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■ ★しょーとれんじすと〜り〜スレッド★

1 名前:★ぐっこ:2002/02/07(木) 00:41
はい。こんなの作っちゃいます。
要するに、正式なストーリーとして投稿するほどの長さでない、
小ネタ、ショートストーリー投稿スレッドです。(長文も構わないですが)
常連様、一見様問わず、ココにありったけの妄想をぶち込むべし!
投降原則として、

1.なるべく設定に沿ってくれたら嬉しいな。
2.該当キャラの過去ログ一応見て頂いたら幸せです。
3.isweb規約を踏み外さないでください…。
4.愛を込めて萌えちゃってください。
5.空気を読む…。

とりあえず、こんな具合でしょうか〜。
基本、読み切り1作品。なるべく引きは避けましょう。
だいたい50行を越すと自動省略表示になりますが、
容量自体はたしか一回10キロくらいまでオッケーのはず。
(※軽く100行ぶんくらい…(;^_^A)、安心して投稿を。
省略表示がダウトな方は、何回かに分けて投稿してください。
飛び入り思いつき一発ネタ等も大歓迎。

あと、援護挿絵職人募集(;^_^A  旧掲示板を仮アプロダにしますので、↓
http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi target=_blank>http://isweb41.infoseek.co.jp/novel/gaksan1/cgi-bin/upboard/upboard.cgi
にアップして、画像URLを直接貼ってくださいませ〜。
作品に対する感想等もこのスレ内でオッケーですが、なるべくsage進行で
お願いいたします。

ではお約束ですが、またーりモードでゆきましょう!

949 名前:弐師:2006/08/26(土) 15:30
「あ、あの・・・有り難うございました」
「・・・」
「えっと、お名前を聞かせてもらえませんか?」
「・・・公孫伯珪」
「え・・・!?」

名前は聞いたことがある。北平の雄、公孫伯珪。
幽州、いや、中華市では、その名は鳴り響いていると言っても良い。


曰く「冷酷非道、血も涙もない外道」

だが、今目の前にいる人物からは全く違った印象を受けた。
確かに顔は綺麗で、逆にそれは人間らしさ、暖かさを感じさせない類の美しさだった。
一目見た人が、冷たそうと感じるのも無理はないだろう。

しかしその瞳だけは、何かを失ってしまったような寂しそうなものだった。

この人の傷を、痛みを、治してあげたい。開いた穴を埋めてあげたい。そばにいてあげたい、そう思わせるような、悲しい瞳――――――――――――


「一人で帰れる?家は何処かな?」
「えっと・・・あの・・・あたしを北平棟まで連れていって下さい!」

伯珪は、一瞬きょとんとした顔になった。
いきなり予期していないことを言われてしまったのだから当然と言えば当然なのだが。
と、いうより関靖の発した言葉はまず質問の答えにすらなっていない。
しかし、彼女はすぐに元の表情に戻った。

「駄目だ。危なすぎる。今、北平は戦闘の準備に入っている。逆に言えば周りから攻められるかもしれないと言うことだ」
「あ、戦いの準備とかならあたし計算とかそんなの得意ですし!
それに・・・あなたのお役に立ちたいと思ったんです、駄目でしょうか・・・?」

今度は伯珪は困った顔になる。今の彼女の表情をこんなにも変えられるのは関靖くらいな物だろう。
彼女はじっと関靖の瞳を見つめた。そして、相手に諦める気がないことが分かったのだろう、今度は呆れ顔になった。

「わかった。だが、役に立たなかったら帰って貰うよ?」
「分かりました!伯珪さま!」
「「さま」って貴女ねぇ・・・」
「え、ならご主人様とか・・・」
「・・・「さま」でいい。ところで貴女の名前は?」
「関靖・・・関士起です」

「士起、ね。分かった」

そう言うと伯珪はもう一つヘルメットを取り出して関靖に投げてよこした。
今度は、関靖が戸惑う番だった。

「後ろに乗って。ちゃんと捕まらないと落ちちゃうから気をつけるようにね」
「は、はい!」


「何やら、妙なことになってしまったな」とキーを刺しながら伯珪は思わずつぶやいた。
だが、不思議と不快感はなかった。逆に何か懐かしさ、安らぎすら感じた気がした。

それはあの日、髪を切ったとき以来久しぶりに抱く感情だった。

エンジンがかかった。関靖を後ろにのせて発進する。
そういえば、誰かを後ろに乗せて運転するのは、いつか越を乗せて以来だな、と伯珪は思った。

950 名前:弐師:2006/08/26(土) 15:35
明後日で夏期補修が終わります♪
つまり始業式・・・orz

>韓芳様

緊張した、険悪な雰囲気がびしばし伝わってまいりました。
「ふと呂布は窓の外を見た。
曇っているのか、真っ暗で星は見えなかった。」
最後の一文がとても印象に残りました。
とってもいい感じですね、続きが楽しみです!

ではでは

951 名前:冷霊:2006/09/14(木) 15:11
葭萌の夜〜白水陥落・後〜

「冷苞、トウ賢!二人とも待ちなさい!」
「だから東州じゃなくてオレら二人ならいいんでしょう?」
「二人も含めて東州は、タマちゃんの命令があるまで動いちゃダメなんですよ〜?」
冷苞とトウ賢は扉の前に立ち塞がる扶禁と向存を見下ろした。
二人の瞳にあるのは決意の色。
だが、行かせたら劉備に大義名分を与えてしまうだけではない。
二人をも失うことになるだろう。
成都からの連絡では、劉璋宛に楊懐と高沛が闇討ちを図ったので返り討ちにしたという書状が届いていた。
文面は丁寧であったが、内容は明らかな宣戦布告であった。
「関羽に張飛すら連れてきてない、敵は荊州の新兵ばっか……躊躇う理由は何処にあるんです!」
冷苞が拳を壁を叩きつける。
「心配要りませんって。敵の内情もこうして姉貴から……」
「残念だけど、子敬も永年や孝直と共謀してたそうよ」
扶禁の言葉にトウ賢の表情が凍る。
「……マジかよ……くそっ!」
トウ賢が壁を蹴飛ばす。
トウ賢にとって孟達は親戚であり、姉のような存在であった。
今でこそ活躍の場は異なるが、幼い頃は良く共に遊んだものだ。
「……他に内通者は?」
冷苞が尋ねる。
「まだ調査中。でも、大半の連中は親劉備派になってるだろうし期待するだけ無駄よ」
「劉備さん、あちこちのサークルに挨拶してましたからねぇ〜」
向存が徐に紙束を冷苞へと渡す。
それは益州校区に在籍する全メンバーのリストであった。
荊州から流れてきた連中もいた為かかなりの厚さがある。
「……先輩、もしかして全部……」
「ふぇ?」
向存はきょとんとした顔で冷苞を見つめ返す。
「ああ、大丈夫だよ。扶禁にも手伝って貰ったし、半分は黄権や王累に任せてるから〜」
笑顔だが目には疲れの色が見える。おそらく寝てないのだろう。
「とにかく信用出来るのは張任に厳姉に……ま、半分もいるかどうかしらね」
扶禁が溜息を付く。
「……なら成都棟に行ってきます。タマさんに許可を貰ってくれば……」
「その必要はありません!」
バァンと音を立てて扉が開けられた。
そこに立っていたのは劉循。
「循?一体どういう……」
冷苞の言葉を遮り、劉循は言葉を続ける。
「お姉ちゃんがやっと決めてくれたんです!劉備さんを相手に戦うって……益州校区を守ってみせるって!」
「よし!」
冷苞が待ってましたとばかりに手を打った。
「タマちゃんからオッケーが出たなら、もう大丈夫ですねぇ〜」
「そうね……今から反撃よ。で、具体的にはどう動くの?」
扶禁が視線を劉循に戻す。
「えっと、扶禁さんと向存さんは葭萌の奪還、冷苞とトウ賢は私たちとここを拠点にして守るって!」
「そう……わかったわ。守るならフ水門が鍵になるから注意して。アタシ達はロウ水経由で狙うから……頼んだわよ!」
「了解です。劉備の階級章……オレらで必ず取ってみせます!」
冷苞が練習用の模造刀を手に取る。
普通より長めに拵えて貰った特注品である。
頼むときにも一悶着あったが、今は頼んでおいて良かったと思える。
「無理はしちゃ駄目ですよ〜?相手には件の鳳雛もいるって聞いてますし〜」
向存が心配そうに三人を見る。
「大丈夫です!劉カイさんや張任お姉さまも応援に駆け付けるって言ってましたし!」
「張任ねぇ……へぇ。張り切ってた理由はそういうことか」
冷苞がニヤリと笑みを浮かべる。
「べ、別にそういうわけじゃ……」
思わず小さくなって赤面する劉循。相変わらず判り易い娘である。
「とにかく時間があまり無いですし、つもる話は帰ってからしましょうね〜?」
向存が冷苞の背中をポンと叩く。
「あ、そうですね……。んじゃ、張任さんが来るまで準備しとくか。な、トウ賢、循!」
「はいっ!」
「ん?ああ、りょーかい」
元気良く答える劉循、そして生返事を返すトウ賢。
四人はそれぞれに出立の準備を始める。
「劉備かー……」
少しだけ広く感じる部室の中、トウ賢は一人呟いた。

    To Be Continued to Battle of Husui & Kabou

952 名前:冷霊:2006/09/14(木) 15:36
就活終了ー、その勢いで書き上げてしまいました。
タイトルの通り、白水門のその後のお話です。
勢いが続けば、一気にフ水まで書ければなぁ〜……と。
劉闡は一時退場、次は一年(学三では一ヶ月?)に渡って劉循に頑張ってもらわねばw

>韓芳様
お疲れ様ですー。
強いが故に見えないものってありますよねぇ。
呂布とかは馬上の将軍だったから、余計にそうだったのかもしれませんが。
緩衝材の役割を務められる人物がいれば……と度々思ってしまいます。
侯成や魏続、宋憲らの今後の動きが気になるところですねー。

>弐師様
始業式……懐かしい響きですw
ファイトですよー。
関靖の行動に思わず焦る伯珪さん、ちょっと想像してクスリと笑ってしまいました。
でも、関靖と伯珪の互いの心が何だかじんわりと伝わってきます。
北平を巡る争いの中での関靖の今後、気になりますねー。

953 名前:韓芳:2006/09/18(月) 01:57
咲かぬ花
  終章 さよならの言葉

あれから数日が経ったが、事態は一向に進歩しなかった。いや、むしろ悪化していた。
呂布の候成解雇は、陳宮の裏工作により何とか降格処分で済んだが、あれ以来、下丕棟には会話と言う会話が存在しなくなった。皆、報告以外はほぼ無言だった。

「・・・ついに来たのね。」
その報告を聞いたのは昼食を終えてすぐの頃だった。
――――曹操・劉備連合、侵攻の気配有り
「呂布様より伝言です。放課後すぐに集合とのこと。」
「分かった。ご苦労様。」
「はっ。」
伝令が廊下を急いでかけて行った。
「・・・まるで図ったかのようなタイミングね・・・ 密偵でも潜んでいたのかしら・・・。」
高順に少し嫌な予感がよぎった。

