Home > コンテンツ > 南蛮王呂布の痛快活劇

2010.12.25

(幕間)南蛮王の平日

というわけで。

つくってみたよ(;・∀・)つ

 

 

作成にあたって

もともと与太話だったので、11月末に至るまで、動画つくるなんてこれっぽっちも思ってなかったのですが、不意に気が変わったのは、わが義兄の異様なまでに頼もしいラブやんプロレス動画を拝見してから。
そもそも動画なんぞ人ごとの世界だったのが、身内がインファイトしてると知り、俄かにムラムラと創作欲がおっきし、AviUtilとやらが簡単で高性能、と聞いてダウンロード。これが11月29日~30日の出来事。
当初目標はサイト十周年記念+マイ生誕祭の12月6日で、要するに一週間死ぬ気で頑張れば何とかなると踏み、新PCに三国志11をインスコし、ハルヒ三国志以来の中華ツールを起動し、エディット開始
勝手知ったるなんとやらで、シナリオは1日でプレイ可能な形に仕上がったのですが、それと並行していた動画編集のお勉強がなかなか進まず(´レ`;) 
解らない事があればまとめWikiとか見つつ、義兄上からの有り難い助言も頂き、何とか動画は形になりつつあり。
が、このあたりで躓いたのは、BGMの入手。

 

ゲーム画面使ってる時点で言い逃れ様無くアウトですが(; ・`д・´)、それでも一分のこだわりとして、音楽だけは、権利関係をしっかりクリアにしたかった。

 

ニコニコ動画とようつべは、ジャスラックと包括契約を交わしており、「楽器で演奏してみた」「(生音源以外の伴奏で)歌ってみた」は、著作権的にもジャスラック的にも「合法」となります。
この場合、いわゆる「耳コピMIDI」も、「演奏してみた」と同じ扱いになりますので、既存の音楽を使いたい場合、この耳コピMIDIを使えばよい、ということに。
しかし十年以上もむかし、あれほど隆盛を見せた耳コピMIDI文化は既に壊滅しており、まず入手可能なMIDI探しの段から、作業はスタート。
幸い、ジャスラックの包括契約を奇貨とし、耳コピ文化の新天地をニコつべに求めて創作活動を再開されている方も多くおられました。
この場合、ご連絡するのは比較的容易(それでもマイフレンド申請する以外に連絡手段が無い)。そして、幾人からは無事了承を頂くことができました。
問題は、ニコ動でも見つからないMIDIアレンジ曲。これはぐぐるしかない。
結果、ごくごく少数になりましたが、あの大粛正の後、営々と運営を続けておられるMIDIサイトさまと巡り会うことが出来ました。
もちろん、ジャスラックの管理対象外の曲のみとなりますが、私が欲しかった「昔のエロゲとかのBGM」が、このコミュニティ内からお借りすることが出来るようになったのです(;゚∀゚)=3
有り難いことに、アリスソフトやリーフ等の老舗メーカーは、「耳コピは二次創作なので、ジャスラック管理曲以外は公開しても文句は言わない」という二次創作ガイドラインを策定しています。
なので耳コピ制作者さまの了承を得さえすれば、BGMとしての使用も可能になります。
 
――が、次の障害。MIDIサイト様を見つけたとして、たとえば2年ほど前から更新が停まっている場合、なかなか連絡が付かない。
サイトの掲示板はスパムで埋まり、メールフォームは動作しているかどうか解らない(;´Д`) 
そういう場合、なんとか横の繋がりでもって、メールや連絡先を見つけて頂いたり、アレンジコンテスト受賞作品とかの場合は、コンテスト主催者様に連絡をして、当時のアドレスを伺ったり――と、出来るだけの手段で、使わせて頂きたいMIDIファイルの作者様に接近し、連絡をとりました。
それでも連絡が付かない場合、MIDI付録のテキストに「二次配布以外なら転載使用おっけーよん♪」という有り難い文言があった時は、もうOK頂いたと割り切ってみたり、結局諦めたり――ということで、その都度予定していたシーンを削ったり考え直したりと、最後まで動画の内容は二転三転しました。
  
で、6日になった段階でも、まだ曲の全てが揃わず、動画内容もかなり荒いカンジだったので、投稿延期を決定(;´Д`) これが前回の日記のときのお話。
その後、せっかくだからストパン2の話題が出るシーンでは、痛機の空撮やろう、とか要らんアイデアが出てきて、その空撮と編集に丸一日かかったり(結果別の動画に)、テキストをあーでもないこーでもないとこねくり回してBGMとタイミングが合わなくなって頭抱えたりと、ズルズルと投稿期間がずれ込んでいき、3日前の21日に至ります(´レ`;)
なにぶん、ニコ動よく見てたのは2年程前だし、最近は俺妹と禁書を綺麗に見る為だけに月々500円布施する程度のヌルいニコ厨になってしまっていたので、これまた勝手がわからない(;´Д`)
あの後ろのスポンサーみたいなの金かかるのか!と驚愕の事実(´レ`;) あ、曹操僕です。自作自演。あのネタやってみたかったの。でもその後バタバタっと本当にネタ対応の広告出してくださいましてありがとうございます(´;ω;`) かなりびっくり。
その後、ジリジリふえるコメントみてニヤニヤしてニヤニヤのあまり席を立ってベッドでごろごろ転がってまた戻る簡単なお仕事をこなしつつ、三日経過!
  
で、今日(;・∀・)。
本当は一週間くらい、ニコニコ動画の内部だけでどれくらいの人が訪れるのかを見たかったのだけど、年の瀬にかかるのもアレなんで、このクリスマスを以て、一応表へも告知しようと言う流れになりましたー。
 
 

今後

動画つくるのおもすれー(;゚∀゚)=3 思ったより簡単につくれる。素材さえ合法的に揃えることが出来たら、メインに据えてもいいかも、と思えたくらい。
ただ、南蛮王呂布を動画で更新し続けるのは意外に難しいという感触ですな。
テキストですら放置なのに動画なんか続くワケないという身も蓋もない理由もありますが、南蛮王呂布は自分で思っていた以上に、テキスト重視だったみたい。
「会話回しは馬鹿っぽく、地の文は滑稽に見えるくらい生真面目に」というのが、サイトでやってたときの制作骨子なのですが、この「地の文」のウェイトが、存外大きい。
このあたりを動画でどの程度再現できるか、少々工夫が必要なところ(; ・`д・´)
 
