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2009.01.01

第二〇章   第二次長安攻略戦(下)

 
 
 

 

于 禁:全軍、長安まで後退せよ!

 

 夏侯淵が斬られ、士気値が一挙に激減した曹操軍は、それぞれ戦場を放棄。長安をさして後退を開始する。この場合、呂布軍は敵の「撤退地点」を塞いで殲滅を図るべきなのだが、さすがに余力がない。

 かえって敵将・于禁の〝乱射〟によって逆に馬鉄隊が全滅させられてしまう。

 ――こうして、曹操軍は無事に長安城へ帰還を果たした。

 

呂 布:ちと辛いが、攻城戦へ移る! 全軍、このまま長安を攻めるぞ!

黄 権:いけるでしょうか……。第一次攻略戦では、攻城戦で我が軍は敗れたのですぞ。

 

 と、そこへ漢中軍団から教母自らが使者となって訪ねてきた。

 

教 母:攻城戦はお任せ下さいね、呂布将軍。

 

 ニコニコと言うその背後には、呂布たちが今まで見たこともないような巨大兵器が控えている。

 ――教母以下、五斗米教団の鬼卒はただの歩兵にあらず、全隊が「霹靂車」を曳いてきていた!漢中は数少ない「学術都市」であり(えぢた~済み)、教母自身、特技「発明」を保有しているのである。

 

教 母:あらあらあら~。将軍、顔色悪いですわ?

呂 布:はははは…は…。

 

 さすがに呂布も身震いせざるを得ない。

 ともかく、攻城兵器を前面に押し立てて南蛮・漢中連合軍は長安城を包囲した。

  

鍾 :全軍総攻撃! 呂布も相当に疲れているはずだ!

 

 長安に籠城する曹操軍は六万余。攻撃側よりもやや多いほどである。

 敵主将の長安太守・鍾は、曹操が特に西方面への抑えとして抜擢しただけあって、全ての能力値が90前後というバケモノじみた万能男である。一騎討ちを除けば、軍事・政治・外交・計略、この男に出来ないことなど無い。

 このまま兵力同士がぶつかり合えば、まず呂布軍は壊滅的な打撃を与えられるであろう。

 ……が、今回は漢中軍が持ち込んだ大型の攻城兵器がある。 

 

呂 布:敵兵にかまうな! ひたすら城門の破壊に専念せよ!

 

 天を覆うほどの飛箭をかいくぐって長安城へ肉薄すると、呂布軍は攻撃を開始した。銅鑼がじゃ~んと鳴るたび、うなりをあげて巨石が撃ち出され、次々と長安の城壁へ吸い込まれてゆく。ぱぁっと土煙があがり、一瞬遅れて轟音が荒野にこだまする。

 

于 禁:太守。このままでは……。

鍾 :霹靂車は我が軍の秘密兵器ではないか! なぜ敵があれほどの数を所有しているのだ!

  

 石がぶちあたる衝撃で揺れに揺れる長安城の中、さすがに蒼白になる首脳部。曹操軍はますます苛烈な攻撃を繰り広げるが、呂布軍はひたすらに城壁・城門への攻撃に専念する。

 そして……

 

呂 布:ようし! 城門が開いたぞ!

 

 残りわずか4ターンというところで、とうとう長安城の防御力がゼロになった!

 まだ城内には6万を越す大部隊がいるというのに、曹操軍は潰走を開始する。

 

呂 布:この辺が不思議なんだよな~。いま正面からぶつかったら、絶対に曹操軍が勝つと思うんだが。

黄 権:まあいいじゃありませんか。それより、追撃なさいますか!?

呂 布:当然!

 

 長蛇をなして逃げ去る曹操軍に追いすがる呂布! 反転して向かってきた敵のシンガリと激烈な戦闘を開始する。

 

徐 晃:そこにいたかッ、夏侯将軍の仇っ!

馬 超:ぐわッ!

 

 敵殿軍の将・徐晃は得意の大斧を縦横に振り回し、まず夏侯淵戦で疲弊している馬超に重傷を負わせた。呂布、馬休、馬鉄らもかなりしつこく追い回したが、徐晃は戦いつつ後退し、後退しつつ戦い、見事な撤退戦を演じてみせ、とうとう呂布軍を打ち払って戦闘領域を離脱してのけた。

 ――呂布軍の追撃は、ものの見事に失敗に終わった。

 

  …………

 

呂 布:……つ、疲れる戦いだった~!

黄 権:ご苦労様です、将軍。

    

 次々と帰投してくる諸隊を収容し、旧都長安は呂布軍の制圧するところとなった。

 安定を進発した呂布軍、十一万余。いま、無事に祝杯を受ける者、四万。

 ……未帰還率60パーセント。天下の趨勢を占うにふさわしい大会戦であった。 

 

呂 布:それにしても長安か――。まさか西からここへ入る事になるとは思わなかった。

馬 超:そういえば呂布殿は長安とも旧縁浅からぬと聞くな。ウワサの鳳儀亭というのは、どこだ?。

馬雲緑:あ、兄上……。

呂 布:――ああ、なんか石が命中して潰れてた。まあ、その方がよかったかな。

 

 懐かしそうに、ちょっと寂しそうに長安城をあるきまわる呂布。馬兄妹がそれに従っている。

   

呂 布:――さて。俺はいったん成都へ戻る。長安は馬超、貴様に任せる。

馬 超:俺にか!?

呂 布:おう。呉懿、韓遂らとともにこの地を守れ。誰か手が空いたら軍師クラスの参謀をひとりよこしてやる。

馬 超:……わかった。この方面は馬一族に任せてくれ!

 

 攻めるも早ければ退くも早い――。

 南蛮王・呂布は長安方面を馬超らに委ねると、自らは成都に戻って張に会い、大評定の意志を伝えた。

 これからは呂布は後方にあって諸将を督戦するというのである。

  呂布が、戦争が、天下が変わろうとしていた……。 

 
 長安を手中に収め、中原への玄関を確保した呂布奉先! いよいよ第三部終了して、痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は折り返しです! 
 

呂 布:中華の歴史も、あと1ページ。

陳 宮:まだだろ。 

第十九章   第二次長安攻略戦(上)

 

 

 建安八年十一月。

 呂布率いる十一万の大軍団は涼州の安定を発し、北方から一挙に長安を急襲した。

 それに呼応して、漢中教団の鬼卒四万が同時に北上を開始する。長安を進発した迎撃軍を挟撃する構えであった。

 

黄 権:敵の総大将は夏侯淵。参軍は李典であります。

呂 布:ふん、あいつらか。

黄 権:――殿は彼らを御存知で?

呂 布:おう。イナカ者の貴様は知らんだろうが、俺様は一時期、中原を争って奴らと激闘した事があるんだぞ。

黄 権:はあ…そういえばそうでした。

呂 布:おまけにこの長安には色々思い出があってな~。恋は盲目って言葉、知ってるか?

黄 権:はあ?

 

 赤兎の上で、ふいに思い出に浸りはじめる呂布。「あのとき」からはや九年が経つ。思えば呂布、どれほどに波瀾万丈な人生を歩んでいる男だろうか……。

 

馬 超:大将!何を遠い目をしてるんだ! 敵が目の前だぞ!