放課後、高順が棟長室へ行くと、主だった面々はすでにそろっていた。
「遅かったじゃない。高順が最後なんて珍しいじゃない。」
「申し訳ありません。」
「いいわ、ちょうどこれからだし。陳宮、作戦は?」
この戦闘前の重苦しい中、呂布のみ元気だった。この状況の中、ただ戦闘を楽しもうとするその真意は誰にも分からなかった。
「作戦は特にありません。3階を呂布様と高順に固めてもらい、下の階が敵を押していたら加勢してそのまま突撃してください。もしもの時の為に、私が3階に待機しておきます。2階は、魏続と宋憲、候成に固めてもらいます。貴方たちも同様に、下の階が敵を押しているようならば、呂布様と高順と共に敵へ突撃。その他諸将は、半々に分かれて1階と下丕棟周辺を固めてください。」
「了解しました。」
諸将が指示を受け、部屋を出ようとした時・・・
「何で私は留守番なの〜?」
呂布が不満を言い始めた。だが、これはいつもの事で、皆少し飽き飽きしていた。
「留守番ではありません。それに、守りの戦いで軽々しく総大将が最前線で戦ってはいけません。もし捕らえられたらどうするのです?」
「大丈夫だって!現に今こうして――」
「駄目です!」
陳宮の睨み付ける様な視線と、周りからの冷たい視線に、呂布は仕方なく作戦を了承した。
「・・・こほん。でわ、皆の武運を祈るよ!」
「はっ!」
皆、勢い良く棟長室を出て行く。いつかのことを忘れようとするかのように・・・
―――ついに戦闘が始まった。
高順は窓から眺めていたが、外の戦況は明らかに劣勢であった。
廊下を伝令がバタバタと駆けていく。嫌な予感は増すばかりだった。

5時を過ぎた頃に、微かに下の階から騒ぎ声が聞こえた。どうやら1階に侵入されたようだ。
「だらしない、といったら可哀想だけど、これで打って出られなくなったわね・・・」
高順は、伝令の報告を聞きながらつい言葉を漏らしてしまった。
「・・・あの〜、高順様?」
「どうかした?」
「魏続様がお呼びです。何か深刻な顔をしてましたが・・・」
「・・・分かった。すぐ行くわ。」
「では、失礼します!」
深刻な顔?一体何があったのだろうか?高順の不安は頂点に達しようとしていた。

2階へ降りると、騒ぎの声がかなり大きくなった。下は大混戦のようだ。
ふと近くの教室を覗くと、ぼんやりと魏続が窓を眺めていた。
「魏続!何かあったの?」
魏続は、はっとした様子で高順を見ると、
「実は、その・・・」
と、うやむやな返事をした。
「・・・はっきり言ってみなよ。」
こうは言ったものの、正直なところ、自分の方が緊張しているように感じた。
「じゃあ、言うよ・・・けど、その前に・・・!」
ふっと後ろに人の気配を感じた。振り向くと、それは宋憲と候成だった。
「もう、脅かさないでよ〜。」
「脅かしじゃないよ。脅しだよ。」
魏続ははっきりと言い放った。

「脅しって・・・一体何の――」
突然の出来事で、高順は何もできなかった。高順は宋憲と候成に取り押さえられ、手足を縛られていた。
「一体どういうつもり!何故こんなことをっ!!」
「・・・もう、疲れたのよ・・・」
候成は静かに話し出した。
「今までこの軍団が、最強で最高の存在だと信じてきた。だからこそ、ここまで付いてきた。けど、それは違った。本当は・・・本当は、ただ呂布が自分の武をこの学園に見せ付けるだけのものだった!周りのみんなを信用せず、信じるのは自分の武だけなのよ!・・・そんなの、悲しすぎるよ・・・」
候成は泣いていた。高順は、胸が苦しくなった。
「・・・それで・・・ついに、決心が付いたの。」
「決心・・・?」
「そう・・・あなたと陳宮を捕らえて曹操と劉備を引き込む。それで、この戦いも終わりよ・・・」
「・・・」
「でも、あなたも投降するのなら・・・曹操と劉備に会ったときに話してみるわ。」
高順は悩んでいた。自分自身、確かに呂布に疑いを持っていた。だが、ここでその疑いを晴らしてよいものか、と。そして―――
「私は・・・・・・ごめん。投降は、出来ない」
「何故?あんなやつの為に何故!?」
宋憲の目には怒りと共に、涙が光っていた。
「宋憲、落ち着いて。・・・お願い高順、あなたの忠誠は認めるわ。けど、この状況でその選択は・・・」
「ごめんね、魏続。泣かないで。私は・・・たとえあんな人でも・・・好きだった。この軍団が・・・好きだったのよ。この軍団が終わるとき、それは、私の終わるときなの。」
高順もいつの間にか涙が出ていた。
「・・・さあ、陳宮を捕らえて来なさい。終わらせるんでしょ?この、戦いを・・・」
「・・・宋憲、候成、お願い・・・」
宋憲と候成は3階へと上って行った。魏続は2人が陳宮を捕らえてくるまで、ずっと高順のそばで泣いていた。さよならは、お互い言わなかった。

954 名前:韓芳:2006/09/18(月) 02:08
とりあえず、完結です。
間の数日間は外伝、と言うことで・・・(汗
キャラが初めと違う気が・・・ orz

>弐師様
私は受験生ですw
お互い新学期頑張りましょうね〜w
伯珪さん・・・カッコよすぎです><
いつか、こんな風になれたらなぁ・・・(無理

>冷霊様
就活お疲れ様です〜。
勢いで書けるなんて凄いです・・・
その点見習わせていただきますね。

955 名前:北畠蒼陽:2006/09/20(水) 05:07
学園史を彩った猛獣、呂布がトんだというニュースは瞬く間に学園中を駆け巡った。
その存在の巨大さは誰もが知り、そして誰もが少なからず影響を受けた。
そえはもちろん彼女に近しかった者たちにも……


猛獣の系譜


山中を3人の少女がこわごわと歩を勧めている。
「ね、ねぇ……ここはやばいって」
「う、うん……ねぇ、帰らない?」
後ろを歩く2人が前を進む1人に向かって声をかける。
後ろを行くのは宋憲、侯成。
前を行くのは魏続。
呂布を裏切った、という悪名の果てに彼女たちはこんな場所にいた。
こんな場所……
青州校区、泰山……
学内において神聖とされる山中に呂布亡き後、立てこもり頑強に抵抗する少女がいた。
少女は呂布の乱の際に呂布に味方し曹操に幾度となく痛い思いをさせ、乱終結後、曹操はその少女に賞金までかけ自分の前につれてくるよう命令した。

その少女を臧覇という。

「わ、私だって怖いんだからそんなこといわないでよ……」
泰山は臧覇のホームグラウンドであり、彼女は一時期この山を拠点とし暴れまわっていた。
自分たちがこの山中に侵入していることなどすでに察知されているだろうし、だとすればいつ何時どの瞬間に襲い掛かられても自分たちはなんの対処もできないだろう。
それでも……
「でも……臧覇さんに会わなきゃいけないんだから……がんばろ?」
「う、うん」
気丈な魏続の言葉に頷く宋憲と侯成。
呂布軍団の中核にあって、その力が最大限に発揮させた少女たちにとっても、この臧覇のテリトリー……結界と言い換えてもいい……の中で出し切る自信はない。
「そうかい。臧覇さんに会いたいのか」
どこからともなく声……3人に緊張が走る。
聞かれていたッ!?
そう認識する間もなく3人の周りを集団が取り囲んでいた。
集団の先頭にいるのは……見たことがある。臧覇の腹心である孫観や呉敦である。
「……すでに囲まれていた……?」
「そうとも、すでに囲んでいた。あんたたちは捕虜、ってわけだ……臧覇さんには合わせてやる。あの人が気に入ればキズモノにならずにすむだろーよ」
呉敦の言葉に呂布軍団時代とはまったく違う不気味な集団に3人は冷や汗を流した。

956 名前:北畠蒼陽:2006/09/20(水) 05:07
「なんだ。誰かと思えばお前らか……」
くだらなさそうに臧覇が吐き捨てる。
3人はロープで縛られ、臧覇の前につれて来られていた。
臧覇は顔の前に指を組んで、あまりにも面白くなさそうに3人を見つめる。
「一応聞いてやる。なんの用だ?」
言外に『下らないことを言ったらぶっとばす』という言葉を滲ませつつ臧覇が問いかける。
黙りこくっているわけにもいかない。
「こ、降伏を薦めにきました。曹操さんは寛大な処置を約束してらっしゃいます」
宋憲が口を開く。
「あははははははははははははははははは!」
臧覇が言葉を聴いた瞬間、笑い始める。そしてたっぷり10秒笑い……
「お前ら好きにしろ」
周りのガラの悪い連中に声をかけ、椅子から立ち上がる。
「わ、わー! ちょ、ちょっとまってください! 言葉が足りなかった! すごく足りなかったです! まーじーでー!」
一斉に立ち上がったガラの悪い連中を引き止めるように魏続が声を上げる。
「なんなんだ、お前ら。裏切り者のクセにのこのこやってきてんじゃねー。私に会っただけでもありがたいと思ってここで埋まってろ」
3人が一瞬目を交し合い、仕方なさそうに侯成が口を開く。
「確かに私たちは裏切り者って呼ばれても仕方ないです。というか実際そうですから……でももう一度同じ機会があったとしても、私は呂布を許さないです」
胡散臭そうに片眉を上げる臧覇。
「……でも信じてほしいのは……私は……私たちはみんな呂布軍団が最強だと信じて戦ってた、ってことです。たとえ曹操さんが相手だろうと負けるなんて1%たりとも考えもしなかった」
あの人は結局器じゃなかったんですけどね、と首を振る。
「だから裏切りました。あの人は最強の座から自ら降りてしまったのだから……でもあの人を最強と思った気持ちは死んでない。それは私たちや、文遠や……そして臧覇さんの中にも生き続けているはずです」
「だから最強の遺伝子を……私たちが半ばで奪ってしまったあの人の、かつてまぎれもなく最強だった気持ちだけを残していきたい……この泰山にいたらそれを残すこともできないんです」
3人はかわるがわる臧覇に言葉を投げかける。
それは明らかに足りない言葉ではあったが、それでも臧覇の気持ちを動かすのに十分な力を持っていた。
「……曹操は最強を語るに足るか?」
「十分です」
臧覇の問いに魏続が即答する。

最強を夢見る遺伝子は生き延びていく。
彼女たちがいなくなっても、次の世代に伝わっていくだろう。
それは獣の遺伝子。
猛獣の系譜は伝説の中だけでなく語り継がれていく。

957 名前:北畠蒼陽:2006/09/20(水) 05:07
韓芳様「咲かぬ花」終了記念リスペクト企画ですよー?
迷惑ですか。すいませんすいません。
ちなみにこの文章を書くのに1時間かかりました。うわぁ、文章力とかやたら落ちててびっくりデスよ。
あー、もう……

958 名前:韓芳:2006/09/20(水) 23:23
>北畠蒼陽様
迷惑どころか、嬉しすぎて風邪気味です(謎
私は終章書くのに2時間近くかかってます・・・
しかも腕落ちてるって・・・格が違う・・・ orz

本当にありがとうございましたm(_ _)m

959 名前:北畠蒼陽:2006/09/23(土) 21:22
「左回廊、弾幕薄いよ! なにやってんの!」
戦場に臧覇の声が響く。
戦場を見回した臧覇は近くに見知った顔を見つける。
「孫観、幸薄いよ! なにやってんの!」
「誰が不幸風味じゃー!?」
怒声をあげる孫観。だが同時に立ち上がった彼女の左足にどこからともなく誰かが投擲したのであろう、飛んできた木刀が直撃し、孫観はうずくまった。
「……やっぱ不幸じゃねぇか」
ぽつりと臧覇が呟く。


同門の人々のあれやこれや


孫観の左足は複雑骨折していた。それはそれは面白いくらい。

濡須口の戦いにおいて歴戦のツワモノである孫観が負傷したという報せはただちに曹操に届けられた。
「なっ!? 仲台ちゃんがぁ!?」
曹操は飛び上がってびっくりした。
報告した陳羣のほうがびっくりした。
まさかこの世に本当に『びっくりして椅子から飛び上がる人間』が存在するなんて……
10cmくらいは浮いていた。だがとりあえずそれは置いておく。
「ん〜と……仲台ってだぁれ〜?」
「孫観のことっ! ……で、仲台ちゃんは大丈夫なのっ!?」
ぼや〜っとした許チョに名前を教えておいてから曹操は陳羣を振り返る。
「はい、入院中だそうです」
つまり大丈夫じゃないのであった。