あと、当然ながら権利関係。音楽はともかく、画像関係は光栄の許可など下りるはずも無いから、そもそも南蛮王シリーズは成立できない。
もし今後、紙芝居で動画をつくるとなれば、ウチの場合は、まず「学園三国志」が候補に上がる。
iswebサービス終了に伴い消滅した学園三国志1.x系のコンテンツと、放置しっぱなしの2.0の再起の場として、動画作成も候補にいれたいのです(`・ω・´)=3
音楽は、今回フリー素材として公開されている、凄まじくクオリティの作品群をいくつも拝聴することができましたので、おそらく何とかなるかと(;・∀・)。
  
などと、この辺もぼちぼちと考えつつ。メリークリスマス。
 
(2010.12.24)

2009.01.01

44.要塞砲対要塞砲

INTERLUDE

 

 

呂 布:ところで聞いてくれよ。こないだ無口っ娘倶楽部の打ち上げあって。

陳 宮:はあ。

呂 布:そん時、生まれてはじめてメイド喫茶に行ってきたんだけどさ。

陳 宮:うわ、イタっ!

呂 布:イタいとかいうな。とにかくだな、凄かったわけですよ。

陳 宮:ほう。

呂 布:まずだな。メシが30分は出てこない。

陳 宮:…は?

呂 布:食後に頼んでたコーヒーが、普通に食前に出てくる

陳 宮:…。

呂 布:で、メイドさん呼ぶときはハンドベルでチリン…て呼びつけるんだけどさ、「はい、ただいま参ります、ご主人様」って返事があったと、別のテーブルに駆け付けたり

陳 宮:…それは、喫茶店として破綻してるのでは…?

呂 布ドジっ子メイドさんハァハァ

陳 宮:そっちかよ。

 

 

呂 布:あと、メイド喫茶でマリみて話もしたんだけど。

陳 宮:まだそのネタ引っ張ってたんですか。

呂 布:細川可南子が「登場人物イラスト」から消えたんだよ。

陳 宮:らしいですな。

呂 布:そのこと関羽に話したら、膝で思いっきりテーブル蹴り上げてやがんの。マジだよ、あいつ。

陳 宮:殿下、ひょっとして無口っ娘倶楽部で孤立してません?

 

 

 

第四四話 要塞砲対要塞砲

 

 

 建安17年(212年)9月。

 続々と中原へ集結する益州軍団に練兵を施しつつ、南蛮王呂布は許都にあって、東進への施策を精力的に押し進めていた。

 天子を擁し、自らは丞相・南蛮王を号し、既に中華のほぼ半分をおさめる呂布にとっては、もはや以後の戦さは残敵の掃討ほどに容易かろう――と、天下の耳目は皆そう思った。

 事実、この時点での諸勢力の比率は 

 

勢力
都市数
人口
武将数
兵力
呂布
31
9,461,900
127
1,195,106
曹操
6
973,000
127
549,215
袁譚
8
6,041,400
43
408,380
孫策
5
1,682,500
48
422,099

 

 となっており、数字だけで見れば、南蛮王が他へ敗れる要因は一つとして見つからぬであろう。

 ところが実際は、そうもいかなかった。

 

胡 姫:はー、なんだかご機嫌斜めですねえ。

呂 布:あああ!なんつうか、凄いストレスたまるのよ!

劉 備:CPUは飽きを知らへんすからねえ…

 

 呂布の私邸の院子にあって、馴染みのメンバーが適当に座を敷いて雑談していた。呂布は相変わらず、居城があるのに郊外で一軒家を構えているのである。

 

 ──さて。

 この10月に入ってなお、呂布は許から動けずにいる。

 南蛮軍団百万といえど、陳宮や呂布の自儘に出来るのは、許に駐留する十五万だけであり、その大軍は、ひたすら潁川以西の拠点防衛の消耗戦に巻き込まれていたのだ。

 小競り合いと云っても、双方十万ちかい軍勢が衝突する会戦で、その都度、どちらの軍もおびただしい死傷者を出して撤退をするというありさまだ。

 

 

陳 宮:なんか、「9」の異民族を思い出すなあ。何この徒労感。

劉 備:あー、確かに。勢力表見る限り、曹操にもまだストックありますから、このままだと延々と続くのと違いますか。

呂 布:要は寿春なんだよなあ…

 

 マップの通り、許の呂布軍団を悩ましているのは、寿春に駐留する荀攸の存在であった。

 剛柔自在のこの名士太守は、ほとんど嫌がらせのように、次々と軍を進発させ、呂布の東進を牽制している。その幕下も、鍾、趙巌などという、呂布でさえ舌打ちしたくなるような名将揃いで、彼らの一軍団だけで完全に呂布軍十五万を釘付けにしていた。

 拠点さえ抑えれば素直に東進できると考えていた首脳陣、意外な敵の遊撃戦に頭を抱えている。
 と、最近になって呂布の寵遇を得た陳羣が謹直そうな口調でボソボソ呟いた。

 

陳 羣:豫州方面は、都市こそ少ないですが、天下趨勢の要。このまま互いにビンタを打ち合っていても埒はあきませぬ。

呂 布:ぶわははは!ビンタ!ビンタ!いいなあ、その表現!

 

 なにがツボにはまったのか、笑い転げる呂布。脳裡に、撃ってこい!とノーガードアピールしている半裸の荀攸でも想像したのであろう。

 

陳 宮:…確かに、荀攸の狙いは、我が軍にビンタ…じゃない、牽制を続けることで、曹操本軍の回復を待つつもりなのだろう。

呂 布:ならさあ、もう陳留攻めようよ。洛陽の馬超が合流するから、一発だって。

陳 宮:うーん。

 

 陳宮は難しい顔をする。

 実際、その通りなのだろうが、陳宮にしてみたら、まだ呂布軍の攻城兵器配備が完全ではない。できれば全部隊に井蘭を装備させ、緒戦の矢戦で勝敗を決したいほどなのだ。

 

呂 布:あのさあ、前から思ってたけど、オマエ曹操恐怖症だろ。

陳 宮:…というのとも、ちょっと違うんですけどね。

陳 羣:いや、私も気持ちは解ります。あの人、キャラ立ってないけど怖いから。

呂 布:そうかなあ。メイド喫茶行ったときも、凄い普通の反応だったしな。メイドさんが跪いてアイスコーヒーとかにミルク入れてくれるんだけど、結構どぎまぎしてたぞ。なぜか半笑いで

陳 宮曹操と行ったのかよ!?