馬雲緑:真面目にやれ、真面目にっ!

 

 さすがに怒鳴る馬兄妹。呂布、我に返るとすぐさま軍兵を展開させる。戦場「安定→長安」は、マップ中央に森と小高い丘陵がある以外は、それといって特徴がない。

 黄権が選択したのは「迂回右」。――マップ中央にある堅固な砦を無視し、漢中軍が出現する方角へ迂回しつつ奧を目指すというのである。

 ほとんど騎兵のみで構成されている呂布軍としては、速攻あるのみ!

 

呂 布:続け~っ!

 

 相変わらず真っ先に突進をはじめる呂布に遅れじと、馬超、馬休、馬鉄、馬雲緑らが一斉に移動を開始した。その後方を警戒するように、呉懿、呉班、孟達らがしずしず前進する。

 次いで両軍の参軍が、同時に救援要請を行う。これにより、弘農を進発した曹操軍五万余は次のターンで早々と到着することになった。……ところが、黄権の要請は失敗。漢中軍団の到着は、予定通りの9日後である。

 やがてマップ下方、呂布軍全体の右翼方面に敵の大集団が確認される。素早く側面へ回り込んだ黄権隊、孟達隊が、計略「混乱」を連発した。

 早速、敵の旌旗がとぐろを巻くように乱れはじめた。様子を遠望していた呂布、ふいに大声を上げる。

 

呂 布:ん……あの旗印! あっはっは、懐かしいなあ。

馬 超:な、何だ? 

 

 呂布、急に赤兎を飛ばすと陣頭に躍り出て、皮肉そうに敵将へ声を投げかけた。

 

呂 布:袁紹のとき以来だなあ、飛燕! あの黒山衆一〇〇万の首領が、今じゃ曹操の飼われ鳥か~?

張 燕:はん! 貴様こそ相変わらず頭悪そうなツラだな!

呂 布:ぬかせ!

 

 馬腹を蹴ってみるみる混乱中の張燕隊へ分け入る呂布。張燕も鉾をふるって果敢にこれと渡り合う。

 が、武力81(えぢた~済み)の彼が、武力110の呂布に敵うはずがない。さして手間も掛けずに、呂布は張燕を馬上から撃ち落とした。

 

馬 超:おおッ!

 

 呂布軍の中でたちまち拍手喝采がおこる。呂布の武、まだまだ健在であった。

 砦にこもる韓浩隊を蹴散らすと、呂布軍団はあっというまに敵左翼を突破してマップ最深部へ殺到した。

 が――ここにきて、敵の援軍が戦場を横断して呂布軍の前に姿を現した!

 

呂 布:げ……。

 

 と呂布が顔をしかめたのは、敵の「突撃大将」楽進の姿を確認したからである。曹操軍団においては最強の突進力を誇り、呂布は以前、相当に手酷い目に遭っている。

 

呂 布:確か、他にもあの于禁がどこかに居るんだよなあ…。

黄 権:ついでに言いますと、あの徐晃もいます。

呂 布:こんなに戦力集中して、曹操大丈夫なのか~?

 

 呂布が思わず曹操の心配をするほどに、長安守備に充てられた人材は凄まじい。曹操軍団最強の五虎将のうち、現存する全員がここに集まっているのだ(張遼はいまだ呂布の麾下。張は袁紹の配下である)。

 

馬 超:大将!こういうときはプラス思考に限る! たった一戦で曹操勢力をズタボロにする機会じゃないか!

呂 布:……なるほど。馬超!いいことを言った!

馬 超:ははははッ!

  

 キラリと歯を輝かせ、極上の笑顔を交換し合うふたりであった。

 ……が、馬超のおノンキな楽観論はすぐさま崩れ去った。弘農の援軍に引き続き、敵の中央砦を守っていた部隊がいっせいに引き返してきたのだ。

 要するに、呂布軍団は包囲されてしまったのである。

 

呂 布:……お~い。

馬 超:はっはっは!こういうこともあるぜ!

呂 布:……。

 

 敵は、強い。

 呂布軍が、後方都市から回送させてきた新兵たちを中核とするのに対し、曹操軍は訓練の行き届いた精鋭揃いであった。おまけに防御側で士気も高い。

 一度の攻防で受ける損害、曹操軍700~800に対し、呂布軍1000以上。

 冗談抜きで、ちょっと危険な攻防が続いた。呂布隊二万はほとんど無傷で健在だったが、馬超以下、曹操軍の重囲にさらされて早くも一万を割り込んでいる。

 やがて、戦列の一角が切り崩された。間に割り込まれて連携を欠く呂布軍、三方向から包囲された呉班隊を救援することさえできず、呉班隊全滅。敵将于禁はさらに前進して孟達隊を潰走させた。

 

黄 権:……損害のひどい隊を戦場から遠ざけろ!

 

 孟達隊や馬休隊など、わずか1000前後まで打ち減らされた隊から順に、呂布軍は後退を開始する。呂布、馬超など比較的元気な隊がこれを援護するが、部隊数が激減した呂布軍、なすすべもなく曹操軍に呑み込まれそうになる。このまま戦局が推移すれば、いかに呂布とて全軍撤退の断を下さざるをえなかっただろう。

 結局、この息苦しい雰囲気から呂布を救い出してくれたのは、〝あの人〟だった!

 

教 母:あらあらあら~♪ 大変ですわね~呂布将軍~。

張 衛:呂布殿、安心されい!

馬 岱:兄者! くじけるな!

呂 布:おおおおお!

 

 張魯が派遣してくれたのは、頼もしいことに実弟・張衛と教母、軍師の閻圃、そして馬超と袂を分かっていた勇将馬岱であった。

 戦力的には、これで五分五分。歩兵ばかりの道兵たちは、意外な素早さで森を駆け抜け、主戦場に到着した。

 

呂 布:よ~しっ! 元気があるヤツは俺様についてこい!

馬 超:おうッ!

 

 混戦のもやを突っ切って、呂布隊と馬超隊が後方へ抜け出した! 長安を守る最後の砦には、敵大将・夏侯淵がただひとり籠もっている。

 

呂 布:おお、夏侯淵か!懐かしいな!俺と勝負する気はないか!

夏侯淵:ない。俺は地球人類以外を相手しないことにしている。

呂 布:何を、この、チキン野郎!

馬 超:ちょっとどいていてくれ、呂布殿――。

 

 呂布と駒を並べる武力99の馬超、砦の前で戛々と輪乗りし、大声で夏侯淵に一騎討ちを申し込む。

 

馬 超:夏侯淵!父の仇をとらせてもらうぞ!俺と闘え!

呂 布:さすがにお前でも無理じゃあ……。

 

 と言いかけた矢先、 なんと夏侯淵、「よかろう」とばかりに砦の門を開いてしまった!

 やはり「冷静2」、「勇猛7」では、我慢できない挑戦だったのだろうか。

 

呂 布:おお! 意外に劇的!

馬雲緑:何ギャラリーしてるのよっ!

 

第二次長安攻略戦の行方は、この馬超と夏侯淵との一騎討ちが決するようである。両陣営の全将兵、それを心得ているのかウソのように静まりかえった。

 

馬 超:いくぞっ!

夏侯淵:……!