病院で看護婦さんに面会を告げ、病室を聞くとやたらいやな顔をされた。
「なんだろうね……?」
「さぁ、わかりません」
陳羣にわかるわけはないが律儀に答える。
「それより……それはなんです?」
曹操が手に持っているのはちょっと大きめの包装紙に包まれた箱。
「ん、モデルガン。喜ぶと思って」
「……喜ぶかもしれませんけど見舞いには向かないですよね」
陳羣はため息をついた。
「わぁー、いいなぁ」
少なくとも許チョには効果バツグンだった。

「……」
「……」
病室に近づくにつれ陳羣と曹操が黙りこくる。
陳羣は眉間に深い皺を刻ませて。
曹操はこれからの予感に目をきらきらさせて。
なにが、というとめちゃめちゃ騒がしかったのである。
「わははははははははは!」
「ぎゃー! 書くなー! そんなとこに書くなー!」
「うはははは! おもしれー!」
「やめれー! お前らぜってぇ死なす! 必死と書いて必ず死な……ぎゃー!」
……とかそんな感じ。
そしてその騒動の中心となった病室は予想通り孫観の病室だった。
こんな状況で病室という名詞が有効なのだとしたら、という話だが。
仏頂面の陳羣がそれでもノックする。
「やめれー!」
聞こえていないらしい。やめてほしいのはこっちだ。
「失礼しま……」
それでも一声かけてドアを開けた瞬間、なんかすごいもんが飛んできた。
すごいもん、というか病室備え付けのパイプ椅子。
「……ん」
陳羣の眼前でぴたりととまったパイプ椅子を横から受け取ったのは許チョ。陳羣はへなへなと腰を抜かした。

960 名前:北畠蒼陽:2006/09/23(土) 21:22
「あ、どもー」
ベッドに寝たまま何かを投げたであろうポーズの孫観が声をかける。いや、本当は孫観なのかどうかすらよくわからないのだが状況的に考えると間違いあるまい。
孫観(※不確定)の顔は真っ黒に塗りつぶされていた。あとギブスにも思う様落書きしてある。もう大変です。
しゃがんでいる臧覇。恐らく椅子をよけたのだろう。手にはマジック……油性か。
後ろでげらげら笑っている呉敦と尹礼。横で座ってにこにこしているのが孫観の双子の姉、孫康である。
泰山グループが勢ぞろいなのであった。
「やぁやぁ、諸君。私を抜かして騒ぐなんてひどくない?」
「お、曹操さん、書きます?」
「薦めんな、ボケー!」
臧覇の言葉に孫観(※不確定)がはしゃぐ。いや、はしゃぐのとはちょっと違うか。
「でも書くとこないねぇ」
油性マジックを受け取ったまま思案する曹操。
「大丈夫。脱がせばえぇんよ」
「そ、そうかっ!」
臧覇の囁きに天啓を得た曹操。
「だー! 脱がすってなんだ! お前、ぶっころ……お、おい、なんだよ、お前ら」
孫観(※不確定)が再びはしゃごうとして両脇を呉敦と尹礼にがっちり押さえつけられた。
「な、なぁ、冗談はやめようや?」
「はっはっは。冗談だったらもっとつけぬけたとこまでいってみようか」
呉敦が笑う。
「よ〜し、剥くぞう〜」
臧覇が指をわきわきさせ、曹操がきらきらした瞳で見つめる。
「ぎゃー! 姉ちゃん助けてー!」
唯一自由になる首を振って孫観(※不確定)が孫康に救いを求める。
「あらあら、相変わらず不幸な子」
にこにこ笑う。姉は役に立たなかった。
「待っててね、仲台ちゃん。仲台ちゃんがケガをしながらも勇敢に戦ったけど国のために今は休め、ってポエム書いたげるから。あと振威主将に昇進ね、やったぁ☆」
曹操が笑う。
「お、やったなぁ、エーシ♪」
「ちっともよくねぇー! やめろー!」

「んー?」
その音は許チョの耳にだけ届いた。
『うー』とかなんとか、そんな感じの音。
「んー……?」
何の音かとちょっと首を巡らせて……あとずさった。
そこには鬼が……

「静かにしなさいっ!」

窓ガラスがびりびりと震えるほどの大音量で注意が入った。
みんな声の方向に注目した。孫観(※不確定)なんかは半脱ぎにさせられながらそっちのほうを見た。
天下の風紀委員長、陳羣。怒りの仁王立ちである。
「まったく!」
つかつかと輪の中心まで歩み寄って……
「ここは病院ですよっ!」
手近にあったものに思い切り手を振り下ろした。
ビシ、といういやな感触が陳羣の手に伝わる。
「……?」
陳羣の手の下でギブスの石膏が割れ、孫観(※不確定)が悶絶していた。

孫観。あだ名は仲台。また一名をエーシ。
張角の乱のころから臧覇とつるみ、青州校区総代もつとめたことのある人間のあまりにもあっけない最後であった。
なむー。

961 名前:北畠蒼陽:2006/09/23(土) 21:23
0時にベッドに入ったのに4時間くらい眠れなくてベッドの中でなにをするでもなくもんもんとしてました。どうも北畠です。
今日の会社、寝不足でつれぇつれぇ。寝るかと思った。寝なかったけど。眠気に耐えてよくがんばった! 感動した!

というわけでチーム泰山の一員、孫観ちゃんです。
孫康ちゃんはチーム泰山とは一歩離れた位置に入るけど仲はいい、ってことでひとつ。

あと曹操はともかく陳羣と許チョはあれっすね、史実的にいえばイレギュラーですね。まぁ、そんな感じです。
いいんだ! 私のはいつもイレギュラーだから!

962 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:09
いち >>898-901
に  >>909-912
さん >>924-927

というわけで漸く続きですよコンチクショウ('A`)

963 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:10
−武神に挑む者−
第四部 悔悟と覚悟


(何故だ…)
黄昏に染まる冬の空を眺めながら、彼女は何度目か、そう思った。

自分に残された学園生活はあとわずか。
そのギリギリのタイミングで、ようやく光明が射してきた学園統一への道。
義姉妹が三年の長きを経て、ようやく磐石なものにしたその道は、思いもよらぬところから切り崩された。

長湖部の背信。
留守居の不手際。
(…否、責められるべきは……私の不明だ)
彼女は頭を振る。
それが憎悪すべき事由であるなら、その大元の原因が自分自身にある…関羽の聡明すぎる頭脳は、その答えをはじき出すのに時間がかからなかった。


遡る事二時間前。
先だって激闘を繰り広げ、自分と殺し合い寸前の立ち回りをやってのけたその少女が姿を現したとき、関羽もただ事ではないことを理解せざるを得なかった。
流れるような黒髪に、猫の鬚のようなクセ毛を突き出しているその少女の顔が、普段の明朗すぎる表情の面影のない顔で、単身陣門に現れたからだ。
「…降伏の申し出に来た…と言うわけではなさそうだな、姉御」
どんよりと分厚い雲に覆われ、冷たい風が吹き抜けていく寒空の下で、ふたりは向かい合っていた。
「……雲長、もう帰宅部連合に、帰る場所が荊州になくなったお……」
「…何…!?」
彼女は、予想だにしないその事態に、耳を疑った。
しかし、彼女はそれが自分たちを陥れるための方便であろうということなど、欠片も思わなかった。

何故ならその少女は彼女の幼馴染であり、中学時代は剣道部で互いの武を磨きあってきたことで、その性格は良く知っている。
この学園で志を違えたとはいえ、その大元となる部分はまったく変わっていない…それがこうして単身やってきたことで、関羽も事の重大さを思い知らずに居れなかった。

「で…出鱈目な! 何の根拠があって!」
傍に侍していた妹が、激昂の余り相手へ飛びつきになるのを、すっと手で制しながら、視線でその先を促した。
少女は、懐から一枚の紙を取り出し、差し出してきた。
それを一瞥し、関羽は彼女が言ったことが真実であることを確認した。
「そんな…長湖部が裏切るなんて…」
「承明は…江陵はどうなったのよ…」
その文書の内容に愕然とする関羽の側近達。
彼女らも、その少女の言葉が嘘偽りない真実であることを思い知らされた。
しかし関羽は、何の表情も見せずに目の前の少女と対峙したままだ。
「…姉御、これを私に知らせて…いったい私にどうしろと言うんだ…?」
「それはあたしの知るところじゃないお」
少女は頭を振る。
「だけど、これを知らせずにいたら、あたしが後悔すると思っただけだお…」
「そうか…済まない」
そのまま翻り、関羽は側近達に静かな口調で告げた。
「……全軍、現時点を持って撤退だ」
「姉さん!?」
「そんな…!」
少女達は言葉を失った。
そして、彼女が思うことをすぐに理解した。
対峙していた少女も、何かに打たれるかのように飛び出そうとする。
「雲長!」
「来るな、姉御っ!」
振り向かずとも、関羽には解っていた。
彼女であれば、恐らくはともに戦うと言ってくれるだろうという事を。
その気持ちは嬉しかった。だが、それゆえに彼女はこの言葉を告げなければならないと思っていた。
「姉御…いや、蒼天会平西主将徐晃。江陵平定ののち…改めて先日の決着、つけさせてもらうぞ」
そのまま、振り返ることなく立ち去っていく関羽の姿を見送りながら。

少女…徐晃には、これが学園で最後に見る関羽の姿のように思えてならなかった。



付き従う少女達にも言葉はない。
気丈な妹・関平も、気さくな趙累、廖淳の輩も、終始無言だった。

無理もない。現状は彼女達にとって、余りにも重い。
馬良は益州への連絡係として軍を離れて久しく、王甫は奪取した襄陽棟で蒼天会の追撃を抑える役目を請け負って此処には随行していない。
関羽が王甫を残したのも、先の出立の折に参謀役の趙累が「江陵には潘濬だけでなく王甫も残すべき」という献策を思い起こしていたからだ。関羽もその言葉を是と思ったものの、長湖部等の後背の防備に疑いを持っていなかった関羽は、王甫を奪い取った重要拠点の守りに据えるつもりでその献策を敢えて退けたのだ。
だから、今回は最も信頼の置ける腹心の一人である彼女を、押さえに残してきたのだ。彼女であれば、余程のことがなければ与えられたその地を守りきってくれるであろう…とは思っていたが。

関羽は嘆息し、自嘲する様に微笑む。
果たして、再び江陵を取り戻し、襄陽の戦線へ引き返すことが果たしてできるのか、と。


灰色の雲に覆われた冬空の行軍、ふと関羽は歩を止め、続く少女達に振り向いて呟いた。
「私の不明ゆえ、皆にもその落とし前をつけさせる様になった…赦せとは言えん…」
少女達は返す言葉もなかった。
この無念の気持ち、恐らくは最も辛いのは関羽自身であろうことは、彼女達にも痛いほど解っていた。
それなのにこうして、自分たちを気遣ってくれる関羽に、彼女達のほうが申し訳ない気持ちになっていただろう。
「…い、いえ! 捕られた物は取り返せば済むことです!」
「我ら一丸となれば、長湖部など恐れるに及びません!」
趙累と廖淳が、ありったけの気を振り絞り、それに応えてみせた。
「それに徐…姉御の話によれば、孫権のヤツが出張ってきてるんでしょう? いっそ、我々の手で孫権諸共長湖部を滅ぼしてしまいましょうよ!」
関平の言葉に、それまで重く沈んでいた少女達も、歓声で応えた。
「そうだ、長湖部ごときに!」
「この不始末は、孫権の階級章で贖わせてやる!」
「我ら関羽軍団の恐ろしさ、思い知らせてやりましょう!」
強がりであることは解っていた。
だが、ここまで来た以上は最早引き下がることは許されないのだ。だからこそ、この意気は関羽にも好ましいものに映っていたかも知れない。