呂 布:無口っ娘倶楽部の打ち上げだっての。袁譚もいたし、老師(※左慈)もいたぞ。

劉 備:ぶっちゃけ、アンタら何で戦争してるんですか?

陳 宮:ていうか、曹操も会員だったのか…

 

 話の腰をぼっきりと折られた南蛮首脳、しばらく呂布のメイド喫茶レポを聞かされる。

 

呂 布:行って来たのは二件なんだけどさ、一件目はまともだったのよ。普通の喫茶店がメイドさん雇いました、みたいな。店も綺麗だったしな。

陳 宮:はあ…

劉 備:じゃあ、二件目がハズレですか。

呂 布:そこが微妙なんだな。ある意味オーダーミスもフラグイベントかもしれんし。

公孫楼:…。

呂 布:俺様のポリシーは、「この世はセーブポイントのないエロゲー」だからなー。

陳 宮:…SLGですらないのかよ。

胡 姫:含蓄ある良いお言葉ですねー。いい年したオトナがなかなか口に出せる台詞ではないです。

公孫楼:…ナニゲにひどい。

 

 そんな緊張感の無い一同の元へ、息せき切って、おなじみの劉循が、急報を携えて駆け込んできた。

 ――またしても、勝ヒを目指して、荀攸軍八万が接近してきているというのである。

 顔を見合わせる一同。

 

呂 布:…きりがないな。

劉 循:ですねえ。

呂 布:…よし。汝南の高順にも出撃させて、この軍団は全滅させてしまえ。その後は、すぐに陳留を攻める。正直飽きた。

陳 宮:御意――

呂 布:迎撃軍は楼ちゃんをメインでシフトを組めよ。それから、陳留攻めで使うから、江夏から張遼を呼べ。あと、孟獲って何処にいたっけ?あいつと、戦象部隊セットでな。

陳 宮:直ちに手配します。

 

 陳宮はニヤリと笑った。

 孟獲だの張遼だのを呼び寄せるということは、呂布自らが陣頭に立つということであり、その傍らにあるのは、必ず陳宮なのであった。

 通称「同窓会」といわれるその布陣は、南蛮時代から、ほとんど例外のないカタチなのであった。

 南蛮で挙兵してから、はや十七年。山嶺を駆け回った当時と、呂布は何一つ変わっていない。

 

 ――勝ヒの郊外で曹操軍を捕捉した南蛮軍は、援軍を入れれば13万に達する大軍団であった。

 とはいえ、敵の大将皇甫麗(ただしくは障モ)は族父の名に恥じぬ名将であり、猛将公孫楼率いる倍近い大軍を相手に、見事に進退したようである。

 結局のところ、呂布がプロ市民の相手をしている間に、戦捷の速報がもたらされたわけだが、南蛮軍の損害もばかにならなかった。いつも通りの痛み分け、という結果である。

 凱旋した公孫楼らをねぎらい、今回斬った夏侯楙の首を実検した呂布は、リストの中から意外な降将の名を見て、失笑した。

 曹操の五男である曹熊が、呂布に降っていたのである。無論、呂布は引見する必要を認めず、僻地へ飛ばした。

 

 戦後処理と軍兵の統廃合を行うと同時に、新野と永昌の兵器廠をフル稼働させて攻城兵器を装備させた益州軍団を、部隊単位で合流させる。

 そうこうしている間に、年が明け、建安十八年(213年)――

 

 正月早々、まずは関羽の次子、関興が成人したというめでたい報せと同時に、遙か南方の交趾で民衆らの武装蜂起があったとの急報が入る。厳侯張障・ェ薨去した影響が、ぼちぼちと内陸で顕れてきているのであろう。

 

呂 布:いつまでも、グダグダしておれん。陳留で、曹操を討つ!

陳 宮:はいっ!

呂 布:戦闘は井蘭が決めるかもしれんが、楼ちゃん、張遼、お前たちは突騎を率いて前衛しろ。今回はたぶん市街戦になるぞ。

張 遼:はっ――!

 

 許を進発した呂布軍は、全軍で10部隊10万。久々に親征する王呂布に従うのは、陳宮、張遼、公孫楼、孟獲と、凄まじい陣容である。

 また、呂刀姫麾下の馬超軍団にも動員令がかかっており、やがて5万規模の増援が洛陽から駆け付ける予定であった。

 対する陳留の守備戦力は、曹操、司馬懿、賈らを中核とする十二万という大軍である。

 数の上では遜色はなく、率いる将の力量も伯仲している。

 違うのは、攻城兵器の数で、呂布軍は10部隊中、なんと8部隊までもが井蘭を装備している。

 いわば、矢戦に特化した軍団である。

 前回、火力の強化が南蛮軍の主題としてあげられていたが、それを手っ取り早く解決するために、陳宮らがとった方策が、これであった。

 

曹 操:そこまでやるか、陳宮。

司馬懿:なんと、えげつない…

 

 城壁上から、陳留を取り囲む雲霞の如き大軍が遠望できる。

 地平をびっしり埋め尽くす鉄甲の中から、悪夢のように林立している塔車すべてが、凄絶な殺傷力をもつ攻城兵器なのである。

 呆れたようにため息をつく曹操軍首脳らの頭上に、1月の冷たい雨がパラパラと降りはじめた。

 両軍は開戦した。

大艦巨砲主義

 

 

 何とも不気味な戦場の姿であった。

 申し訳程度に接近した南蛮軍は、敵の弩の射程範囲外にずらりと展開し、前面に井蘭を押し出している。

 そして拍子木の音が鳴り響くと、城壁よりも高い井蘭の頂上部から、いっせいに数万の弩兵が斉射をはじめる。

 飛蝗かと見紛うほど、見上げる空をびっしり埋め尽くす鉄箭の大群は、城壁の上空で放物線を描いたかと思うと、雷雨のように轟々と音を立てて曹操軍の頭上へ降り注ぎはじめた。

 

呂 布:うわ、ひで。

 

 

 呂布が呆れる程、井蘭の威力はすさまじい。

 このとき城壁上に躰を露出していた兵はもちろん、城壁の下に逃げ込んでいた兵でさえ、甲も盾も遮蔽物もあったものではなかった。満身に数十本の矢を立てて絶命した人体が、そこら中、悪趣味なオブジェのようにゴロゴロと転がり、針鼠のようになった兵舎が、鉄箭の重量で倒壊する事故まで起こった。

 その凄まじさに怯える陳留軍から、

 「──元戎弩だ!」

 という悲鳴が、すぐに上がった。

 その通りで、呂布軍は、宛の弓兵編成所で、実用可能な元戎弩兵部隊を大量に錬成していたのである。

 元戎弩兵の放つ鉄箭は、城門の構造物さえ破壊して、門中で防備に詰めていた兵士らを容赦なく殺傷する。

 最初の斉射だけで、曹操軍の前衛は、全体の一割を失う損害を被った。

 

陳 宮:張遼、続けて撃て!