 

 同時に飛び出す両雄、初太刀から化け物のような大鉾をフルスイングでぶち当て合い、一撃一撃のたびに両軍から喊声が上がる。

 

呂 布:……。

 

 これが意外なほどに伯仲した一騎討ちであった。緑に尾を曳く大技を連発する夏侯淵に対し、さしもの馬超も疲れを隠せない。ゲージの減り方は、あきらかに馬超の方が早い。

 

馬 鉄:なぜだ! 兄者のほうが武力が高いのに!

呂 布:これがゲームの恐いところだ。多少の武力差は有って無きが如し。

 

 分かったようなことをうそぶく呂布、不意に大声を上げた!

 

呂 布:いまだっ! 大技を狙えっ!

馬 超:おおっ、力がみなぎってるぞ!

 

 ターン終了間際に身体がオーラに包まれた直後の「大技狙い」! 一騎討ちの必勝技である!

 

馬 超:必殺、十文字切り!

夏侯淵:ぐわっ!

 

 馬超の攻撃が、ようやく夏侯淵の巨体をとらえた。二度、三度と緑の閃光が走り、夏侯淵は血けむりをあげて馬上から斬って落とされた。

 ……曹操の一族衆たる矜持か。

 ダメモトの馬超の挑戦にあっさり応じた敵総大将・夏侯淵。

 字は妙才といった。曹操の族弟であり、その旗揚げから付き従った最古参の男である。史実では謹直で大人しかったという従兄・夏侯惇とは違い、夏侯淵はもともとからして勇猛で鳴らし、行軍速度の迅速さから「六日一千里」と称され、電撃のようなその速攻を何よりも恐られたという。

 武力は93。曹操の半身として、夏侯淵はその「攻」を象徴する存在であった。

 後に営門前にて斬首。享年、40歳。

 

呂 布:あ~ヒヤヒヤした……。

馬 休:ようし、長安は貰ったぞ!

 

 馬超が主将を一騎討ちで撃ち破ったため、夏侯淵隊は消滅している。無人となった砦を、馬超の次弟・馬休が素早く占拠。

 「迂回・右」が、この瞬間に成立した。

 

 
 ぐっこ自身が感心するほどドラマチックに展開した「第二次長安攻略戦」! 痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、次回、感動の第三部最終回です!

第十八章   長安無惨

 

 

 

呂 布:ジジイにしてはよくやった。まあ、誉めてやる。

黄 忠:……。

呂 布:陳宮は斬れ斬れうるさいが、俺様は無口っ娘と眼鏡っ娘と老人は斬らんことにしている。よって貴様を生かして放つ。

黄 忠:……どういう基準じゃ。

呂 布:これに懲りて俺様に刃向かおうなどと思わないよ~に。老い先短いんだからとっとと隠居しろよ。

黄 忠:お互い様じゃな。今の儂の姿は8年後の貴様であることを忘れるな。

呂 布:口のへらんジジイだ。介護保険の調査官と真っ先にケンカするタイプだな。

黄 忠:やかましい。

呂 布:ふん。じゃあ用が無いならとっとと失せろ。俺様はこれから村娘たちと踊りに行かなきゃならんのだ!

 

 南蛮王・呂布は、建安八年の収穫祭を南海で過ごすことになった。

 南海は、要するに今の広東省あたりであり、現在ではマカオや香港といった観光地が鈴なりに並んでいる。無論、この当時はやたら魚油くさい未開の蛮地というより他ない。

 だが、呂布陣営にとっては念願の「港湾都市」である。

 

呂 布:ふむ――俺様はココが気に入ったぞ。さっそく内政基盤を整えるべし。

陳 宮:といいますと?

呂 布:せっかくだから香港島を一大要塞にしてしまうのだ!

陳 宮:要塞!?

呂 布:おう。技術力をガンガンあげて島全体を造船廠にする! んで楼船をバンバンつくって無敵の艦隊を創設する!名付けて――

陳 宮:楼船ったって、外洋でしか使い道ありませんよ。

呂 布だから話の流れを折るなあ!(ばきいっ)

陳 宮:痛い……。

 

 楼船艦隊の是非はともかく、南海を要塞化する判断は正しい。なにしろここは「交差点都市」のひとつで、交趾、桂陽、建安と接している軍事的要地であった。おまけに数少ない外洋港でもあり、海上ルートで越(会稽)とも直通している。

 南海を征する者は、江南を征するのだ。

 

 

呂 布:というわけで、楼船を造れ。

陳 宮:技術力が全然たりませんよ…。まあ、会稽から海上ルートで襲撃される可能性がありますから、確かに楼船艦隊の編成は必要ですな。

呂 布:逆に、こちらが一足飛びで会稽を攻撃する事も出来るわけだ。

陳 宮:「水軍」持ってる武将がいないから、危険ですぞ。

呂 布:これから捕獲すればよろしい。さしあたって、技術力を高めつつ、荊州攻略に備えて蒙衝を揃えてだな……

 

 と、急ピッチで建設の進む南海要塞を望みながら議論する二人の元に、いささか緊張した面もちの公孫楼が歩み寄った。

 

公孫楼:……軍師。

陳 宮:なんです?

 

 公孫楼は、びっしりと文字の記された一枚の白帛を陳宮に差し出した。陳宮、素早く目を通して一瞬顔色を変えると、すぐに小声で何事かを命じた。公孫楼は、すぐさま引き下がった。

 無言劇を眺めていた呂布、怪訝そうに、

 

呂 布:なんなんだ?

陳 宮:成都の張様からの急報です。――よい報せではありませんな。

呂 布:ん――?

陳 宮:安定の馬騰殿が戦死されたそうです。

呂 布:……。

陳 宮:如何なさいますか、殿。

呂 布:……安定に行く。ここの指揮は任せる。

陳 宮:はっ。――

 

 涼州牧馬騰死す――の報は、ただちに南蛮全土を駆けめぐった。

 馬騰は、八月末日に七万の騎馬軍団を率いて出撃。長安の迎撃軍は散々に撃ち破ったものの、長安城を攻めあぐねている間に敵の奇略に掛かり、軍団は潰走した……。

 馬超、馬休、馬雲緑ら数名はかろうじて血路を斬り開いて脱出、安定までたどり着いたという。だがそこに、馬鉄、韓遂や成宜、程銀、馬玩らの姿はない。

 

 日夜兼行で南海から猛進した呂布隊、その月のうちに涼州に入り、安定の敗残軍と合流を果たした。

 その惨々たる様子を目の当たりにした呂布直衛軍の将兵が、一斉にうめき声を上げる。

 ……やがて、ボロボロの兵列が開いて、馬超、馬休、馬雲緑の兄妹が姿を現した。

 

馬 超:呂布殿、すまん!――親父を守れなかった……!

呂 布:ふん…。

 

 この役立たずどもめ――と言いながらも、がっしりと彼らの肩を抱く呂布。堪らず、嗚咽を漏らす馬超、馬休。こうゆうのが苦手な呂布、

 

呂 布:しっしっ! 俺様は野郎に貸す胸を持たんわ!