孫権の親書を携えた潘濬が姿を現したのは、丁度そんな折だった。

964 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:11
鈍色の雲に赤みが射す黄昏の空の下、潘濬はその場に座していた。
「承明!」
「無事だったか!」
その姿に歓喜の声を上げる少女達。
しかし、当の潘濬は俯いたままだ。
「…御免なさい…」
その呟きに、責任感の強い彼女のこと、恐らくはこの不始末を関羽自らに裁かせるために現れたということだろう、少女達はそう思っていた。
趙累は駆け寄ってその手をとると、
「あんたが無事に逃げ延びてきたなら話は早い! 何、あんたなら必ず戻ってくると信じてたわ。大丈夫、この失敗は取り返すくらいわけない」
そう言って彼女を元気付けようとした。

元々頑固なこの少女は、度々関羽と衝突することも多かったが、それでもその強い意志と優れた内政手腕を高く評価していた関羽が江陵の守将として残したものだ。
その責務を完う出来なかったとはいえ、情状酌量の余地はいくらでもあるだろうし、こうしてやってきたということは敵の内情もすべて把握した上で来ているのだろう…趙累は、そこに一縷の期待をかけた。

しかし、彼女の期待はあっさりと打ち破られた。
「私がここに現れたのは……孫仲謀の代弁者としてなのよ…!」
「なん…だって…?」
その手を振り解かれたことよりも、趙累はむしろその言葉に大きなショックを受けた。
「貴様…ッ」
これほどまでないほどの赫怒の表情を浮かべ、関平がその獲物を手に歩み出る。
「江陵を手放したのみならず…あろうことか長湖部の使い走りか!」
「…待て」
飛び掛ろうとする妹を関羽が手で制する。
「姉さま!? 何故です!」
呆気にとられたのは何も関平だけではない。居並ぶ将士たちも、正面に立った潘濬ですらも、その関羽の行動を訝るかのようだった。

士仁、糜芳の例もあるように、関羽は軍の進退に関わるような失策を犯したものは決して許さない。
本来なら、潘濬が孫権の代理人として現れた時点でその剛拳で殴り飛ばしているだろう。趙累が先に飛び出してきたのも、先に飛び出して関羽の感情を和らげる意図もあったのだ。

だが、関羽はその気配も見せず…その表情は厳しいものであったが、奇妙に思えるほど静かでもあった。
「…話してくれ、長湖部長の口上を」
「………承知しました」
関羽に促されるまま、潘濬は持参した書状を広げると、その内容を堂々とした口調で読み上げ始めた。


関雲長に告ぐ
貴女は長湖・帰宅部連合の盟において定められた約定を、己の一存のみにおいて破り、我々の管理する備品を無断で持ち出し、あろうことかその貴重な品を使い捨ての如く放置するなど言語道断。
先の傲慢なる宣言と合わせ、帰宅部連合に対する南郡諸棟の貸与を無効とし、我らの領有に戻すものとする。

但し、このまま襄陽・樊を奪取するため蒼天会との戦闘を継続するとあらば、同盟修復の意思ありとみなし、我らは後方より帰宅部連合を支援する…


関羽は無言だった。
しかしその瞳は、遠く漢中の方向を向いている。
「…雲長様」
潘濬の言葉にも、関羽は動かない。
しかし彼女は、なおも言葉を続ける。
「江陵には尚、貴女の帰りを待ちわびている子達が、長湖部に人質として囚われているのです。彼女達も、貴女がこのまま襄陽へ戻られるということであれば、彼女らを解放して随行を許すとのこと」
趙累たちも、何故彼女がこの場に送られてきたのかを漸くにして悟った。
恐らく長湖部はそういう不穏分子を宥めるため、その中心的な人物である潘濬に関羽を説得させるために差し向けてきたのだろう。
潘濬は胆も座っており、弁も立つ。そして、何より…
「お願いです! 彼女らのために、何卒長湖部の申し出に応じていただきますように!!」
額を叩き割らんかの勢いで叩頭する潘濬に、少女達にもその苦衷を窺い知らずにいれなかった。

恐らくは潘濬も、命がけの覚悟で此処に現れたのだろう。
責任感の強い彼女であれば、此処で関羽の一身を救うことが叶うのなら、あとは全責任をとって学園を離れるつもりなのかも知れない。
直前まで怒りのあまり、目の前の少女を八つ裂きにしてやろうかというほどの気を放っていた少女達も、その姿をやるせない思いで眺めていた。

そしてそれと同時に、参謀格の趙累には、江陵を奪い取った長湖部の軍勢のシルエットが浮かび上がってきた。
いくら不安要素があったとて、あるいは長湖部側にどれほどの準備があったといえ、これほどの短時間のうちに堅牢で知られた江陵が完全に制圧されている…恐らくは、既に夷陵周辺も。
甘寧、朱治といった"仕事人"を欠く長湖の主力部隊に、呂蒙以外でこれほどの仕事をやってのける人間がいたことも驚愕すべき事実だが…さらに言えばこれは、それほど長湖部が本気であることを示唆していた。

「…姉さま」
関平の言葉にも、関羽は応えようとしない。
しばしの重苦しい沈黙を破ったのは、関羽の呟きだった。
「…我が主、漢中の君劉玄徳よ」
関羽は漢中の方へ向き直ると、その空に向けて拱手する。
「関雲長、義姉上の裁可を仰がず、我が一存にて孫権に断を下すことを…お許し下さい」
「…っ!」
その言葉に、潘濬は驚愕し…その意図を悟った。
次の瞬間、関羽はこれまで通りの覇気と威厳に満ちた表情で、全軍に号令する。
「行くぞ、目指すは長湖部長孫権の打倒、それひとつだ!」
「雲長様!」
取りすがろうとする潘濬を手で制する関羽。
振り向いた関羽は、一転してその表情を和らげる。
「…承明、貴女はなんとしてでも生き延びなさい…そして、江陵のことは貴女に託すわ。どのような結果になろうと、最後まで江陵の子たちのために尽くしなさい。それが私が貴女に与える刑罰」
「…雲長様…」
「此処からは、私が私自身に落とし前をつける戦い。貴女には関係のないことよ」
そのまま振り向きもせず、関羽は再び行軍を開始する。
あとに続く少女達もまた、無言でそのあとに続いていく。そこにどんな死地が待ち受けているかも知らず…いや、例え其処に破滅の結末しか見えていなかったとしても、彼女たちは関羽に付き従うことこそ本懐として、何も言わず従って行くことだろう。

潘濬もその姿を、振り向いて見ることは出来なかった。
そのかつての主の姿を見やることもなく、彼女は溢れる涙を拭う事もせず、天に向けて拱手する。
「雲長様…どうか、御武運を…!」
彼女は、ただそれを祈らずに居れなかった。

965 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:12
関羽軍団は包囲した長湖部員の人海戦術によってその九割が既に打ち倒されていた。
後続の部隊と分断され、既に先鋒軍に残っているのは関羽ただ一人。後方では関平、趙累、廖淳三将の奮戦空しく、既にその残り兵力もごくわずかだった。
関平は必死に姉の元へ駆けつけようとする。だが、其処に待ち受けていた寄せ手の大将は…。
「おっと、此処から先には行かせないわよ」
セミロングで、襟がはねている黒髪の小柄な少女。
潘璋軍の後詰めを任されていた朱然が、使い込まれた木刀を一本手にしてその目の前に立ちはだかった。
「長湖の走狗が! 邪魔をするなッ!」
満身創痍、その制服ブラウスも所々無残に敗れ、片腕も負傷してだらしなく垂れ下がっていても尚、関平は鬼気迫る形相で目の前の少女を睨みつけた。
だが…
「走狗、ね。でも貴様等みたいな溝鼠に比べればはるかに上等だ」
いかなる時も笑みを絶やさない、孫権をして「季節を選ばないヒマワリ」と形容される朱然の表情が…そのとき夜叉の如き表情に変わった。
「仲謀ちゃんを…あたし達が培ってきた長湖部の誇りを穢した貴様等に、この荊州学区に居場所を残してやるほどあたし等が御人好しと思ったら大間違いだ…!」
その憎悪の如き憤怒を帯びた闘気に関平もたじろいだ。
だが、それでも彼女はなおも構えて見せた。恐らくは「長湖部恐れずに足らず」という風潮が染み付いていた…それゆえに見せることが出来た気勢だろう。
「何を…こそ泥の分際でッ!」
関平が片手で振り上げてきたその一撃を、彼女は不必要なくらいに強烈な横薙ぎで一気にかち上げた。
驚愕に目を見開く関平のがら空きになった脇腹に、さらに横蹴りが見舞われる。
「うぐ…っ!」
「こんなもので足りると思うなッ!」
よろめくその身体を当身で再度突き飛ばすと、やや大仰に剣を振りかぶる朱然。

体制を崩すまいとよろめく関平は、驚愕で目を見開いた。
彼女はこのとき、己が対峙していたものが想像を絶する"怪物"であったことを、漸く理解した。

「…堕ちろやぁっ!」
大きく振りかぶられた剣が、大きく弧を描いて物凄い勢いで関平の右肩口に叩き落された。竹刀ではあったが、遠心力で凄まじい加重がかかった剣の衝撃はそれだけで関平の意識を吹き飛ばした。
立身流(たつみりゅう)を修めた朱然が必殺の一撃として放つ「豪撃(こわうち)」…この一撃をもって、帰宅部の若手エースとなるはずだった少女は戦場の露と消えた。


「関平ッ!」
その有様を捉えた趙累はその傍へ駆け寄ろうとする。
だが、尽きぬ大軍の大攻勢に彼女にも成す術はない。

武神・関羽が見出したこの「篤実なる与太者」も、決して弱いわけではない…関羽直々に一刀流の手解きを受け、その技量を認められたほどであったが、それでもこの劣勢を一人で覆すにはほど遠い。

「くそっ…どけというのが解らんのかよッ…!」
この激しい戦闘の最中、彼女たちを守っていた軍団員も全滅し、残るは彼女位だという事を悟るのにも、そうは時間はかからなかった。
そしてまた、自分たちが"長湖部"というものをどれだけ過小評価していたかということも。
それゆえ、こうなってしまった以上、自分たちには滅びの末路しか存在し得ないであろうことも。

だが、それを認めてしまうことは出来なかった。
この局面において退路を探ることが出来なかった以上は、許されるのはただひたすら前を目指すことだけ…しかし、その想いとは裏腹に、彼女の身体はどんどん後方へ追いやられてゆく。

「…いい加減…往生際が悪いとは思いませんか…?」
「…!」
その声とともに、人波の間から鋭い剣の一撃が飛んでくる。
彼女は辛うじてそれを受け止め…そして、その主の顔を見て愕然とした。
「あんたは…!」
そこにいたのは、数日前に江陵で面会した気弱そうな面影のない…その生来の凛然さを顕したその少女…陸遜がいた。
「学園に名を轟かす関羽軍団…その将たる者の最後の相手が一般生徒となれば、余りにも不憫。僭越ながら、私がその階級章、貰い受けます!」
気弱そうなその風体に似合わぬ不敵な言葉に、趙累も苦笑を隠せなかった。

彼女の中にはそのとき、一抹の後悔が浮かんでいたのかもしれない。
呂蒙の影で動いていた者が、目の前のこの少女であるという確信すると同時に…趙累はあの時、これほどのバケモノを目の前にしていながら、何故あの時にその正体を見破ることが出来なかったのか、と。
そして、彼女は剣を交えた瞬間、己の運命も悟っていたかも知れない。

「ふん…粋がるなよ小娘ッ!」
しかしそれでも、彼女は最後まで強がって見せた。最早、それが虚勢でしかないとしても。
「このあたしを謀った罪、その階級章で贖ってもらうよ!」
彼女は正眼に構えた剣から真っ直ぐ、陸遜の真眉間めがけて剣を振り下ろす。
「…出来ないことは、安易に口走るべきではないと思います」
その顔に似合わぬ冷酷な一言の、刹那の後。
陸遜の剣は僅かに速く、その剣を弾き返し…返す剣で趙累の身体を逆胴から薙ぎ払った。
(そんな…!)
がら空きになったわき腹に強烈な一撃を受け、彼女もまたうめき声ひとつ上げず大地にその身体を預けた。

