏せに倒れている。
「い、今、何が起こったのだ、張遼?」
「……一種の精神攻撃ですね。この部屋と廊下の一部を、ある種の魔術的な場で包み、踏み込んだ者を術にかける。先程、ドアを吹き飛ばした衝撃波も、私に対して放たれた火炎や冷気も、実際には発生していません。あの時、精神的に負けていれば、現実の私は、かすり傷一つ無いまま『焼死』もしくは『凍死』していました。ですが、それに打ち勝てば、術の効果はそのまま術者に跳ね返ります。つまり、彼女にとり憑いた何者かに」
「やけに詳しいな」
「こう見えても結構、オカルトに興味がありますので」
 張遼は倒れている少女に歩み寄ると、仰向けに抱き起こし、頬を軽くはたいた。少女が、物憂げに目を開ける。
「我々は生徒会の者です。大丈夫ですか?」
「………」
 こくり、と少女は無言で頷いた。
「まず、あなたはどこの棟に在籍している誰で、ここで何をしていたのですか?」
「………」
 ぼそぼそと何か言ったようだが、あまりに小さい声だったので、関羽には聞き取る事ができなかった。
「え?揚州校区の会稽棟在籍で、名前は于吉?この場所の気脈がピークだったから、死んだお祖父さんを呼び出そうとしていたが、本のページを間違えて、変なものを呼び出した後は記憶が無い?なるほど、わかりました。ここは生徒会にとって重要な場所ですので、できれば、もう来ないでほしいのですが……」
「………」
 再びぼそぼそと何か言ったようである。やはり関羽には聞き取れなかった。
「え?この場所の気脈はピークを過ぎたから、もう来ない?それはなにより。ちゃんとひとりで帰れますか?え?夜目は効くから大丈夫?わかりました。ちゃんと片付けていってくださいね」
 こくり、と于吉と名乗る少女は無言で頷いた。  

 校門を出たところで少女と別れると、関羽が張遼に溜息をついた。
「あのまま帰してよかったのか?」
「拘束してどうにかなるものではありません。とりあえず、副会長には見たままを報告して、もっともらしい理由は、程イクあたりに考えてもらいますよ。それに、于吉と言う名前も、おそらく本当のものではありません」
「何ゆえ?」
「西洋の魔術では、真実の名前を知られると、それに呪いをかけられてしまう恐れがあるので、たいていの魔術師は魔術用の名前を持っているそうです。見たところ、召喚の儀は本格的でしたし、偶然とはいえ、あれほどの精神攻撃を仕掛けられる悪魔を呼び出せた事から、彼女は相当、高位の魔術師と思えましたのでね。それより……」
「仕事は……終わったな」
 二人はほぼ同時に跳び退った。そして7mほどの間をあけて睨みあう。関羽は木刀をしっかりと正眼に構えて張遼を見据え、張遼は両手をだらりと下げ、悠然と立っているように見えた。徐々に殺気が高まり、雲ひとつ無い夜空に浮かぶ月ですら、息を呑んで二人の剣士を見下ろしているように思えた。
 関羽が、すり足で一歩間合を詰め、張遼もそれに応じて間合を詰めた。そして関羽が剣尖を上げようと、やや前傾した瞬間。
「スト────ップ!」
 爽快なほど快濶な声が、一面に満ちていた殺気を吹き消してしまった。関羽と張遼は、ほぼ同時に声のした方を見やり、腕を組んで二人を睨んでいる小柄な少女を見出した。
「曹操殿?」
「副会長ですか」
「二人とも何やってんだよっ!」 
 曹操の声が、憤りのあまりやや震えているように、関羽には思えた。
「いい?アンタたち二人は献サマと蒼天会に仕える身だよ。それにアタシの大切な友人なんだから、こんなところで軽々しく決闘に及んじゃダメだよっ!」
 もっともらしい台詞の中に、関羽は微かに違和感を感じた。
「副会長。今のお言葉、まことの事でござるか?」
「当然だよっ!アンタだけじゃなく、劉備や張飛だって、大切な友人なんだよっ!」
「拙者の疑問は、その前の言葉にござる。……近頃の、蒼天会に対するなさりようを見ていると、その言葉に違和感を感じるのですが」
 関羽が言い終えた瞬間、先程、張遼と関羽との間に発生した殺気とほぼ同種のものが、曹操と関羽との間に発生した。
「……関羽、本当はやりたくない、とは言わないよ。好きで生徒会役員やってるんだし、本当にやりたくないなら、とっとと階級章を返上すればいいんだしね。いい?やらなきゃ、アタシがやられるんだよ。アタシが言えるのは、それだけ」
「それはそうと副会長。どうしてこんな時間にここにいるのですか?」
「え?えーと、それは……」
 突然、張遼が気難しい顔で曹操に話し掛けた。明らかに曹操は動揺している。
「その、何と言うか……」
「おひとりで、夏侯惇さんも、虎ちょもいないようですし……。無断で調査に来ましたね?」
「うぐ……」
「来ましたね?」
「…ご、ごめん。文若や于禁には黙っててね?あの二人、いつまでもくどくどうざったいからさ」
 心から情けなさそうな表情をした張遼は、大きくため息をついた。
「まったく、いち勢力の首領にしては無用心すぎますよ……。わかりました。あの二人には黙っておきます」
「やったー!恩に着るよ張遼!」
「そのかわり、今夜は夏侯惇さんに、こってりと油を絞ってもらいましょうか」
「げ……、か、関羽も何か言ってよっ!」
「張遼。それはいい考えだな」
 関羽は苦笑を浮かべつつ、重々しく張遼に賛同した。
 
 午後11時半。中央女子寮C棟4階。
 黒絹のような髪のもつ、物憂げな瞳をした美少女が、『顧雍&顧譚』というドアプレートのついた扉を開けた。先程、白馬棟で大騒ぎを起こした、于吉である。部屋の中で、クッションにうつ伏せになってティーン雑誌を読んでいた、于吉にそっくりな少女が、驚いた表情で彼女を見つめた。 
「あ、元歎姉さん。昨日は帰ってこなかったけど、どこ行ってたの?龍の巣にもいなかったみたいだけど?」
「………」
「え?憶えてない?まったく、ボーっとしすぎるのも限度があるわよ。まあ、無事だったからいいけど」
「………」
 こくり。
 于吉、いや後の長湖部副部長となる顧雍は、少し恥ずかしそうに頷いた。黒魔術は、彼女のひそやかなる趣味である。
 『学園正史長湖部記 怪異説集』によると、この後、会稽棟に戻った顧雍は、夜な夜な怪しい儀式を繰り返したり、自家製の栄養ドリンクを長湖部員に無償で配ったりしていたが、そのことで孫策に目をつけられてしまった。そして、オカルトや占いを毛嫌いしている孫策に、降水確率0%の日に、雨を降らせる事ができなければトばす、という理不尽な命令を受けてしまう。結果的に、雨雲の召喚は成功し、あたり一帯は豪雨となったが、そのことで逆上した孫策に、秣陵棟じゅうを追い掛け回される羽目になってしまう。そのまま夕暮れ時まで逃げ回り、最終的に更衣室に追い詰められてしまったが、魔法で鏡の中に逃げ込むという荒技により、オバケ嫌いの孫策を失神させ、その隙に逃げ出す事に成功した。
 その後、そのときのショックが尾を引いた孫策は体調を崩しはじめ、夏休み突入後、周瑜や張昭の反対を押し切って参加した部内対抗の紅白試合で、人為的な事故に巻き込まれて重傷を負い、そのまま引退してしまう事になる。
 顧雍自身は、孫策リタイア後、生徒会から長湖部に復帰した張紘により、その吏才を見出され、長湖部の経営に携わる事となる。幸い、顧雍=于吉であると気づく者はひとりもおらず、最終的には副部長職まで務めたが、週3回ほどのペースで、黒魔術は続けていたらしい。

 ほぼ同時刻、中央女子寮B棟5階の自室に戻った関羽に、劉備が深刻な表情で、重大なことを告げた。
「関さんがおらん間に、えらい事あったで…」
「何事でござる?」
「…董承が、訪ねてきおった」
「蒼天会の車騎主将が?いったい何用で?」 
「…曹操打倒のために、勤王の志士を集めてるんやて」
 時代が急速に動き出す音を、関羽は聞いたような気がした。

366 名前:★惟新:2003/11/30(日) 18:12
オカルトキタ━━━━((( ⊂⌒~⊃。Д。)⊃━━━━ッ!!
迫力ある描写にドキドキ(゚Д゚;≡;゚д゚)ガクガク
そして、あの無口っ娘顧雍が魔女っ娘に!
何故だかヤミ帽のリリスファッションを想像して妙に(;´Д`)ハァハァ
顧雍=于吉とはこういうことでしたか〜
なにやらとても新鮮で、面白うございました。

367 名前:★ぐっこ@管理人:2003/11/30(日) 22:25
于吉たんの逆襲キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!

(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル…魔女っ娘于吉たんの恐怖…っていうか何殺伐と
してるのですか関羽たん張遼たん…
むむ、前回仰ってた于吉=顧雍説の意味が明らかに…。
ただまあ、顧雍は顧雍で長湖以南累世の名門、というステータス持ちですので、
陳寿の記述からは漏れている説かと(^_^;) そしてハイショーシが注で持ち出して
きたものと思われ。
でも確かに顧雍たんは魔女っ娘姿が似合うなあ…。鏡ネタ…。うーむ。


そして長編短編HTML化したぞ( ゚Д゚)ゴルァ!
…ひととおり確認はしたのですが、当然、採録漏れもあると思いますので、自己申告
よろ。
歴史的事実に基づいたお話は年表に、それ以外・および元ネタキャラのパロ系作品は
「異説」扱いでしょーとれんじスレ編へ収録してあります。
単純にコピペしてるだけなのですが、せっかくだからこれまで寄せられたイラストを
「挿絵」として使いたい、といわれる方、これも自己申告でよろ。

368 名前:雪月華:2003/11/30(日) 23:01
様々なベクトルの反響が大きいみたいで…

>自家製の栄養ドリンク
当時、符水というものは、お札入りのただの水ではなく、薬湯(麻薬?)のような存在だったらしいです。まあ、それを飲んで倒れた長湖部員がいたことから、孫策が乗り出し…

>『学園正史 長湖部記 怪異説集』
蒼天会ver 帰宅部ver 曹氏生徒会verも存在し、様々なオカルト現象を収録している
、といったものです。元ネタは『捜神記』etc…
以前書いた長湖部合宿SS第一話での、朱桓の怪談も収録されています。
ちなみに、地理的条件からいって、帰宅部verが、もっとも内容が充実していたり(^^;

>殺伐とした張遼
まだスチャラカな曹操軍団の雰囲気に溶け込めてないということで。
しかし、魏延、朱桓、関羽、張遼ら、有能な重要拠点軍団長には、
『部下には優しい』『同僚に対しては、やたらと傲慢』『プライドが高い』『気難しい』
という共通点があるのは、なぜでしょうかね。

369 名前:★玉川雄一:2003/11/30(日) 23:51
蒼天航路や無双なんかで張遼と関羽が仲良さげなのに慣れてしまっていたせいか、
一触即発っぽい二人の雰囲気は新鮮でした。

あと、剣道部にヘンに気を遣ってる張遼の不敵さ!
確かに、この手の軍団長クラスってあんなキャラ揃いなんですねえ。
もっとも、そうそう改めようとしないのも立派なプライド?
とはいえそれで身の破滅を招く、というのも考え物ですけど…

ところでグコーさん、私の『震える山』って確かに歴史ネタ絡みではありますが、
モロに元ネタありのパロディなんですけど年表組でいんでしょうか。
確かに、全然「しょーとれんじ」じゃないんですけどね(-_-;)

370 名前:雪月華:2003/12/01(月) 18:18
ええと、ダメ出しという形になりますが、
当スレ245の拙作「長湖部夏合宿 その2」が文庫版に掲載されていませんでした。
一応、揚州校区異常気象の設定が載っているので、できれば掲載していただきたいのですが…

※確認後、このレスは削除をお願いします

371 名前:那御 :2003/12/01(月) 20:06
顧雍タン・・・取り憑かれてるんすかw
しかし、、伯カイさんはこのこと知ってるんでしょうか?
知ってて隠してそうな怖さがある・・・

何気にオカルトに詳しい張遼。
ぶっ飛び曹操軍団に、後々溶け込める理由はこれか?

>符水
そ〜いえば符水=麻薬の話はどっかで耳にしましたね。
飲ませてラリッた教徒に、教祖の洗脳が・・・

372 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/01(月) 23:28
>>368
ぐっじょぶ! その説(・∀・)イイ!
色々出てくるオカルト話を総括することも出来そう…。ハイショーシ君も手広いな(^_^;)

>>369-370
ラジャっ! 速攻で付け加えるです!
ちなみに震える山は「元ネタキャラのパロディ」ではないので、年表組に残しますた。
あれで張嶷が固有結界「枯渇庭園」あたりを使ってたら別ですが(^_^;)
要するに「キャラの元ネタに強く依存」してるかどうかということですにゃ。あんま厳密でもないですけど。

>>370
符水(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

373 名前:岡本:2003/12/02(火) 00:31
>教授様
日常の”クスッ”という笑いを誘われるような描写がお見事です。
こういうのはちょっと書けません。次回の作品を楽しみにしております。

>雪月華様
魔法の自己制御ができない人間を野放しにしていいのか、
陪臣同士が喧嘩した場合、勝つにしろ負けるにしろ上の人間の関係において
ただでは済まないので"飛ばす"という言葉を比較的思慮深いこの2人の間で出るのか?
という突っ込みどころは別にして、ノリを楽しむ感覚で拝読したしました。

ひとつ伺いたいのですが、雪月華様の設定では張遼の剣は自己流とのこと
でしたが柳生新陰流の影響が濃いのでしょうか。基本的に”待ち剣”が多い印象が
ありましたので、騎兵を用いて”先の先”と積極果敢に攻める張遼の印象とはなんとなく
違ったのですが。
まあ、個々人の設定の問題ですが。

音無しの構:一刀流・中西派三羽烏の一人・高柳又四郎で知られる。
起こり(相手の動きの前兆)に対応できないときは間合いを開け、相手が打ち損じた
下がり端を打ち込む。起こりに対応できるときはその出鼻をうつ。結果として竹刀が触れ合わない。
北辰一刀流創始者・千葉周作の免許皆伝祝いの試合では千葉周作の起こりが読みづらかったのと
剣の鋭さのため竹刀が打ち合い、相打ちに。

無形の位:柳生新陰流の位(構え、転じて剣の技量のことも位といいます)のひとつ。後の先を突き詰めた
柳生新陰流ではある意味究極の構えかもしれません。が、典型的な合わせ技狙いの構えです。
自分から攻める場合は全く無意味な構えです。

374 名前:雪月華:2003/12/03(水) 18:19
>373
正史の記述によると、文句なしの軍才だが傲岸不遜だったというので、あえて高柳又四郎をイメージしてみたのですが…
ちなみに、拙作・倚天の剣における皇甫嵩は、薩摩示現流の開祖、東郷重位をイメージしています。
(ちなみに盧植は富田流小太刀の達人で、幽州校区伝統技能の北斗張扇術第19代目正統継承者という、ハァ?な設定)
上意討ちの文書を全て処分していたり、幼年の者に対しても礼を尽くしていたというところが、
皇甫嵩のイメージに合ったので…

関羽→相手の剣を強引に打ち払って隙を作る。いわゆる介者剣術で『道場では』敵なし。
張遼→『待ち』ではなく、相手を動かして、その隙を斬る。無駄な動きがないため疲労が少なく、多人数相手の実戦向き。
といったイメージです。
張遼は、并州校区での対不法侵入者への実戦経験により、見切りというか、間合を極めているとmy設定しています。
がっちりと正眼に構えている相手は斬りづらいので、言葉による挑発や、あえて構えない事で
隙を見せ、相手を自分の思い通りに動かして隙を生み出し、そこを斬るという流儀。
また、対多人数戦が多かったため、構えや流れが崩れる受け太刀や突きは用いない。
それと、先の先とは、ただ単に前に出るのではなく、相手の僅かな動きから次の動きを読み、
いち早くそれに対応する動きをする、というものではないでしょうか。

余談ですが「相手を自分の思い通りに動かす」というのが、兵法の極意ではないでしょうか。
まだ、いろいろと主張したい事はありますが、それは作品中で著します(と思う)ので。

375 名前:雪月華:2003/12/04(木) 08:27
そんなこんなで、放課後は、めっさハードボイルドな張遼ですが、
「気を抜く時は徹底して抜く」というポリシーがあるので、寮生活や休日には結構女の子っぽいです。
静かだが圧倒的な風格を持つ関羽と違い、見た目では人を威圧しないタイプ。
関羽以上の親友である、薄命軍師の郭嘉曰く、
「おしゃれして街を歩けば、10分に1度はナンパされる」とのこと。

376 名前:那御:2003/12/08(月) 02:40
駄文書きました・・・
他の方に比べるとだいぶ劣りますが・・・
公孫サンと劉備は、それほど懇意じゃなかったと聴きますが、
あえて、猛烈に懇意にしてみました(絡みはないですが・・・)

― 信じられた人と信じられる人 ― 〜易京の戦い〜
公孫サンは窮地に陥っていた。
本拠地である易京棟に篭城したものの、四方を袁紹軍に囲まれ、身動きの取れない状況にあった。

公孫サン――字は伯珪。
「白馬委員長」と謳われ、幽州校区劉虞を倒し、総代となった烈女である。
一時期は、あの名門袁紹を脅かすほどに勢力を広げ、幽州、冀州、エン州と、三校区にわたって支配したこともあった。

彼女の快進撃の原動力。
それは、「白馬義従」と呼ばれた精鋭部隊である。
バイクからの射撃に優れた者を集め、制服、バイクなどを白一色で統一した部隊である。
北の鮮卑高との抗争では、この白馬義従が大活躍し、公孫サンの名は一気に知れ渡ることとなった。

しかし、彼女の誤算は、界橋にあった。
当時、郎となっていた公孫サンは、青州の黄巾の残党の討伐へと出陣。
持ち前の戦闘力で、いとも簡単にこれを平定。
返す刀で、袁紹の治める広宗棟へと軍を進め、ここに陣を構えたのである。

これに激怒した袁紹は、自ら出陣。
両軍は界橋で激突した。
この戦いのキーマンは、袁紹配下の麹義であった。
長く涼州でシゴかれ、バイクとの戦いの経験には事欠かなかった。

この麹義に、公孫サン自慢の白馬義従が、木っ端微塵に打ち砕かれてしまったのである。
そのうえ、前線で袁紹に遭遇したにも関わらず、これを取り逃がしてしまった。
公孫サンは大敗北を喫し、幽州校区への撤退を余儀なくされてしまったのである。

その後、劉虞を倒して総代の座を奪ったのだが、この劉虞が袁紹と懇意であったため、
さらに袁紹の怒りを招くこととなったのである。

袁紹は、生徒会長の権限と兵力を以て、北上を開始した。
勢いを失った公孫サンの拠点は、次々と陥落し、遂に本拠地易京での篭城戦にまで追い込まれてしまったのだった。



一人の生徒が、易京棟の一室のドアをノックした。
「・・・失礼します」
生徒の名は関靖。公孫サンの側近として仕え、よき相談役でもあった。
(また痩せられた・・・)
関靖は、公孫サンに会う度に、そう思うようになっていた。
以前は澄み切っていた蒼い眼にも、どこか曇りが見られた。