 

 と、二人を邪険に振り払う。顔から地面へ突っこんだ馬超たちは、痛い痛いぞと、何が可笑しいのか泥と涙でべとべとになった顔で笑いだした。

 一方の呂布は、馬雲緑の方に向き直っている。馬雲緑は、本能的に一定の距離を保ちつつも呂布と向き合い、

 

馬雲緑:私は悔しい……。

 

 と、ぽつりと呟いた。

 この一言をこらえていたのだろう。わっと、その場に座り込んで泣き出してしまった。

 それに呼応するかのように、矛を捨て、盾を擲ち、一斉に泣き出す涼州軍将兵たち。さすがに呂布も閉口して、赤兎に飛び乗るとその場を去った。

 ……陣幕では、すでに天水駐留軍が到着して軍議の準備を進めていくれていた。

 

呉 懿:長安の主将は鍾です。これを曹操の従弟・夏侯淵が補佐し、于禁、徐晃、韓浩らがそれに従っております。

呉 班:敵の総数は、現在五万ほどですが、隣の弘農に七万もの大部隊が集結しています。

 

 

 旧劉璋陣営の諸将が率いる無傷の大軍を見るだけでも、安定方面は大いに甦生の思いをしたことだろう。

 

孟 達:逆撃の心配はないが、これから急襲するというのも難しい話ですぞ、殿。まずは、敵陣営に取り込まれている諸将を連れ戻すことから始めるべきでしょう。

 

 面々の中には、旧劉璋陣営きっての謀将・孟達がいる。劉璋滅亡後、どういう経緯か孫策に仕えていたものを、最近になって法正が引き抜いたのである。義理は皆無に等しいが、バランスのよい能力値を持ち、味方にすればこれほど頼りになる者はない。

 

呂 布:誰がいま曹操に飼われているんだ。

孟 達:まず、馬鉄殿。そして韓遂殿ですな。あとは確認できるだけで成宜、楊秋です。

呂 布:他は移動したか斬られたか、だな。

孟 達:今なら確実に引き抜けます。私めにお任せ下さいませ。

呂 布:おう……金に糸目はつけるな。少なくとも馬鉄と韓遂は連れて戻ってこい。

 

 帳を払って天幕を出てゆく孟達。この工作に平行して、軍の再編成を行わねばならない。

 

黄 権:まず、我らの軍四万余。これに敗残軍三万を併せて七万…。あとは後方都市の予備兵を集結させれば。

呂 布:いんや。俺様は、そもそも内政官たちに兵を持たさぬ主義なのだ。彼らの軍兵をここへ回して貰おう。全部足せば十万はいくだろう。

  

 呂布のこだわりというべきか、戦場で兵を指揮するのは「武将」の仕事、と割り切り、「内政官」は前線都市に出さない方針なのだ。無論彼らも後方都市で勝手に兵を集めてしまうのだが、イザというときはこれを取り上げて戦線に回す事が出来る。

 

 その月の末、続々と兵団が集結する安定に、曹操の虜将となっていた韓遂と馬鉄、成宜が到着した。呂布はデコピン一撃ずつで彼らの帰参を許し、即座に新たな軍兵を与えた。

 

呂 布:獅子親父の弔い合戦だ! 

馬 超:おう! 親父の仇はかならず俺が討ってやる!

馬雲緑:呂布将軍っ、先鋒はぜひ私たちに!

 

 揚々たる士気のなか、着々と長安攻略の準備が進む。翌月、呂布は家老格の成都令・張を漢中へ急派した。五斗米教団にも、兵を出して貰おうというのである。

 むずがる教祖・張魯と軍師・閻圃を、やんわりと教母がたしなめたのかもしれない。張魯は、「共同作戦」に正式に合意してくれた。

 ――そして翌月、諸事万端整った呂布陣営は、11万という大軍団を催して安定を発する。攻略目標は、関中への玄関口である旧都・長安であった。

 
 いよいよ中原争覇の第一戦か!舞台を南から北へ移して、因縁の地・長安へ攻め入る呂布奉先!痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、いよいよ佳境です!

第十七章   南海の死闘

 

 

 南蛮王・呂布が直接指揮統率する「南蛮軍団」は、初陣早々から華々しい戦果を上げた。劉表に退路を断たれていた交趾の孫策軍は、本国の救援も得られぬまま全滅した。

 

呂 布:ちょろいちょろい。

 

 相変わらず軍功第一の呂布、上機嫌で捕虜達を引見する。

 ……さすがに、「小覇王」孫策に心服している彼らは、誰一人として呂布に従おうとはしない。

 

周 泰:斬れ。今の俺はそれが本望だ。

 

 などと頑固なものであった。

 

呂 布:ふん…。

 

 無論、この場合斬るのが正解。圧倒的な数の武将を抱える陣営に対し、弱小陣営のとるべき道はただ一つ、「人数減らし」である。一人でも多くの敵将を減らすよう心がけねば、いくら戦に勝っても意味はない。

 だが。

 

陳 宮:逃がしましょう。

呂 布:へ……?

 

 さすがに驚く呂布に、陳宮がヒソヒソ説明する。――先日、孫策軍本軍十二万は徐州の大会戦で壊滅的な打撃を被り、朱治、孫静をはじめ数多くの名将を喪っている。いま、孫策を一方的に追いつめて弱体化させるより、彼をして曹操に対する防波堤とするべきである。――

 

呂 布:オトナの理論だが…もし孫策が曹操に代わってしまったらどうするんだ?

陳 宮:う――そ、その時は臨機応変で!

呂 布:できるか~っ!

 

 ポカリと陳宮の頭をたたく呂布。しかしながら――

 

呂 布:まあ、初っ端から呉の有名人をズバズバ斬るのは面白くない。貴様らにはもう少しマシな死に場所を用意してやる。

董 襲:――それがしらを生かして帰すという意味か。

呂 布:おう。俺様に感謝して帰るように。

蒋 欽:バカにするな!貴様に救われるほど我らの命は軽く――

呂 布うるさ~い!

  

 華をはじめとする虜将たちは、ポイっとつまみ出されるように城から追い払われた。

 さかんに首を捻りながら、彼らは孫策領を目指してトボトボ騎行するハメになる。

 

呂 布:ああ、男臭かった…。

陳 宮:あんたねえ…。

 

 ゴタゴタがあったにしろ、交州の玄関・交趾の接収は終了した。同地の治安回復と兵力の再編成を急ぐ傍ら、陳宮は隙なく次の侵攻ポイント南海の調査をすすめている。

 

陳 宮:……いける!

 

 調査の結果、南海の劉表軍は孫策軍を撃ち破ったとき全滅寸前になっており、唯一援軍を送ることのできる荊州最南端・桂陽もガラ空きになっていることが判明したのだ。

 

陳 宮:というわけで、南海を今から攻めます!

呂 布:今から!?

陳 宮:なにごとも臨機応変!

呂 布:だからお前のは行き当たりばったりだ~っ!

 

 主従で怒鳴り合いながらも単騎、城を飛び出す呂布と陳宮。

 この暴走特急のような主君と軍師を追って、慌てて孟獲たちが城門を出、その後をどどどどどどどど――とおびただしい数の象が群れなして追い慕う。ややおくれて、取り残された兵士たちがあたふたと出撃してゆく。

 ……他国では、まず見られない珍風景であろう。

 

陳 宮:南海の劉表軍は、約三万です。敵主将は太守の黄忠!

呂 布:おお、あのハッスル爺さんだな!