966 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:12
関平と趙累が最期を迎えていた時…それと知らず潘璋はただその光景に言葉を失っていた。
戦闘に入ってから既に十五分余りを経過し、関羽軍団の軍団員はほぼ討ち果たされていたものの…肝心の関羽は討ち取るどころの騒ぎではなかった。

関羽一人をめがけて殺到する少女達の体が、まるで紙吹雪のように吹き飛ばされていく。
それが紙吹雪では断じてない事は、その剣が振るわれる度に飛び散る血飛沫が物語っていた。

それはまさに悪夢のごとき光景だった。


関羽の剛剣が振るわれるたび、少女数人が吹き飛ばされ、その一回ごとに戦闘不能者が生み出されている。
正面に立てばある者は肩を砕かれ、ある者は額を割られ、ある者は血反吐を吐いて悶絶する末路が待っていた。組み付こうとしてもその剛拳で強かに顔面を薙ぎ払われ、強烈な裏蹴りで肘や二の腕を破壊されてしまう。
何時の間にか、関羽の周囲はそうした脱落者ばかりになり始めていた。

「…なんだよ…」
潘璋はその凄惨な光景に、泣き笑いのような表情で呟く。
「こんな…こんな馬鹿な話ってあるかよ…?」
その問いに答えるもののないまま。

「関雲長、覚悟ッ!」
飛んできた怒声に、潘璋は漸く現実に引き戻された。
声の主は蒋欽。吹き飛ばされた生徒達の間を割って飛び込んできた彼女は、握り締めた鉄パイプを関羽の脳天めがけて猛然と振り下ろす。
背後から、人込みに紛れての奇襲。本来ならば、彼女ほどの猛者が好んで使うような戦法ではないはずだ。
だが一方で、蒋欽は己のプライドなどというものがこの戦いに何の利益ももたらさないことをきちんと理解していた。

もっと言えば、ここで関羽を確実にツブせなければ後がないだろうことも。
だからこそ、彼女はこの一瞬の中に総てをかけた。

次の瞬間。

鉄パイプはあらぬ方向を向いていた。
いや、あらぬ方向を向いていたのは、それを持つ蒋欽の左腕そのもの…その肩口に、関羽が振るった剣先が食い込んでいた。
「公奕さんッ!?」
その潘璋の悲鳴が届いていたかどうか。
その身体は大きく宙を舞った。

関羽は、ここまでの間、一度も振り返ることはなかった。


宙を舞うその身体に目を奪われた少女達の動きが一瞬、止まった。だが関羽はそれにさえ目もくれず、なおも眼前にある"敵"を屠りつくすために再度その剣を振り上げた。

「文珪先輩ッ!」

少女の絶叫で我に帰った潘璋は、次の瞬間思いきり地面に叩きつけられた。
いや、どこからか組み付いてきた少女とともに地面を回転しながら受身を取らされた格好だ。
その一瞬、地面に叩きつけられる太刀が見える。恐らく、その少女がいなかったら自分はとっくの昔にその餌食となっていたことは想像に難くない。
「承淵!」
覆いかぶさったその少女からは返事が無い。
恐らくは飛びついた際、同時に地面を振るわせた一撃の生み出した衝撃をもろに受け、意識を飛ばされたのだろう。潘璋はこの少女が身体を盾にしてくれたお陰で、その影響をほとんど受けずに済んだのだ。
その恐ろしい事実は、その切っ先がめり込むどころか文字通り叩き割ってるという凄まじい状況からも理解できた。

関羽は潘璋の姿を認めると、再びその切っ先を天に振りかざした。
彼女は丁奉の襟首を掴むと、横へ飛びのこうとするが…その切っ先の落ちてくる速度のほうがずっと速い。
そして動かない己の脳天めがけ、その剣が振り上げられるのを、潘璋ははっきりと見ていた。
その刃は、まるで総ての命を刈り取る死神の刃のように思えた。


だが、その刃が届くことは無かった。


自分たちと関羽の間に割り込んできたひとつの影が、その剛剣をものともせず、棒のようなもの一本で受け止めていた。
濃紺のバンダナから覗く、白金の髪。
「…これ以上」
言葉を失ったはずの少女が、声を発した。
潘璋はそのこと以上に、その声の主に心当たることにかえって驚愕を隠せなかった。
「これ以上、貴様如きに好きにさせるかぁぁっ!」
かつての孫策直属の側近の一人で、飛び切り不器用な性格の才媛と…目の前の少女のイメージが、潘璋の中でそのときひとつになった。


(続く)

967 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 00:29
仕事に就いたことでさらに出現率が低下した感じの海月です><

まーあれだ、イレギュラー言うなら最高に酷いのはむしろ私かもしれません('A`)
お察しになられる方も恐らく多いでしょうが、馬忠の正体は…


>北畠蒼陽様
ちょwwwなんで陳羣がトドメ刺してんwwwwww

こういうお約束っぽいオチ大好きですよw
史実準拠であることも大事だと思うけど、このくらいは受け入れて然るべきではなかろうかと。


そして韓芳様の呂布軍団の最期に、冷霊様の進行中の益州東州軍団SS…くそう、どいつもこいつも濃すぎだコノヤロー(≧▽≦)
私もさっさと関羽軍団を乙らせるべく奮闘中ですが、それこそ欣太センセみたく関さんがプロット潰しに来はるんですよ誰かボスケテww

968 名前:北畠蒼陽:2006/10/08(日) 12:11
>海月 亮様
おかおつおつかれさまです(それぞれ帰還と就職と投稿について
そして、関さん……っ!

正直蒼天の最後はファンタジーになっちゃってたんで、あんまり印象ってないんですよねぇ、個人的には。
ラスト近くになって一番すきなのは潘濬なんすよー。
ま、ワタクシの個人的な志向はどうでもいいんですがねー、ここでの潘濬ちゃんがやっぱいいねぇ〜。
あと『潘濬』を『いんしゅん』って打ち込んで『あれ、変換されないなぁ?』ってカチャカチャやってた私とか、いっぺん家財を泥棒に持っていかれるとよいよ。いや、やられましたが。

それはともかく大作おつさまですたよぅ。

969 名前:海月 亮:2006/10/08(日) 18:36
>潘濬
っていうと四百話のアレですな。
あのシーンは関さんの一挙一動に先ず目が行くけど、こっそり潘濬もいい役どころなんですよね。関平が哀れとしか思えない('A`)www

横光はいたんだかいないんだかで、吉川だと完全に糜芳&士仁の同類扱いで終わってますからねぇ…正史に伝もあるのにねぇ。

970 名前:韓芳:2006/10/09(月) 22:43
>北畠蒼陽様
ナイスオチ♪
いや、いい仕事してますね〜(あの人風
陳羣いい味出しすぎですw

私にはこういった文章書けませんが、読んでて面白い文もいいですよね〜。

>海月 亮様
第四部お疲れ様です〜。

潘濬って、いい役どころなんですね…知らなかった… orz
横光とか(私の読んだ)演義には潘濬とか趙累とかなんて1行出たかどうかくらいでしたんで^^;
いや〜、勉強になりました。

971 名前:海月 亮:2006/10/14(土) 00:13
^^ノシ

潘濬は横光で名前のみ、吉川英治ではやはり離反組の一人として登場してます。
まぁ流石に趙累まではいませんでしたが…

潘濬の活躍ぶりは「蒼天航路」をぜひ^^^^^



さて、五部はどうまとめようかのう…。

972 名前:北畠蒼陽:2006/10/19(木) 21:25
「貴様……何様のつもりだ!」
「貴女の上官様のつもりよ。異論があるのなら会議室から出ておいきなさい」
会議室は2人の少女のにらみ合いによって緊迫の空気を帯びていた。
しかし部下であるほうの少女が足音を荒くして部屋から出て行くことによってその空気も若干和らいだものになる。
しかし……
「……よかったんですか?」
にらまれていた上官の傍らにいた少女、王基が呟くように尋ねる。
「まぁね……あれで十分」
それに答える声は獰猛な笑みを帯びていた。
「あなたや、文舒は近い将来、私に感謝することになるわよ……もっとも私は私の血筋が謀略の血筋だってことを思い知らされてへこむことになるんだけどね」
謀略の家系の、現段階でその頂点に立つ少女、王凌は自信に満ちた笑みを浮かべた。


謀の華


その月、長湖部におけるアンタッチャブル、陸遜が引退することになる。
同月、南津の橋の欄干の銅像が落雷により焼け落ちた。ちなみにこの銅像は『全裸の男が帽子だけかぶってサックスを吹きながら歩いている』というシロモノだったのでみんな銅像が焼け落ちたことを内心喜んだ。
その翌週にはおりからの大雨による床上浸水で長沙棟に通う学生たちが被害を受けた。
そんな不穏な空気の中、長湖部の1人の少女が唇をなめた。

「……じゃ、もっかい手はずを確認するわね?」
車座の中心の少女が周囲を見回す。
朱貞、虞欽、朱志……
なかなかのメンツが集まったもんだ、と自画自賛。
「私たちが狙うのは部長……いや、孫権が校内に入り、おつきの連中がまだ校門付近にいる、ってくらいの絶妙なタイミング」
うん、と中心の少女の言葉に3人が頷く。
「朱貞、あんたはそのタイミングで幹部連中を全員拘束。その間に私が孫権を……」
ぐしゃ、という音を立てて少女の手の中にあったジンジャーエールのアルミ缶が潰れた。
「……そのあとは校内に立てこもって時間を稼ぎながら生徒会の救援を待つ……成功すれば委員長クラスのポストも夢じゃないわよ?」
少女……九江棟長にして征西主将、馬茂は笑みを浮かべた。

決行の日、校門が見える茂みの中に馬茂は隠れていた。
生徒会に自分がいた当時の王凌のセリフが頭の中にリフレインされる。
私を小ばかにしたあの女狐は委員長として生徒会中枢におり、その妹……王昶とかいったか……も荊州校区に勢力を伸ばしているものの、今回、これを成功させればあいつらを見下すことが出来る。
どっちにしろ名主将、陸遜のいない長湖部などすぐに壊滅してしまうのだから、私の役に立ちながら潰れるといい……

973 名前:北畠蒼陽:2006/10/19(木) 21:26
そんなことを考えていたから馬茂は後ろの気配にまったく気づかなかった。

「……いい気になるな、小者」
後頭部に竹刀で一撃をくらわせて昏倒させた馬茂の制服から蒼天章をはずし、嫌気がさしたように呟く全ソウ。
不意に足音に気づき顔を上げる。
「子山、終わった?」
「終わった終わった……まったくイヤになる」
肩をすくめながら現れた歩隲に全ソウは苦笑を浮かべた。
直前に情報が得られなければ本当に危ないところだった。もしかしたら……
いやなイメージを振り払うように全ソウは顔を振る。
「まったくね。おちおち引退も出来やしない」
「伯言がいなくなったタイミングでこれじゃ、わが身の不徳を嘆くことすら出来ないわ……っと、あんたの前じゃこれは禁句だっけね」
のうのうと言い放つ歩隲を一瞬険を帯びた目でにらみつけてから、にらみつけたところで無駄と悟ったか全ソウは『別に』と呟く。
ほい、と歩隲は全ソウに手を出し、その手に全ソウは馬茂から奪った蒼天章を乗せる。
「私はそんな高望みしてたっけかな〜、っと!」
歩隲が言葉とともに頭上に馬茂の蒼天章を放り投げた。全ソウは目でその軌跡を追うこともなくため息をつく。