 

 陳宮の「指揮」により、さらに張遼が射撃を続け、城壁上の残存兵をなぶり殺しにする。 陳留軍は、もはやこの一方的な虐殺におののくばかりであった。

 と──

 突然、曹操が哄笑した。

 彼自身、城壁上の一部隊を率いて、防戦にあたっていたが、急にけたたましく嗤い始めたのである。

 

 そして彼の命に従い、こんどは城壁上の陳留軍が、何と胸壁の上に井蘭を二群も組み上げ、呂布軍のさらに頭上を抑えた。

 

呂 布:なんじゃあ…!?

陳 宮:見るからにバランス悪そう…

 

 危なっかしくグラグラ揺れながらも、陳留城は、城壁上に塔車が屹立する要塞と急変した。

 

曹 操:──撃て!

 

 曹操が命ずるや、高々度から、今度は南蛮軍の頭上に矢の豪雨が降り注いだ。矢は呂布の身辺にも殺到し、彼の左右に控えていた兵士らがバタバタとたおれた。

 次のターン、さらに陳宮は一斉射撃を命じる。

 

陳 宮:こちらも続けて撃て!目標、敵井蘭部隊!

呂 布:…なんか、ガイエスブルク要塞とイゼルローン要塞の主砲戦みたいだなあ…

 

 などと、感心したように呟く呂布のはるか頭上を、うなりを上げて巨岩が飛び過ぎていった。

 陳宮と貌を見合わせた呂布、恐る恐る振りかえると、ちょうど巨岩の直撃を受けた井蘭が一基、兵士を載せたままゆっくりと倒壊してゆくスペクタクルな光景が目に映った。

 たちまちおびただしい土煙捲き上がり、轟音と無数の悲鳴が一瞬遅れて響きわたった。

 

呂 布:うっわー…

公孫楼:…霹靂車!

 

 南蛮軍の諸将は一斉に舌打ちした。

 霹靂車は対人の殺傷力は低いが、射程はきわめて長く、城門や攻城兵器の粉砕に使われる、文字通り要塞砲である。

 

張 遼:さすがは曹操。一筋縄じゃいかんですな。

陳 宮:あー、このまま撃ち合っていても埒があかんな…

 

 矢戦を選んだのは南蛮軍の方だが、敵方にも、相応の備えがあったわけだ。

陳 宮:近接先頭の準備!各支隊は城壁に取り付け!──くそ、衝車連れてこれば良かった。

 

 陳宮は、射程内に敵がおらず、所在なげにしている井蘭部隊を解体させ、俄に突撃兵を編成させた。

 じりじりと井蘭の車列を前進させながら、南蛮軍の将兵たちは、続々と陳留の城壁へ取りつきはじめた。

 

 ──いつぞやの官渡戦を思わせるような、凄絶な消耗戦であった。

 わずか数日の差で、馬超、法正、王平らが各々数部隊を引き連れて到着し、南蛮軍の戦力は一挙に倍増。

 …とはいえ、いまだ城壁を挟んだまま、壮絶な矢戦を続けている最中であり、馬超軍はしばらく参戦する事も出来ず、戦場を遠望するしかない。たまに曹操や司馬懿の「誘引」に引っ掛かっても、びっしりと城壁を埋め尽くす南蛮本軍のせいで、接近すらできないのである。

 ようやく、陳留の正門が破壊されたのが、開戦12日目であった。

 この時点で、曹操軍は2万を切っており、南蛮軍13万。勝敗はほぼ決している。

 ところが偶然にも、このターンに、なんと南蛮軍の兵糧が切れた。

 

陳 宮:マジ…?

呂 布:なんで…?

 

 ──さすがに、蒼白になる呂布と陳宮。

 曹操軍の殆どは潰走し、城内へ撤退しているのだが、このあとの市街戦を考えれば、兵糧ゼロのまま戦い続けるのは、いかにも厳しい。

 

陳 宮:と、とにかく敵をつぶせ!

 

 陳宮の慌てふためいた命令により、孟獲率いる戦象部隊を中心に、鉄騎の集団が陳留城の外郭へなだれ込んだ。先ほどまで井蘭として活躍していた部隊である。

 城壁の下へおりていた敵軍は、抵抗するまもなく、次々と踏みつぶされてゆく。

 

 

市街戦

 

 

 しぶとく支隊から支隊へと所在を換えながら指揮を執っていた曹操も、ようやく全部隊を失い、陳留城内に撤退した。

 

陳 宮:あー、これから市街戦ですよ…もう…

呂 布:きっついなあ…

 

 呂布、頭を抱える。

 曹操軍は城内の兵を再編し、3万余を擁して最後の血戦に備えている。

 無論、闘って負けることは無いが、問題は兵数でなく兵士の腹具合であった。

呂 布:…まあ、ダメ元でやってみるしかないか。

孟 獲:義兄者、まだ、大丈夫!

 

 なるほど孟獲軍と呂布軍は、アホ程に士気が高く、まだ数日は余裕を持って戦える気配である。

 城壁戦で火計にやられた他の軍も、あと数日は何とか戦線を維持できそうであった。

 

呂 布:よっし!やろう!

 

 呂布がうなずくと、陳宮は全軍を前進させた。
もはや速攻で、敵を殲滅するしかない。タイムアタックである。

 

伝 令:軍師、孟獲将軍が陥し穽に墜ちました!

陳 宮:放っておけ!

伝 令:軍師、殿下も陥し穽にお堕ち遊ばしました!

陳 宮:埋めておけ!

伝 令:軍師、公孫楼将軍も陥とし穽に堕ちました!