白馬義従が破られてから、公孫サンはずっとこんな具合だったのである。
自ら全身全霊を込めて育て上げた精鋭。

常にメンテナンスは欠かさないよう指示していた。
戦場も、極力走りやすい位置を選んで布陣した。
なのに・・・なぜ・・・!
公孫サンは、悔しさで頭を抱え込んだ。

(あれほど覇気に溢れた方だったのに・・・)
関靖は公孫サンのこのような姿を見るたびに、悲しくなっていくのであった。

「自軍の物資の残量を調査しました・・・ここに置いておきます・・・」
「・・・ありがと」
やはり、公孫サンは生返事であった。
関靖はファイルを机の上に置くと、そそくさと部屋を後にする他無かった。

公孫サン軍には、もはやそれほど長い時間篭城していられる余裕は無かった。
公孫サンはファイルから書類を取り出し、焦点の定まらない目で眺めた。

(姐さん・・・アンタはこうなることが分かってたってかい?)
公孫サンの頭に、卒業した元執行部員、盧植の姿が浮かんだ。

公孫サンは以前、盧植に学問の手ほどきを受けたことがあった。
学年でも名の通った優等生であった盧植の部屋には、後輩が集まり、小さな勉強会が行われることがしばしばあった。

そして公孫サンは、盧植の卒業に際して、ある言葉を肝に銘じるよう言われていた。

377 名前:那御:2003/12/08(月) 02:41
柔能ク剛ヲ制ス

柔軟な者は、かえって勇猛な者を制することができる、という意である。
盧植は、公孫サンが学問においても、兵法においても、柔軟な考えに欠けているということを懸念して、
この言葉を肝に銘じるよう言ったのであった。

しかし、公孫サンはこの言葉に反し、
領地を増やすために冀州に進入し、総代の座を奪うために劉虞を飛ばすなど、
直情的な行動が多かった。

(そのツケが今頃回ってきたってかい・・・)
こうしている間にも、袁紹軍はいろいろと仕掛けてきているのであろう。

(何か手を打たなければ・・・)
だが、考えれば考えるほど、盧植の言が頭を過ぎり、公孫サンを憂鬱な気分にさせるのであった。



遂に、公孫サンは前線に立つことを決意した。
というのは、遥か遠くに狼煙が上がっているのを確認したからである。
「ようやくご到着かい・・・」
公孫サンは、黒山賊ことBMFに使者を送り、増援部隊の派遣を要請したのである。

BMFのトップには、戦闘力に優れた張燕がいる。
(張燕の元までたどりつければ・・・この状況を打破できる!)
そう考えた公孫サンは出陣を決意した。

公孫サンは、僅かに残った部下にこう下知した。
「黒山の張燕が援軍として到着した!
私は、いったん張燕のもとへ身を寄せ、そこで再起を図ろうと思う!」

そう一声言うと、公孫サンは、愛車にまたがり、薙刀を手にし、弓を担ぐと、
一気に易京棟を飛び出し、狼煙に向かって真一文字に突き進んだ。


だが・・・
狼煙まであと百メートル、というところで、突如公孫サンの目の前に、伏兵が現れた。
「ちっ・・・蹴散らせ!」
公孫サンは、薙刀を振り下ろし、2人を倒した。
目の前が開けたところで、公孫サンはスロットルを全開にし、一気に突っ切った。

そして、狼煙が段々近づいてくる。
50メートル・・・30メートル・・・

「なっ・・・どういうことだっ・・・」

公孫サンが驚くのも無理は無かった。
狼煙を上げていたのは、張燕などではない。
事もあろうに、あの袁紹であったのだ。

「だから田舎娘は単純って言うのよね・・・」
袁紹が不適な笑いを浮かべる。

「貴様ッ!」
公孫サンが袁紹に斬り掛かるも、袁紹の隣に侍立していた文醜が、これを受け止めた。
「生徒会に歯向かおうなどたぁ、いい度胸じゃないかい!」
ナイトマスターと呼ばれ、恐れられた猛将である。

篭城の疲れと、盧植の言葉の苦悩により、公孫サンにもはや戦う余力は殆ど無かった。
一、二合交えたところで、公孫サンは撤退の指示を出した。
(とはいえ・・・もはや易京棟は落ちていよう・・・。かくなる上は、斬り死にするのが武人の名目ッ!)
公孫サンは、悲壮の覚悟で、敵軍に再び突入していった。

公孫サンの姿が見えなくなると、袁紹はとんでもないことを言い出した。
「田豊、易京棟を彼女に返して差し上げなさい。」
「・・・は?」
「公孫サンを易京棟に撤退させなさい、と言ったのよ。」
「なぜです!わが軍の勝利は決定的、それをみすみす・・・」
「あの田舎娘に、思い知らせてやるのよ・・・」
「そのようなことをすれば、わが軍に降伏してくるものはなくなります!」
「今回だけよ、あの女は・・・あの女だけは許さない!」
「・・・」

田豊は呆れ返ってしまった。
袁紹は、一時期公孫サンに苦戦したことを、かなり根に持っているようだった。
(これは・・・諌めても聞き入れて下さらないだろう・・・)
剛直で知られた田豊も、これには矛を引っ込めるしかなかった。

(どういうことだ?)
なぜか無事に易京棟に入ることができた公孫サンは、考え込んでいた。
敵軍の勝利は確実であった。にも関わらず、袁紹は易京棟を取らず、自分に棟を明け渡した。
(侮辱・・・としか思えん・・・)
この露骨な侮辱も、公孫サンの心に大きなダメージを与えた。

(姐さん・・・私は間違っていたんだろうか・・・)
公孫サンの頭に、再び盧植の言葉が浮かんだ。

自分の力、自分の意志、自分の心、それが、この動乱を切り開く唯一の武器である。
そう信じていた。そう信じて突き進んできたのだ。
だから、心から信じることが出来る人間は、殆どいなかった。
逆に、自分を信じてくれる人間も、少なかったように感じられる。

姐さん・・・アイツは・・・劉備は今どうしてるんだろう・・・
アイツらだけだったよ・・・後輩で私になついたのは・・・

玄徳・・・

つかみ所がないタイプの後輩だった。
しかし、不思議と自分と馬が合った。
ともに盧植の部屋で語らったこともあった。
自分が唯一心から信じられた後輩であった。

玄徳・・・アンタは、私と同じ路を辿っちゃならない。
乱世を切り開くには・・・力だけじゃダメだったんだ。
私は身を以てそれを知ったよ・・・

最後くらいは・・・カッコイイ事言わせてくれ・・・
アンタは、間違いなく大物になる・・・そんな気がするよ・・・


翌日、公孫サンは階級賞を自主返済し、群雄割拠の時代から、その名を消した。
心の中に、ひとりの後継者を残して・・・

378 名前:玉川雄一:2003/12/09(火) 22:18
私は長らくピンとこなかったのですが、
公孫サンも一時は袁紹をしのぐ勢力を誇っておったのですね。
しかし界橋の一戦を機に(?)パワーバランスが逆転し、
挽回もままならず易京に潰えた、と…

公孫サンはけして完全無欠の英傑ではないにせよ、
天下の一角を占めるだけの力量は確かに持っていたはずですが、
それを総合力で覆した袁紹というのはやはりただものではないということでしょうか。
(この論法で行けば曹操はさらに…)

盧植先輩と、劉備と、共に机を並べて学んだ奇妙な勉強会というのも興味がわきます(^_^;)

379 名前:★惟新:2003/12/09(火) 22:22
力作乙! やはりアサハル様の神絵にインスパイアされましたかにゃ?
姐さん…っつーか女王様な公孫[王贊]閣下の壮絶なる最期。
盛者必衰の世界が広がっていますね。
彼女もかなりの実力派だったようですが、相手があの袁紹では…

それはそうと性悪袁紹(;´Д`)ハァハァ

380 名前:★アサハル:2003/12/09(火) 22:40
姐さんの最期、実は物凄く好きなシーンでありまして。
こうして改めて文章で見ると感無量であります!!
一瞬「袁紹一発殴っていいですか?」と思ったのは(゚ε゚)キニシナイ!!

ハリセン娘2人に囲まれる姐さんってのもなかなか…
もしかしてあのナリ(自分で設定しておいて)で実はボケですか?

381 名前:那御:2003/12/09(火) 23:30
アサハル様の絵に完全にインスパイアですw
ちなみに、好きな日本文学「平家物語」が大いに影響しているかと。。
「滅び」に美しさを感じる人間ですから(爆

勉強会ネタはお気に入りw
全くテンション、キャラの違う三人の勉強会。空恐ろしいものがあります。

てか、正史の袁紹があまり好きでない、って根性が性悪袁紹の生みの親w
こう・・・裏表があって、しかも自分に手向かう者は、どうしても許したくない、
そういうキャラになっちゃいました、、

業務連絡(何)、
曲は、「皇甫嵩のテーマ・バラードアレンジ」とその他2曲同時進行中。
コツコツやっていきます。

382 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/10(水) 23:08
遅まきながら、読みますた(゚∀゚)!
公孫瓉先輩の、激しくもあっけない、自滅に近い最期。
北上してきた青州黄巾勢力を蹴散らし、幽・冀・青の三校区を圧倒的な武力で支配し、
おそらく袁紹がいなければ、あるいは韓馥がもう少し豪毅であれば、まず河北ブロック
を支配していた女傑であったでしょう。ひょっとすると袁紹が躊躇った中原進出をいとも
あっさり実現していたかもしれません。

そういう狼みたいな彼女のコアの部分には、やはり盧植先生やら後輩・劉備やらの思い出
があるわけで…。やりたい放題やってる彼女ですが、盧植先生が一瞬マジモードになって
ハリセン取り出すと、途端に硬直するものと思われ。
というか、公孫瓉もハリセンを持ってたとか…三人全員ツッコミ。

袁紹さんも、敵と認めた相手に対する底意地の悪さカコイイ! 「自分の中でその人が“どうでも
いい存在”になるまで徹底的にいじめ抜く」を地でいく袁紹お嬢さま(;´Д`)ハァハァ… 呉匡たん
の方が珍しい存在なんでしょうねえ…

>業務連絡
(゚∀゚)! 期待ナリ!

383 名前:7th:2003/12/14(日) 21:04
だいぶ遅くなりましたが感想を書かせて頂きます。

袁紹と公孫サンの対立というのは要するにお嬢様vsヤンキーの戦いなんですよね。
単純な武力主義者の公孫サンと裏表のある優等生の袁紹が理解しあえる事はない…という感じでしょうか。
公孫サンも劉虞をトばした所までは良かったんですけど、その後も同じ路線で走っていってしまったのが間違いだったのかもしれません。
頭の切り替えが出来なかったばかりに、なんとも哀しい最期を迎える事に…。

それはそうと勉強会。あの廬植とあの劉備とこの公孫サンが一つの机で勉強しているのが何か凄いんですが。
「………」
「………」
「…おい劉備、出来たか?」
「…まだです。後200」
「だー、やってられるかこんなモン。大体何でこのトシにもなって漢字の書き取りなぞせにゃならんのだ!?」
「先生は『基本を疎かにするな』って言っとりましたけど」
「アタシはこのテのちまちました作業が死ぬほど嫌いなんだ…お前もそうだろ?」
「そらそうですけど…って伯珪さん、何してるんですか」
「フケる。ここは一階だ。窓を跨げばすぐに…」
窓のすぐ外に廬植の姿。窓を開けた姿勢で硬直する公孫サン。
「すぐに…何かしら?」(ハリセン装備)
「せ、先生、何でここに…」(冷汗)
「そろそろ集中力の限界だと思って。…覚悟はいいかしら?」(いい笑顔で)
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル(滝汗)
といった感じでしょうか。

しかし皆様レベルが高い。いまSSを一本書いていますがSS初書きの自分なんかが肩を並べるのは躊躇われますね。
取り敢えず今週中に上げられるように頑張ってみたいと思います。

384 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/14(日) 23:39
>>383
いい笑顔の盧植先生(・∀・)イイ! タイムまで把握済みとは。
そして、やはりむずかりの公孫瓉先輩。案外真面目な劉備。
三者三様の学窓ですねえ…。
盧植先輩は、どちらかというとクールっ娘っぽい外貌ですが、中身はかなり
弾けてます。普段静かなのは地声がデカイのが気になってるからで、劉備や
公孫瓉は遠慮なく大声で叱責されたり。

そして7thさま、SS期待しておりますっ!

385 名前:那御:2003/12/20(土) 01:50
注)このSSは、全て実話を元に構成されております。

長湖部調理実習  〜禁断の蒲茹でと豚汁入り〜

「あ〜、めんどくせぇ。なんで俺様がこんなことをしなきゃならないんだ・・・」
ボヤきながら米をとぐ甘寧。
その手つきは、ややおぼつかない様子である。
「まぁまぁ・・・数学よりはマシじゃないか。」
その隣でゴボウを洗う魯粛。こちらはなにやら楽しげである。

揚州校区の家庭科の授業。その一環として、今回の調理実習は行われていた。
勿論、一人で調理実習は出来ない。
班分けがあるわけだが――。

2班の周瑜班は勿論、班長周瑜が絶妙な料理の腕を振るうことが予想される。
1班孫権班には顧雍ら。4班程普班には歩シツらがいる。
文科系の彼女らも、なかなかの料理を作るであろう。
だが・・・3班だけは明らかに異彩を放っていた。

呂蒙班。その班員は、班長呂蒙以下、甘寧、魯粛、陸遜である。
陸遜は、この班編成を見て、自分の不運を呪ったという。
案の定、呂蒙は一言、
「伯言は手ぇ出さないでくれよ。お前が関わるとロクなことにならないからな。」
(それはこっちの台詞です・・・)
その一言を飲み込んだ陸遜は、ため息をついてうなだれた。

今回、学園から指定されたメニューは、白飯、秋刀魚の蒲焼、豚汁であった。
「終わり!モーちゃん皮むいて!」
ゴボウを洗い終えた魯粛は、呂蒙にゴボウをパスした。
「おい!これってどれくらいとげばいいんだ?」
「・・・既にとぎすぎです。」
あきらかにとぎすぎといえる米を見かねた陸遜が言った。
「じゃあ、それを水に浸しておいてください。」
「あいよ。」

ニンジン、ゴボウ、大根・・・
一通り野菜を洗い終えた4人。
「じゃあ、次は野菜を切らないとな。」
「よ〜し、ここは俺様の出番だ!これを一番楽しみにしてたんだ。」
そう言うと甘寧は、おもむろに両手に包丁を構えて、まな板の前に立った。
「ちょ、ちょっと!何する気ですか!」
あわてて陸遜が静止する。
「え・・・何って、野菜を切る。」
「そんな切り方って・・・」
「いいんだって!どんな切り方したって、食えないもんじゃないだろ?」
「ま、まぁ・・・」
「じゃあ、行くぜ!うぉらッ!双剣連打!」
ダダダダダダダダダン!
まな板に置いたゴボウを、二刀流で叩き切っていく。
次々とまな板から飛び散っていくゴボウの欠片。
「うわぁ・・・、あの班絶対おかしいって・・・」
1班の朱桓らが、3班を横目で見ながら呟く。
「あの面子じゃあねぇ。」

「おもしろいな!次あたしにやらせて。」
楽しさに気付いたか、魯粛が目を輝かせて言う。
「あぁ。」
「じゃあ、興覇さぁ、あたしに向かってニンジン投げて。」
「は?」
またも予想外の展開に陸遜があわてる。
「投げるって・・・?」
「まー見てなって。」

「とりゃ!」
甘寧がオーバースローでニンジンを投げ込む。
「てぃッ!」

スパッ!

ニンジンが真っ二つに切れて、その半分は調理台のうえ、もう半分は床に落下した。
「あぁ・・・。やると思った・・・」
こうなることは見え見えだったのに、と陸遜が頭を抱える。

386 名前:那御:2003/12/20(土) 01:50
「で、これどうする?」
落ちたニンジンを拾い上げ、呂蒙が訪ねる。
「う〜ん・・・、そうだ!」
魯粛が頭の上に豆電球を点灯させた。
「興覇、モーちゃん、耳貸して!」
(ヒソヒソヒソヒソ・・・)
「ははははは!そりゃあ面白い!」
呂蒙が爆笑して言う。
「で、どこの班にやる?」
甘寧が尋ねる。
(どこの班?一体どういうこと?)
「1班とか?」
「やっぱり?」
(公瑾さんの班・・・何をする気なの?)

すると、甘寧は、落としたニンジンのほうを切り始めた。
ある程度の大きさになったところで、なぜか周囲を見回し始めた。
「さ〜て、細工は流々・・・」
魯粛が、そのニンジンの一欠けらを手に取ると、
「仕上げを御覧じろ〜。」
周瑜班のメンバーの動きを見据えて・・・

ぽいっ。
ぽちゃん。

「!!!」
陸遜が言葉にならない悲鳴をあげた。
「な、なな、何してるんですか!事もあろうに公瑾さんの班の鍋に投げ込むなんて!」
「いやさぁ、あいつ料理上手いから、ちょっとくらい落ちたニンジン入っててもフォローできるって。」
「いや・・・」
「しかも皮付きときた。」
呂蒙が無意味な補足をする。
「あぁ・・・」
陸遜は、昏倒しそうになるところを堪え、
(見なかったことに・・・見なかったことに・・・。気づいてない・・・気づいてない・・・)
一人、言い聞かせ続けるのだった。

(秋刀魚・・・秋刀魚だけは私がさばかないと・・・。
あの人たちにさばかせたら、食べられるものも食べられなくなる・・・)
陸遜は、秋刀魚をさばきに取り掛かった。
幸い、甘寧らは野菜を投げ切りすることに夢中である。

「お〜、割とよさげじゃん。」
ダシ汁の中に野菜を入れて、数分。
湯気がもうもうと上がり、ひとまず食べ物らしくなってきたようだ。
「教科書には、そろそろ味噌とか七味を入れるって書いてあるが。」
「じゃあ、味噌だな。一人分いくらだ?」
「めんどい!いいや適当で。」
そういうと甘寧は、味噌を手掴みで鍋に次々と放り込み始めた。
(うわぁ・・・絶対多い・・・)
一人、調理台で秋刀魚をさばく陸遜の目にも、その光景は映った。
「したら、七味入れるよ。」
魯粛が七味唐辛子の蓋を開け、鍋のうえで振ると・・・

387 名前:那御:2003/12/20(土) 01:51
どさどさどさっ。

「あ・・・」
鍋が見る間に真っ赤に染まっていく。
中蓋が取れて、七味が一瓶、鍋の中に投入されたのだった。
「うわ〜、こりゃあ辛いぞ。」
顔は全然深刻では無い甘寧が、言う。
「あたしは辛いの平気だもん。」
「俺様も平気だが。」
「モーちゃんも大丈夫だったよね?」
「うん。」
彼女らは、調理台で顔面蒼白になっている陸遜には、全く気付かずにいる。
(あぁ・・・舌が死ぬ・・・)
陸遜は、辛いものが大の苦手だったりするのだった。

「これってさぁ・・・どっかの民族料理に近いよな。」
「インド料理だよね・・・誰がやったのよ!」
「子敬がやったんじゃん・・・」
特に深刻さを感じない三人は、ずっとこの調子である。
「そういえば秋刀魚は?」
「あれ、切ってある。残念!これも鍋に投げ込んでやろうと思ったのに・・・」
「じゃあ、教科書にある、蒲焼のタレっていうヤツを作るとするか。」
呂蒙が、教科書を片手に、
「醤油と水と砂糖で作るんだとよ。」
「砂糖醤油じゃんかよ!餅でも焼いて食うか?」
「ハハハハ!」


秋刀魚に小麦粉をつけて、ようやくひと段落、と落ち着いた陸遜だったが、
目の前にある光景を見て、再び昏倒しかけた。
あきらかに、蒲焼のタレが多い。
鍋いっぱいに蒲焼が満たしてあるのだ。
「ちょ、ちょっと・・・蒲焼って焼いてる秋刀魚にタレをかけて作るものじゃなかったですか?」
「ん?しらねぇよ。とりあえず伯言、秋刀魚貸せよ。」
甘寧は、魯粛の手から、秋刀魚の皿を奪い取ると、それを一気に鍋に放り込んだ。
「あ・・・」
秋刀魚の蒲焼は、一瞬にして秋刀魚の蒲茹でと化し、グラグラと鍋の中で茹でられていくのであった。

「ご飯どう?」
「噴いてる噴いてる!」
「火ィ止めろ!」
「え・・・、止めるんですか?」
「当たり前だろ!噴いてるんだから!」
(蒸らさない気だ・・・)
陸遜は、白飯ですらマトモに食べられないであろう、自分の不運をまた呪うのだった。

「いよ〜しっ!かんせ〜い!」
魯粛が大きく伸びをして言った。
「うわ・・・」
陸遜は、わが目を疑った。
豚汁とは思えない、燃えるように赤いスープ。野菜は粉々である。
さらに、蒲焼とは程遠い、煮物に近い秋刀魚。茹で過ぎたために、身はボソボソになってしまっている。
そして、白飯も、水を吸っていないうえ、蒸らしてもいない。かなりの覚悟が必要だろう。

「さぁ〜て、食うか!」
甘寧が音頭をとっての、食事タイム開始である。
まずは、魯粛が、豚汁入り七味スープをすする。

ずずず・・・。

「・・・うげっほ!げふん!げふん!」
むせ込んで座り込む魯粛。
「ありゃ?おい、子敬?」
「げほん!げふん!」
(うわぁ・・・魯粛さんでもああなる代物を・・・)
陸遜は、数分後に自分の身に降りかかるであろう、この惨劇を、三度呪った。

「甘寧・・・ちょっとまずかったんじゃないか?」
「でも・・・子敬が自分でやっちまったんじゃん。」
「まぁね・・・」
「じゃ〜、残りのスープを誰が飲むか、きめようぜ!」
「え!?」
甘寧は、これを飲まない気である。
(ひ、卑怯だ・・・)
「じゃあ、ジャンケンだな。」
「せ〜の、だっさなきゃ負けよ〜、さ〜いしょ〜はパー!」

・・・ぱー?