陳 宮:あんたと8つしか違いませんけどね!

呂 布:ん!? 象の音がうるさくて聞こえなかったぞ!

陳 宮:……もう、いいです。

 

 凄まじい地響きのなかで怒鳴り合う二人の前に、劉表軍が姿を現した。

 戦場「交趾→南海」は、ハッキリ言ってただの平野部である。攻める側も守る側も、戦術などない。

 

呂 布:ようし、楼ちゃん続け~!

 

 前回に味を占めた呂布、新白馬義従を従え、必勝パターンとばかりに「強行」を開始する。快速の騎馬集団が先行するのに続き、戦象部隊が轟轟轟轟轟轟……と地軸を揺るがすほどの突進をする。

 

呂 布:邪魔だ、どけっ!

 

 あっという間に南海の最後衛地点に到着すると、呂布は息もつかせぬ突撃を公孫楼と代わる代わる敢行し、早速敵将を引っ捕らえてしまう。捕まえた後で、これが敵参軍の傅巽だったということが判明した。

 

呂 布:ジジイ、出てこい! 俺と一騎討ちでカタをつける気はないのか!

黄 忠:騒がしいわ!貴様もそろそろ老後の心配をして引っ込んでおれ!

呂 布:はっはっは! 顔グラフィック固定制が続く限り、俺様はいっこうに歳をとらんのだ!羨ましかろう!

黄 忠:おのれ~!

 

 砦を死守する黄忠。これでも武力95を誇る荊州最強の男だが、総大将という地位上、呂布の執拗な一騎討ちの誘いに乗らない。さすがに、公孫楼ではこの老人に太刀打ちできそうにない。

 

孟 獲:奪った! 

祝 融:あたいもいただき!

 

 一方、中央戦線。敵将を蹴散らした孟獲大王と祝融夫人のカップルが、ほぼ同時に砦を占拠している。

 ここに至り、ようやく北方から敵援軍が到着するが、もともと桂陽の兵力は三万に満たない。南蛮軍団にとって大した脅威ではなかった。

 

呂 布:だ~っ!しつこい!

公孫楼:……。

 

 こちらは最深部。黄忠老人、さすがに荊州最強の名はダテではない。

 右に呂布を防ぎ、左に公孫楼を攻め、とにかく「硬い」。おまけに連発する計略「混乱」が二回に一回くらい呂布に通用し、この老人ひとりで呂布軍は想像以上の苦戦を強いられた。

 が、それも限界がある。

 

黄 忠:む、無念……!

  

 数え切れないほどの突撃の結果、ようやく呂布の突撃が黄忠軍を全滅させた。呂布隊の損害は凄まじく、二万という大部隊が半数をきっている。

 

呂 布:……疲れた。

 

 というのが、正直なキモチであろう。

 とにかく、交州南海郡は、これまた天下が呆然とするほどの素早さで呂布の制圧下に置かれた。荊州侵攻の橋頭堡たるべき重要拠点を、とうとう手中に収めたのである。

 

 

 

 臨機応変か行き当たりばったりか!?軍師陳宮の策は図に当たり、南方ルートを驀進する呂布軍団!いよいよのぞむは荊州か!痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、次回・急展開です!

第十六章   南蛮軍出撃

 

 

 建安八年、夏。

 荊州の一角で偶発的に発生した呂・劉の軍事衝突は、意外な方面へ拡大を始めている。

 南海から長駆して交趾を陥とした孫策軍の一隊が、劉表軍によって退路を断たれ、孤立してしまったのである。

 

陳 宮:殿、早速ですが南蛮軍を動かしますよ!

呂 布:おおお!あの象が戦うの見れるのか~!

陳 宮:……いえね。

 

 ついに「小覇王」孫策と戦端をひらく事になる呂布軍!

 だが、まさにそのターン、慌ただしく出撃の準備を整えている雲南の城市に、場違いともいえるふんわりした女性が姿を現した。

 

教 母:あらあら~。…御精勤ですわね~♪

呂 布:げ……。

 

 漢中・五斗米教団の特使にして、教祖・張魯の母親、教母であった。

 成都に呂布が居なかったものだから、さらに南へとやってきたのだろう。あいかわらず、ハエのとまるような雰囲気でフラフラと単身、宮殿奧まで入ってきている。

 

陳 宮:え、衛兵――は、まあ、いいとしよう。……このたびは、いかなるご用件で?

 

 いま忙しいのだ、という態度もあらわに尋ねる陳宮。教母は唇に小さな手を当ててコロコロ頬笑んでいる。

 

教 母:嫌やですわ、軍師様。――同盟関係の更新に決まっているじゃありませんか♪

 

 のほほン、と微笑む教母。陳宮、むむむ…っと唸る。

 いまのところ張魯は同盟国ということで、漢中に対する防備はゼロに近い。もしも張魯との同盟が解消されたら、梓潼と武都の二郡にそれぞれ少なくとも五万の兵力を常駐させねばならなくなる。

 国力的に見て、いま十万もの大兵力を別個に準備するだけの余裕はない。

 

呂 布:(……俺はイヤだぞ、あの人のトコロに攻め込むのは)

陳 宮:(まだ何も言ってません……)

 

 ヒソヒソと会話する主従。――そう、常駐兵力が惜しいのならば、同盟期限が切れた瞬間に漢中を攻撃・制圧してしまえばよいのである。もっとも、そうなればそうなったで、長安と上庸という二つの敵都市と隣接する事になるが、二郡を永続的に防禦するよりは負担が少ないというモノ。

 しかし――

 

教 母:1ヶ年でよいのです、将軍。私の顔を立てて、うんと仰ってください~。

 

 ニコニコしながら、返答を迫る教母。

 ……結局、陳宮は折れた。出撃直前のこの時期に、懸念材料を増やす必要はなかった。

 

陳 宮:とんだハプニングがありましたが、予定通り今月、出撃します。

呂 布:ふう……。俺はどっと疲れた。

 

 出撃する兵力は、南蛮王・呂布の騎兵二万と公孫楼の鉄騎一万六千を中核とする。

 そして何よりの変わり種は、孟獲大王、木鹿大王、孟優、祝融ら南蛮象軍団四万である! 

 

呂 布:ワクワクするなあ…どんなカンジなんだろ?

 

 八万という南蛮大軍団は、雲南を発して東へ下り、交趾へなだれ込んだ。孫策軍はあわてて野戦陣を展開する。

 

陳 宮:敵兵力は約五万。敵主将は華だそうです。

呂 布:ふん、文官か。

陳 宮:でも武将にけっこう凄いのが揃ってますよ。質ではウチの負けですな。

 

 陳宮の言葉通り、まず先鋒が接触したのは東呉の猛将・蒋欽と董襲であった。

 ふたりとも武力は80にちかく、孟優や木鹿など足下にも及ばない。だが幸いなことに、兵科は両雄とも歩兵部隊である。

 

呂 布:いけ~っ! 踏みつぶしたれ~っ!

 

 鼓膜をつんざくような鳴き声と地鳴りを轟かせて、戦象部隊が突進を開始する。

 

董 襲:な、なんじゃあ!?