「はえ〜ってタイミング」
「……小者は小者だったわね」
後日報せを受けた荊州校区で王昶と王基も頭を抱えた。
「なんで決行タイミングをこっちに知らせんかなぁ。そしたらこっちだってそのタイミングでフォローできるっつのに」
「……私たちが王凌様の息がかかってるから知らせたくなかったんでしょ」
王基の言葉に王昶は余計に頭を抱える。
「だったら公休でもいいじゃんよー!」
「……それを思いつかないのが小者の小者たる所以」
身も蓋もないことを呟きながら王基は肩をすくめる。
「……ま、確かに王凌様が1年以上前に言ってたとおり役には立ってくれたわ。つまり小者ですら孫権を狙える位置にいる、っていう事実を知らせてくれた、って意味でね」
「一石一鳥じゃ不満よ」
不貞腐れたように王昶が頬杖をつく。
「……ま、そこらへんはあなたのお姉さまの読みの甘さね」
「うわぁー! お姉さま、ツメが甘いよ! そんなんじゃダメだよ! でもマジラブ!」
王基の言葉に王昶は再び悶絶する。
悶絶といっていいのかどうかは微妙だが。
苦笑しながら王基は王昶を見、そして窓をあけ、その向こう、湖の彼方に視線を向けた。
「……熱いわね」
10月の冷たい風を浴びながら王基は呟いた。

974 名前:北畠蒼陽:2006/10/19(木) 21:26
王家に関係あるっちゃあるんだけど、誰も見向きもしないような小者オブ小者。ベスト小者スト7年連続で受賞中の馬茂さんです。
誰だこいつ、って感じですよね。本当ですよまったく。
純粋シリアスも純粋ギャグも描きたくない、って中途半端なテンションで書いたらこうなりました。
う〜ん、どうにかならんもんか……

>全裸の男が帽子だけかぶってサックスを吹きながら歩いている銅像
実在します。私の実家のほうに。

975 名前:韓芳:2006/10/22(日) 23:31
>北畠蒼陽様
謀の華、お疲れ様です〜。
小物って今も昔も変わらないですよね〜、散り方(ぉぃ
王基の様子も気になるところです。

>全裸の男が帽子だけかぶってサックスを吹きながら歩いている銅像
想像すると怖いんですけどw
夜とか絶対近寄れない…

976 名前:北畠蒼陽:2006/10/23(月) 00:54
>韓芳様
まぁ、実際のとこ、そこまでいうほど小者じゃなかったと思うんですけどね。
ほら、ナニゴトもディフォルメって必要じゃないですやんか?(誰に言ってるのか)

>王基の様子
ん? 王基? 王凌お姉さまのことかな?
ん〜、こんな感じかと……
------
王凌「……ふ、ふん、予想通りね」
令孤愚「彦雲姉って、なんていうか……ほんと、負けず嫌いだよね」
------
でも実際のとこ馬茂さんが魏の誰と連絡取り合って、行動起こしたのかは不明ですなぁ。多分王凌だとは思うのですけど。

>全裸の男が帽子だけかぶってサックスを吹きながら歩いている銅像
う〜ん、私が子供のころにできた銅像なんですけど、はじめて見たときは怖いとかいうより愕然とした記憶がありますね。

977 名前:海月 亮:2006/10/28(土) 10:41
スパムなんて(゚з゚)キニシナイ!!
とりあえず荊州事変の顛末とかどーぞ。

いち >>898-901
に  >>909-912
さん >>924-927
し  >>963-966

978 名前:海月 亮 :2006/10/28(土) 10:42
−武神に挑む者−
終節 ゆめのおわり


凛とした怒号とともに、変幻自在の杖捌きが関羽を襲う。
その突きの鋭さに、さしもの関羽も後退を余儀なくされた。
飛びのいて大きく間合いを取ると、二人は改めて向き合い、互いの姿を確認しあった。
「貴様は…?」
「…答える義理は無いわ」
にべも無い言葉とともに杖を構えるその姿に、達人特有の気配を感じ取った関羽も、構えを取り直す。
(…棒術…いや、これは杖術か…! …この娘、出来る…!)
一陣の風がふたりの間を駆け抜けていったその瞬間、その中間で剣と杖がぶつかり合った。
そのまま力で押し切ろうとする関羽の剣を受け流し、側面から少女は横薙ぎに杖を繰り出す。
紙一重でかわしたところへ、無拍子で直突きに切り替えてくるその一撃が、関羽の左肩を捉えた。
「…ぬ!」
当たる瞬間僅かに半歩引いてダメージをやわらげようとするも、さらに足元を掬い上げる強烈な一撃を喰らい、受身を取ってさらに後退させられる。
(………馬鹿な………甘寧なき長湖部に、まだこれほどの使い手がいるなど…!)
予想外の攻撃に当惑するのは関羽だけではなかった。
見守る長湖部員達にも、この状況でまさか関羽に一撃を加えられるほどの使い手がいることなど思いもしなかったのだ。
潘璋、蒋欽といったひとかどの猛将を悉く退けられ、戦意喪失していた部員達は、思わず歓声を上げた。

折りしもその場に到着した呂蒙も、どこかほっとした表情で呟いた。
「あいつめ…やっとその気になってくれたのかよ」
呆れてはいるようだが、こんな絶体絶命の状態になるまでその少女が出てこれなかったことを、少女が関羽に対する恐怖で逃げ回っていたというワケではないだろうことを、呂蒙は知っていた。
彼女が関羽の面前に立てなかった理由…そして、この局面において姿を現した理由は、ひとつしかなかったのだから。


その別の丘から、到着した孫権の軍団も姿を現していた。
関羽が巻き起こしたと一目でわかるその惨状の中心、暴威の如き武を振るう関羽を、単身食い止めている…いや、その見立てに誤りが無ければ…。
「…凄い…あの関羽を相手に、あそこまで戦える人が居たなんて…!」
目を輝かせて、感嘆の呟きを漏らす孫権。
傍らの周泰は、それを何処かやるせない思いで眺めていた。彼女も、眼下で死闘を繰り広げている少女の正体を知っていた…というか、一目見てその正体に気づいていた。

かつて共に孫策の元で共有した夢を実現するために戦ったその少女が、その不器用な性格ゆえに、周囲から浮いた存在になっていることも…それが孫権のことを大切に思うあまりにそうなってしまったことも。

(子瑜が髪形を変えてしまったときも気付いたほどなのに…お前の想いは、それほど伝わりにくいものだったのか…)
周泰には、そのことがたまらなく寂しいものに思えていた。


自分の疲労に気付いていないわけではなかったが、関羽は最後の最後まで、何処か"長湖部"という存在を甘く見ていた。
かつての呂布がそうだったように、己自身に敵なしとまでは思っていなかったが…少なくとも今の長湖部には、自分に比肩する武の持ち主など存在しえない、と思い込んでいた。

だから、信じられなかった。
…いや、認めるわけにはいかなかったのだ。

たとえ自分が万全の状態であっても…目の前の少女が、"武神"と呼ばれた自分をはるかに凌駕する武の持ち主であることを。


そしてその鋭い突きの一撃が、ついに武神の左肩を捕らえた。
「な…!?」
戸惑いの後、凄まじい衝撃が関羽の全身を襲う。
これが単なるまぐれ当たりではないことは、それまでの攻防で見せたその能力を鑑みれば解ることだった。彼女はインパクトの瞬間、一瞬の手首の返しと同時の強烈な踏み込みでその威力を倍化させ、その身体をさらに後方へと吹き飛ばした。

固唾を呑んで見守っていた長湖部員たちから、歓声が上がる。
関羽はその光景に、耐え難い不快感を味わっていた。義理人情に篤く、戦いに関しても常に敬意を忘れない彼女も、「武神」と持て囃させたことでそれを見失っていたのだろうか…あるいは、そのプライドから来る、今の自分に対する怒りからなのか。
(おのれ…長湖の狗如きに!)
眼前の少女に対して、このとき関羽が抱いていたのは、紛れもない憎悪だった。

大きく体制を崩した関羽めがけ、杖を脇に構えた少女が引導を渡すべく加速する。
関羽の目はなおも眼前の少女を見据えていた。
木刀を腰に構え、抜刀術の体勢をとる。そしてその闘気が一気に消えてゆく。
「…光栄に思え。まさか長湖部員相手如きに、これを使うとは思いもしなかった」
少女が異変に気づいた時には既に遅かった。


次の瞬間、少女の身体は血飛沫と共に中空を舞った。
直前まで歓喜の声をあげていた長湖部員たちから、その瞬間、総ての声が消えた。


少女の頭を覆っていた布が解け、その正体を示す銀の髪が中空で揺らめいた。
そしてその瞬間、その少女の正体を孫権もまた知ることとなった。
「…嘘…なんで、あのひとが…?」
呆然と呟くその問いに、応えるもののないまま。

979 名前:海月 亮:2006/10/28(土) 10:42
大地に倒れ付した少女を一瞥すると、関羽はゆっくりとした動作で孫権を見据えた。
「…これで私の道を遮るものは無い」
関羽の放つ鬼気にあてられ、少女たちは思わず後ずさっていた。
ただ一人、孫権を庇うようにその前に立つ周泰を除いては。
「此処で長湖部の命運は尽きる。身の程を弁えず、私の留守を狙ったことはその存在そのもので贖ってもらおう」
「勝手なことを…!」
しかし、周泰の言葉はそこで途切れていた。
何時の間にか振るわれた鋭い横薙ぎの一撃が、次の瞬間にその身体を数メートルも吹き飛ばしていたのだ。
「幼平っ!」
「幼平さんっ!」
呂蒙と孫皎が駆け寄ろうとするが、既に関羽の第二撃が、呆然とへたり込んでいる孫権の頭上に狙いを定めている。
「…終わりだ」
抑揚のない言葉と共に、その無慈悲な一撃は振り下ろされた。


総てがスローモーションに見えるその刹那の時間の中で、孫権は再度想像もつかないものを見ていた。
振り下ろされる刃と自分の間に割って入る、銀色の影。
それは常日頃から自分の傍にあって、あらゆる危難から守ってくれた存在とは別のものであったことに、彼女はすぐに気付いた。


「…どうして」
その剛剣を杖で受け止め、その身を盾に庇う少女に、孫権は問いかけた。
「…なんで…なんであなたは…そうまでして…」
彼女は振り返らない。
服に滲む赤い染みが、彼女の受けたダメージの大きさを何よりも如実に物語っている。本来は、立っていることさえ出来ない状態のように思えた。

しかし彼女はしっかりと両方の足で大地に立ち、身じろぎひとつせずその剛剣を受け止めていた。
守るべき、少女の為に。

「私は…私にとっても、あなたが…大切な人だから」
その姿は何よりも確かに、彼女の言葉が偽らざる真実であることを物語っている。
「私は、あなたを貶めたこの女がどうしても許せない…そして、あなたに嫌われることしか出来なかった自分自身も…」
その声が震えていたのは、そのダメージの所為ではないだろうことにも。
彼女は漸くにして、この少女がどんな思いで過ごしてきたのかを知るとともに…そのあまりにも哀しい心に気付けなかった自分の不甲斐なさを痛感した。
「だから…私はこの総てを…私の身を引き換えにしてでも…ここでその落とし前をつけます…!」
そのとき、ただ一度だけ、少女は背後の孫権の方に振り向き…微笑んだ。

寂しそうな笑顔だった。
胸が詰まって、声を出そうとすれば涙が出そうな気がした。
少女は再度、視線を前へ戻す。
「…この一撃で、尊大なる武神を仕留める!」
瞬間、少女の闘気が弾けた。

杖を返し、力の均衡が崩れて体勢を乱したその手から木刀をかちあげた。
強制的に諸手を挙げさせられ、がら空きになった胴に一撃、立て続けに背、鳩尾、大腿、左腕、右肩と乱調子の攻撃が武神と呼ばれた少女の体躯を打ち据え、限界を超えていたはずのその体から容赦なく体力を奪い取ってゆく。
よろめくその身体から距離を置き、再度脇構えに杖を構えた。
「…我が力の総てをかけ…唸れ天狼の刃よ!」
銀色の閃光が駆け抜けていく。

そして断末魔の悲鳴もなく、その身体は力なく大地に倒れた。


この乱世の始まりから学園を駆け抜け、「武神」と呼ばれた少女の、最期だった。

980 名前:海月 亮:2006/10/28(土) 10:44
「関羽が討たれた」
その報告は間もなく学園中を駆け巡ることとなる。
情報封鎖によって丸三日、それを知らされずじまいだった帰宅部連合を除いて。