「よっしゃ!陸遜の負け!」
「やったぁ、助かった〜!」
「そ、そんなぁ・・・」
(今時、「最初はパー」で勝負してくる人間がいるとは、予想だにしなかった・・・)
「さぁ〜て、まだまだたくさんあるからな、陸遜、頼んだぜ!」
「あぁ・・・」
「ってか、俺らこれから魯粛を保健室に連れて行くから、お前一人で全部食べとけ。」
「えぇーーーーっ!!?」
「じゃ、そういうことだから。」
ピクリとも動かない魯粛を抱え、甘寧と呂蒙が走り去っていく。

「・・・そんな殺生なぁ・・・」
翌日、陸遜が喉と胃の痛みにより欠席したのは、言うまでもない・・・

388 名前:玉川雄一:2003/12/20(土) 20:49
第二作おつ。それにしてもこのメンツは動かし易いなあ(^_^;)
これまでほとんどの人が彼女らをネタにしてお話書いてません?

ただ、キャラ的にはそれぞれ上手くさばけていると思ったのですが、
甘寧までミラクル料理作りに荷担しちゃうのはいかがでしょ。
以前、『甘寧は隠れグルメ』っていうネタがあったのですが、
(今は読めないので仕方ないのですがレガッタ大会の話など)
彼女は素がああいうキャラだからこそ、
敢えて正統派に料理を追求させてみるともう一ひねりが利いたかも。

普段の活動とは違って、こと料理に関しては
暴走する魯粛と呂蒙−妙に玄人こだわりの甘寧−(相変わらず)板挟みの陸遜
といった図式もありかもしれません。

ところで、周瑜のナベに投入されたニンジン(皮付き)の行方は…?
リアルの方ともども顛末が気になるのですが(((((;゚Д゚))))

389 名前:那御:2003/12/20(土) 21:04
甘寧や魯粛には、「何をやらせても問題ない」という勝手な図式が浮かび上がっております。
雪月華様の作品の設定を、可能な限り生かしました。

>敢えて正統派に料理を追求させてみるともう一ひねりが利いたかも
そのあたりは加筆・修正を大いに希望します。
(ただしリアルでは被害者は一名)

>ニンジン(皮付き)の行方
いやだなぁw
そんなのバレていたら僕が無事にココにいられるわけ無いじゃあないですか(爆

390 名前:那御:2003/12/20(土) 22:28
てか、甘寧に対するイメージが、僕の意識の中で違ったみたいですね。
ってか、料理番を打ち殺した話のことを考慮に入れてませんでした。
反省・・・

391 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/21(日) 02:16
激しくワロタァ! 那御さまグッジョブ!
本当に悩み無さそうですな、魯粛嬢と甘寧。モーちゃんも加えて揚州の傍若無人
トリオですやね…ひたすらに悲惨な陸遜に哀悼を。
しかし、こういう連中を一瞥で大人しくさせることの出来る完璧美少女周瑜たんに
改めて憧れてみたり。描写がないぶん、異様な存在感があるのですねえ(^_^;)
皮付きニンジンどう扱うんだろう…。無様に取り乱すこともないでしょうし。

>甘寧
たしかにグルメという設定は生きてましたねえ(^_^;) ってレガッタリンク切れてる!?
岡本様の作品と言い、リンク切れ多いな…。次回で必ず復帰させます!

392 名前:7th:2003/12/21(日) 16:20
或る夏の暑い日。
「むー………」
蒼天学園の学食。そこに入るなり、何晏 は形の良い眉を顰めて唸った。
暑い。とにかく暑いのだ。
外の気温は既に35度を超している中、あろう事か食堂の冷房が壊れたというのだ。
直射日光は当たらないとはいえ、厨房の熱と大勢の人の熱がこもり、下手をすると外より暑い。
この環境下で食べるものといえば冷たいもの…素麺なんか良いかも。そう思い何晏は長蛇をなしている行列に並ぶ。
「ふっふっふ…なってないわね、何晏」
突然、後ろから聞こえた声に、何晏は振り返る。
「会長、他人の食べるものにケチを付けるのは如何なものかと思うんですけど」
会長と呼ばれた少女は腕をびしぃっ!と突き出し、人差し指で何晏を指さしていた。
彼女の名は曹叡。この学園の生徒の頂点に君臨する蒼天会長、その人である。
「甘い、甘いよ何晏。この暑い中にソーメン?栄養がないし美容に悪い。そして何より、そんなもの食べたって涼しくなんかなんないわよっ!」
夏の風物詩、素麺に対し何て事を。素麺業者の方に失礼だぞ。と何晏は思った。
「では会長は何を食べるおつもりで?まさか煮麺(にゅうめん)なんて言いませんよね」
「うどんよ。それも熱いやつ」
「………はぁ?」
何言ってんだこの女。暑さで頭がイカレたか?と半分茹だった頭で滅茶苦茶失礼な事を考える何晏。
「逆療法ってやつよ。暑い中で熱いものを食べると涼しくなるってアレね。それにソーメンよりうどんの方がカロリー低くて美容に良いのよ。何晏、あなたもうどんにしなさい。私がおごるから。」
おごると言われては是非もない。曹叡は何晏に席取りをさせ、人もまばらなうどんコーナーへと駆けていった。


………やられた。そう思わざるを得なかった。
目の前には熱々の鍋焼きうどん。てっきり、かけうどんの類だとばかり思っていたのに。
「会長、本当にコレで良いんですか?」
「もちろんよ!見なさい、貧相なソーメンと違うこのボリューム、この栄養価!」
鍋焼きうどんの上に乗っている具材を指さして曹叡は言った。野菜、カマボコ、かしわ、卵。確かに栄養価は素麺を軽くしのぐし、体にも良いのは間違いない。
しかし、しかしである。この溶岩の如く煮えたぎる鍋焼きうどん。食べて涼しくなる前に熱さでもだえ死ぬのではないだろうか。
「コレを食べれば、夏バテなんて絶対しないわ!」
ぱきぃん、と勢いよく割り箸を割り、果敢に鍋焼きうどんに挑む曹叡。
確かに夏バテはしないだろう。だがその前に熱さで…やめた。考えても埒があかない。何晏はそう判断しうどんを食べることにした。
じわじわとにじみ出る汗をハンカチで拭き、熱々のうどんをすすり込む。周囲の視線がやや気になるが、なかなか旨いものである。
何分、いや何十分経っただろうか。とにかく二人は鍋焼きうどんを完食した。
顔は汗まみれであるが、二人とも清々しい表情をしている。
何晏の顔をしげしげと覗き込んでいた曹叡が不意に言った。
「………美白」
「は?何のこと?」
「ほら、何晏の顔って白くて綺麗じゃない。それで、それが化粧か地肌かって事でもめたのよ。それを確かめる為に鍋焼きうどんを食べてもらったんだけど…。いいなぁ…美白」
「…で、会長。いくら儲けました?」
「配当8倍で4ま…っっ!」
慌てて口をふさぐ曹叡。だが時既に遅し。何晏は微笑んでいる…ただし、目は笑っていない。
「ごごご…ごめん何晏!悪気は無かったの!つい出来心っていうか………」
「良いですよ、許します。ですが、代わりに………」
びくぅっ、と身を竦める曹叡に、何晏は目に一杯の笑みを浮かべて言った。
「また、鍋焼きうどんおごって下さい。ただし、今度は冬の寒い日に」
「お安い御用よ」
安堵の笑みを浮かべ、曹叡は何晏に微笑み返した。

393 名前:7th:2003/12/21(日) 16:26
玉川様の世説新語シリーズに触発され、書いてみました。
世説新語・容止篇より、何晏と曹叡のお話です。
初SS故、至らないところも多いとは思いますが、投下させていただきます。

ちなみに上の方で言っていたSSとは別物だったり。
そっちは役職がうまく定まらなかったので後回しにしました。いずれ書き上げると思います。

394 名前:那御:2003/12/21(日) 21:44
力作乙!世説新語を上手く学三化してますね。
曹叡と何晏の、学三ならではの不思議な関係がGoodです!
てか、曹叡は曹操のキャラを受け継ぎまくりですね・・・

>何言ってんだこの女。暑さで頭がイカレたか?
何晏なら絶対考えるw

>ちなみに上の方で言っていたSSとは別物だったり。
>そっちは役職がうまく定まらなかったので後回しにしました。いずれ書き上げると思います。
期待してます!

395 名前:玉川雄一:2003/12/21(日) 22:02
むう、世説新語の完本が手元にないので元ネタを思い出せないのが恐縮ですが。
それにしてもこういうひねったネタが出るのが学三ならでは!
7thさん、初挑戦ながらなかなかやりますな( ̄ー ̄)

確かに、曹操のキャラが見えてくる曹叡がいい!
真夏の鍋焼きウドンとはまた剛毅な…
しかしトータルで見ると、何晏もなかなかいい勝負をしておる模様。
次回作を楽しみにお待ちしております。

396 名前:★ぐっこ@管理人:2003/12/21(日) 23:22
7thさまグッジョブ!
アレですね、可晏の美白っぷりに疑問を抱いた明帝が、真夏にアツアツの料理を喰わせて、
汗で流れるかどうかを観察したという…(^_^;)

何平叔美姿儀、面至白。魏明帝疑其傅粉、正夏月与熱湯餅。既ロ敢、大汗出、以朱衣自拭。色転皎然

マターリしてて、可晏たんと曹叡たん仲良さそう〜。案外おちゃめなのな、曹叡たん。さすがは
曹操の妹と言うべきか。
次回作に期待であります!

397 名前:★教授:2004/01/07(水) 00:29
 三角巾を頭に巻きつけマスクを付けて…ゴミ袋に不要な物品を放りこむ。
 ある者は箒、ある者は雑巾…力のある者は机や椅子の運び出しに粗大ゴミの撤去。
 どこにでもある学校の大掃除。それはこの蒼天学園でも同じだった。
 舞台は益州校区成都棟演劇部部室。関係者以外知る事のない季節外れの春一番が開幕していた――


■■簡雍と法正 -仲良き事は美しき哉-■■


「やー…色んな衣装があるもんだな」
 簡雍が衣装棚をごそごそと漁る。一つ手に取り、またもう一つ手に取る――先刻からこれの繰り返しだった。
「ちょっと憲和。掃除しにきてるんでしょ、衣装見てサボってる場合じゃないわよ」
 真っ白な三角巾に白衣を着こんだ法正がぽんぽんとハタキで簡雍の頭を叩く。ジャージに身を包んだ簡雍が鬱陶しそうにハタキを払いのける。
「分かってるよ、だからこうやって衣装の整理を…」
「見てるだけじゃない。それに掃除を始めて一時間、憲和は箒の一本も持ってないのよ?」
「よく見てるな…」
「総代からしっかり面倒見てやってって頼まれてるのよ」
 これ見よがしに大きな溜息を吐くと簡雍に雑巾を手渡す法正。
 当の簡雍は雑巾を渡されると頭を掻いて少しだけ眺めて、周りでダンボール箱を片付けていた女子生徒に写真を添えて渡していた。勿論、法正の見ている目の前で。
 当然、法正も黙ってるわけがなかった。簡雍の胸座を掴んでゆさゆさがくがくと揺らしはじめる。
「憲和! 何で他のコに雑巾渡すのよ! それに…今一緒に何を渡したの!」
「うぷ…やめろよー。昨晩から今朝にかけて呑み会やってたんだからー…」
 揺らされる度に青くなっていく簡雍。一瞬、法正の脳裏に1分後の凄惨な現場がちらついた。慌てて揺らす手を止めると、簡雍はふらふらと椅子に座りこんでぐったりしてしまった。酒脱人とはいえ、やはり二日酔いになるのだろう。
「もー…一体何を渡したのよぅ」
 肩を竦めて、雑巾を渡された女子生徒を見る――目が合う。と、その女子は顔を赤らめて顔を背けた。
 そのリアクションを見た法正の頭に電気が流れる。ずかずかと女子生徒に近づくと、写真を脅し取る。そして――
「け、憲和ーっ!」
 法正はコンマ何秒の世界で顔を朱色に染めると写真を放り投げ、ぐったりしてる簡雍をハタキでぺしぺし叩き始めた。
「何だろ…」
 その辺で作業をしていた他の生徒達が放り出された写真を手に取り、眺める。
「…………」
 10人前後の生徒が写真を見て、全員が同じリアクションを取っていた。
「…いや、でも法正さんだから…」
「黒下着って大人っぽいよね…ガーターだって…」
「胸なくてもこれはこれで…」
 喧喧諤諤と写真に付いての考察まで始める始末。しかし目ざとい法正がそれに気付かないわけもない。
「お前等っ! 全員でてけーっ! その写真の事を忘れなきゃヒドイ目に遭わせるからなっ!」
 ぶんぶんとハタキを振り回して女子生徒達を部室外に追い出す法正。簡雍も女子生徒達に椅子ごと運ばれて出ていった。
「はぁはぁ…憲和のヤツ、一体何処であんな写真撮ったのよ…」
 大きく息を切らしながら写真を丸めてゴミ袋に投げこむ。
「これじゃ大掃除にもならないわよ…ったく」
 深呼吸、溜息と続けると三角巾を外した。今日はもう大掃除は止めにしたらしい。汗を拭い鏡の前で髪を整える、こうしていると普通の女の子にも見えるかもしれない。
 ふと、法正の視界に簡雍が物色していた衣装棚が飛びこむ。好奇心をそそられるのか徐に近づくと衣装を手に取って眺めはじめた。
「へぇ…憲和じゃないけど本当に色々あるんだ……あ、これ…」
 一着の衣装を手にした時、法正の動きが止まる。少し考えた後、きょろきょろと辺りを警戒しながら部室の入り口に鍵を掛けた――


 約10分後――
 衣装チェック用の大きな姿見の前で自分の姿に感動している法正の姿があった。
「一度…着てみたかったんだよね…これ」
 先ほどまで怒り爆発させていた女子と同一人物とは思えない笑みを浮かべる法正、余程着てみたかったのだろう。
「女の子だったら誰でも一度は…って感じかな」
 姿見の前で軽やかに一回転。洋風の花嫁衣装…分かり易く言うとウェディングドレスの裾がふわりと浮かんだ。純白のドレスだけならまだしも、実は唇に薄紅を引いたりと化粧まで周到だった。
 一人、鏡の前で悦に浸る法正。しかし、シンデレラに制限時間は付き物だった。
「何や…鍵かかっとるわ…」
 部室のドアがガタガタと動くと同時に、外から関西弁が飛び込んできたのだ。一瞬にして青褪める法正。
「やば…総代が…」
 慌ててドレスを脱ごうとする法正、しかし焦る気持ちが手に正確な情報を伝えない。
「総代、法正はもう帰ったのかもしれませんぞ?」
「んー…そうかもなぁ…」
 ぼそぼそと聞こえてくる諸葛亮と劉備の会話が余計に法正の心をかき乱す。自分で蒔いた種とは言え、こんな姿は見られたくない――泣きそうになりながらドレスを脱ごうと必死になる。
「まぁ、でも鍵もあるさかいに…一応チェックだけはしとこ」
「そうですな。では…」
 絶体絶命の窮地に立たされる、例えるなら一人分にも満たない足場の断崖絶壁で強風が吹き荒れる――そんな所だろう。法正はじたばたしながら脳をフル回転させた。
 そして――部室のドアが開き劉備と諸葛亮が姿を見せた。
「なーんや…誰もおらん。法正、やっぱり帰っとるわ」
 制服の上からエプロンを着こみ、ハリセン代わりの箒を持った劉備は広くはない部室を見渡すと踵を返した。
「ふむ…仕方ありませんな。この部屋の掃除は明日にでもやらせますか」
 白羽扇の代わりにちりとりを扇ぎながら劉備に続いて部室から出ていく。
 長い沈黙。静かでゆっくりとした時間が流れる。その静寂を破ったのはロッカーが開く音だった。緩々と開くロッカーの中から法正が出てきたからだ。
「あ、危なかった…」
 冷や汗を流しながら安堵の息を漏らす。と、次の瞬間――
「いただき」
「え? うわっ!」
 強烈な閃光、その向こう側に簡雍が立っていた。正にお約束。
「け、憲和…何でいるの?」
 カクカクと口を動かす法正。フラッシュの眩しさ云々よりも簡雍がこの場にいる事の方がショックだったようだ。
「玄徳と一緒に入ってきてたんだよ。何かあるな〜って思って待機してたら…へぇ〜」
 にやにや笑いながらウェディングドレス姿の法正を上から下まで眺める簡雍。法正はただ頬を染めて後ろを向くしかなかった。と、ある重要事項に気付いた。
「憲和!」
「な、何だよ…急に」
「そのカメラ寄越せ!」
「わわっ! やめろって!」
 飛び掛かる様に簡雍に襲いかかる法正。無論、カメラを奪う事が目的だ。
 しかし、簡雍も折角のスクープを無に帰す訳にはいかないから抵抗する。お互いに体力、筋力は似たり寄ったりの性能なので一進一退の攻防になっていた。しかもかなりの低レベル。
 やがて、簡雍が疲れ気味の法正の隙を突いて押し倒してマウントポジションを取る事に成功。
「へへー…観念しろい」
「く、くやしーっ!」
 勝ち誇る簡雍に本気で悔しがる法正。
「さーて…どうしてくれようかな?」
「な、何よ…」
 意味深な動きで法正を翻弄する簡雍。まだ酔ってるのだろうか。
 その時だった、部室のドアが開いたのは――
「憲和〜。鍵渡すの忘れ…て…?」
 劉備が苦笑いしながら入ってきて…凍った。同時に法正も凍っていた。きょとんとしているのは簡雍一人だけだった。
「な、何してんのや…?」
 劉備から見れば『簡雍が法正を押し倒して襲ってる』ようにしか見えない。堅い笑みを浮かべながら劉備が尋ねる。
「いや、見ての通り…私が法正を…」
 簡雍が普通に答える。しかし、冷静さは時に悲劇を招く事もある。
「あ、アンタら…そんなイケナイ関係はあかんって! 同人だけにしときや!」
「は、はぁ? ち、ちょっと…玄徳! それは誤解…」
 ここで初めて簡雍が動揺し始めたが、時既に遅し。劉備は猛烈な速度で部室を後にしていた。
 マウントポジションのまま呆然とする簡雍と法正。我に返ったのはほぼ同時だった。
「ど、どーすんだよ! 玄徳のヤツ誤解したまま行っちまったぞ!」
「知らないわよ! 憲和が押し倒したりなんてするからこんな事になったんじゃない!」
「法正が襲い掛かってこなかったらこんな事にもならなかったんだよ!」
「私のせい!? 有り得ないよ!」
 そのままの体勢でぎゃーぎゃー喚き散らす二人。
 この口喧嘩の果てに得たものは大勢のギャラリーと二人に関するちょっと危ない噂だった――