 

 驚く間もなく、孟獲隊が最初の突撃を敢行する。董襲隊一万二千は、一ターンも支えきれずに後退する。兵の損害も、孟獲隊400に対して1200と、凄まじい。

 続いて木鹿、孟優が果敢に攻撃を始めるが、これはほぼ互角というところか。

 

呂 布:ん~~……。確かに、強いんだけど。

陳 宮:圧倒的、というほどでもない、と。

呂 布:ううむ。

 

 ワクワクと期待していたため、ちょっと残念そうである。

 陳宮は伝令を出して、右翼から渡河して迂回進路をとる公孫楼を、さらに急がせた。

 

公孫楼:……。

 

 無言で肯くと、白馬義従は凄まじいスピードで行軍を開始し、たちまちのうちに湿地帯を抜け、敵の本城へ肉薄した。

 

呂 布:中央は任せる。俺様も楼ちゃんとこへ行って来る!

陳 宮:あまりムチャせんでくださいよ~!

 

 陳宮を中央の手当に残し、呂布本隊もまた「強行」を開始した。残された陳宮、まずは計略で董襲隊を混乱させる。そこへ孟獲たちがいっせいに攻撃を集中させ、これを手捕りにする。

 やがて孟獲隊の猛威に辟易した蒋欽隊を逐って、支城の一つが南蛮軍に占拠される。中央ブロックは、まずまず南蛮圧勝ムードで進んでゆく。

 ……一方、突出した公孫楼は、交趾太守の華を目前にして、賀斉、周泰という、これまた東呉屈指の猛将たちに行く手を阻まれてしまう。

 

公孫楼:……。

 

 やはり無言で兵を差し招き、突撃を開始する公孫楼。さすが、容易には崩れない。それどころか二隊連携して、これをあざやかに包囲する東呉軍。

 そこへ、

 

呂 布:お~い、楼ちゃん!

 

 と、南蛮王自らが赤兎を飛ばして駆けつけてきた!

 呂布は最初のターンからいきなり突撃して周泰を後退させつつ、逆に賀斉隊を公孫楼隊との中間地点に誘導し、数ターンに及ぶ一斉攻撃でこれをしとめてしまった。

 

周 泰:バ、バケモノか……!

 

 さすがに蒼くなる周泰、華

 

呂 布:がっはっはっは!そこにいたか、華とやら!

周 泰:い、いかん、太守を守れっ!

 

 悲鳴を上げる華に、凄まじい突撃をかける二万の呂布本隊。一万ちょっとの華隊では防ぎようもなく、たちまちズタズタに戦線を崩されて後退する。呂布、敢えてそれを逐わずに城の占拠をすすめる。

 

呂 布:どうだ!交趾はもらったぞ!

 

 この瞬間、あまりにもあっけなく「中央突破」が完成してしまった。

 東呉軍の士気はゼロになり、ほとんど全滅直前であった各部隊は、ボロボロと櫛の歯がこぼれるように壊乱をはじめた。

 

 ……交州の玄関口・交趾は、諸侯が呆気にとられるほどの速さで南蛮王の制圧下に置かれた

 
 
 圧倒的な南蛮軍団、東呉の精兵を軽く退け、舞台はいよいよ交州へ!小覇王・孫策、そして荊州王劉表はどう動くか!痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、いまトロピカルです!

第十五章   交州春秋

 

 建安八年、夏四月。

 永安太守法正の独断専行により、益州・荊州の勢力バランスがにわかに崩れ初めた!

 法正は軍を南方へ進め、荊南の一角・武陵を占拠。後続を待つ。

 これに対して軍師・陳宮は法正の太守更迭を決断し、武陵の太守として「陥陣営」高順を派遣した。

 さらに後詰めとして永安太守に勇将・張遼を急派し、劉表軍の逆撃に備える。

 ……一方、彼らの大親玉たる南蛮王・呂布は、南の海沿い侵攻作戦に備え、久しぶりに本貫の地たる雲南へ移動していた。

 

 

 雲南に到着した呂布、ぽか~んと口を開け、上を見上げている。

 

呂 布な、なんじゃこりゃああ!?

陳 宮:ホラ驚いた。

 

 ぱお~~~~ん!!

 

 呂布を出迎えたのは、おびただしい数の象・象・象・象・象・象・象・象・象・象・象・・・・・。

 これぞ、昨年夏から密かに編成が進められていた南蛮軍団の切り札「戦象部隊」なのである!

 

孟 獲:ははははッ、兄者! 象ッ! いいだろうっ!

 

 ひときわでかい戦象の上ではしゃいでいるのは、若き南蛮王孟獲。横にはその伴侶・祝融夫人、弟の孟優。さらには木鹿大王の姿まである。

 みんな、象兵であった。 

 

呂 布:お、おおおおおお……!陳宮~ッ! (ばきっ)

陳 宮:な、なぜ私を殴る!?

呂 布:どうして俺には象がいないんだ!? 孟獲、降りてこい! 俺に象の飼い方を教えろ!

孟 獲:わ・わかった!あ・兄者!

陳 宮:そ、それはまた後にしてください! 今は金も無いんです! ひとりあたり金一万もかかってるんですから!

 

 とにかく呂布をなだめた陳宮、まずは公孫楼とともに政庁へ入る。続いてドカドカと象ごと孟獲らが入城したため、雲南の城市はしばらく混乱が続いた。

 

陳 宮:南海へ出るためには、まず士燮を破って交趾を抜かねばなりません。

呂 布:それなんだよなあ。士燮ってジジイ誰なんだ?そんなヤツ三国志に出てきたっけ?

陳 宮:まあ、交州(今のベトナムあたり)の土着勢力みたいなもんですな。「三国志」本編とはまず関係ないんですけど、息子の代に孫権に地盤を奪われてますね。

呂 布:ふ~ん。

 

 聞き覚えのない人物だから、あまり興味がないらしい。

 陳宮にしても、こういう手合いを相手に本気で戦争するつもりは毛頭ない。

 

陳 宮:調略を使います。

呂 布:またアレやるのか?

陳 宮:もう流言は終わってます。来月から引き抜きを始めますよ。

 

 顔をしかめる呂布。ひたすら敵領内に「流言」を仕掛けまくり、ズボズボ敵将を引き抜くという情報戦術は、さすがに呂布の趣味に合わない。だが士燮勢力は、これでも配下七名、兵力は十万を越すれっきとした軍閥である。正面から攻めるとなれば、まず万余の損害は覚悟せねばなるまい。

 六月に入って、交趾城はにわかに呂布の間者で溢れかえった。軍師の許靖をはじめ、士燮の息子である士微、士祗などという一族武将が次々と呂布軍の勧誘を受けて城を出てゆく。

 陳宮、ちとこれは欲を出しすぎた。

 陳宮にしてみれば、ここは彼我の戦力差を一気に拡大させ、降伏勧告で穏便にカタをつけるつもりだったのだろう。

 ――だが、現実はそう甘くなかった。

 

伝 令:交趾、陥落です!南海の孫策軍がすでに同城の占拠を終えた模様!

陳 宮:ああっ!?

呂 布このド阿呆~~~ッツ!!(ばきいっ)

 

 当たり前である。もともと交趾の兵力は合計十万に達していたものを、呂布軍が将を引き抜きまくったせいで三万程まで落ち込んでいた。隣接する孫策にしてみれば、タナボタものである。

 

陳 宮:ごめんなさ~いいい!