陳 宮:うわ、ちょっと見たい。

 

 いつそのようなヒマがあったのか、陳留市街のいたるところに陥穽が仕掛けられ、呂布軍は面白い程ズボズボ堕ちた。それでも進撃速度をいささかも緩めず、先鋒の張遼は、その日のうちに曹操軍前衛と接触した。

陳 宮:力攻めだ!「近接」と「突撃」以外は使うなよ!

張 遼:承知!

 

 ジリジリと士気が低下してゆく呂布軍は、自軍の損害を省みず、ひたすら肉弾戦をするしかない。

 対する曹操軍は、司馬懿、賈ら謀臣を中核に据え、しぶとく計略を連発する。

 これがまた、いっそ痛快なほど図に当たる。

 混乱した上に火をかけられ、惑乱状態で「同士討」を仕掛けられた孟獲戦象軍が、公孫楼軍本隊を壊滅させると、負けじと呂布本隊も「同士討」にひっかかって、背後で控えていた陳宮軍分隊を木っ端微塵にする。

 

陳 宮やんのかコラぁ!

呂 布:はっはっは。むかし馬騰のおっさん倒したときって、こんなカンジだったよな。

馬 超:そうそう、だいたいこんなカンジだった。ありゃあ酷かった。

公孫楼:…。

 

 ふたりして涼州の山野を懐かしむ義兄弟たちを、冷たく一瞥する公孫楼。

 彼女の本隊である白き突騎兵団は、ほとんど無傷に近く、この戦闘の決勝打と成り得た。

 いまや陳留城の市街地は、数区画に渡って炎に包まれ、敵味方とも、互いの連絡が取れずに孤立している。

 

 そこへ、公孫楼が無言で指示すると、勇猛なる白馬義従たちは、疾風のように炎の戦場を横切り、曹操の本陣を一挙に衝いた。

 曹操が諸隊を糾合する隙を与えないほど、見事な速攻である。

 

 ――市街戦開始9日目。

 とうとう、曹操は全ての部隊を失い、陳留を放棄する。

 この攻防戦で、曹操軍は全軍の二割近くを喪ったことになり、いよいよ州の保持が難しい状況となった。曹操自身が籠もる濮陽城をのぞけば、もはや豫州、徐州に設定した防衛ライン維持に全力を注ぐしかないであろう。

 他方、不気味に沈黙を続けている孫呉が、いつ長江を渉って曹操領へ侵攻するか、というのも大いなる懸念材料であった。

 陳宮らとしては、東呉軍に、たとえば寿春あたりを抑えられると、非常に厄介なのである。

 今のところ、南蛮と東呉の間に結ばれた同盟は綻びる兆しもなく、双方の荊州駐留軍が、次々と前線へ振り向けられている。

 しかし、この同盟は結局、曹操勢力が滅びるまでの間の便宜に過ぎない。

 どのタイミングで、同盟者を裏切るか。あるいは裏切らせるか──。

 この時点から、すでに両勢力の軍師たちは戦を始めているのであった。

 

 

敗 走

 

 さて、陳留の仕置きが一段落し、許への帰還途中、南蛮軍は異様な光景に出くわした。

 彼らの進路にある官渡城塞が、なんと今まさに袁譚麾下の審配軍から攻撃を受けているのである。

 

呂 布:…はぁ?

陳 宮:うわ、最悪…

呂 布:何だよ、敵は8万だろ? ついでにやっちまおう。

陳 宮:殿下、我が軍の兵糧が既にゼロだって覚えてます?

呂 布:あ。

 

 間が悪いというか、皮肉というか、滅多にない野戦の機会に、呂布軍は壊滅寸前の状態で姿を現したわけである。

 かといって、進路を変える事も出来ぬ。許へ戻るルートは、この一本しか無いのだ。

 

陳 宮:布陣したら、すぐに逃げますよ。戦っちゃダメですからね!

呂 布:くそっ! むかつくなあ、もう!

 

 呂布、本気で悔しそうに呻くと、陳宮の指示通り、軍を展開させてすぐ、全軍を許へ向けて離脱させた。

 背後から、袁譚軍の嘲笑が響き渡った。

 無条件に敗戦扱いとなる撤退である。審配はこの機を逃さず、全戦域にわたって追撃戦を仕掛けてきた。

 呂布にとっては、生涯の屈辱となる、凄まじい潰走であった。

 南蛮の精兵は、ひたすらに遁げるしかなく、彼らの部将らは、身を後拒に置いて、命がけで部下の撤退を援護した。

 文字通り命からがら許へ戻った呂布は、兵の損耗を聞いて唖然とした。

 曹操との激戦で喪われた兵数など較べものにならない程の、凄まじい戦死者数であった。

 おまけに、殿軍を務めた白馬義従の将校から、我が耳を疑うような報告を受けた。

呂 布:楼ちゃんが、いないだと!?

 

 この時ほど激高した呂布は、かつて無かったであろう。

 この日、赤兎馬を曳き、ただ一騎で駆け出そうとする南蛮王を押し止めるのに、陳宮は一千名の兵士を投入した程である。

 結局騒動の最中に、その公孫楼自身が単騎、戻ってきたため、幸いにも死者を出さずに済んだ。

 公孫楼は南蛮王の貌を見て、「何もされなかった」と一言だけ云い、私邸へ引き上げていった。

 呂布は感情の整理に困り、とにかく私邸へ帰って、息子の燕を背負って忠吉さんの散歩へ出かけたのであった。

 

 

 

 建安十八年、二月。

 呂布は依然、許に居る――。

43.連衡

INTERLUDE

 

 

 建安16年9月。

 許の宮中にて。

 

 

陳 宮:そういや最近、益州どの(張)にマリみてを貸されているそうですな。

呂 布:おう。アニみても終わったし、ちょうどいい頃合いと思ってな。

陳 宮:全巻をお貸しに?

呂 布:まさか。最初の何巻かだけだ。

陳 宮:……何巻まで貸したんです?