 数日後の夜――
 簡雍と法正は劉備の部屋で弁解をしていた。
「そやから、二人が怪しい関係なんやっちゅー事は衆知の事実で…」
「違うって言ってるだろ! 玄徳は説明聞いてたのかよ!」
「そうですよ! 私が総代に嘘を吐くように見えますか!?」
 二人して劉備に迫る。ちょっと恐くなってるので一歩後退する。
「そんな二人して真剣やと…余計に怪しいわ…」
 苦笑いしながら二人を逆撫で。
「「そんな事はない!」」
 簡雍と法正の声が重なると、今度は矛先が互いに向き合った。
「大体、憲和が余計なマネしなきゃこんな事にはならなかったの!」
「だーかーらー! 法正が襲いかかってこなきゃ在らぬ噂をかきたてられる事もなかったんだよ!」
 弁解は何処吹く風、二人で責任転嫁を繰り広げ肥えた話術で戦闘している。こちらは高レベルな争いだ。この隙に劉備はいそいそと部屋から脱出した。ドアをゆっくり閉めて溜息を吐く。
「ふー…何やかんや言うても…あの二人、仲ええんよな…」
 苦笑いを浮かべると論争巻き起こる自室を後にした。
 それから数十分後、二人が疲れた顔をして出てくる。
「…コンビニ行く」
「私も…割引チケットあるから…使う?」
「使う…」
「じゃ、行こ…」
 簡雍と法正の微妙に和やかな光景。劉備の言う通り、本当は仲がいいのかもしれない。
 その答えは彼女達しか知らない。

「肉まん美味しいね…」
「うん…美味しい…。あ、これ法正の分のコーヒー…奢りだよ」
「ありがと…」

 コンビニ前の二人、白い息は風に吹かれて儚く消える。
 薄暗い外灯の光が缶コーヒーを持った二人に降り注ぐ。
 この御話はここで終幕。でも二人の舞台はこれで終幕ではない。
 脚本も観客もいない御話。続きが語られるのは、また別の機会――
 

398 名前:★教授:2004/01/07(水) 00:34
復帰一発目に目に悪いものを投下した事を深くお詫び申し上げます。
嗚呼、もっと文章力が欲しい…発想力も…。
ホントはXデー(1/18)用だったんですけども…別ネタが浮かんだので投下。何て安直なんだろう…(凹)
まあ、存在表明みたいな感じになればいいかと思いますし…ここ最近の参加者様に『こんな変な生き物いたんだ…』って認識してもらえれば幸いです。

399 名前:那御:2004/01/07(水) 00:56
直接教授様とお会いするのはお初でしょうか、那御と言いますデス。
過去の作品を読ませていただき、簡雍らに萌えまくったわけですが、、
いやはや、今回もこのお二人というわけで、
大掃除の時に、物を触るだけで仕事しないヒトは、どこにでもいるもんですw
2人の友情が、末永く続きますように・・・(何

400 名前:★惟新:2004/01/07(水) 09:34
教授様キタキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
いやもう待ちに待ってましたって(;´Д`)
泣きそうになりながらドレスを脱ごうともがく法正とか
自爆して動揺したり誤解を解こうと必死になったりする簡雍とか(;´Д`)ハァハァ
んでもってそんな二人の仲をしっかり見抜いている劉備の深さにも(;´Д`)ハァハァ

そのうえXデー用に別ネタが!? これは楽しみに待つしかあるまいて!

401 名前:★玉川雄一:2004/01/07(水) 19:37
憲×孝スペシャルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
マウントポジションハァハァ……でなくて!
ええなあ…これでこそ学三ですわ。
なにげに、メインキャラだけじゃなくてモブ女生徒が出てるのもポイント。
でも、アレ例のセクスィ写真(絵板の旭絵)ですよね…
流出しちゃったらそれこそえらい事ですよ?


さあ、ここでドレス着用版法正を描く猛者はおらぬか!?

402 名前:アサハル:2004/01/07(水) 23:30
(゚Д゚)…

コソーリ(,,・∀・)つ http://fw-rise.sub.jp/tplts/dress.jpg target=_blank>http://fw-rise.sub.jp/tplts/dress.jpg

403 名前:玉川雄一:2004/01/07(水) 23:54
          - - - -=二三⌒ヽ >>402
      - - - - - - -=二三 ´_ゝ`)
        - - - - -=二三_  /  すいません、全速力で通りつつその法正タンをいただきますよ…
⌒;   - - - - -=二三(__   ヽ
)⌒);   - - - -=二三ミ/  ̄彡
  )⌒), , - - -=二三〃 -=二彳

404 名前:那御:2004/01/08(木) 00:08
キタァ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ダメダメダメダメ!討ち取られる!(廃人化)

>>403
一足・・・遅かったようですねw
ならば奪い取るまでッ!(←真性バカ)

405 名前:★惟新:2004/01/08(木) 00:49
さて…無双3諸葛亮伝のごとく、我ら求婚者たちは
コブシで語り合わねばならないようですね…(コキッコキッ

ああもうタマランですよ! らびゅーんですよ!(;´Д`)
おねだりされた玉川様もグッジョブ!
ドレスのデザインも素敵ですねぇ…
私もいつの日か愛しい人にこのようなドレスを着せたいもの…(;´Д`)

406 名前:雪月華:2004/01/12(月) 04:16
草原の小さな恋

 緑色に波打つ午後の草原を、甘ささえ含んだ梅雨明けの風が吹き抜けてゆく。
 7月初頭。午後三時過ぎ。幽州校区と并州校区の境目付近の草原は、輝くような優しい日差しに包まれていた。
 こんもりと盛り上がった丘の上に一本だけ立っている、常緑樹の生い茂った枝葉が作り出す陰に、長ラン・サラシ・高下駄・目深にかぶった破れ学帽に身を包んだ、身長2メートルオーバー・超筋肉質の大男が寝転んでいた。荒削りで精悍そうな顔つきであり、いかにも時代遅れの番長といった貫禄を漂わせている。木の傍には、かなり使い込まれた750tの単車が駐められていた。
 丘から二百メートルほど離れた場所には幾つかの水田が区切られており、并州、幽州の園芸部員数人が、合同で水質調査や雑草の駆除などを行っている。
 草を踏む音が近づいてきて、それが大男の頭上付近で止まった。大男がめんどくさそうに重いまぶたを開けると、そこには見知った顔が、大男の顔をのぞきこんでいた。
「ヒマヒマ星人、みーっけ」
「ち…オメーか、丁原」
 迷惑が五割、安堵が五割といった表情と声で、大男…烏丸高校総番である丘力居は舌打ちした。
「隣、いい?」
「勝手にしろ」
 丘力居の返事も半ばというところで、もう丁原は腰を下ろしている。丘力居も、めんどくさそうに上半身を起こし、そのまましばらく、二人は無言で水田のほうを眺めていた。
「一ヶ月ぶり…か?」
「そだね。黄巾事件の前に会ったきりだから」
 水田のほうを見やったまま、丘力居が短く問い、丁原が応じた。
 烏丸高の丘力居と蒼天学園の丁原は、もう一年ちかくの付き合いになる。少なくとも、恋人ではないと丘力居は言う。一年前、好奇心から、放課後ひとりで蒼天学園に侵入し、昼寝を楽しんでいた丘力居を発見したのが、巡察中の丁原の一隊であった。
 当然のことながら、丁原は退去を命令する。性格から言って、丘力居が応じるはずが無い。命令が反論を招き、それが口論に発展し、実力行使が用いられるまでに30秒とかからなかった。
 激闘は10分近く続き、それ以来、お互いを認め合い『強敵』と書いて『とも』と読む間柄となったのである。
 不意に丁原が、丘力居の顔を覗き込んだ。
「随分とシケた顔してるね?悩みでもあるの?」
「オメーにゃ関係ねえよ」
 そっけなく丘力居が応じたが、丁原はなおも食い下がる。
「やっぱりあるんだ。なに?なに?お姉さんに話してみ?」
「…ち、まあいいか。猫や犬に相談すんのは、もう沢山だからな。少なくともオメーは人間だし」
「なんか、シャクに触る言い方ね」
「気のせいだろ」
 相変わらず水田のほうに目をやりながら、丘力居が悩みとやらを打ち明け始めた。
「先週、そこの水田に農業指導に来てる人に一目惚れしちまってな…寝ても覚めても、あの人の顔が目に焼きついて離れねーんだ」
「…へえ。朴念仁のアンタが恋をねえ。こりゃあ聖母マリアさまの処女懐妊以来の大事件だよ、で、その人って誰?」
「名前までは知らん。その日以来、ほとんど毎日ここで張ってるんだけどな…」
「写真とかある?」
 これだ、といって、丘力居は胸ポケットから安物の定期入れを取り出した。それに収められた写真の中では、柔らかく後ろで三つ編みにされた豊かな髪を揺らしながら、クリップボードを持った長身の少女が、このあたりの風景と似たような草原をバックに微笑んでいる。
「…この写真、随分とアップで撮ったみたいだけど、どうやって撮ったの?」
「…撮ったわけじゃねえ。なんせ俺は、使い捨てカメラすら上手く扱えねえからな。ここの生徒から買ったんだよ」
「幾らで?誰から?」
「…二万だ。ヨレヨレの制服で、耿雍って名乗ってたな。3日くらい前、いきなり話し掛けてきて、いい写真があるから買わないかって…」
「…アンタ馬鹿でしょ」
「そんだけの価値はあるさ。いいか、俺はオメーみてえな、口より早く手が動くような暴力女には、憧れって奴を感じねーんだ…!」
 言い終わった瞬間、その巨体に似合わぬ敏捷さで、丘力居は飛びのいていた。コンマ一秒前まで丘力居の鼻のあった部分を、丁原の裏拳がマッハで通り過ぎている。
「いい度胸してるわねえ?かかってきなよ、純情君?」
「いわれるまでもねえっ!」
 言い終えるなり、丘力居は丁原に掴みかかっていった。

 …3秒後。

「あだだだだだだ!放せ!折れる、折れるって!」
「まいった?」
「ま、まいった!俺が悪かった!」
 実にあっさりと丁原にサブミッションをかけられ、右の肘と肩、手首を同時に極められて、丘力居は情けない悲鳴をあげた。
 一年近くの付き合いのうちに、幾度もド突きあいを演じているが、初手合わせ依頼、未だに丘力居は丁原に勝てないでいる。膂力や体格でははるかに勝っているものの、戦闘技術では遠く及んでいないのである。
「これでアタイの21連勝っと。いつになったら、アンタはアタイに勝てるようになるのかしらね?」
「…ってて。いいか、俺は、オメーがいちおう女だから手加減してやってんだからな。それを忘れんなよ」
「それがホントならいいんだけどねぇ?」
 右腕をさすりつつ、丘力居は憎まれ口を叩く丁原の傍に座りなおした。定期入れも返してもらい、そのまましばらく、二人は初夏の心地よい風に身を任せていた。
「…セッティング、したげようか?」
「あん?」
 唐突に、丁原が思いがけない事を言った。
「実はさ、その人のこと、満更知らない訳でもないのよ。で、アンタさえ良ければ…ね」
 そういう丁原は、どこと無く淋しそうな気配を漂わせていた。当然、そんなことに気付かず、考え込んでいた丘力居が、ようやく口を開いた。
「…そこまでしてもらう必要はねーよ」
「アタイが信用できないっての?」
「そうじゃねえ。あの人と俺とに間に縁ってものがありゃ、また会えるさ。そしてそん時、俺は…」
「俺は?」
「…真正面から」
「真正面から?」
 一旦言葉を切った丘力居が、うつむき、両手を握り締め、やっとのことで声を絞り出した。
「交際を申し込む」
 沈黙した二人の間を、夏の風が吹き抜けていった。しばらくして、丁原があきれたように、溜息をついた。
「でかいガタイに、ド凶悪な面構えの割には、やろうとしていることは、妙にプラトニックね。どうせなら掻っ攫ってきて、無理矢理キスとかしちゃえばいいのに」
「バ、バ、バ、バカ野郎!俺ぁ仁と愛に生きる正義の番長だぞ!あの人に対して、そんな下衆で破廉恥なマネができるわけねえだろうが!」
「冗談よ。なにをバカみたいに慌ててんのさ」
 二人の眼下では、一連の仕事を終えた園芸部員達が、撤収を始めていた。それを見た丘力居が、ひとつ伸びをすると腰を上げた。
「さて、もう帰るか。どうやらあの人は今日も来ねえみてーだからな。じゃ、またな、丁原」
「あ、待って」
 慌てて立ち上がった丁原が、丘力居を手招きした。2mを超える巨体の丘力居と、150cmあるかないかの小柄な丁原が並ぶと、まるで熊と猫が並んでいるかのように見える。
「ちょっと耳貸して」
「なんだよ」
 両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、丘力居が丁原の傍に立った瞬間、丁原の右拳が、完全に油断していた丘力居の鳩尾にめり込んでいた。
「ぐお…!?」
「なんで…なんで気付いてくれないのさ!この…」
 強烈なボディブローを食らって、丘力居は体を「く」の字に曲げ、顎がちょうどいい位置まで下がった。丁原が右拳を、再び後ろに引いた。その両目に涙がたまっているのが、暗くなりかけた丘力居の視界に入った。
「鈍感やろ──────っ!」
 地面を擦るように繰り出された、力石式アッパーカットが、爽快な音を立てて、丘力居の顎に炸裂した。
 ……
 …
 
 午後6時。既に草原は茜色に染まっている。心なしか、吹き渡る風も冷たさをはらみ始めているようだった。
 丘の麓で大の字になってのびていた丘力居が、ようやく目を醒ました。あたりに人影は既に無く、強烈な打撃を受けた顎と鳩尾がずきずき痛むだけであった。
「ってぇ…あの野郎…しっかりヒネリまで加えやがって…」
 顎をさすりながら上半身を起こした時、かさり、と音を立てて、胸の上に置かれていた封筒と、重石として乗せられていた小石が滑り落ちた。どこにでも売っている無地の封筒で、中に紙のようなものが入っているようだった。少々躊躇った後、丘力居は封筒から手紙を取り出した。鞄の上で書いたらしく、ミミズが這ったように字が乱れている。

『丘力きょへ
 たん刀ちょく入にいえば、アタイはあしたから、らくようとうへ、てん校します
 (えいてんだって!ワーイ\(^O^)/。でも、えいてんってどういういみ?(゜_。)? )
 今年ど中には、もう会えないと思いますが、お元気で
                                    丁原』

 読み終わった丘力居の顔に、ほろ苦い微笑が浮かんだ。
「…ち、あの野郎。最後ってんならもうちょっと素直になりゃあいいものを…、ま、ああやって意地を張り合うのが、あいつの持ち味だったんだけどな……ん?続きがあるな」

『ついしん
 アンタの思い人は劉虞さんといって、ゆう州校区総代として、けい棟に通っています。
 おとなしいおじょうさまだから、いじめちゃだめだよ。せいぜいお幸せにね(^o^)/~~~~~』

「劉虞さん…か。そこはかとなく、まろやかさを感じる名前だぜ…サンキュな、丁原」
 丘力居は手紙を封筒に戻すと、上着の内ポケットに大事に仕舞いこんだ。そして丁原がいるであろう、南のほうに向きなおり、学帽のつばを指で弾いた。
「…劉虞さんとは、意地でも幸せになってやるさ。じゃあ、あばよ丁原。オメーは俺の最高の…ダチ公だったぜ」
 そう呟くと、丘力居は丘の上に停めてある単車に向かって歩き出した。
 ひとつの恋が、おたがいの綺麗な思い出となって終わり、もうひとつの恋がこの草原で始まろうとしていた。
 茜色に波打つ夕暮れの草原を、甘ささえ含んだ梅雨明けの風が吹き抜けていった。

 −完−
 
 …その夜、中央女子寮705号室の、皇甫嵩&朱儁の部屋では、酒盛りが始まっていた…
皇「それでは!建陽の洛陽棟着任を祝って…乾杯!」
朱「かんぱーい!」
盧「乾杯」
丁「……かんぱい…クスン」
皇「そうそう、建陽。失恋おめでとう!いや、めでたい!」
朱「なんだかよくわかんないけど、おめでとう」
盧「おめでとう、建ちゃん」
丁「うわーん!しーちゃんまでひどいー!みんな嫌いだーっ!!」
 翌日、三日酔いの丁原は、洛陽棟への転棟初日に3時間の遅刻をしてしまったらしい。

407 名前:雪月華:2004/01/12(月) 04:30
リハビリ代わりに、呂布がらみ以外では今ひとつ目立っていない、丁原ちゃんのストーリーを書いてみました。
学園正史、項翔様の「秋風は遠く」から、丘力居君を友情出演させています。無断借用スマソ。
張純と組んだ丘力居が、青、幽、冀、徐州を荒らしまわったという記述があり、
ハテ、并州は?と思ったところから思いついたストーリーでして…
丁原スレに投下しようと思ったのですが、少々長いのでやはりこちらに。

さて、今回の作品は旭祭のレギュレーション「一月十八日限定シチュ」には外れてますが…
実はもう一本、長湖さんがらみのストーリーを構想しています。
そっちはレギュレーションに合わせるつもりです。構築次第では19日あたりに投下できるやもしれません。

>ドレス法正
>>402→◆⊂( ゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡≡≡ ズザー
ゲット!

408 名前:★ぐっこ@管理人:2004/01/12(月) 17:02
>>397
(;´Д`)ハァハァ…! 法正たんも女の子ってことか!
やはり衣装合わせは基本ですかにゃ!可愛いっ!
そして珍しく動揺する簡雍たん(;´Д`) 何だかんだいって彼女も可愛いところ
あるじゃないか…。

>>43>>407

  _           __  __           〉    待
  l  l  ロロ     l l l l          〈    て
  l  \         l__l l__l /7        〉   い
  |  |\l  l`ヽー―/ \ / /       〈
  l_l    l        /_/         ∨∨∨∨
        l           \        
       l            \      
        l                  \    
       人 <●> <●>  /\ \ 
      / /ヽ、  、_---_,     /l  \ ヽ        /
     / /   \_ `ー' _/ l    l  l       /
    / /       ̄`ー'ヽi \l    し'      ,-^
    し'                     _-‐' ̄
ー―、____          _,-―――'
          `ー――' ̄ ̄ ̄

>>402は、お前たちには早すぎる!一時私が預かろう!