呂 布:お前法正のこと偉そうに言える立場かッ!

 

 ごんごんと陳宮の頭を小突く呂布。

 と、そのもとに、もと交趾の支配者・士燮たちが出頭してきたという報告が入る。孫策軍に解放されたのだろう。

 呂布は、彼らを迎え入れるよう命じた。

 

士 燮:敗残の身にかくの如きご厚意、かたじけなく存じまする――。

呂 布:ふん、1ターンも保たなかったか。情けないヤツらだ。

士 燮:……。

 

 さすがに恨めしそうな目で、呂布とその両隣の列将を眺めやる士燮。その中には、我が子・士祗、士微や軍師の許靖の姿もあった。

 

陳 宮:ま、まあ、将軍。……とにかく交州殿、この雲南で石林など見物してごゆるりと過ごされよ。いずれ孫策を追い払って差し上げますゆえ。

士 燮:かたじけない…。 

 

 こうして、交州王・士燮と弟の士壱は、不本意ながら呂布の軍門に降った。

 

陳 宮:それにしても面倒になったなあ

公孫楼:……あなたのせい。

 

 南海に到るまで、今度は孫策軍と連戦せねばならないのだ。兵数、それに将の質もこれまでの相手とはまるで次元が違う。

 

陳 宮:ま、孫策だの周瑜だのいうバケモノがこちらに居ないことを祈って、流言を始めますか?

呂 布:まだやるのか!?

陳 宮:だって、せっかく交趾の治安ゼロなんですよ?今くらいしか流言は通用しませんぞ。

 

 計略「流言」の効き目は、ズバリ都市の「治安」値による。治安90代の都市ではまず成功しないのだが、荊州にしても揚州にしても、ほぼ全て90以上であった。 

 

呂 布:ううむ。……なら、やってみる価値はあるか。

 

 気が進まないまでも流言工作を開始する呂布軍。――と、その月の内に、思いも掛けない事態が転がり込んできた。

 桂陽の劉表軍がにわかに軍を発し、南海を占拠してしまったのである。

 交趾の孫策軍は、本国との連絡を絶たれてしまった!

 

陳 宮:おっしゃあ!ラッキーっ!

呂 布:ど~するんだ?

陳 宮:流言工作は中止です!攻めますよ!

呂 布:なんか行き当たりばったりの軍師だよな…

陳 宮:臨機応変!

 

 

 激動を続ける南海戦線!舞台を交州へ移して、南蛮王・呂布の獅子奮迅の活躍がはじまる!痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、けっこうスピーディーになってきます!

第十四章   風は荊州から

 

 

 建安八年(西暦二〇三年)。

 南蛮王・呂布の版図は南中・益州・涼州にまたがる広大なものとなっていた。

 同盟者の張魯の勢力も含めると、いまや押しも押されもせぬ西方の大軍閥である。

 

 

呂 布:がっはっはっは!どうだ陳宮!……旗揚げからわずか三年!天下まであと五年弱というところだろ!

陳 宮:そううまく運べばいいんですが…。

 

 呆れたように呂布を見る陳宮。

 これまでの戦いは、いうなれば前半の余興というべきもの。ろくな戦備を持たぬ劉璋陣営と、精強ではあるが果てしない貧乏勢力である馬騰陣営が相手であったため、敗戦ひとつせずに済ますことが出来た。

 だが、これからの相手は、そうそう甘くはない。

 

呂 布:次はどこを攻めるんだ?

陳 宮:あのねえ…。 

 

 陳宮が順序立てて戦略計画を説明しようとした矢先、驚くべき情報が呂布の元へ飛び込んできた。

 ……江南の「小覇王」孫策が、いよいよ大軍団を率いて北上を開始したというのだ。

 

陳 宮:むしろ遅いくらいですな。劉備との同盟が契機になったのでしょう。

呂 布:で、どうなったんだ?

 

 第一報によると、孫策軍は合肥を抜いて長江を渡り、徐州の州都・下を陥落させたという。

 

陳 宮:こうなると曹操は痛いだろ~な。 

呂 布:まあ、まだ遠い他人事だけど。

 

 遠く徐州方面の戦況を眺めながら、内政と軍の再編に追われる呂布たちのもとに、翌三月、さらなる報が飛び込んできた。

 下の孫策軍が、こんどは小沛へ攻め入ったというのである。

 

呂 布:えらいペースだな。大丈夫かよ?

 

 呂布が呟く間もなく、孫策軍敗退の報が入る。

 矢継ぎ早に早馬が出入りする本営の慌ただしさを見て、諸将もぞろぞろと呂布のまわりに参集してきた。

 

高 順:殿。我らも、次の戦に備えて前線へ出るべきかと思いますが。

張 遼:御大将、俺をひとつ荊州方面へ向かわせて貰えんでしょうか?

 

 涼州が治まってから数ヶ月経ち、荒れ放題だった諸郡の治安もどうやら回復した。そろそろ、彼ら野戦指揮官たちは戦の虫がうずく頃なのだろう。

 わいわいと呂布を囲んで皆が好き勝手を云いあっているところに、またまた飛報が飛び込む。こんどは、汝南の劉備軍についての報告であった。

 

呂 布:なんだって!? もう許昌は陥ちたのか!?

 

 驚くべき報であった。

 昨年末、孫策と同盟を結んでその庇護下に入った劉備が、孫策勢力の北上に合わせるように自らも北上し、曹操の根拠地である許都を襲撃したというのだ。

 

陳 宮:で、天子の身柄はどうなったか!?

 

 曹操にとって幸いなことに、皇帝は既に許を離れ、より治安のよいへと移動していた。

 

呂 布:身勝手な皇帝だ……。

張 超:なんか、季節ごとにフラフラ移動するらしいですぞ。

呂 布:イナゴかよ――って、お前だれだ!?

張 超:誰と仰られても…?

陳 宮:ほら、殿。パワーアップキット版にグレードアップしたとき、何人か武将追加したじゃないですか。

呂 布:ああ、なんだ、張の弟か。お前も甦生組に入れてもらえたのか。

 

 嬉しそうに肯く張超。兄以上に存在感の薄い男だが、実は「名声」は呂布より高い。能力値はオール60代後半という、使えなさそうで案外重宝するタイプであった。

 

呂 布:まあ、成都で兄の手伝いでもしとくんだな

張 超:御意。

 

 ――そうこうしてるうち、季節は移り四月。

 今度は対岸の火事などと言ってられない事態が、にわかに降って湧いてきた!

 

法 正:戦備が整いましたゆえ、武陵へ出撃いたしたいと存じまする。

 

 荊州方面軍の総帥である永安太守法正が、麾下六万の大軍を率いて、独断で劉表と戦端を開いてしまったのである!

 

陳 宮:あ~っ!あ~っ!あ~っ!

呂 布:何を慌ててるんだ?

陳 宮:あのデブ~!長安の攻略が終わるまでおとなしくできんのか~ッ!

 

 法正軍は、たちまち荊州の国境軍を撃砕して武陵の要塞を占拠した。

 

呂 布:い~じゃん、勝ったんだから。

陳 宮:こちらにもプランがあるんです!せっかく交趾に工作仕掛けてるってのに!