呂 布:無論レイニーブルーまで

陳 宮:あんた鬼だ。

  

 

 

第四三話  連衡

 

 

 建安16年11月。

 洛陽守将馬超の、いわば暴走に始まった官渡城塞攻防戦は、最終的に両軍の主力を呼び寄せる大混戦となり、この一戦で曹操軍率いる十万の大軍は無惨に壊滅した。

 この機を逃さず、南蛮王国本営は東進すべきであったが、肝心の呂布は汝南攻略のため都におらず、第二軍団の大金星も空回りする結果となった。

 

 が、それでも呂布の帷幄は機に聡い。

河内の呂刀姫と長安の韓遂連合軍が、官渡城塞を「攻略し忘れる」という信じがたいミスを犯して撤退してしまった直後、汝南を陳宮に任せた呂布は、一軍を官渡へ向かわせている。

 

 

 

――官渡城塞は、今度はあっけなく破壊された。

 更に呂布、向朗率いる工作隊を東へ突出させ、陳の拠点に石兵陣を構築した。これにより南蛮の防衛線は一挙に東方へ押し進められた形になり、初闖B以東の曹操の支配力は著しく減少した。   建安16年12月の中原情勢は、こういう形で開始される――。

 

主役交代【1】

 

 …許の丞相府にあって、呂布は苛立たしげに貧乏揺すりをしている。

 群臣は困惑気味に顔を見合わせるばかりだ。こう言うときに主の相手をしてくれる軍師・陳宮が、いまは汝南の太守として許を離れているのである。

 

除@越:――殿下、心ここに在らずといったご様子ですな。

呂 布:あー。なんつうかなあ、しばらくCOMに任せてたら、人事やら部隊配置やらをエラい布陣にしてやがってな。手動で直すのもかったるいしなー。

 

 ちなみに、現在のPC(プレイヤーキャラクター)は、呂刀姫から呂布にチェンジしている。いわゆる「中華ツール」の誇る超法規的な機能だ。

 

呂 布:太守の人選以前の問題だけどさ、「X」の致命的な欠陥は、太守を任命した都市から、物資やら部隊やらを呼び寄せられない事だよな。

除@越:…はあ、まあ確かに。イザというとき、太守を一度解任しないと、後方都市の部隊を前線に回せないですし。

呂 布:いくらPC太守の保護策にしても、融通が利か無すぎる!ユーザービリティの欠片もない!

 

 ずいぶんと機嫌が悪い。せっかく南陽(宛)で完成した歩・弓兵編成所が、太守張既に独占されてしまい、計画手順がずれてしまったのだ。張既を解任して宛を無人城にすればよいのだが、よりによってその張既が長期の任務に就いてしまい、いつ戻ってくるかわからないという。

 

呂 布:あーめんどくせーなー。元戎弩兵が作れないなら、井蘭は永昌で装備できるけど、遠いしなあ…

除@越:背に腹は変えられますまい。3部隊ほど永昌へ輸送し、然る後に装備を指揮する将をお選びくだされ。

呂 布:はぁー…

 

 呂布、ため息をついて苦手な事務作業を続ける。傍らに陳宮がいないのも、いつもと勝手が違う原因であろう。ちなみに陳宮もどこぞへ外出しており、太守変更できない状態だ。

 

 ………

 ……

 

 12月中旬、しばらく姿を見かけなかった内政担当官らが一斉に報告に戻り、人買い(補充担当)たちが百人単位の兵卒をチマチマと集めてくる。

 

呂 布:効率悪いな、この募兵システム。一発で一万くらい集まらんのか。

厳 顔:はあ…。しかしながら許の人口も残り3万を切っており、あまり集めすぎるとゴーストタウンになってしまいまするぞ。

呂 布:ふん、都市の空洞化ってやつか。…ていうか、人口が3万の都市に、15部隊13万の軍団って無理ないか?絶対。

劉 循:言われてみれば…

呂 布:だからあ、この「人口」って、徴兵可能人数って意味だよ、きっと。

徐 晃:なるほど。

 

 などと脳内補完論を語る呂布のもとに、ようやく宛から引き上げてきた軍師・陳宮が到着した。嬉々としてハイタッチで出迎える南蛮王国の首脳陣。

 陳宮は、しれっとした顔で呂布の傍らに立った。

 

 

連衡の計

 

 丞相府から南蛮王府へ場所を移し、呂布はこの年最後の軍議を開催する。

 

呂 布:策を申せ。

 

 獣皮を敷き詰めた玉座にある呂布は、開口一番、ドンと戟の石突きで床を打ち、一同を睥睨する。これは南中で酋長をしていた時代からの風習であり、傍らに控える陳宮か張障・ェ、恭しく一礼して王の方針を問い、しかる後に群臣へ諮問するというのが通例であった。

 この日も例に漏れず、到着したばかりの陳宮が、呂布に方針を問うた。

 

呂 布:合従とやらが面倒だ。何とかしておけ。

陳 宮:御意──。

 

 呂布の一言は、しばしば歴史の分岐点となる。たとえそれが忠吉さんの散歩の最中に思いついたものであれ、総軍65万の兵馬は、その一言を実現するためだけに機能するのだ。

 さて、「何とかしておけ」と言われた群臣は、方法を論じなければならぬ。

 幸い今回、呂布の方針は大戦略に合致している。──すなわち、合従軍たる袁・曹・孫連合を解体せしめ、三正面作戦を強いられる現状を打開する事こそ、現在の南蛮が採るべき急務なのであった。

 

 

 

陳 宮:ということで、連合を切り崩す方法を、ひとりずつ発表ー。

一 同:うーい。

劉 備:時計回りでよろしいか。私一番最後で。

除@越:あ、ずるい。

 

 例によって呂布を前に車座になり、わいわいと群議をはじめる光景も、以前と変わらない。

 劉備の右隣に座っていた除zが、眉間をしかめながら、連合の仲を裂く計略を述べはじめ、一同は深くうなずき、順々に補足を加えてゆく。

 

劉 循:現在、面倒なのは孫策。これは間違いない。柴桑に集結している軍団は、20万を数える。

楊 阜:戦力だけなら、袁紹と曹操はその倍はありましょうが。

除@越:条件が違う。袁紹も曹操も、交戦点は洛陽か許の近辺ゆえ、関の防御力を頼ることができるが、荊州・交州は全くの無防備だ。それに士一族の防戦力にも限界がある。

陳 宮:おまけに遠すぎるな。孫策が南海方面へ軍を出したとして、許から援軍を送っても間に合わぬ。

 

 深刻な話である。荊州の治府がある襄陽には高順と諸葛亮が10万を、前線の江夏には関羽が9万の大軍を率いて駐留しているのだが、悲しいかな、COM太守はCOM太守。敵の寄せ手が領内拠点で足止めされているところを、野戦迎撃する、などというルーチンをとってくれるかどうか甚だ疑問なのであった。

 結局のところ、国土防衛における迎撃戦は、PC君主の本拠地近辺でしか、まともに発生しない事になる。この場合、本国との距離が最大の敵ということになり、ある意味リアルな緊張感を伴っていた。