>>406
雪月華さまグッジョブ!
丁原たんの、何とも無骨でほほえましい恋愛未満物語…
サリゲに簡雍たん出てる(^_^;)
楼班の兄貴・丘力居と、その舎弟のトウ頓のトリオ、コイツらなかなか面白い
キャラですし…。いずれきちんと舞台を与えてあげたいですねえ…。
っていうか演義の一話で出すか出さないか…
そして来るべき旭祭に向けて期待をさせていただく。

409 名前:★玉川雄一:2004/01/12(月) 17:33
くっ… この勝負、やはりコブシでつけねばなるまい!
ジャンケンのことだが。


               -― ̄ ̄ ` ―--  _          
          , ´  ......... . .   ,   ~  ̄" ー _
        _/...........::::::::::::::::: : : :/ ,r:::::::::::.:::::::::.:: :::.........` 、
       , ´ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::: : ,ヘ ::::::::::::::::::::::: : ヽ
    ,/:::;;;;;;;| : ::::::::::::::::::::::::::::::/ /::::::::::::::::::: ● ::::::::::::::::: : : :,/ ←敗れ去った>>408
   と,-‐ ´ ̄: ::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::r(:::::::::`'::::::::::::::::::::::く
  (´__  : : :;;:::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::`(::::::::: ,ヘ:::::::::::::::::::::: ヽ
       ̄ ̄`ヾ_::::::::::::::::::::::し ::::::::::::::::::::::: : ●::::::::::::::::::::::: : : :_>
          ,_  \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: `' __:::::::::-‐ ´
        (__  ̄~" __ , --‐一~ ̄ ̄ ̄


>>406
丁原のメールがソレっぽくてカワイイ!
耿雍(旧姓)も昔ッから手広くやってたもんですねえ。でも地元の方なのか。
丁原と丘力居、互いにキャラは異なるけど
どちらも素直になれないもどかしさが堪らんですたい。

410 名前:7th:2004/01/12(月) 18:42
>教授様
教授様の書かれる簡雍と法正はやっぱ良いですわ。
そういえば祭りの発端のSSを書かれたのも教授様でしたしね。

ぬう、>>402が欲しくば儂を倒してから征けぃ!(速攻でやられそうだが)

>雪月華様
確かにあの4人の中で一番男と接触する機会があるのは丁原ですよね。
殴り合いから生まれる恋心…丁原らしいですね。
あと簡雍、アンタはそんなトコにまで進出しとったんかい!

記念日のSS書いてて大ポカ発見しました。
『旭記念日』のSSじゃねぇ!…どーしましょう?

411 名前:那御:2004/01/12(月) 21:41
>>406
雪月華様グッジョブです!
併州校区で繰り広げられる、素朴過ぎる恋物語。
本心を言わずしての別れ・・・切ないですね、丁原。。

412 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:50
よし!こっちでも祭りだ!
いくぞ!!

413 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:52
「か〜ん〜よ〜う〜、あんたもうちょっとシャキッとしなさいよ!」
「………何で?」
だらしなくテーブルに突っ伏していた簡雍に法正が抗議の声をあげる。
髪はくしゃくしゃになり、服はヨレヨレ。おまけにテーブルの周りには酒瓶が何本か転がっている。
「んも〜、よく見れば素は悪くないんだからもっとこう……」
「へいへい…」
法正が説教をたれ、簡雍が生返事をする。彼女たちにとってはごくありふれた光景である。
「う〜ん、そうよね。素は悪くない、そうなのよ、うん。」
「もしも〜し」
何やら自分の発言に思うところを見つけた法正。既にインナーワールドへとトリップし始めている。
「そうよ、もっとしっかり着飾らせればいい感じになるわね」
「…孝直?」
「先ずはその安っぽい髪留めを外して、そんでもって服を………」
「…いや〜な予感が…」
本能的に身の危険を感じてその場を逃げ出そうとする簡雍。誰だって自分の身は可愛い。
「んじゃ、あっしはこれで」
「ま・ち・な・さ・い」
こそこそと逃げ出す簡雍の襟首をぐわしっ、と掴む法正。その目は獲物を狙う猛獣の目をしていた。
猫を持つように簡雍をひっ掴んで自分の前に座らせると、法正はおもむろに口を開いた。
「というわけでここに『第一次簡雍改造計画』の開始を宣言します!」


 〜〜簡雍改造計画〜〜


何が「というわけ」なのか。しかも改造計画!?本人の意思は関係ありませんか。…ありません?そうですか。そうですか。
……冗談ではない。
何でそんな事されないといけないんだ。他人のオモチャになるのは御免被る。
日頃の自分の行いを棚に上げて、かなり身勝手な事を考える簡雍。そんな懊悩はお構いなしに法正は携帯電話に手をかけた。
「みんなにも知らせておかないと。楽しいことは大勢でしろ、ってね」
法正がボタンをプッシュし始めたその瞬間、信じられないような瞬発力で、まさに脱兎の如く簡雍は逃げ出した。法正がそれに気付くより速くドアを通り抜け、愛用のキックボードに乗り、疾風の如く去って行く簡雍。
「ふ…ふっふっふ……イイ度胸してるじゃない」
不適な笑みを浮かべ、今し方かけようとした番号とは違う番号をプッシュする法正。数回の呼び出し音の後、電話は取られた。
「もしもし、部長ですか?法正です。大至急、手の空いてる人全員に召集をかけて下さい!」
「何や、随分と唐突やな。何やらかす気や?」
「大捕物です。詳しくは後で説明しましょう」
かくて前代未聞、帰宅部連合全てを巻き込んだ大捕物の幕が切って落とされた…。



かんかん照りの太陽の下、簡雍は独り道を歩いていた。
どうせ何時もの法正の気まぐれだ。ほとぼりが冷めるまでぶらぶらしていよう。
…それにしても暑い。既に外気は35℃を越えている。何処か涼める所はないだろうか、そう思い辺りを見渡す。…ふと目に付いた喫茶店。丁度良かった。思い立ったが早いか、手で押していたキックボードを店の前に停めて、簡雍は喫茶店のドアを開けた。

カランカラン、とドアに付いたベルが鳴る。と同時に店内の空気がひんやりと肌をなでる。
簡雍はカウンターでアイスコーヒーを注文した後で、クーラーの風が最もよくあたるポジションを確保して座った。
そして改めて店内を見渡す。しっとりと落ち着いた店内に、ゆったりと優雅なクラシック音楽が流れている。そして照明は目に悪くない程度に薄暗く、気分を落ち着かせてくれる。
良い店だった。学園都市という性質上、喫茶店、またはそれに類する店が多数存在するこの中華市において、簡雍が知る限りでも五指に入るであろう。
注文したアイスコーヒーが簡雍の前に運ばれてくる。それにストローをさし、口を付けようとして――――硬直した。
一瞬前まで只の客だった少女達が揃って簡雍を囲み、彼女に銃口を向けていた。
「簡雍さん、ですね?」
その内の一人が簡雍に問う。その全身から放たれる、殺気にも似た圧迫感。下手に答えようものなら即座に撃たれかねない。そう判断し、簡雍は素直に肯いた。
「説明を要するわね。いったい何事?」
「部長命令です。詳しくは後で法正さんに聞いて下さい」
法正、その一言で理解した。
つまり、意地でも着せ替えをさせたい、そういうことか。
…それだけでこんな大事にするか普通?しかも部長命令。劉備がからんでいるということは、捕まったら間違いなくさらし者だ。意地でも捕まるわけにはいかない。
席を立とうとする簡雍。それに合わせて上へあげられる銃口。
簡雍が立ちきったと思ったその瞬間、その姿がまるで手品のようにかき消える。
椅子から滑り落ちるように足下へと転がった簡雍は、そのまま転がり出るように店を出る。
「お客さん、勘定」
「帰宅部の法正にツケといて!」
「了解した」
こともなげに他人のツケにしていく簡雍。それにあっさりと答えるマスター。……いいのかそれで。
後ろから数人が走って追いかけてくるが、キックボードに追いつけるはずもない。ぐんぐんと距離は離れてゆく。
「くそっ、逃がすな!」
叫びはすれども足は動かず。追跡を諦めようとした彼女たちの後ろから、不意に声がかけられる。
「苦戦しているようね。まぁ見てなさい」
その声の主はクラウチングスタートの姿勢をとると、一気に駆けだした。



「待ちなさーい!」
簡雍の後方よりかけられる声。ありえない、さっきの連中は振りきったはずだ。大体、そこらの一般生徒が本気を出した簡雍のキックボードに走って追いつけるはずがない。
「待ちなさいってば!!」
声は遠ざかるどころかさらに近づいてくる。いったい何者か!?と訝しんだ簡雍は後ろを振り向いた。
「あーもう、待ちなさいって言ってるでしょう!!」
赤い髪に虎の髪留め。そして陸上部のジャージ。
「ばっ、馬超!?」
帰宅部連合、いや学園きってのスプリンター、馬超が鬼のような形相で簡雍を追いかけていた。
あわてて地面を蹴る力を強める簡雍。それによりキックボードはスピードアップするも、馬超との距離は依然として離れない。むしろ逆に縮まっている。
馬超はタイミングを見計らうや、一気に簡雍の横に躍り出た。かつて曹操を追いつめた健脚は、帰宅部入りを果たした今なお健在である。
「さーて、もう逃げられないわよ。大人しく捕まりなさい」
「くっ…さすが馬超ね。『錦』の二つ名は伊達じゃない…か。だけど!」
前輪を浮かせ、後輪のみで急ターンする簡雍。その向かう先は階段。
「こんな所で捕まってたまるかー!!」
キックボードのノーズを持ち上げ、階段の手摺りに引っかける。そして90°回転。ボードの腹を手摺りに乗せてそのまま滑りおりていく。金属の擦れ合う音と火花を撒き散らしながら最下段に到達するや、そのままの勢いでジャンプ!空中で両足をキックボードの上に乗せ、そのまま着地し、何事もなかったかのように走り去っていく簡雍。
「あーっ!それインチキよー!!」
階段の上で馬超が何か叫んでいるが簡雍には聞こえていない。追われる者は常に余裕がないのだ。



「待ちなさい。ここから先へは行かせません」
「んげっ、姐さん方」
曲がり角を曲がった簡雍の前に立ちはだかったのは黄忠と厳顔。両人とも胴着に黒袴、そして弓を携えての出で立ち。明らかに本気である。
「てか何で姐さん達まで出て来るんですか!?」
「それは……」
「……ねぇ」
顔を見合わせる黄忠と厳顔。
『一度見てみたいからに決まってるでしょう!』
…一番聞きたくなかった答えだった。しかも二人してハモって言わなくても…。
「一つ言わせて貰って良いですか?」
「ん?なにかしら。最期の一言くらいは聞いてあげるわよ」
「…いいトシしてそういう趣味はどうかなー、と」
………プチーン。
何かが切れた音。実際にはそんな音はしていないのだが、簡雍は確かに聞いた。
『ふ、うふふふふふふふふふふふふふふふ』
黄忠と厳願は笑っている。否、嗤っている。
その表情はまさに悪鬼羅刹の如く。額には血管が浮き、頭からは角が生え、躯からは陽炎のように謎のオーラが立ち上っている……ように簡雍には見えている。
「どうやら」
「お仕置きが必要のようね」
予備動作無しで弓を引き、マシンガンの如く次々と矢を射掛けてくる二人。
鏃の部分をゴムに替えてあるとはいえ、当たればシャレにならないほど痛い。ましてやこの二人の弓はかなり強い。その威力、推して知るべし。
「ち、ちょっとタンマ!待った!ストーップ!!」
文字通りの矢の雨を潜り抜け、簡雍は一目散に逃げ出した。



人を斬る風だった。
とっさに飛び退った簡雍の目の前を、風を切る音と共に白刃が通過する。はらり、と前髪が数ミリ、頬を伝って落ちた。
「ち、趙雲……真剣は反則……」
「何を今更」
随分と物騒なことを趙雲はあっさりと言ってのける。
「銃刀法などこの学園では無意味でしょう?」
「イヤそれ絶対違うから」
誓って言うが、この学園内が治外法権などということは絶対にない。……多分。
「大体何でアンタまでっ!(割と)良識派だと思っていたのにっ!」
「だって…アトさんが見たいって言うから」
……あきれたを通り越してもう馬鹿馬鹿しいの領域である。そんな理由で命狙われるなんてたまったモンじゃない。
「趙雲、アンタもっと行動に主体性を持った方がイイよ」
「そう…ですか?」
「アトちゃんが可愛いのは解るけどさ、それだけじゃなくてもっと自分のことを考えてみたらどう?」
「でも、そしたらアトさんが」
「アンタが何でもしてたらアトちゃんは成長しないよ?それにアンタだって何時かは卒業する。何時だってアトちゃんの側に居られる訳じゃないんだからさ」
「そう……ですよね」
「アンタはもっと自己中心的になってもいいの。きっとその方がアンタのためになるよ。これ、先輩からの忠告。覚えときなさい」
「はい、ありがとうございました」
深々とお辞儀をして去っていく趙雲。彼女が見えなくなった後、簡雍は大きく安堵のため息をついた。
「いやー、まさかアレで何とかなるとはね」
当然、先ほどの言葉は口から出任せである。
「うん、なかなか真に迫った演技だったかも。アカデミー賞ものだね」
命がけでやれば何とかなる、ということの好例だろうか。尤もこの場合、比喩表現ではなくホントに命がかかっていたのだが。
「さて、このまま逃げているのも疲れるし…どっかに隠れようかな」
脳内の簡雍データベースから当該箇所を見つけると、そこに向かって簡雍はキックボードを走らせはじめた。

414 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:53
荊州校区と益州校区のちょうど境界に一つの建物が建っている。
「いや〜助かったよタマちゃん」
「いえ、大したことはありませんよ」
簡雍の言葉に、タマちゃんと呼ばれた少女が返事する。
彼女の名は劉璋、あだ名は季玉。故に簡雍はタマちゃんと呼んでいる。前益州校区総代であった彼女は、総代の座を劉備に譲り渡してから、この建物でまったりしていることが多い。ご多分に漏れず、この日も彼女はここにいた。
「大変だったようですね。…お茶でも淹れましょうか?」
「あ、いいねぇ。お願い」
喫茶店でコーヒーを飲みそびれたことを思い出し、簡雍は肯いた。
お茶を淹れに席を立つ劉璋。それを見送る簡雍。
ふと窓の外を見つめる。その目が捉えたのは違和感。
良く目を凝らして物陰を見遣る。そこにあったのはかすかな人の影。
気付かれたか?いや、それにしては早過ぎる。
5分ほどそうしていただろうか。そちらへ向けていた意識を、劉璋の声によって引き戻された。
「お茶がはいりましたよ〜」
劉璋がお盆の上にのせたお茶を持ってくる。よく冷えた麦茶だった。
やはりおかしい。差し出された麦茶を前に簡雍は考える。
冷えた麦茶。冷蔵庫から出してコップに注ぐだけの手順の筈が、何故こんなにも時間がかかる?
そして向かいに座った劉璋の態度が、かすかだがそわそわと落ち着き無い。
もう一度、窓の外を見遣る。巧妙に隠れてはいるが、明らかに人の数が増えている。
…つまり、結論は一つ。
「タマちゃん、アタシを売ったね?」
じっと劉璋を見据える簡雍。
「…何のことです?」
あくまで平静を装う劉璋。だがその目が泳いでいるのを簡雍は見逃さない。
「…ならアタシの前のこの麦茶、飲んでみせて」
「……っ!それは…」
思った通りだ。多分その麦茶の中には睡眠薬か何かが入れられているのだろう。
「ごめんなさい……私…」
俯いたまま泣き出しそうな声で謝る劉璋。
「ん、いいよ別に。タマちゃんが悪いんじゃないし」
彼女にそんな悪知恵があるとは思えない。きっと誰か……諸葛亮あたりに入れ知恵されたに違いない。
さて、また逃げないと。幸い、まだこの建物の周りの追っ手は少人数だ。何とか撒くことも出来るだろう。
簡雍はそう判断し、ドアを開けた。
『うえるか〜む!』
ドアを開けた先に待ちうけていたのは追跡者の皆さん。開けた早さに倍する速度でドアを閉め、鍵をかける簡雍。
「謀ったね!タマちゃん!!」
一連の劉璋の行動は全て時間稼ぎ。ここの包囲がまだ完成していないと錯覚させつつ、わざとダミーの計略を看破させ、着々と包囲を進めていたのだ。
今更気が付くも既に遅し。出口は既に固められている。
簡雍は部屋の中に入れてあったキックボードをひっ掴むと、窓の方へ向かって走る。
「か、簡雍さん、ここ二階…」
「てりゃっ!」
劉璋が止めるより先に、簡雍は窓から飛び出した。
着地。そして尻もち。落ちた先は幸運にも花壇の中だった。
「…へっへ〜、日頃の行いが良かったせいかな」
軟らかい土にショックは吸収されたせいか、服は汚れたものの、体はほとんど無傷である。
頭上から心配そうに見下ろす劉璋に親指を立てて無事をアピールすると、簡雍は少々痛む体を引きずって逃走を再開した。



「ふんふふふ〜ん♪」
鼻歌混じりに何やらごそごそと物をあさる簡雍。
あまたの監視の目をくぐり抜け、やってきたのは寮の一室…というか簡雍と法正の部屋である。灯台もと暗しとはまさにこの事か。
ポーチにフィルムその他を詰め、カメラのコンディションを確認する。
「よし、完璧」
簡雍、完全装備完了。本気の相手…タイガーファイブ級を相手取るにはこのくらいしないと、逃げ切るのも容易ではない。
「さーて、また逃げるかね」
「そうはいかないわよっ!!」
簡雍の言葉を遮る雄叫び。一瞬の後、大きな音を立てて開けれる鉄製のドア。
「…もうもうと土埃の立つ中、逆光を背負って現れたるは『漢・魏延』!」
「そこ!地の文にかこつけて口に出さない!てか絶対わざとでしょ、それ!!」
竹刀をづびしぃ!!と突きつける魏延。どうでもいいがアンタ乙女志望はどうなった?
…そんなことはどうでもいいとばかりに簡雍から目と竹刀を逸らさず、後ろのドアを蹴り閉める魏延。これで退路は窓だけとなった。
「どうする?また飛び降りてみる?尤も、ここは四階だけど」
張飛あたりならともかく、簡雍にそれは無理だ。例え無事飛び降りたとしても、下に待ちかまえているであろう連中に捕まって終わり、のはずだ。
だが簡雍に動揺はない。にいっと口の端をゆがめて、勝ち誇ったように宣言する。
「甘い」
そう言っておもむろに天井からのびたロープを引っ張る。刹那、ブラインドが下り、さらに暗幕がかかる。部屋の明かりはついていない。すなわち、真っ暗闇。
写真の現像のために、部屋を暗室にするギミックを簡雍は施していた。…まさかこんな用途で使うことになるとは思っていなかったが。
勝手知ったる自分の部屋。ベッドの位置、冷蔵庫の位置、果ては法正の持ってるぬいぐるみの位置までつぶさに記憶している。簡雍にとっては、この暗闇の中でドアまで辿り着くことなど朝飯前だ。
だが魏延は違う。暗闇に慣れぬ目を凝らし、簡雍を見つけようとするも何も見えず。駄目か、と諦めかけたそのとき、目に飛び込んでくるかすかな赤い光。
光の正体はカメラの発光ダイオード。その光の動きで簡雍の位置は手に取るように解る。
竹刀をひと振りして足下に障害がないか確認。足下の安全を確信した魏延は、一足飛びに間合いを詰める。そして竹刀を振り下ろそうとしたその瞬間――――視界が真っ白に染まった。
必殺簡雍フラッシュ。部屋が暗かった事もあって威力は倍増だ。あまりの眩しさにもんどりうって転げ回る魏延。
「あ、散らかしたのは片付けといてね」
そう魏延に告げて悠々と外へ逃げる簡雍。その言葉が魏延に聞こえているかは怪しいが。