王甫が防衛していた襄陽も、突如侵入した長湖部勢によって瞬く間に制圧された。
王甫は辛くも脱出に成功し、血路を開いて益州学区へ帰還することが出来たが…その道中において漸く、関羽が飛ばされたということを知る事となった。
あの死闘の最中、唯一逃げ切ることが出来た廖化と合流したことで。


その報告を受けた曹操にも、何の言葉も思い浮かばなかった。
長湖部から送って寄越されたのは、紛れもない関羽の階級章。しかし関羽の行方は、戦後処理を待たずに杳として知れないとのことだった。
関羽が何処へ去ったのか…この時点で知る者は誰もいなかった。



一通りの報告を受け、曹操は訝る蒼天会幹部に「…悪いけど、ひとりにして」と言い残し、覚束ない足取りで執務室を後にしていた。
彼女は、洛陽棟の屋上…丁度荊州学区が見渡せる場所を眺めていた。
「…とりあえず、当面の危機は去った…んじゃないのか?」
その声にも振り向こうとせず、曹操はただ、遠くに映る荊州学区のほうをぼんやりと眺めていた。
声の主…夏候惇はその隣に、手すりに寄りかかるような形でついた。
「まぁ…おまえは大分あいつのことを気に入ってたみたいだから…」
「…そんなんじゃないよ」
曹操は手すりに預けたその腕の中に、自身の顔を埋める。
「ちょっとだけ…雲長のことが羨ましいと思った」
「羨ましい?」
思ってもみなかったその一言に、夏候惇は鸚鵡返しに聞き返した。
「形はどうあれ、雲長は自分のあるべきところで学園生活を終えることが出来た…その間いったい、あたしはなにやってたんだろうな、って」
そのとき初めて振り向いて見せたその表情は、ひどく哀しげなものに見えた。


劉備や関羽が長きに渡って学園の動乱時代を、自らの足で駆けずり回ってきたように…曹操もまた、この動乱時代を先頭きって駆け抜けてきた少女である。
学園組織でその身が重きを成すようになっても尚、彼女は自らの足で戦場に赴き、常に飛ぶか飛ばされるかの危難に遭いながら、その総てを乗り越えてきた。

しかし「魏の君」という肩書きに縛られ、彼女の課外活動における行動範囲はこれまでの比でもなく狭められてしまっている。

それが彼女の行動の結果だとは言え、それが本当に彼女の望むものだったのか…。
その「羨ましい」の一言が、その思いの総てを物語っているように夏候惇には思えた。


「…そろそろ、あたし達も潮時なんじゃないかな?」
「え?」
夏候惇の言葉に、今度は曹操が驚いて聞き返す番だった。
「あまり忙しいと忘れがちになるけど…あたし達もそろそろ学園に別れを告げなきゃならない時だ。ここまできたら、もう十分やったんじゃないかな?」
夏候惇もまた、その責任の重さから既に戦場へと赴かなくて久しい。
単に従姉妹同士という以上に、常に曹操と最も近しい位置にいた彼女にも、その思うところは初めから手に取るように解っていたのかもしれない。
「まぁしばらくは大騒ぎになるかも知れんが…事後処理の面倒なところは、あたしや子考(曹仁)、子廉(曹洪)でしばらくどうにかしてやるから…残り3ヶ月の間くらいは、好きに学園生活を送ってみたらどうだ?」
「…うん」
少しだけ微笑んだ彼女の脇を、晩秋のそよ風が吹きぬけた。


こうしてまたひとり、学園史を彩った風雲児が、その歴史上から姿を消そうとしていた。
この一週間後、曹操の引退宣言でまたしても学園中は上へ下への大騒ぎとなるのだが…その影で、ひとつの悲劇がまた進行しつつあった。

981 名前:海月 亮:2006/10/28(土) 10:44
「…どうして」
揚州学区の病院の一室に、彼女は眠っていた。
頭には包帯を巻き、その身体には所々計器が取り付けられている。静かな病室の中、無機質な電子音だけが響いている。
「どうしてこんな目に、遭わなきゃならないの…子明さん…」
孫権は呂蒙の手をとると、力なくそう呟いた。
俯いたその瞳からは、とめどなく涙が流れ続けていた。


長湖部内での論功行賞は既に済み、作戦の総指揮をとった呂蒙はもちろん、生き残った者達にはそれこそ莫大な恩賞が与えられ、今回飛ばされたもの達についても十分すぎるほどの見舞金が出されていた。
そして、丹陽に半ば放逐状態だった虞翻もまた、此度の江陵陥落の立役者としての功績が認められ、再び幹部会の会計総括として中央に戻されることとなった。

そして陸遜はというと…流石に功績の大きさから何の扱いも出来ないということはできず、名目として鎮西主将の称号を与えられ、そのまま陸口に留まっていた。
ただしそこにどのような思惑が働いていたのか…彼女はしばらくの間、これまでどおりいちマネージャーとして過ごすこととなる。


そして呂蒙。
「…そういうわけで、問題もひと段落つきましたので…勝手ながら少しの間療養の時間を頂きたいのです」
呂蒙はこの日初めて、自分の体調のことを孫権に打ち明けていた。

呂蒙は戦後処理の直後、宛がわれた自室で倒れているのが発見された。既に限界寸前まで酷使していた身体が、大仕事を成し遂げた安堵感からかその力を一気に失ってしまったようでもあった。
その後数日間病院のベッドで過ごし、この日正式に暇乞いをするために許可を得て病院を出てきていたのだ。

「後任人事は、こちらに総てあるとおりです」
提出されたその表文の中には潘璋、朱然ら現長湖部の武の要といえるものたちの名はあったが…陸遜の名はなかった。
呂蒙は病院にいた間、これまでの部員たちの行動を鑑み、かつ孫権や陸遜当人との約束を守り、その人事案を完成させたのだ。
「…うん…でもまた、帰ってこれるんだよね…?」
孫権は勤めて普段通りの口調で、そう問いかけた。
元気そうに見えたが、呂蒙の顔からもその病状の深刻さが伺えた。孫権にももしかしたら、それが叶わぬ希望とは解っていたのかも知れないが…それでも、そう言わずにいれなかった。
それを解っていたからこそ…また、自分にもそう言い聞かせるように、呂蒙も応えた。
「…ええ。ですから、まだ階級章はお返ししませんから」
「うん…じゃあ、しっかり休んできてね」
そこには涙はなかった。


建業棟を退出し、無言のまま隣り合って歩く呂蒙と孫皎。
「…悪かったな、黙っていて」
先に沈黙を破ったのは呂蒙だった。
「ええんや。今ちゃんと教えてくれたんやから」
頭を振る孫皎。
彼女にも、この戦いに賭けた呂蒙の思いを…自分を心配することで気を遣わせまいとしたその気持ちを解っていた。だから彼女は、自分を"友達"と言ってくれた呂蒙の為に、その疑問を口に出さずひたすらそのサポートに徹していた。
「ゆっくり休んで、また元気に帰ってきてくれれば、それでええねん…」
「…ああ」
寂しそうに笑う孫皎の気持ちを紛らわせるかのように、呂蒙も笑って見せた。


悲劇は、そのとき起こった。

突如黒い影が何かを振りかざし、その視界に現れた。
「…叔朗!」
その叫びよりも早く、鈍い音がして、孫皎の身体が横にふっとばされた。
「奸賊、覚悟ッ!」
殺気を感じ、呂蒙がその場を飛びのくと、それまで彼女がいた場所に何かが通り抜けて地面に突き刺さった。
それが鉄パイプであるということを呂蒙が理解するより前に、四方から立て続けに第二撃、第三撃が襲ってくる。
「ちっ…正当な学園無双で敗れた腹癒せの闇討ちが、てめぇらの流儀なのかよ!」
「黙れッ!留守居を狙ったこそ泥の分際で!」
呂蒙は紙一重でかわしながら、何とか倒れ付した孫皎を回収しての逃げ道を模索する。
しかし、無常にも彼女の体調が、それを強烈な激痛として阻んだ。

直後、凄まじい衝撃が彼女を襲った。



この下手人たちは、たまたま近くを通りかかった水泳部員達によって悉く取り押さえられたものの、そのときの惨状は筆舌に尽くしがたく、被害者たる呂蒙が一命を取りとめていたことが奇跡に近い状況であった。
全身を滅多に打ち据えられ、特に頭への一撃はほとんど致命傷といっても差し支えなかったという。

元々呂蒙は水泳部を中心に様々な運動系クラブを掛け持ちしていたことで、小柄ながら体つきがしっかりしており、その鍛え抜かれた体があったからこそ一命を取りとめることが出来た、とのことだった。

孫皎は比較的軽傷で済んだものの、こちらは目の前で親友たる呂蒙を失ったことでショックを受けて心神喪失状態となり、課外活動を続けることが困難と判断されてドクターストップがかけられてしまった。



今回の謀主でありながら、幸いにも危難を逃れた陸遜はというと。

陸口で「呂蒙闇討ちに遭う」の報を聞きつけた陸遜も、流石にショックを隠しきれずにいた。
彼女はとるものもとりあえず病院へと駆けつけ、目覚めぬ呂蒙と、その手をとって嘆き悲しむ孫権の姿を、ただ呆然と眺めることしか出来ずにいた。
(…これが…こんなことが、このひとの末路でなくてはならなかったと言うの…?)
自身の身体に埋まった時限爆弾の刻限を知り、その時間内に大望を成し遂げるために最大限の人事を尽くしたその姿を、陸遜もよく知っていた。

「この一戦だけ」と、悲壮な覚悟で自分に懇願してきた呂蒙の姿を、陸遜は思い出していた。
それが、昨年の秋口にあった事件のあるシーンと、重なって見えた。

南郡攻略に進発する周瑜を見送った、そのときと。


いずれも、ふたりと言葉を交わした、最後の瞬間だったからだ。


(どうして…どうしてふたりとも、こんな目に遭わなきゃならないの…?)
彼女の目からも涙が溢れ、流れ落ちた。
周瑜と呂蒙…このふたりのやろうとしたことの何処が、理不尽ともいえる"天罰"に触れなければならなかったのかと思い、彼女は天を呪わずにいれなかった。


そしてその場に姿を現さなかったものの…虞翻もまた、呂蒙の末路を聞き及び、一人涙した。

孫策が刺客に襲われたあの日も、そして今回も…彼女はその場に居合わせず、それが取り返せぬ時間と場所で結末のみを知る形となってしまったのだ。
(私は…また大切な人を…守ることが出来なかった…)
どうしようもない運命のなせる業であることも、彼女はその聡い頭脳で理解はしていた。
しかし、その感情は…その場に居合わせることすら出来なかった自分自身をただ責め続けていた。



この数日後、呂蒙を失ったことによる人事再編が長湖幹部内で施行された。
しかしながら、呂蒙を失った穴を埋めるには到底及ばない状態であり…長湖部は暫しの間、その中枢を担うべき将帥のない状態となる。

そしてそれゆえ、数ヵ月後に、その存亡に関わる大事件へと巻き込まれてゆくこととなる…。

982 名前:海月 亮:2006/10/28(土) 11:12
なんか巧い展開が考え付かなくて結局かなり急いでるとか_| ̄|○

しかも陸遜が鎮西将軍に任命された時期も微妙に前倒しになってるとかぐだぐだですね><
…いやこれは後から気付いたけどもう面倒くさいからなんかいいや、って感じで。
実際は次の年くらいに房陵や秭帰などで蜀に親和する勢力を平定していて、そのときの功績で鎮西将軍に任じられていたとかそんな感じだったはず。




>北畠蒼陽様
きっと小物だったからこそ、自分だけで何とかできると勘違いしたのだと思いつつ。
確かに呉主伝では「孫権殺害後、石頭を占拠して魏と連絡を取るという計画を立てた」とあるだけなんですよね。