 

除@越:つまり、最も微弱で最も遠い東呉が、いちばんうるさい存在だ。連合を崩すとしたら、まず孫策を切り離して盟を結ぶしかありますまい。

陳 宮:然り。意味は違うが、遠交近攻が戦略の骨子だな。

 

 意見がまとまったところで、一同、呂布を仰ぎ見る。

 呂布、ところどころ話を聞いていたようで、いいんじゃないの、という感じでヒラヒラ手を動かす。

 

陳 宮:幸い、孫策と曹操はデフォで仲が悪いからな。同盟関係にあるのに「険悪」状態だ。「二虎」の計一、二回も中れば、同盟を離れるだろう。

韓 嵩:逆に孫策と我々の仲は悪くありませぬ。周瑜は大局を見る男だが、孫策は馬鹿だといいますし、こちらが辞を低うして盟を申し出れば、あっさりと承けるのではないかと思われます。 

 

 ──これで方針は、ほぼ定まった。

 一同を代表し、陳宮が王へ確認を促すと、呂布はふたたび戟の石突きで床を衝いた。王許を下した、ということである。

 

呂 布:孫策への使者だが、誰を遣わすんだ。

陳 宮:我が軍には、刑道栄、劉備、糜芳らがおります。万が一にも失敗することはありますまい。

呂 布:…前から訊きたかったんだがな、オマエらのその人選はどうやって決めてるんだ。

陳 宮:まあ要するに劉備にしろって言いたいんですけどね。

呂 布:そうだな、さっきズルしてたしな。おい、耳にょん!

劉 備:へへー!

呂 布:聞いての通りだ。貴様はこれから孫策のもとへ赴き、南蛮との同盟を締結させろ。念のために露払いはつけてやる。

劉 備:ありがとうございます。

 

 平伏する劉備。こうして見ているとまるで道化師だが、この男はれっきとした漢王朝の高官であり、あらゆる能力が高く、弁も立つ。使者には最適であろう。

 加えて、彼に先立ち、糜竺、障ナ芝という外交巧者へ贈物を持たせ、孫策のもとへ送り出すあたり、呂布もようやく外交の妙というものが解り初めてきたらしい。

 

…………
………
……

 

手形を見せてみようか

 

 

 内政や兵員補充・訓練の指示を下し、劉備らを送り出した翌日、呂布は赤兎にまたがり、ぶらりと城外へ出かけた。

 内政の結果待ちは、君主にとって非常に暇な時間である。せいぜい酒宴やプロ市民の苦情解決くらいしか、やることがなくなるのだ。

 

 厳冬といってよい12月の寒気が、潁川の野を吹き抜けていく。とはいえ北原の塞外が長い呂布とっては、春のそよ風にも等しいほど穏やかな気候である。 

 呂布はのんびり北へむけて騎行を続け、官渡の石陣を避けて東へ騎首を向け、いつのまにか緊張地帯を抜けて曹操の勢力圏へと入り込んでいた。それを知りながら、呂布は悠然と駒を進め、とうとう曹操の本拠地である陳留まであと数里という地点に到達してしまった。

 このあたりは、さすがに曹操の威令が行き届いていると見え、旅人や行商人が穏やかな顔をして盛んに行き交っている。

 そんな中を、ばけもののような怪馬にまたがった巨漢が、冗談のように巨大な戟を携えて悠々と闊歩しているのだから、呆れるほどに目立つ。

 …周囲が立ち騒ぐ中、あわてたように、一騎の影が呂布へ接近し、街道からとにかく呂布の姿を遠ざけた。

 

張 既:──ご主君、冒険も大概にしてくだされ。

呂 布:あっ!オマエ、先週から探してたんだぞ! ──こんなところで何やってやがるんだ。

張 既:それは私の台詞です。どうもあなたは、他人から見た自分の姿というものを解っていない。

呂 布:失敬なやつだな。俺様は、酒場の親爺に言われて、陳留の特産品を調べにきてるのだ。

張 既:何やってるんですか、あなたは!

 

 張既、呆れたように叫ぶ。いまや天下の二分の一を支配する王が、酒場の市場調査のため、敵国の本拠地まで単騎潜入していると言う事象が、まだまだ彼の正気の埒外であった。

 

呂 布:他にやることが無いのだ。…それよりオマエこそ何をしている。旧主が恋しくなったのか?

張 既:違います!私は朱霊将軍の引き抜きに参ったのです。

呂 布:朱霊?

 

 呂布にも聞き覚えのある名だ。曹操軍の中核とは言えないまでも、まず中堅どころの将として、第一線に重きをなしている。決して下っ端部将ではない。

 

呂 布:そんな奴が曹操を裏切るかね。

張 既:我が軍の流言が功を奏し、だいぶ疑心暗鬼に駆られているようです。

呂 布:ふうん…

 

 それなりに陣容の充実してきた呂布にとっては、朱霊の一人や二人、ことさら国家の大事と騒ぐほどではないのだが、曹操にとってみれば、彼を失うことは手痛い損失には違いない。

 

 二人は何となく駒を並べ、そのまま陳留城の城門をくぐる。

 ──と、やはり、手配が廻ってたのか、門番が一人、矛をしごきながら立ち塞がってきた。

 

門 番:怪しい奴め! 司空の手形はあるか!

呂 布:おい、ばれたじゃないか。

張 既:ばれないと思ってたのですか?

呂 布:ちっ!俺様もビッグネームだからな。──いかにも、俺様が指名手配中のハート泥棒、呂布奉先よ!