さて、どうしたものか。このまま逃げ続けても、いずれ捕まるのは目に見えている。
ならどうするか。臭い物は元から絶つべし。ということで、この騒動の元凶である法正をとっちめて、例の言葉を撤回させれば良い。
結論は出た。ならば後は実行するのみ。
「ふっ、法正。首を洗って待ってなさいよー!」



「魏延の突入、失敗しました」
「呉班のD班、目標をロスト。現在、呉懿のB班・雷銅のF班が周辺を捜索中」
次々に持ち込まれる報告に、劉備はやれやれと嘆息した。
「無理やろな。連中ごときに見つかる程、憲和は甘ないわ」
「ほう、どういうことですかな?」
傍らに立った諸葛亮が問う。
「実戦経験の差やな。考えても見ぃ、憲和は黄巾騒動の時からウチらと一緒だったんやで?踏んだ修羅場の数なら馬超や漢升はん、子龍でさえ及ばんやろな。まして新入りの魏延や争いの少なかった益州の連中ならなおさらやな」
学園一のトラブルメーカー、劉備新聞部の初期メンバーにしてカメラマン簡雍。その役目柄、危険にさらされたことは数知れずある。しかし、彼女はトばされてはいない。
その逃げ足の早さを以て知られる劉備だが、彼女すら逃げ足という一点においては簡雍に一歩の遅れをとると思われる。
「言い出しっぺはどした?」
「法正殿なら何人か連れて外に行きましたが、何か?」
「…ま、あっちはあっちで何か企んどるんやろ」
こと戦略・戦術においては諸葛亮すらしのぐ才を持つ彼女だ。何か罠を仕掛けていることだろう。
「張飛より入電!『我、目標を発見。追いつき次第交戦を開始する』以上です!」
「益徳か!?そら拙いわ。ウチも後詰めに出る!…ちゅーことやから孔明、後頼むわ」
「お任せ下さい」
慇懃に礼をする孔明の姿を目の端に留め、劉備はその身を戦場へと赴かせた。



ばんっ!!
聞こえてきたのは炸裂音。それが聞こえた方へ劉備は走る。
校舎の角を曲がった劉備が目にしたものは、目を回してぶっ倒れている張飛と、その傍らに立つ簡雍の姿。
張飛のことだ。多分、飛びかかっていった瞬間、簡雍に返り討ちにあったと思われる。
「言わんこっちゃ無い…」
先程の音、あれはおそらくスタングレネードを使用した音。至近距離で炸裂したならば、その音と閃光によって一発で戦闘不能に陥るシロモノだ。
「丁度良かったわ。玄徳、法正は何処?」
「知らんな。それよりも憲和、そろそろお縄についた方がええんちゃうか?」
「話す気はない……ようね」
「そっちも捕まる気はないようやな」
どこからともなくハリセンを取り出し、慎重に間合いを計る劉備。
右手にカメラを、左手にスタングレネードを構える簡雍。
凍り付く気配。流れる一触即発の空気。
先に動いたのは簡雍。左手のスタングレネードを劉備に向けて投げる。
「甘いわっ!!」
気合い一閃、弾かれたグレネードは2秒後、劉備の頭上で爆発した。
ハリセンをヒュンヒュンとガン=カタばりに回し、簡雍に近づく劉備。
「さーて、そろそろ年貢の納め時やで?大人しく捕まってゴスロリを着ぃ」
「ごっ、ゴスロリぃ!?待て待てまてマテ、なにゆえゴスロリか」
「決まっとるやん。そっちの方がおもろいからや」
きっぱりはっきり断言する劉備。それを聞いて、簡雍はげんなりした。
この部はアホばっかりか?そう考えざるを得なかった夏の日だった。
「ほれほれ、考え事しとる場合やないで!」
目の前に迫る劉備の顔。そしてハリセン。紙一重でそれを避けるも、続いて二撃、三撃目が飛んでくる。いつしか背後には壁。完全に追いつめられていた。
「今大人しく捕まったら手荒なことはせんが、どや?」
完全に劣勢のこの状況。選択肢は降伏か死かと思われるこの状況下で、あろう事か簡雍は唇の端をゆがめて嗤った。
「断る」
そう言って左手に持った物体を地面に投げつける簡雍。地面にたたきつけられたそれは、凄い勢いで煙幕を吹き出した。
煙に紛れて劉備の横をすり抜ける簡雍。だがそれに気付いた劉備はしつこく簡雍を追う。
不意に、劉備の鼻先に投げつけられたボール。それは破裂すると、辺りにコショウをまき散らした。
「ぶえーくしっ、がん゛よ゛〜!ぶえっくしゅん!」
…涙と鼻水まみれになった劉備は、簡雍の追跡を諦めた。張飛はまだ目を回している…と言うか既にそれは失神から睡眠へとシフトしていた。
世界は平和である。そう思った夏の日の午後だった。

415 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 20:55
世界は平和だろうが、今の簡雍は平和とはほど遠い所に居た。
一人対数百人。かつて如何なる者も経験していないであろう戦争。タイトルを付けるならば、
まさに『真・三国無双』……シャレにならない。
そしてここに、またしても簡雍の前に立ちはだかる影が三つ。
「さぁ簡雍!!」中央に立つ、『壱』と書かれた赤色の覆面をかぶった少女が絶叫する。
「いい加減に!!」向かって左、青い覆面に『弐』と書かれている少女がそれに続け叫ぶ。
「捕まって下さいね」と、向かって右の黄色い覆面の少女がおっとりと言った。予想通り、覆面には『参』と書かれている。
「○陽戦隊サ○バルカン!?」
「違う!我々は『内政戦隊ショッカン4(−1)』!!」
簡雍のツッコミは、予想を遙かに超えたエキセントリックな答えで返された。
ホントにこの部はアホばっかりか。そう深刻に考えざるを得なかった夏の日だった。
「えーと、取り敢えず左から伊籍、孫乾、糜竺?」
「違う!左からショッカンブルー、ショッカンレッド、ショッカンイエローだ!!」
「……なんだそりゃ」
何か色々とはっちゃけすぎの三人。あきれ果てる簡雍。
ちなみに簡雍が三人を見分けたのは胸の大きさだ。孫乾<糜竺<伊籍である。
「なんかアホくさくなってきたわ。ってことであんたらスルーね」
「こら!逃げるな!」
逃げるなと言われて立ち止まる簡雍ではない。キックボードに乗って、すたこらと去っていく簡雍。
「こうなったら…ショッカンビークル!!」
そう叫ぶや、ごそごそと植え込みをあさる三人。そして取り出される、一台の買い物自転車。
それにさっそうと飛び乗る三人。自転車の三人乗りは違反です。
「待てーい!!」
叫ぶ孫乾…もといショッカンレッド。ただ乗っているだけのイエロー。そして鬼のようにペダルをこぐブルー。いせ…ブルーの中の人も大変…と言うか死にそうだ。哀れなり。
当然、三人乗りの自転車なんぞで簡雍に追いつける筈もない。見る見る距離は離れていく。
「はー、大変だねぇ…」
後ろを振り返り、のんきにのたまう簡雍。しかし次に前を振り向いたとき、その目は驚愕に見開かれた。
前から迫り来る人、人、人。ついに捜査本部は人海戦術に訴えることにしたようだ。
後ろを仰ぎ見れば必死こいて追いすがる伊籍、孫乾、糜竺。…必死なのは伊籍だけだが。
進退窮まったか、そう思って周りを見回した簡雍は細い路地を見つけた。そこに一筋の光明を見出した簡雍はすぐさまそこに駆け入った。

そこまでだった。
急に足を取られ、キックボードごと転倒する簡雍。
「あたた…って何よコレ!」
地面にぎっしり敷き詰められた粘着シート。引き剥がそうとするも、よけいに絡まってしまう。
「かかったわよ!やっちゃて!」
頭上より降ってくる法正の声、そして投網。

捜査開始より3時間57分。  簡雍、捕縛。




白いワンピース、手編みのサンダル、麦藁帽子。
白いテーブル、白い椅子、木漏れ日の影。
さらりと流れる髪、銀縁の眼鏡、手に持った詩集。
どこからどう見ても、生粋の文学少女にしか見えないのだ。あの簡雍が。
「おお〜〜〜〜〜」
ギャラリーからあがる、感嘆のため息。
はっきり言って想像以上だった。
「いや〜見違えたわ」
簡雍をひん剥いて着替えさせた劉備が言った。ちなみに彼女の提唱したゴスロリは多数決により僅差で却下されている。
「グレイトですぞ簡雍殿。どうです、そのまま眼鏡を着用しては?」
と諸葛亮。簡雍が眼鏡をかけているのは、勿論彼女の提案によるものだ。
「うぅ、持って帰りたい…」
「テイクアウトはオッケー!?」
「はうー、何かソッチの道に目覚めそう」
等々、なにやら怪しい声が飛び交う中、簡雍は面白くなさそうに、テーブルに置かれたグラスの氷をストローで突っつく。

不意に、風が吹いた。
麦藁帽子が舞い、簡雍は為す術もなくそれを見送った。それはさながら一枚の絵のようで。
「をををっ!!記録班、今の撮った!?」
「ばっちりです!カメラ、ビデオ共に撮りました!」
「グッジョブ!後でみんなで見るわよ!」
親指をびしっと立てて、法正が言った。
「いやー、それにしても予想以上ね。みんなで追っかけた甲斐があったわ」
「……追っかけられた方はたまったモンじゃないんだけど」
「まぁまぁむくれない。憲和だって乗り気だったでしょ。自分でこんな飲み物まで用意して。で、これ何?アイスティー?あ、レモン入っているからアイスレモンティーかしら?」
「あぁ、それ?ロング・アイランド・アイスティー」

『……って酒かよっ!!!』

簡雍を除く全員の声が、夏空にこだました。





※補足
ロング・アイランド・アイスティー

ドライ・ジン………15ml
ウォッカ………15ml
ホワイト・ラム………15ml
テキーラ………15ml
ホワイト・キュラソー………15ml
レモン・ジュース………30ml
コーラ………40ml
レモン・スライス………1枚

クラッシュド・アイスを詰めたゴブレットに、
上記の順で注ぎ、ステアする。
レモン・スライスを飾り、ストローを添える。

茶なんぞ一滴も入っておりません。

416 名前:7th(ver.祭り):2004/01/18(日) 21:01
以上です。
元は「蒼天乙女の春夏秋冬」として短編連作を予定していましたが、悪ノリしすぎてこんな形に。
何か性格が違うキャラが居るかもしれませんが、そのへんは大目に見て下さい。

417 名前:那御:2004/01/18(日) 21:24
おおおおおおお!7th様グッジョブ!
こっちとしても早く見たくてたまらない簡雍の姿、
それをあざ笑うかのような、簡雍の逃避行w!

(何故かw)猛烈にドキドキしましたぞw

418 名前:アサハル:2004/01/18(日) 22:06
取り急ぎっ!!
(ノ゚Д゚)ノ −=≡ http://fw-rise.sub.jp/tplts/after.jpg target=_blank>http://fw-rise.sub.jp/tplts/after.jpg

419 名前:那御:2004/01/18(日) 22:24
アサハル様グッジョブ!!
え〜、テイクアウトはオッケー!?

420 名前:★ぐっこ@管理人:2004/01/19(月) 00:32

>7thさま
うまい! 
素直に感心しましたわ!ノリといい掛け合いのテンポといい!
何よりもキャラのチョイスとシチュが(;´Д`)ハァハァ…!
したたか度では学三中最強の簡雍たんに次々撃ち払われてゆく、帰宅部連合の面々…
体力だけではなく口先で切り抜ける機転! なんかより簡雍たん好きになりましたわ。

それにしても…胸で識別される内政戦隊にワロタ。伊籍たんのナニゲな設定まで活かすとは
お見事!

>アサハル様

Σ( ̄□ ̄;)!! か…簡雍――ッ!?

>>419
ならぬ!>>418はワタクシがテイクアウト予約済み!

421 名前:★玉川雄一:2004/01/19(月) 01:00
ナニゲに簡雍って、
今までの総作品中で登場回数トップなんじゃないだろうか(^_^;)

いやはや、帰宅部連合のほぼフルメンバーが余すところなく活躍(?)しておりますね。
智恵と舌先三寸を駆使してハリウッド映画ばりの逃走劇…
つうかアレですか、簡雍は内政戦隊のグリーンかピンク?
これはまた、次回作が非常に楽しみでありますことよ。
帰宅部連合以外でもぜひ!

>>419-420
ええい、散れィ!(丿`▽)丿━━━━*
奪ったモン勝ちじゃあ! (゚∀゚)ノ>>418

422 名前:★惟新:2004/01/19(月) 01:18
つ、ついに法正タンの真骨頂が! 恩も恨みも十倍返しが! (;´Д`)ハァハァ…
それにしても簡雍恐るべしっ! その生命力はもはや学園最強?
そして! 結末が! 簡雍…(;´Д`)ハァハァ…

始終大笑いさせていただきましたが、中でも『内政戦隊』が無茶苦茶好き!
もうこの人たちで他にもイロイロ読みたいほど(^_^;)
時折見せる小ネタの数々もしっかりツボを抑えていてグッド!
それでいて迫力のアクション! 実に読み応えのある作品でありましたよー!
いやーこれからもよろしくお頼み申し上げます、7th様!

>アサハル様
ナント━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
しかもメガネッめがねッ眼鏡えッ!!!
なんと可憐な…これがあの簡雍とは…
私にその眼鏡の曇りを拭かせてくださいませー(;´Д`)

むむ! 諸氏には悪いが私も譲りませんぞッ!
;y=( ;゚д゚)д゚)д゚)
先祖伝来のこの種子島、そう易々とやらせはせぬっ!

423 名前:7th:2004/01/19(月) 20:22
予想外の反響!Σ( ̄□ ̄;
皆様ありがとうございますm(_ _)m
特にアサハル様!!感謝感激でありますっ!!
まさにこのイメージ!自分ごときが万の言葉をもってしても、この一枚の絵には敵いません!

なんか反響の大きかった『内政戦隊』ですが、簡雍はグリーン…かなぁ。
この後、第二世代になって、『内政戦隊ショッカン5』に…なったら面白いなぁと思ったり。
ちなみにメンバーはレッド:蔣琬 、ブルー:費禕、グリーン:董允、イエロー:尹黙、ピンク:郭攸之 とか。

424 名前:★教授:2004/01/24(土) 23:48
本日、帰国の途に着きました。とても久しぶりな日本の土は感動でした。
感想等は休養を取ってからしますので、暫しお待ちを…。

んで…これまでの『しょーとれんじすとーりー』に登場した人達を宿泊先で数えてみました。
玉川様の予想通り、1位は簡雍でした(笑) 作業時間2時間50分、信用出きると思われます(何)

1.簡雍
2.劉備
3.張飛
4.法正
5.曹操
6.皇甫嵩
7.諸葛亮
8.朱儁
9.関羽
10.厳顔
11.甘寧
12.夏侯惇
13.周瑜
14.趙雲
15.黄忠
16.孫乾
17.魯粛
18.張遼
19.劉禅
20.盧植

ベスト20の中に貴方のお気に入りのオンナノコはいましたか?

425 名前:★ぐっこ@管理人:2004/01/26(月) 00:07
教授様、おかえりなさいませ!

そしていきなり大事業乙っ!3時間弱…(´Д⊂
うーん、やはり簡雍でしたか…。そんで次点劉備…。作品中では他のキャラほど
インパクトがないのですが、それでも締め役として必ず登場してるのがポイント
ですやね。
しかし…こうしてみると、やはり長湖部勢が元気ないな(´・ω・`) 
よろしい。ならば我が手でなんとかしてみせるまで。

426 名前:★教授:2004/02/04(水) 22:43
■■ 卒業前夜第二幕 --


「郭嘉…」
 3月某日、寒風の吹きつける墓所。
 少女は墓石の一つに細く白い指先を滑らせる。彫られた文字をなぞるようにゆっくりと滑らせる。

 郭嘉奉孝――

 少女が指でなぞり、墓石に刻まれたその名前。
 連合生徒会の者なら誰もが知り、そして忘れられぬ少女の名だ。
 限りある命の中で彼女ほど美しい大輪の華を咲かせた者に列挙できる人物はそういないだろう。
 それ故に薄命であった事を悔やむ者も少なくない。彼女の主であった少女も誰彼憚る事なく大粒の涙を零し、激しく天を呪ったという。
 郭嘉が眠る墓石の前に立っている少女もまた縁浅からぬ仲であった。
「…貴女の眠ってるこの場所に私が来る…なんて意外だった…?」
 憂いを帯びた微笑を浮かべ、現世にいない少女に言葉を掛ける。まるで目の前にその者がいるかのように。
 少女は手に持っていた手提げ鞄から一台のMDプレイヤーを取り出す。
「随分遅くなっちゃったけど…これを返しに来たの」
 そっと墓前にMDプレイヤーを置く。
 生前、この少女が郭嘉から取り上げた品。風紀委員として当然の行為だった。その時はこのMDプレイヤーが遺品になるなんて予想も想像もしてなかった。
 会えば口喧嘩、顔も見たくないと思った事もあった。すれ違ってばかりの二人だったが、その相手を永遠に失ってしまって初めて気が付いた大切な何か。

 でも気付くのが遅かった――

 心の奥に悔恨という大きく深い爪痕を刻みつけられた。
 返そうと思い何度も郭嘉の下へ足を運んだ。だけど神の悪戯か、療養の為に学園を去るその日にさえ彼女と顔を合わせる事は適わなかった。
「私…貴女とゆっくり話してみたかった…」
 眼鏡の奥に佇む悲哀に満ちた双眸は既に頬を濡らしていた。
 彼女の死を哀れんでいる訳じゃない、ただ和解出来なかった事と郭嘉を理解できなかった心中の哀しみに包まれていたのだ。
 永遠に解する事の出来ない心の溝。これから先も埋まる事はない。
「明日…卒業式なんだよ? 私も…生きていれば貴女も…。だけど…何だか悲しいよ」
 吹き抜けていく風が少女の髪を靡かせる。郭嘉がいたあの頃から随分伸びた。あの時の自分を見たくはなかったから――
 少女は涙を拭うと、再び墓石に指をなぞらせる。締めつけられる胸の内をぐっと堪え、踵を返した。
「サヨナラ…またその内顔見せに来るね」
 寂しく、そして小さな背はゆっくりと墓地から姿を消して行く。まるで風に流されるかのように――


 深夜2時、草木も眠る丑三つ時。
「…………」
 墓前に置かれたMDプレイヤーに伸びるしなやかな腕。手に取りイヤホンを耳にする。
「…………」
 その人は目を閉じ微かな笑みを浮かべている。
 やがて、その姿は闇に紛れるように消えていった。墓前のMDプレイヤーと共に――


――そして卒業の時を迎える

427 名前:★ぐっこ@管理人:2004/02/06(金) 00:42
。・゚・(ノД`)・゚・…

教授様、復帰第一弾乙であります。

そしていきなりしっとり系…。
天敵どうしであった郭嘉と陳羣の、決して同じ刻に出逢うことのできない
逢瀬ですね…

ぽんぽんとお互いに悪口を言い合える二人は、曹操にとっても「見てて飽きない」
と風物詩めいた光景であったはず。失われてから初めてわかる、かけがえのない
関係。
ガチガチの風紀委員長だった陳羣も、郭嘉の死を乗り越え、だいぶ成長できたでしょう…

428 名前:惟新:2004/02/06(金) 21:54
陳羣…(つД`)
「失ってしまって初めて気が付いた大切な何か。」
でもそれは遅すぎて…それでも!