 

 陳宮の戦略によると、来たるべき荊州侵攻作戦は江陵・襄陽の要衝を避け、雲南→交趾→南海経由で、海沿いに行うつもりであったのだ

 

呂 布:それだと南海で孫策とぶつかるぜ。

陳 宮:いいんです! 南海を早いとこ奪っとかないと、後々えらいことになりますから。

 

 とにかく、法正へこれ以上軍を進めないように伝令を出すと、がら空きになってしまった永安へ、楊懐、高沛ら旧劉璋陣営の武将たちを急行させた。それでは不足と見た陳宮、さらに高順、張遼の騎馬軍団も進発させた。

 

呂 布:……俺は?

陳 宮:まずは雲南へ!季節が変わる前に交州を制圧します!

呂 布:おおお!雲南かぁ……懐かしいなあ!

陳 宮:驚かれるとおもいますよ。

呂 布:?

 

 建安八年。中原の勢力図は加速的に変動を開始する!北上を開始して曹操の後背を遅う孫策! そして孫策と盟を結び、許都を制圧した劉備一党! それに呼応するかのように、東方へ侵攻を開始する我らが南蛮王呂布一党! ――痛快読み切り三国志Ⅶ活劇は、いよいよ新展開です!
 

ある君主父娘の正月休暇

プレ第3部   ある君主父娘の正月休暇

 

 建安八年の正月を、南蛮王呂布は武都郡で迎えることになった。

 

陳 宮:殿、明けましておめでとうございます。

高 順:殿、おめでとうござる。

呂 布:おう。謹賀新年。

孟 獲:賀正。

 

 諸将が次々と酒杯を手に呂布の元へ挨拶へくる。涼州始末が一段落し、面々は久しぶりに心ゆくまで宴を楽しむ風情であった。

 その喧噪の中、ふたりの少女が呂布の前へ歩み出た。

 

呂刀姫:父上、お話があります。

呂文姫:父様~っ、お年玉っ(≧▽≦)ノ

呂 布:はっはっは顔文字使うな!

呂文姫:え~(>_<)ヽ

呂刀姫:ああもう!あなたは黙ってなさい!

 

 叱りつけた方の少女は、呂布の長女、刀姫であった。小柄だが姿勢が良く、颯々とした身ごなしが律動的である。名の通り刀剣をよく使う。この年、十四歳。

 叱られた方の少女は、呂布の次女、文姫である。以前にも登場したが、この年十一歳。

 

呂 布:なんだ。俺様は楼ちゃんのために自腹で三尖刀を買っちゃったから、年玉は遣わせんぞ。

呂文姫:ええ~っ。「引出」したらいいじゃない!

呂刀姫:誰が小遣いの話をしとるか~っ!

 

 ぐわしゃっと妹の頭を押さえつけると、

 

呂刀姫:父上!我ら姉妹、臣として忠義を尽くすことで、これまで育てられた御恩をお返しする所存にございます。どうか戦列のお端に加えていただきますよう……。

  

 にわかに容を改めて言う。

 びっくりする呂布の後ろでは、おおおおっ、と一座が響動めいている。

 

呂 布:えっ、もうそんなイベントがおこる年頃なの?

呂刀姫:ちょっと「えぢた~」で登場年をいじくりましたが。

 

 個人差はあるものの、ふつう幼年武将が成人に達するのは十五から二十歳のあいだである。姉の呂刀姫はともかく、妹の呂文姫は明らかにフライングであった。

 

呂 布:いいのかなあ?

陳 宮:いいんじゃないんですか?姫様たちはいずれも文武の各方面で超一流の才幹をお持ちですし。

呂 布:そうなの?刀姫、武力は?

呂刀姫:84です。

呂 布:ほお。文姫、知力は?

呂文姫:じゃ~~ん!98で~~っす☆

呂 布:偏差値社会の歪みを垣間見た気がするな……。

 

 頭を抱える呂布。もっとも拒む理由もないので、呂布の娘ふたりは、そのまま呂布軍団に組み込まれることとなった。

 しばらくの間、ふたりは傅人である「陥陣営」こと高順の下に属して武者修行である。

 

 あくる日、呂布は二人を連れて高順のもとを訪れた。

 

高 順:これは殿。我が屋敷にようこそ。

呂 布:てゆうか、お前の屋敷は成都にあるはずなんだがな。

高 順:……。

呂 布:ちっ、アドリブのきかんヤツだ。

高 順:はっ。申し訳ございませぬ。

呂 布:いちいち謝るな。それより俺様がこうやって来ているのだ!何か面白い事はないのか!

 

 面白いこと…と言われて根が真面目な高順、困じ果てた表情で呆然としている。

 

呂 布:ええい、面白くない!なんで楼ちゃんか雲碌ちゃんを武都まで連れて来なかったんだろ?

呂刀姫:父上っ。……高順様、この辺りで観光名所か何かありませんか?

 

 見かねて助け船を出す呂刀姫。高順はハタと気づいた顔で、

 

高 順:おお、そうでした。ここからそう遠くないところにございます。いかがですか、殿。ともに見物にでも。

呂 布:断る。何が悲しくてこんなムサイ男とデートして親密度上げにゃあならんのだ!?

高 順:はっ…。

呂 布:だいたい光栄は何をたくらんでる!今回のシステムは恐いぞ!男同士で文通してデートして親密度アップさせるんだぞ!?三国志世界に「アンジェリーク」を出現させるつもりなのか!?

呂文姫:アンジェってそういうゲームだったっけ?。

呂刀姫:ああもう!…父上!せっかく高順将軍が誘ってくださってるんですからっ!

 

 結局、娘の気迫に圧されて呂布はしぶしぶ観光に参加する。とはいえ久々の家族ピクニック。弁当を持ってはしゃぐ呂布一行の前に、高順がチョイスした「名所」が姿をあらわした。

 

呂 布:……。

呂刀姫:……。

呂文姫:……。

 

 そこには、目の眩むような断崖絶壁と、申し訳程度に壁面に張り付いている桟道があった。

 これぞ巴蜀を天険たらしめている悪名高い「蜀の桟道」である。

 

呂 布:お、お前はどこまで不器用なんだ! この世のどこに主君の家族を桟道見物に誘う武将がいる!?

高 順:も、申し訳ございません。

呂 布:こんなクソ寒い所に来るくらいなら、狩りに行ったついでに虎と遭遇してる方がマシだ!

呂刀姫:ま、まあまあ……。父上、ほら軍団で通るのと観光で見るのと、また違う風情があるでしょう?

 

 さすがに呂刀姫もフォローしきれない様子で、それでもいっしょうけんめいに高順をかばう。

 

呂 布:ふん。まあ、最初から武都の名所は「桟道」しかないしな。これを考えたヤツはどういう神経をしてるんだ?

呂刀姫:まあまあ…。

呂 布:だいたい、漢中の名所にかの「武侯真墓」がないのはどういうことだ!

呂文姫:まだ故人じゃないよ~。

 

 

 結局、遠くから桟道を眺めた後、その補修作業について事務的な打ち合わせを済ますと、弁当を食べて呂布一行は城へ戻った。

 

呂 布:まったく……。風呂でも入って寝るか

呂文姫:でも私は楽しかったよ~っ

呂刀姫:なんだか私が一番疲れた気がする……。