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■ ★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★

470 名前:岡本:2004/04/25(日) 16:12
〜 移ろい行くもの、受け継がれるもの 〜

学園三国志の舞台となった時期は、まさに激動の時期であった。学園運営活動に対する価値観や行動理念が学年ごとにくっきりと色濃く分かれ、主たる統治形態に固定概念など存在せず、時流に流されるがごとく、様変わりしていった。
末期の連合生徒会で声望があったのは、双璧といわれた皇甫嵩に朱儁、気骨の文官・盧植、北方の監視者・丁原。政務では千里の駒といわれた王佐の才・王允、カムロと実務の調整役として重きをなした袁隗。やり方に違いはあったとはいえ、彼女らは当時の連合生徒会を支える屋台骨であったはずである。が、如何に個人として優れていようと、その人物の価値観を取り巻く情勢や時の流れが許さない場合、表舞台から駆逐され退場せざるを得ないのが歴史というものであろう。彼女らが学園、蒼天会や生徒会にかけた思いにも関わらず、黄巾事件や菫卓の専横に示されるように、既に連合生徒会には自力で学園を統率するだけの能力を失っていた。それが各校区の総代・生徒会会長や地区長の独立を呼び起こし、群雄割拠の事態を招いたともいえる。結果、彼女らは連合生徒会と象徴たる蒼天会の権威失墜を回復することかなわず、学園の表舞台から不遇のままに消え去ることとなった。

彼女らにとって変わって、群雄割拠の時節に学園の表舞台に上がったのは、袁紹・袁術姉妹や公孫瓉に代表される世代である。彼女らは蒼天会や連合生徒会の無力さを肌で感じて中央から脱却した経緯を持つ。それぞれ、基盤としたものは各地に連綿と受け継がれた名声であったり辺境守備戦の実績であったりしたが、蒼天会に依存しない実力を背景に独自の秩序だてを模索していた。一面、実力が物を言う時節に突入したわけであるが、力のみで泳ぎきれるほど甘くも無かった。公孫瓉は白馬義従と呼ばれ恐れられた当時随一の機動戦力を有していたものの、劉虞を問答無用で飛ばしたことなどで政治的な失敗が重なって諸勢力からそっぽを向かれ、結局は袁紹との政治力や統治能力、声望も含めた総力戦で敗れ去った。袁術は、袁家の権威のみでは求心力には決定的にかけるということに気づかず、地道に自勢力の運営を行って地力を付けることを怠り、諸勢力間の叩きあいで勢力を減退させ、退場することになった。

残った北方の巨人・袁紹は最大勢力となり無敵と思われた。だが、彼女ですら、時流を読み、波に乗った姦雄・曹操の前に激闘の末、敗れた。曹操は、最初は袁紹の下働きから始まったものの、学園の混迷がいまだ深い中、勢力間の権力闘争に参加することで徐々に力を蓄えた。どの勢力も、万人の総意として蒼天学園全体に対し自己の権威を確固たる物と認めさせる根拠は薄弱であった。その点を見据えて、蓄えた実力だけをあてにするのでなく、流浪していた蒼天会会長・劉協を擁立して権威面での補強を行い、のし上がっていったのが曹操というわけである。
強大な群雄がサバイバルレースから脱落した中、リタイア必至と見られながらも、今なお駆け続けている弱小勢力の主がいる。劉備、あだ名は玄徳。
盧植門下生であり、公孫瓉の後輩でもある。が、彼女の行動理念や価値観は、この2人とは全く違っていた。それが全てとは言わないが、生き残った原因のひとつであることは間違いあるまい。
「うちはうちや。蒼天学園や連合生徒会についての考え方や価値観もまるで違うしな。第一、盧植先生や伯珪先輩自身が、そんなことは望んでへんかったやろし。」

だが、変化の渦中においても連綿と受け継がれるものはあった。学園生活にかける思い、熱意である。
“おまえの思うようにやれ。だけど最後くらい、先輩面はさせろ。”
徐州校区生徒会会長・陶謙の厄介になると決めて、公孫瓉の元から離れることを決意し別れの挨拶に赴いたとき、公孫瓉はそういって、身に付けていたクロスタイを外して劉備に渡したものだった。丁度、公孫瓉と劉備の活動方針や考え方にすれ違いが見え始めていたころだった。袂を分かつことを劉備が必要以上に気に病まないように、せめてさっぱりと送り出してやりたいという、妹分に対する気遣いだったのだろう。己の信念を胸に駆けようとしている者同士だからこそ理解できる相似と相違。
「正しいか正しくないか、時節に合ってたか合ってなかったかは別にして、一所懸命、自分の信じるものを貫こうと頑張った人らがこの蒼天学園にはいた。それだけは忘れとうないし、そういう気持ちは後輩のうちらが引き継いでいかないかんことやと思うんや。」
盧植、公孫瓉、陶謙、袁紹、劉表。
劉備がこれまで厄介になった先輩達である。

劉備は、引退したり中道で果てたりした彼女らの思いを受け継ぐかのように、彼女らに由来するものをその都度身に付けていた。盧植からは張り扇。公孫瓉からはクロスタイを。そして、陶謙、袁紹、劉表からは新しくあつらえて貰った伊達眼鏡、総帥旗の旗竿に赤パーカーを。
それらを身に付けていると、苦難をものともせず学園生活を精一杯に駆け抜けた彼女らの思いが感じられる。それが劉備の力になる。
過去となってしまった人物だけではない。劉備と共に歩み続けてきた者達。自身の未来を劉備に預けようと集ってくる者達。
彼女らと思いと共に、玄徳は学園を駆ける。

帰宅部連合の門出のこの日。
指示を仰がんとする面々を前に、届いたばかりの帰宅部連合総帥旗を担いで号令をかける。
「皆の衆、ほな行こか!」
数多の先人たちの思いをはらんだかのように、帰宅部連合総帥旗が“宅”の緑字も鮮やかに蒼天に翻った。

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