うう、愛されてますねぇ郭嘉…


昨年度末、私たちを涙させた卒業前夜の第二幕が明ける。
教授様ついに本復帰!? 今後も目が離せないですよー!

429 名前:那御:2004/02/06(金) 22:46
泣いた・・・いい話じゃねぇかぁ!。・゚・(ノД`)・゚・
遅すぎた和解・・・帰ってくることの無い時間を悔い、
お互いすれ違いばかりだった日々を悔いる。

でも、そういう辛く、悲しい過去をバネにしたからこそ、
学園での陳羣があったのかもしれないですね・・・

あ〜泣いた。教授様の完全復帰とあらば、強力な作品がまたまた・・・

430 名前:★おーぷんえっぐ:2004/02/07(土) 19:11
昨今、他の用事で多忙を極め、SSさえ読んでるヒマありませんでした(汗)
教授さんの得意分野が見事に炸裂した、シットリとくるお話ですな^^
”喧嘩するほど仲が良い!”
を地で行く二人の姿を見せてもらった気がします。

431 名前:★教授:2004/02/15(日) 23:05
■■ バレンタインSS -多人数SP- ■■


「関さんは例年通り指名手配になっとるけど…」
「関姉も大変だなー…俺らも今大変だけど…」
 成都棟屋上、給水塔下で劉備と張飛は毛布を頭からかぶって茣蓙の上に座りながら七輪で暖を取っていた。
 今日は2月14日。世はバレンタインと呼ばれる女の子に取っても、男の子に取ってもあらゆる意味で緊張する日である。
 女子高でもあるこの学園でもバレンタインというイベントは発生する。むしろ、それは必然であるとも言える。こんなイベントを放っておく女子などいないのだ。
 …で、何故劉備と張飛が寒空の下でこんな事をしているのか。答えは簡単、一般女子のチョコ攻めから逃れる為だ。
 益州校区を落としてから一気に株が上昇した二人は前日の深夜から異様な視線を感じていた。そこで諸葛亮に調査を依頼した所、驚愕の事実が判明。逃亡のきっかけとなったのは、諸葛亮の資料と共に添付されていた見るからに毒々しいラッピングのチョコを見た事だった。
 ちなみにこの場にいない荊州校区を管理している関羽は妹や水練達者な部下の助けを借りて今も逃亡中である。最も妹と部下は既に大量の靴跡の烙印を押されて倒れているのだが――
 暖を取りながら潜伏中の二人以外にも馬超、黄忠、厳顔も同様の被害に遭っている。黄忠、厳顔は大人の対応で凌いでいるが馬超はそうもいかない。如何に帰宅部屈指のスプリンターと云えども限界はある。逃げ場を失って拉致されていく姿を馬岱が見たそうだ。
 しかし、趙雲はチョコ被害に遭っていない。その時彼女の周りには簡雍、法正と敵に回したら最強最悪の二人がいたからだった。流石に自分の命と引き替えにチョコを渡す強行には出る事は出来ない。
 場面を戻そう。劉備と張飛は給水塔の下で難を逃れていたが、そろそろ限界を感じてきていた。先ほどから屋上の探索に何人か現れているのだ。1分前に一度見つかったが、その時は張飛が間髪入れずに記憶消去(頭部強打)をしたお陰で命拾いはしている。見つかるのはもう時間の問題っぽいが――


 場面は変わり、益州校区郊外の丘の上。
 ここで簡雍と法正がベンチに腰掛けていた。趙雲がアトちゃんの部屋に入ったのを確認すると二人で適当な雑談をしながらぶらぶら歩いていたらこんな所まで来てしまっていたのだ。
 しかし、どことなく二人の間に気まずい空気が流れていた。
「………」
「………」
 お互いに目線も合わせずに落ちつかない様子。簡雍も法正も頬を染めている。
 二人とも綺麗にラッピングされたハート型のチョコを一つずつ持っていた――


 更に場所は変わりラク棟――

「毎年毎年…何で私がこんな目に!」
 半泣きになりながら一人の少女が一個師団にも匹敵する集団に追われている。
 悲しい事に、課外活動から退いている今でもこの日になると逃げ回る事を余儀なくされるのだ。
 必死に逃げ惑う少女、通称『益州タカラヅカ』張任。潔さと忠信の高さが仇となってしまっている。そこはかとなく報われない少女――


 夜――

 劉備と張飛は撤収しようとした所を待ち伏せしていた諸葛亮率いる女子達に取り囲まれていた。夜まで粘ってた事は誉めてやるべきだろうか――
 余談だが、今年の関羽は無事逃げ切る事に成功していた。尊い犠牲、名誉の殉職者2名――

                糸冬

432 名前:那御:2004/02/15(日) 23:49
バレンタインキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
劉関張、年増コンビ(後で二人に殺されるさ!)、馬超、簡雍法正コンビはもちろんのこと、
何より『益州タカラヅカ』こと張任がイイ!
間違いなく、バレンタインとかに興味関心0。それでも顔を真っ赤にして逃げる張任に惚れ。。

433 名前:惟新:2004/02/16(月) 20:40
ウァレンティーヌスの贈り物━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
対策の違いにキャラの個性がしっかり出てますね〜!
にしても簡雍と法正は何イイ雰囲気出してますかー(;´Д`)ハァハァ
何気に幸せ不幸の張任ワラタ。
彼女の苦労伝説は続く…

434 名前:★ぐっこ@管理人:2004/02/17(火) 00:47
むう、あのチョコ話(>>24-29)から一年経つのか…(;´Д`)ハァハァ
って二年経ってるやんけΣ( ゚Д゚) うわ、やっべ…
あー、あのころはまだ今ほど校区がどうこういう話になってなかったのね…

さておき、教授様グッジョブ!
むう、舞台が益州に移り、張任たんもその毒牙にかかってますか(^_^;)
簡雍と法正は相変わらず、劉備は今回は追われる側…
悲喜こもごものバレンタインだったようで…

435 名前:★教授:2004/02/25(水) 23:41
■■ THE EARLY DAY -法正と簡雍- ■■


▲15:40 法正専用作業室という名の図書準備室

「参ったなぁ…」
 法正は鉛筆を動かしながらため息を吐く。しきりに柱時計や腕時計をチェックしながら筆を進めていた。随分と焦っている様子が見て取れる。
 傍らには『定軍山攻略報告書』と書かれたA5の用紙が山のように積まれていた。そう、法正は劉備に提出する為の報告書を書いていたのである。メインの活躍を見せた黄忠&厳顔の御姐様コンビは別件でこの場にはいない。法正に言わせてみれば一人の方がスムーズに作業が進むのでむしろいない方がいいらしい…のだが、今回ばかりは後悔していた。
「こんなに報告書があるなんて…予想外だったわ。憲和待たせてるからなー…」
 どうやら想像以上の報告書と重なって簡雍と約束をしていたようだ。
 待たせたりすっぽかしたりしたらどんな恐ろしい事が待っているか――法正の脳内で想像するには容易い事であった。それ故にのんびり筆を進めている場合ではなかったのだ。
「絶対17時までに完成させなきゃ!」
 凝った肩を数回叩くと集中作業モードに以降した――

▲16:00 某喫茶店

「可愛いバイト雇ってるねー…マスター」
「ははは、よく働いてくれるし助かってるよ」
 カウンター席に腰掛けて紅茶を飲む簡雍。その正面で喫茶のマスターが愛想良く話相手になっていた。
「マスター! 私、表を掃除してきます!」
 そして、可愛いと評されたバイトの娘さんは照れ隠しかどうかは分からないが、怒りながら箒とちりとりを持って外へ出て行ってしまう。その様子をマスターと簡雍が微笑みながら見送った。
「張任ちゃんも案外照れ屋だからね。あんまり囃したてないでよ」
「マスターの頼みじゃ断われないね」
 こんな調子でちっとも待っているという素振りのない簡雍だった。

▲16:58 法正専用作業室という名の図書準備室

「終わらないっ! 絶対ムリっ!」
 壊れかけの法正が冷や汗を流しながら筆を進めていた。自分では頑張っているのだが、思うように作業が進まない。苛立ちと焦りが余計に作業を滞らせるのだ。
 別に今日中に提出という訳ではないが、中途半端に残すのも寝覚めが悪い。変な使命感が後押ししながら死に物狂いで報告書を仕上げていく。
 しかし、待ち合わせ時間は17時半…柱時計の短針が5になった。

▲17:27 某喫茶店

「おっそいなー…いつもなら5分前には来てるのに」
 小洒落た柱時計を見ながら簡雍がぼやきはじめた。真正面ではマスターが夕刊を、張任が食器を洗っていた。柄無しの赤いエプロンが似合うがどこか家庭的な印象を受ける。
 やがて時刻が17時半になると、簡雍はため息を吐いた。その仕草にマスターが新聞から顔を上げる。
「簡雍ちゃん、待ち人来ず…かい?」
「今、約束の時間丁度。もう少しだけ待ってみるよ」
「そうかい。ま、ゆっくり焦らずにね」
「いぇっさー」
 ぷらぷらと足を揺らしながら簡雍の目は柱時計を見据えていた――

▲19:00 法正専用作業室という名の図書準備室

「お、終わったー…」
 がたんと椅子から立ち上がり勢い良く背伸びをする法正。その顔は達成感に満ちた何とも爽やかなものだった。
 報告書をまとめてファイリングしながらちらりと柱時計を見てため息を吐く。
「流石にこんな時間じゃね…明日憲和に謝らなきゃ…」
 何されるか分かったものではないが、仕方ない。自分が蒔いた種だ…と覚悟を決めると、再び大きなため息を吐いて図書準備室の明りを落とした――

▲20:30 某喫茶店

「………」
 簡雍はうっすらと目を開け、顔を上げる。マスターの顔が目に入った。
「おはよう…と、言いたいけど…もう閉店の時間なんだよね」
「やべ…寝ちゃってたのか…」
 無造作に頭を掻く簡雍。柱時計に目を遣りため息を吐いた。
 そんな簡雍の前に一杯の珈琲が差し出される。珈琲とマスターを交互に見遣る。マスターは微笑するとエプロンを外した。
「それは奢りだよ。ぐいっと飲んで眠気覚ましてから帰りなさい」
「太っ腹だねー…それじゃ、遠慮なくいただきまーす」
 丁度、金銭面で四苦八苦してたので珈琲一杯でも随分助かる。簡雍に取っては優しさも立派な渡りに舟にもなっていた。
「それじゃ、マスター。私はこれで失礼します」
 張任がエプロンを外しながら奥から出てきた。…どうやらこの店では学生服の上からエプロンで仕事をしているようだ。
「ああ、お疲れ様。明日もよろしくね」
「はい。それじゃ失礼します」
 礼儀正しく挨拶をすると入り口から出て行く。実直なその姿は簡雍も魅せられるものがあった。
 やがて、珈琲を飲み終える。カップを返却して鞄を掴むと笑顔を見せた。滅多に人には見せない、そんな笑みだった。
「ごちそうさまでした」

▲21:00 寮前

「はー…随分遅くなっちゃったわ」
 とぼとぼと歩く法正。学校を出る頃にはもう真っ暗になってしまっていた。
 報告書は科学室で怪しげな発明をしていた諸葛亮に渡してあるから問題無い、取りあえず今日はゆっくり寝て明日の簡雍の襲撃に備えよう――半ば開き直りを見せているようだ。
 寮の門をくぐった時だった。目の前に馬超が――鉢合わせてしまっている様子。
「馬超じゃない…何してるのよ、こんな時間に。寮が違うでしょ? もしかして寝ぼけてる?」
「そんな訳ないわよ! 何で『夜はこれから♪』な時間に寝ぼけなきゃならないのさ!」
 疲れてるから普段の2割増しで言う事がキツイ法正に何処となく不良じみてきた馬超、姦しい。やがて疲れてる法正が折れる事に。
「まあ…何でもいいけど。早く戻らなくてもいいの?」
「憲和にこの間の漢中での写真貰おうと思ったんだけどな。待ってても帰ってこないから」
「あー…ずっとシャッター切ってたものね…って、今何て言ったの!?」
 危うく聞き流しかけた。法正が馬超に詰め寄る。
「え…いや、簡雍いなかったからって…」
「ウソ! じゃ…まだ待ち合わせ場所にいるの…もしかして!」
「ちょ…いてっ!」
 法正は馬超を突き飛ばすと踵を返して駆け出した。馬超は門で頭をぶつけて悶絶。馬超1回休み――

▲22:00 某喫茶店

「………憲和」
 閉店した様子の喫茶店の前に立つ法正。明りも消えて人の気配すらしない店内をちょろちょろとカーテンの隙間から覗きこむ。もしかしたら――そう思うと必死になって辺りも探し始めた。
 元々は自分が誘ったのに何で一番最初にここに来なかったのだろう、法正は激しく後悔していた。――次の瞬間!
「いつまで待たせるのよ! このバカ法正!」
「きゃっ!」
 後ろから鞄で法正の頭を殴った輩に痛そうに頭を押さえて蹲る法正。痛みを堪えながら後ろを振り返ると、そこに立っていたのは簡雍だった。
「憲和…ずっとここにいたの!?」
「待たせすぎ! 自分から誘っておいて…許せないぞ!」
 今度はでこぴん。小気味いい音が静かな通りに響いた。
「…ごめん」
 額を押さえながら深く頭を下げる法正。流石に悪いと思っているようだ。その姿を見て簡雍も怒るに怒れなくなってしまう。
「…牛丼奢ってくれたら許す」
「…いいの? そんな事で…?」
「お腹空いてるの!」
 ふんっと鼻を鳴らすと歩き始める簡雍。慌てて法正も後に続く。
「言い訳しなくていいからなー…来たんだから謝る代わりに奢れよー」
「…味噌汁と玉子も付けるわ」
「んじゃ、手打ちね」
 くるりと簡雍が振り返ると法正に微笑みかけた。その笑みを見て法正も自然と笑顔になれていた――

▲22:30 某牛丼チェーン店

「いらっしゃ…マジ…?」
 バイト着に身を包んだ張任に呆気に取られる簡雍と法正。そそくさと外に出て大笑いしていた――

▲24:00 法正の部屋

「くー…」
「………ぐぅ…」
 法正と簡雍が静かに寝息を立てていた。
 この後から二人の少し変わった日常が始まる――

          糸売 or 糸冬

436 名前:惟新:2004/02/27(金) 22:03
法×簡シリーズまだまだ続くっ!
もはや学三には無くてはならない名物となりつつありますなー(;´Д`)ハァハァ

気が付けば二人の友情も温まり。
艱難辛苦も何のその、すっかりわかりあってるじゃありませんか!
心の中が温まるですよ〜
そんでもって張任タンが可愛くて仕方が無いです(;´Д`)
壮絶にいじらしいですよもう!

ところで牛丼が食べたくなったですが、絶滅危惧種…

437 名前:那御:2004/02/27(金) 22:36
教授様による法&簡シリーズキタ―(・∀・)―!!
実務が多い法正に対し、簡雍は暇そうですね・・・
ズボラな性格でも、心は暖かいことこの上ないですね。。
サブキャラ馬超、張任も良い味出してる・・・

438 名前:国重高暁:2004/04/05(月) 16:12
 ■■ 小さな才媛 ■■

「公路お姉ちゃん、こんにちは!」
 敷地中雪化粧した豪邸の、その母屋の表出入口に、一人の幼女の姿があった。
 両手に大きな包みを抱え、ちんまりと立っている。
「はい、今開けますわ」
 公路お姉ちゃんと呼ばれて返事をしたのは、年の頃十六、七の少女。
 その声には品があるが、なぜか元気がない。
 彼女はドアを開け、幼女と対面した。
「あら、あなたは……どこの子でしたかしら?」
「お姉ちゃん、あたしのこと忘れたの? わーん」
 泣きじゃくる幼女を制止しながら、少女は懸命に自分の記憶をたどる。
「えーと、ちょっと待ってらして……ごほ、ごほ」
 ただの咳払いではない。彼女はここ数日、風邪で四十度の熱に苦しんでいるのである。
「思い出しましたわ。確か……陸さんちの績ちゃんでしたわね?」
「よかったあ。ちゃんと覚えててくれて」
「ごめん遊ばせ。私、こういう体でございますから、ちょっと頭がぼけておりまして……」
 大いに謝りながら、少女は持っていた絹のハンカチで、幼女の顔を丁寧に拭いてあげた。

 この少女の姓名は袁術、字は公路。
 ここ荊州でも他に比類なき豪家の令嬢で、蒼天学園高等部の生徒会副会長を務めている。
 一方、やってきた幼女の姓名は陸績、のちに字して公紀。
 今春から小学生になるところだが、既に微積分の知識を持ち、「小さな才媛」と評判の幼女である。
 もとより彼女も深窓の生まれであり、したがって家族ぐるみの交流を持つ。
 そんな陸績を自室に通すと、袁術は悪趣味なベッドに身をゆだねた。
「績ちゃん、私を見舞いにいらしたのね?」
「うん。だから、あたし、これ持ってきたの!」
 こたつに入った陸績が包みを解くと、立派なかごに盛られたフルーツが姿を現した。
「お姉ちゃん、しっかり食べて、元気出してね」
「あら、フルーツなら、既にたくさん届いておりましてよ」
 袁術は豪家の令嬢であるから、当然見舞い品の差し入れも多い。
 現に、こたつの周りには、フルーツを盛ったかごが所狭しと並べられていた。
「そ、そんな……三十分もかけて、せっかく持ってきたのに……」
「泣かない、泣かない。私、あなたの分もちゃんといただきますわ」
 再び涙目になる陸績を、袁術は丁寧になだめすかす。

「では、とりあえず……オレンジでもいただきましょう」
「お姉ちゃん、風邪にオレンジはあまり効かないんだけど」
「病は気合で治すものですわ。お黙り!」
 医学的知識をひけらかす陸績を抑え、袁術は彼女の持ってきたかごからオレンジを一個取る。
 そして、自らもこたつに入り、片隅に置かれていたナイフでこれを割いた。
 「こたつミカン」ならぬ「こたつオレンジ」である。
「績ちゃん、あなたもお食べなすって」
 オレンジの一切れを食べながら、別の一切れを陸績に勧める。
「いらない。せっかくあたしが持ってきたんだから、全部お姉ちゃんが食べて」
「うーん……しようがないですわ」
 残ったオレンジを食べ終わると、件のかごからまた一個のオレンジを取り出す。
 結局、袁術は陸績の持ってきた三個のオレンジを全部食べた。

「これ、人のかごに手をつけるんじゃありません!」
 すさまじい怒号である。袁術は、陸績が突然、他人の贈ったかごからオレンジを三個取るシーンを見透かさなかった。
「お姉ちゃん、怒らないで。あたしの一生のお願いだから」
「怒りたくないのはこっちですわ! なんてはしたないことを……」
「はしたないけど許して。これには深いわけがあるの」
 涙をこらえ、陸績は事情を説明し始めた。
「あたし、これから家に帰って、ママにもオレンジを食べさせてあげたいの」
「なるほど」
「今、あたしんちがどうしようもない状態なの、お姉ちゃんも知ってるでしょ?」
「もちろんですわ」
「だから、お姉ちゃんからもらったことにして、このオレンジをママにあげたいの。ねえ、いいでしょ?」
(な、なんとまあけなげな子……)
 袁術は思わず涙腺を緩めた。この幼女が高校生並の知能だけでなく、並ならぬ孝心をも備えていようとは。
「わかりましたわ。では、私のことをよろしくお伝えくださいませ」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
 陸績は、三個のオレンジを先刻のかごと同じ包みに納め、これを懐にして去った。
 一方、ベッドに戻った袁術の枕元には、彼女の持ってきたかごと並んで、先ごろ入手したばかりの「伝統の蒼天会印」が置かれていたのであった。

                   糸冬

439 名前:国重高暁:2004/04/05(月) 16:29
いかがでしたでしょうか。
呉書陸績伝などにある、かの有名な
「陸績懐橘」の故事をSS化してみました。
元来は九江県で起こった出来事なのですが、
ここは袁術の本拠・宛県にしておきました。
伝国の玉璽については未だに公式設定がない(?)
ようなので、とりあえず「伝統の蒼天会印」と
しておきましたが……宜しかったでしょうか?