というか文舒さん悶え過ぎww

983 名前:北畠蒼陽:2006/10/28(土) 19:14
>海月 亮様
大作乙!
全5章とか、長かったですねぇ。
いや、1章から環境ががらっと変わりながら、それでも同じテンションで書けるってのはすばらすぃですねぇ。
えぇい! ツメの垢をよこしやがれー! って感じで。えぇ。
しかし、呂蒙の最後がそうなるとは予想外でしたわ。うむ。

984 名前:海月 亮 :2006/10/28(土) 20:50
>北畠蒼陽様
実はもうひとつあったんですが、さらにぐだぐだになりそうだったので結構無理やりにまとめてるんです^^A

さらにここから、二年前(<もうそんなになるのか^^A)くらいに書いた夷陵SSとあわせて完結する形であった所為もあるんですけどね。
まぁ何気に関さんが行方不明だったり、「馬忠」の正体がアレだったりするのも、多分こっちに持ってこない長湖部斜陽SSの伏線になっているとかいないとか…これに交州話や二宮の変が絡んで、漸くひとつの話が完成するとか無駄に話が大きなことに^^A


あと呂蒙は自分内の年齢設定的に、二年生でいなくなることになってるんですよ。
そうなれば、やはり飛ばされた以外に「あっ」と思うような設定が欲しかったもので…本当に死んでしまうのは郭嘉だけということで、どうか。

985 名前:韓芳:2006/10/30(月) 23:54
>海月 亮様
終節お疲れ様です〜。
毎回よくこれだけの物が書けるなぁと感心しつつ、読ませていただいてました(書き込む前から
さらば関羽&呂蒙…

>北畠蒼陽様
王凌でした… orz
変換がめんどくさくてコピペしたのが間違いか…(ぉぃ

そろそろ空白の数日間埋めないといけない予感。
さて、どうまとめるかな…

986 名前:海月 亮:2006/11/04(土) 11:08
まー書くペースと文章量が今のところ反比例してますから^^A
むしろ詰め込みすぎ乙ですな。もーちょい、自分ではすっきりまとめたいんですけどね。


さーて、私は次何をやろうかな。
というか二宮も大まかな顛末というか、ドリーム展開になりそうな予感が…。

987 名前:韓芳:2006/11/05(日) 23:54
咲かぬ花
  外伝 隠された1枚

これは、呂布陣営最後の時の、語られることのなかった数日間の物語である―――

「候成!・・・失礼しました!」
魏続と宋憲が後を追った。

「ハァ・・・ハァ・・・ やっと追いついた・・・」
そこは下丕棟の屋上だった。
2月の屋上の寒気は痛くも感じられる。
そんな中で候成は、フェンスに1人もたれかかっていた。
「さっ、寒い・・・こ〜うせ〜い!とりあえず中で話し合おうよ〜!」
「・・・」
「無視か・・・まあ、当然と言えば当然か。」
宋憲がボソッと言った。
「ねぇー!聞こえてるのー?」
諦めず魏続は話しかける。
「・・・」
だが、相変わらず無言だった。
「ここはそっとしておこう。」
宋憲は魏続にそっと話しかけた。
「・・・そうだね、そうしようか。じゃあ、私達先に戻ってるからねー!」
そう言って戻ろうとした瞬間だった。
「・・・星・・・見えないね・・・」
急に候成が喋りだした。
あまりの突然さに、2人は顔を見合わせた。
「急に・・・どうしたの?」
「私・・・この先どうなっちゃうのかな?・・・この空のように、真っ暗なのかな?」
候成はずっと空を見上げている。
魏続が元気づけようと声をかけた。
「大丈夫だって!呂布様のことだから、明日にはコロッと態度が変わって―――」
「あいつの名前を・・・口に出すな!」
「!!」
「魏続!」
「大丈夫。かすり傷だから・・・」
魏続の頬をかすめたのは、候成の階級章だった。とっさに避けなければ、大怪我になっていたかもしれないほどの速さだった。
「あ・・・ごめん・・・」
「いいよ。候成の気持ち・・・分かるから。」
3人の間を風が吹きぬけた。まるで、何かを後押しするように。

「・・・私ね、決めたの。」
候成がぽつりと言った。
「決めたって、何を?」
「私・・・曹操に降る。」
「!!」
「何だって!?」
「本気だよ。それで・・・お願いがあるの。」
魏続はただ呆然としていた。
「候成、裏切り者になると言うのか?」
「そうじゃない。現に、もうこの軍団には所属してないし。」
宋憲をなだめる様に言った。
「その階級章、返しといて。曹操に下るから、もういらないわ。」
「えっ・・・」
「それから、曹操に下っても、私がここを攻めたりしないわ。絶対に約束する。だから安心して―――」
「安心なんて・・・出来っこないよ・・・」
魏続は涙目で話し出した。
「・・・あなたが居ないのに、どうして安心できるの?」
「・・・あなたには高順様が居るじゃない。私が居なくても・・・きっと・・・」
「・・・高順様も確かに大切な人だけど・・・けど、あなたの方が・・・あなたの方が私には大切なのに!・・・そんな、そんな仲だったの?候成・・・?」
「そうだ、私たちはいつも3人一緒だったじゃないか。それを1人でなんて、許さないわ!」
「魏続・・・宋憲・・・ でも、いいの?」
「私達も最近のりょ・・・あいつにはうんざりしてたからね。お互い様だよ!」
「・・・ありがとう。」

寒空の中誓ったこの約束・・・
その後ろで動いた人影に、3人は気付かなかった。

988 名前:韓芳:2006/11/05(日) 23:59
外伝、勢いだけで書いてみました。
1枚なので裏(続き)があります(ぉぃ
しかし、気持ちの移り変わり速っ!
気付くのは遅いのに…orz

989 名前:北畠蒼陽:2006/11/06(月) 00:31
>韓芳様
信じてたものに裏切られたと感じるのは、人を信じるよりもずっとずっと短い時間で行われることなのですよー。
続き、楽しみにしておりまっす。

え? 私?
……う〜んう〜ん。

990 名前:海月 亮:2006/11/06(月) 22:07
>韓芳様
友情は信奉よりも強し、ですかね。
この三人組の心情の解釈次第では、只の「時勢に乗じただけの裏切り者」から、「理想を違えて離れた者達」という風にも受け取れるんでしょうね。

いや、実はそういう解釈が何よりも好きなおいらがいます^^A


私ゃひとつ審配&辛評、逢紀&田豊あたりでこれやってみようと目論んでるんですが…どうしても正史に沿った話がそれだと書けない罠onz

991 名前:韓芳:2006/11/11(土) 13:11
>北畠蒼陽様
そうかも知れませんね〜
やっぱり裏切られることはつらいと思いますし…(意味深
次回作ゆっくりお待ちしてます^^
>海月 亮様
裏切りにも何かしら理由が有るわけで、それを全て悪にはしたくないんですよ。場合によるけど(ぉぃ
史実通りは難しい…
水攻めとかどうしよう(汗

992 名前:韓芳:2006/11/26(日) 02:06
咲かぬ花
  外伝 隠された1枚 ―裏―

翌日――

「う・・・ん? もう朝かぁ〜・・・」
魏続は眠い目をこすりながら窓を見た。
「うわ〜、真っ白・・・ 道理でさむ〜いと思ったら・・・」
窓の外は一面の雪景色。
と言っても、積雪量としては1cmにも満たないほどであるが。
「それにしても、昨日は寒かったもんな〜・・・ 昨日・・・か。」
ふと思い出した。あれから重臣は下丕棟に泊まることになった。
おそらく陳宮と高順の配慮で、呂布に謝罪の機会を与えるためだろう。
候成と謝罪に行ったときの呂布は、どこか上の空だったのを覚えている。
「あの時、一体何を考えていたんだろう・・・」
しかし、すぐ我に返る。隣の布団では高順が眠っている。滅多なことはここではしゃべれない。
「しかし、妙に寒すぎるような・・・? いくらなんでもここまで寒くなるかなぁ? 部屋もなんだか明るいような―――」

「ふぁ・・・ もう朝か・・・ 魏続、おはよう・・・ ?」
「ちょ・・・ 見て・・・」
「どうした・・・の・・・」
思わず高順も唖然としてしまった。
2人が泊まった部屋の床が凍っていたのである。
「え・・・ なんで・・・って・・・」
「「えぇーーーっ!!」」
早朝の学校に2人の声はよく響いた。

―――3階の水道の蛇口が全開になっており、そこから水が流れ出したものと思われます。被害範囲は3階の現場地点周辺と東階段、それと2階の教室や床のほとんどすべてです。一部は1階にまで到達している模様です。」
棟長室には次々と現状を報告しにくる伝令が入ってきたが、どれも被害は甚大だった。
この事態が発覚して1時間ほどたったが、床とともに各部屋のドアもほとんど凍ってしまい、復旧作業ははかどっていなかった。
「呂布様、至急復旧作業をしましょう。これでは下丕棟を守りきれません。事態が落ち着いた後、犯人を捜しましょう。よろしいですね?」
陳宮の案はすぐに採決された。が、どこか呂布の様子がおかしい。
「うん、任せる・・・ みんな、よろしく頼むわ・・・」
「はっ!」
その場にいた誰もが「もしや・・・」と思ったが、口には出さなかった。
だが、その中に僅かに顔色を変えたのが数人いたのを陳宮は黙って見ていた。

結局この騒ぎは丸1日かけて収まった。犯人はと言うと、証拠は何一つ残っておらず、目撃者もいないため、曹操陣営による工作と言うことになった。
対策としては、警備が強化されただけに留まった。
下丕棟の誰もが、『陳宮に泣きつき呂布が罰を逃れた』、と囁きあったのは言うまでもない。
そして、この事件を後世の人に語らせない様に、さまざまな工作がなされたという。

その夜――
「・・・ねえ? 高順、私がいなくなったらどうする?」
「急にどうしたの魏続? ふぁ〜・・・」
撤去作業を終え、2人は自分の部屋へ戻っていた。
1日中氷の撤去作業を行っていたせいか、高順は眠そうだった。
「もしもの話だよ〜。 向こうには呂布様と並ぶ剛勇と陳宮様を上回る智謀を持った人がいっぱいいるから、将来どうなるかわからないな〜、と。」
「珍しく暗いわね。 疲れたの? もう寝ようか。」
高順はふっと笑顔を見せ、布団にもぐりこんだ。
「そうだね・・・ うん、おやすみ!」
魏続も布団へもぐりこんだ。
「高順・・・」
「うん・・・? どうしたの?」
「ごめんね・・・ zzz」
「ごめ・・・って、えっ?」
高順はしばらくの間呆然としていた。

993 名前:韓芳:2006/11/26(日) 02:10
遅くなりましたが今度こそ完結です。
大した物書いたわけじゃないけど疲れた… orz
PC再セットアップしなきゃいけない事態にまで落ち込んだし…

あと、勝手に『水攻め』→『氷攻め』にしちゃったけどよかったのかな? …駄目ですよね、ごめんなさい…
まったり皆さんの作品読んでよっと。

994 名前:海月 亮:2006/12/20(水) 22:56
( ̄□ ̄;)凍結!!?
でも時期的に水道管の事故はやばそうですからねぇ。

最後のシーンを想像すると、ほのぼのした雰囲気の中にひとさじの哀愁が感じられますな。
というか高順タソ…(*´Д`*)



…そういえば現行の年表設定だと確か同じ頃に孫策も乙ってるんだよなぁ…。

995 名前:韓芳:2006/12/23(土) 00:33
>海月 亮様
『若干マイナー』な武将が私好きなので(マイナーすぎるとアレですが)高順とか搦ナなど三国志でよく使ってます。
有名な人物の影でさまざまな歴史を生きている、ってなんかいいなぁ〜なんて(マニアック?

>現行の年表設定だと確か同じ頃に孫策も乙ってるんだよなぁ…。
2ヵ月後に乙ですね。
次回作に使う…のかな?

996 名前:管理部:2007/01/07(日) 19:05
僭越ながら、続きのスレッドを立てさせて頂きました。
次スレ:ttp://gaksan2.s28.xrea.com/x/cgi-bin/12ch/read.cgi?bbs=gakuenn&key=1168166033&ls=50

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