以上、国重でした。

440 名前:★ぐっこ@管理人:2004/04/05(月) 23:50
国重高暁さま、初参加初登校ありがとうございますヽ(´∀` )ノ
袁術の前で橘を懐に入れたという陸郎のお話ですな!
これまでSS化されていなかったあたりですので、これでまた一つの物語が
学三史に組み込まれたことに…
健気な幼女・陸績たんと、お嬢様袁術たん…(;´Д`)ハァハァ…


ちなみに学三史的修正ですが、陸績は陸遜より4つ年下なので、新設定でいえば
4ヶ月年下。まず、同学年。諸葛亮や孫権とも同年なんですねえ(^_^;)
つまり袁術が玉璽を手に入れてた頃だと、中学二年生だったり。

もちろん国重高暁さまの投稿は他のSSと同じく“異説”ですので、こういう細かい
ことは気にせずに! これからもよろしくお願い致しますねー!

441 名前:★ぐっこ@管理人:2004/04/05(月) 23:57
>>435
                  __ __ __ __ __                 __ __
                 ∠__∠__∠__∠_.∠_../ |        __∠__∠__∠l__
               ∠__∠__∠__∠__∠__/|  |        ∠__∠__∠__∠__/.|_
.                ∠__∠__∠__∠_.∠_./|  |/|       ∠__∠__∠__/   /|  |/|
.                /   /  ./   /   /  /! |/|  |     |  /  /  /| ̄ ̄|  |/|  |
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        __ _|    |__|__|__|__|/| ̄ ̄|  |    ∠__|__|__l/   /|  |/|  |
.         /   / | ̄ ̄|  |_|/|    |    |  |__|/|   |    |    |    | ̄ ̄|  |/|  |/
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.     ___|__|__.| ̄ ̄|  |_|/      |    |  |__|/     |    |    |    |    |  |/|  |
.   /   /   /  |    |/|.         |__|/|          .|__|__|__|__|/|  |/
  | ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|  |.         |    |  |            .|_|    |    |  |__|/
  |__|__|__|__|/        |__|/               |__|__|/


今日の今日まで投稿に気づきませんでした…_| ̄|○  スマソ教授さま…

うーん、法正と簡雍の凸凸コンビ。すっかり定番というか、学三的に定着して
しまってますが、いよいよ熟年期のカポーじみてきましたねえ(^_^;)
法正のようにある意味人見知りするタイプだと、ツボに入るようで…

442 名前:那御:2004/04/06(火) 00:12
というわけで、国重様初投稿乙!
何を隠そう私は隠れ陸績ファンでして・・・
文人なのに剛毅な人物っていうところにツボがあるのかも(孔融とか)
「陸績懐橘」・・・陸績を語る上で欠かせないイベントですよね。
それを見事に学三へ、良かったです!

443 名前:惟新:2004/04/09(金) 04:05
いらっしゃいませ国重高暁様!
さっそくのご投稿、拝読させていただきました!
おおっ! しっかり学三風にアレンジされてますよ!
何気に感受性豊かな袁術たんイイ(・∀・)!!

444 名前:はるら:2004/04/17(土) 14:09
■平和なひと時■


「だぁ〜〜〜〜〜!!!遅〜れ〜る〜!!!」
平穏そのものの学園に一人の少女の声が響き渡る。
「あっ、伯珪先輩!!どうかしたん〜!!」
「やや、玄徳!お前こそ何やってる?きょう授業あるぞ!!」
「ええぇ!!!!先輩マジ!?」
「嘘ついてど〜すんだよ!!!また盧植先生に怒鳴られるぞ!!・・・てもういないし」
伯珪と呼ばれた少女はまた駆け出した。


所変わって盧植先生の部屋。
「……遅い………」
盧植先生が呟いたその時、
「ギリギリセ〜フ!」劉備が部屋に猛ダッシュで突入した。
「いえ、47秒遅いです」
「ってえぇ〜!!なんで秒単位なん!?」
「…まぁ、1分以内ですから特赦としましょう」
そう言って盧植先生、ドアを閉める。
ドドドドドドォ〜〜!!!!!
「えっ??何かしら???」
その時公孫サンがドアにスライディングをかまし、ドアが吹っ飛び、
盧植先生に激突した!!
「どりゃ!!!よっしゃ〜!!ギリギリセ〜フ!!!」
劉備心の声「(どこがやねん!?)」
「は、は、伯・珪〜〜〜〜!!!!!!」
「え、えぇ〜??(先生キレちゃったよ、ちょっとドア吹っ飛ばしただけじゃん)」
「あなたはどうしてもっとおとしやかにできないんですか!?」
公孫サンため息をつきながら
「い、いや、先生それは先生だって・・・」
「なにか?」盧植先生、先手を打つ。
「う、(先生、顔は笑ってるけど目まで笑ってない。む、むしろ怖い…)」
劉備心の声「(っは!これはピンチや!!伯珪先輩にとってもあたしにとっても!!)」
「(こりゃ、なんとかせな・・・!!あれや!!!)」
「せんせ〜!このクッキー食べていい〜!?」劉備が話を変えようとする。
「な、げ、げ、玄徳〜〜!!!!!」
「は、はぅ〜!?(ミ、ミスった〜)」
公孫サン心の声「(馬鹿でしょ!?)」


―何だかんだで2時間経過―

「…………わかりましたか?二人とも!」
公孫サン「へぇ〜い」
劉備「(先輩、やる気ねぇ〜)は、はい!!」
「よろしい」
「本来なら今日は英作文のテストをしようと思っていましたが、
あなたがた二人のせいで見事潰れてしまいました」
公孫サン&劉備の心の声「(イヤッホ〜〜〜!!!!!)」
「なので今日は不本意ながら英単語のテストをしましょう♪」
「大差ねぇ〜」公孫サンがやる気のない声をあげる。
劉備心の声「(鬼や、本物の鬼がおる・・・!!)」

「コンコン」ノックが鳴る。
「どなたですか??」
「しーちゃん元気ぃ〜!?」朱儁が現れた!!
公孫サン心の声「(先生が、先生が『しーちゃん』!?)」公孫サンは吹き出した。
しかし劉備が公孫サンの口をふさいだ。
「伯珪先輩、今度こそ死んじゃいますよ!?」

「…しーちゃん、あの子達…」朱儁が劉備と公孫サンを指をさす。
盧植の目は恐ろしく凍りついている。
「こーちゃん、お願いだからちょっと部屋から出ててくれない???」
「…えっ、いいけど。……あの二人かわいそーに」そう言って朱儁は部屋を出た。

盧植先生、足早に二人を間合いに詰める。
「あっ、先生!……いつもながらスマイルが素敵ですね!!」劉備は適当に誤魔化した。
「ふふふ、ありがと、玄徳。……と・こ・ろ・で伯珪、どこに行くのかしら??」
さっさとエスケープを試みる公孫サンに魔の手が!!!
「…えっ!!あ、あ、先生……、いやちょっと…」口ごもる公孫サン。
その時、公孫サンは秘計を閃いた!!
公孫サン心の声「(こ、これだ!!)」
「あっ!!!先生このクッキー食べていいですか!?」
劉備心の声「(何考えてんねん!?)」

「あなたもですか!?……あなた達二人はそんなにクッキーが食べたいのですか!?」
盧植は怒りを通り越して泣きかけている。そんな盧植の様子を見かねた朱儁が
「ほら!しーちゃん!!しっかりして!!!嫌なことは皆で飲み明かして吹っ飛ばそうよ!!…ね」
「あなた達も飲みあかそ〜♪」
かなり陽気な朱儁を前に公孫サンは怖気づいた。
「い、いえ遠慮させてもらいます。仲のいい先輩二人で飲んでください。な、なぁ玄徳!?」
「あ、そりゃええ!先輩方二人でど〜ぞ!」
「ふ〜ん、じゃ、しんちゃんと建ちゃんも誘って飲もぉ〜!!!」

盧植と朱儁は部屋を出て行った。と思ったら盧植がドアからひょっこり顔を出して言った。
「…伯珪、玄徳、今日はまともな授業ができなくて申し訳なかったと思います。
………しかし、宿題は出させてもらいます。
…今日の反省文を400字詰めの作文用紙10枚以上で書いてくること。今日はこれだけにします。
くれぐれも体には気をつけるように。……では、また明日」そう言って盧植は行ってしまった。

部屋に沈黙が漂う・・・。

「な、なぁ玄徳、盧植先生まだ怒ってるよ」
「せやね、いつもの1.5倍は宿題でとるで」
「しかも明日までって先生あたし達を殺すきか!?」



―5時間後、皇甫嵩の部屋―

「で、なんで私の部屋なんだ!?」
「うっわ〜!!義真、ひっど〜い!!!
しんちゃんのセンチメンタルな感情を蔑ろにするつもり!?」
「そうそう!!しんちゃんがかわいそーだよ!!!」
「け、建陽、おまえもか!!」
「……ぎ、ぎし〜ん!!もうやだよぉ〜!!!」
「って、し、子幹……!?」
盧植に思いっきり抱きつかれ困惑する皇甫嵩。
それを見て笑っている朱儁と丁原。



―同時刻、劉備と公孫サンは・・・―

「…玄徳、何枚終わった??」
「………二枚。先輩は??」
「……一枚半……」
ひたすら文を書きまくる劉備と公孫サン。・・・でもあまり進まない。



色々あったけど今日も平和な一日でした。


― 平和なひと時 完―

445 名前:はるら:2004/04/17(土) 14:10
盧植と公孫サンと劉備、どうしてもこの三人の逸話が書きたかったんで書いてみました。
7thさまのスレを一部参考にさせて頂きました。
書いてみてはじめてわかったんですけど、大阪弁ってムズイですね。
何か文章的におかしい部分もあるかと思いますが生暖かいスルーをお願いします(爆

446 名前:惟新:2004/04/19(月) 23:05
盧植先生のありがた〜いご指導には劉備も公孫[王贊]も適わない!
はるら様GJ! 勢いを感じさせる作品ですよ〜!
劉備の必死な誤魔化し方とその結果がとても可愛らしいです(*´Д`)
そしてクッキーワラタ。なかなかツボを心得ていらっしゃいますよ〜!

447 名前:★ぐっこ@管理人:2004/04/20(火) 01:14
はるらさま、グッジョブ!!(b^ー°)

盧植とて、後輩たちのまえでは先生でいたいようですし(^_^;)
昔劉備と公孫瓉が机を並べていた光景って、こんなカンジだったのでしょうね〜。
あのころは朱儁も皇甫嵩も丁原も居なかったので、非常にスムーズに授業が…
出来る分けないか、この二人が生徒なら(^_^;)

盧植先生は、学三的にもっと書き込みたいキャラ。演義の無口っ娘はできれば無しの
方向で…

448 名前:那御:2004/04/20(火) 01:42
いやぁ、はるらさまGJ!

相変わらず人気抜群の盧植先生、そして最強(笑。
両名、「頭はさほど悪くないのに授業を聞かないからできない」を地で行ってますな。
そして言い訳でスベりまくる二人に爆笑。

449 名前:国重高暁:2004/04/20(火) 16:41
■■ 将軍の飼い方 ■■

「呂奉先さん、いらっしゃいますか?」
「いるよ。入っといで」
 いつもどおりのぶっきらぼうな口調で、安楽いすの呂布は来客を室内に迎えた。

 ここは、下ヒ棟の徐州校区総代室。
 元来の校区総代である劉備が、関羽らを率いて袁術を攻めた隙に、棟を守っていた張飛らを呂布が駆逐し、この地を制圧したのである。
「そりゃそうと、あんたはどこの何者よ?」
「お初にお目にかかります。私は、蒼天会の役員で韓胤と申します」
「そ、蒼天会?!」と呂布はマルボロを一服噴かした。
「蒼天会って、もはや袁グループのお嬢様に乗っ取られるほど権威が墜ちてるじゃんか。今更そんなとこから使いをよこすなんて……一体どういう風の吹き回し?」
「申し上げます。実は、その袁お嬢様が、妹をあなたのプティスールにしたいとの思し召しで……」
「プティフール?! 旨そうじゃん。あたいにもちょうだい」
「いえ、そうではございません。プティスール、つまり、妹分にしていただきたいので……」
「あんたを?」
「私ではございません。袁お嬢様の妹でございます」
 袁お嬢様とは、もちろん、先日から蒼天会長を勝手に名乗り始めた袁術のこと。
 自分の宿敵たる劉備を呂布が庇護したので、妹を彼女のプティスールにさせて懐柔し、地盤の安定を図ろうというのである。

 しかし、呂布は首を縦に振らなかった。
「韓胤ちゃん、あたいをプティスールなんか取る柄だと思って?」
「では、一昨年、丁建陽さんのプティスールになられたのはどこのたれでしょう?」
「うっ……」呂布は困惑した。
 丁建陽は名を原といい、もと生徒会執行部員の一人である。
 しかし、董卓が会長職を奪うと、プティスールの呂布に裏切られ、階級章まで剥奪され、今春、失意のうちに高等部を卒業していた。
「確かに、丁先輩はあたいのグランスールだったけど……あんなもん、出世の手がかりにすぎなかったわ!」
「奉先さん、なんということを……」
「とにかく、嫌といったら嫌だかんね!」
「あの、ケホッ……そんなに、ケホッ、ケホッ……嫌ですか?」
 呂布の噴き出す紫煙に咽びながら、韓胤は更に言葉を続けた。
「袁お嬢様は、妹をプティスールにする見返りとして、あなたを蒼天会書記に任命するとの思し召しですが……」
「そんなもんに釣られるあたいじゃないわよ。さあ、とっととお帰り!」
「奉先さん。あくまで固辞するのでしたら、私自らの手であなたの階級章を……」
「聞き分けのない娘ね。みんな、やっておしまい!」
 呂布の号令である。たちまち、室内のそこかしこに隠れていた彼女の部下たちが次から次へ飛び出し、逃げ帰ろうとする韓胤を、あっという間にしばきあげた。
 捕縛された韓胤は階級章を剥奪された上、制服を引き裂かれ、実にあられもない姿となったのである。

 翌日、呂布の部下の一人・陳登は韓胤を連行し、許昌棟の「蒼天通信」編集室へ乗り込んだ。
「編集長、いらっしゃいますか?」
「いるわよ。入っといで」呂布そっくりの応対である。
「お久しぶりです。下ヒ棟の陳登と申します」
「あら、こちらこそ……って、その縛られてる娘は一体?」
 編集長の曹操が韓胤に目配せすると、それまで押し黙っていた彼女が漸く口を開いた。
「韓胤でございます。南陽棟の袁お嬢様の思し召しで、彼女の妹をプティスールにしていただくべく、呂奉先さんの所へ参ったのですが……」
 ここで、陳登がすかさず縄目を解く。
「固く拒絶された上、私をこのような姿に……シク、シク」
 慟哭する韓胤の制服はズタボロに裂かれ、階級章もついていなかった。
「さすが奉先ちゃん、ひどい仕打ちね……それはそうと、元龍ちゃん」
「はい?」曹操の突然の質問に、陳登は驚きを隠せない。
「将軍の飼い方について、あなたはどうお考えかしら?」
「しょ、将軍の飼い方ですか……」彼女はしばし考え込んだ。

 やがて、陳登は自分の脳内を整理すると、曹操にこう語った。
「将軍を飼うのは、虎を飼うようなもんだとわたしは考えてます」
「それはなぜかしら?」
「満腹時、つまり任務を負ってる時はいいんですが、空腹時、つまり任務のない時は、ひたすら暴れ回って手がつけられません」
「なるほど……」と曹操が小さくうなずいた次の瞬間、彼女の反論が陳登を襲った。
「あいにく、わたしはそうは思わないわ」
「とおっしゃいますと?」
「将軍を飼うのは、鷹を飼うようなもんよ」
「と、鳥の鷹……ですか?」
「ええ、そうよ」
「それはなぜでしょう?」
「獲物、つまり野望があるうちは必要だけど、それがなくなれば不要になっちゃうからよ」
「正に『狡兎死して走狗烹らる』ってわけですね」
「そういうこと」
 曹操は私見を説き終えると、大きく伸びをしてから、傍らの缶コーラを一気に空けた。

 続いて、陳登が先刻とあべこべに曹操へ質問する。
「孟徳さん。あなたは、呂奉先さんをどんな方だと思いますか?」
「うーん、あいつは……ボブ=サップみたいな娘ね。タイマンで勝負させたら、かなうやつなどたれもいやしない。蒼天じゅうが『学園に呂布あり』などと誉めそやすのもうべなるかなって感じ」
 曹操の回答は正鵠を射ていた。実際、呂布は「鬼姫」と渾名されていて、喧嘩の強さはおろかバイクの運転技術も学園一……というのが専らの評判である。
 しかし、イバラにもとげあり。
 陳登は、そんな彼女の無二の汚点を見抜いていた。
「あいにく、わたしはそうは思いませんね」
「っていうと?」
「はっきり言って、彼女は……接着剤みたいな娘です!」
「せ、接着剤?!」
 狐につままれたような曹操に、陳登は呂布の本心を打ち明ける。
「呂奉先さんは、ただ強いだけで計画性のかけらもないんです。目先の利益に流されるまま、昨日はあの娘、今日はこの娘と接着を繰り返してきました」
「それで?」
「新学期に入ってからも、劉玄徳さんを追い落として徐州校区総代の座を奪い、ただ今は南陽棟の袁お嬢様を飛ばして、蒼天会長の称号を我が手に収めんと必死になってます」
「ふーん……それで、あたしにどうしろと?」
「孟徳さん! 彼女を飛ばすため、早急に軍を下ヒ棟へ差し向けてください。わたし、いざとなればあなたに寝返りますから」
「わかったわ。南陽棟を奪う前に下ヒ棟を押さえとけば、いい行きがけの駄賃になるし」
 一礼すると、曹操は何やら文書を作り始めた。
「元龍ちゃん、今日は奉先ちゃんの本心を暴いてくれてありがとう……さあ、今すぐこれへサインして」
 陳登は、彼女の示した文書に目を通すと、二つ返事で署名捺印した。
 新たなる広陵棟長の誕生が、「鬼姫」退学の端緒を開いた瞬間であった。

        糸冬

450 名前:国重高暁:2004/04/20(火) 16:54
いかがでしたでしょうか。
今回の出典は「綱鑑」です。
曹操と陳登との談義が実に
面白いので、SS化してみました。
政略結婚については公式設定がない(?)
ようなので、「マリア様がみてる」風に
「スール(義姉妹)の契り」と表現して
みましたが……これで宜しかったでしょうか?

以上、国重でした。

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