張 既:うわあ、痛っ

 

 呂布が堂々たる武人の名乗りを上げている間に、張既はこわごわと距離をあける。呂布と聞いた門番、可哀想なくらい蒼白になるが、感心にも逃げずに立ち向かってくる。

 その健気を哀れんだのか、呂布は大戟の一撃で、門番を馬上から吹っ飛ばして気絶させた。

 

呂 布:立ち向かってこないで、仲間呼べばいいのにな。

張 既:そりゃ殿下はワンクリックで勝負つくからよろしいでしょうが、文官でプレイしてるときは、門番一人でも十分強敵ですからな。

呂 布:ちっ、弱虫どもめ。…というかさあ、「X」も太閤立志伝2みたいに「同行システム」採用すればよかったんだよ。それなら護衛付けられるし、訓練の時に後継者も育てられるし。

張 既:ああ、それはありますな。せっかく「舌戦」という概念があるのに、武官プレイではまず使う機会がない。二人連れなら、使う機会もぐんと伸びますな。

呂 布:うむ。鍛冶屋の息子の場合とかな。よほど斬り捨てて首だけ連れて帰ろうと思ったことか。

張 既:危ないなあ…

 

 雑談しながら、ふたりは陳留の市場で分かれた。

 呂布、適当にぶらつきながら市場を冷やかし、特産品であるという麦の調査だけして、さっさとその場を立ち去った。かさばるので、許の連中のお土産に向いてないと思ったのだ。

 

 

 

青蓋をさして

 

 年が明けて、建安17年(212年)、1月。

 この年、最初の訃報が諸侯の間を駆け巡った。 

 

 巨星、墜つ――

 

 北方の覇王、大将軍・冀州牧の袁紹が、にわかに病を得て薨じたのである。享年、58歳。

 遺命により、後継者は長子・袁譚に定まった。

 

呂 布:…袁紹って死んでなかったけ?

陳 宮:だからあ、あれは殿の夢なんでしょうが。夢オチ。

呂 布:そうだっけか。

 

 呂布にとっても旧知の人物ではあるが、あまりよい想い出があるわけではなく、感慨もない。感慨があるといえば、むしろ奔走の五友として袁紹らと天下に名を馳せた、張の方こそ、然かるべきであろう。 

 その張であるが、北西へ向けて哭を行い、敵対者の死を悼んだという。その事について呂布は特に咎め立てしなかった。呂布が行った嫌がらせといえば、せいぜいマリみて続刊「パラソルをさして」以降の郵送をさらに一月延ばしただけである。

 いずれにせよ、天下にとって袁紹の死はあまりに巨きい。

 

 袁紹にしても、袁術にしても、その声望は彼らの背負う名門・袁氏全体に向けてのものであったが、二人とも、その家名を乱世の中で最大限に活かす術を本能的に知っていた。そういう意味では、ふたりとも立派な風雲児であり、袁氏以上の名門であるはずの楊氏や陳氏を遙か下風に跪かせ、存分に歴史の主役を演じきった。

 

呂 布:存在感だけはやたらとあったな、そういえば。

陳 宮:弟の方もね。

呂 布:振り回されたもんなあ…

 

 いわゆる「三国志」の前半戦は、まさしく袁紹と袁術の背負った虚名が覇を争う、壮大なる兄弟喧嘩の物語であった。

 皮肉なもので、袁紹の属将の如きであった曹操が、袁術を叩いている間になんとなく袁紹から独立を果たし、また袁術の部将であった孫堅の息子・孫策は、袁術のコントロールを逃れて、当時フロンティアであった呉・越を拓いて独立王国を築き上げ、結局その二人の方が生き残ったのである。

 

 で、後漢最後の覇者・袁紹の跡を継いだ袁譚は、如何なる人物か。

 天下の耳目は、むろんその点に集中する。

 ──が、袁譚は父に比べても、凡庸な男であった。性質は温厚で、部将としてはそれなりの勇略があり、輔弼に恵まれている限り一県・一郡を任せても不安ない吏能を兼備しているが、精々がそこまでの男だった。

 呂布や曹操の幕下におれば、あるいは累世していずれ刺史にもなれたかもしれないが、彼らに取って代わって覇王となる事は、決して無いであろう。

 いわば一般人が、急に英雄のひしめき合う舞台に引き上げられたところに、彼の悲運があったといえる。

 

 

 河北、獲るべし──

 南蛮の世論は、一挙に北へ向こうとしていた。…巨人亡き今、孺子が守る黄河以北を席巻し、曹操を挟撃せん、と。

 ちょうどその折り、孫策のもとへ遣いしていた劉備から、首尾よく孫策を説得し、不可侵条約を締結してきたという報せを受けて、南蛮王宮は一挙に沸いた。

 南蛮王臣下としての劉備の活躍のうち、その最も大なるは、孫策を口説き落としたことである、と後の世に称えられたほどの功績であった。

 

 そうした王宮の動きに押されたのか、この月、COM武将である呂刀姫の第二軍団が動いた。

 河内を出撃した彼女の軍団は、7万の軍で壺関を攻め立て、これを陥落させた。上党には、并州刺史の高幹が軍を展開させていたはずだが、彼は結局動かなかった。

 この場合、壺関奪取の意義は大きい。ここは并州から北へ抜ける回廊の入り口にあたり、河北制圧のルート分岐点にもあたる要害なのである。

 呂布は刀姫を支援するため、江夏の関羽軍、襄陽の高順軍の一部を并州回廊へ向かわせるべく、手配を開始した。

 そして、二月――

 

 益州からの飛報は、まず陳宮の元へ届けられた。

 帛を一読した陳宮は、天をにらみつけると、公孫楼、劉循を伴い、緊張した面持ちで呂布に伺候した。

 呂布はその日、許の宮中で、新たに幕下に加わった張苞を謁見していた。張苞青年の、父親譲りの骨柄を見て、これは刀姫に付けるか手元で育てるべきか、迷っていたところであった。

 

呂 布:――おお、陳宮に楼ちゃん、劉循、いいところに。この張苞なんだが、あんまり刀姫の周りにイケメンばっか揃えるのも、父親の在り方としてどうかと案じていてな。

陳 宮:――殿下。益州より報せでございます。

呂 布:あ?また益州か? 駄目駄目、奴には当分、成都でレイニー止めの新記録を更新しつづけて貰う。

陳 宮:残念ながら、3ヶ月で記録は止まりました。

呂 布:何?本屋で買ったってのか? …おかしいなあ、益州の書籍流通は封鎖してたつもりなんだがなあ。

陳 宮:…張殿は、先月末、身罷られたとのことです。

呂 布:――。

 

 建安17年、二月。

 先月、天下は袁紹を葬送したばかりのはずであったが、この月、また一人の名士を送ることとなった。

 

 ――張孟卓という人物は、その生涯を手短に説明しづらい人物である。

 州東平の産で、袁紹とほぼ同じ世代と思われる。曹操が実兄以上に慕い、わが児、わが一族と莫大な家財をまるごと託そうとさえ考えたほどの恵恤の人で、それがために若い頃、天下八人の御厨として渾名されている。

 いわゆる月旦のなかで、最年少のひとりであろう張は常に最上位に在り続け、その八厨の名誉を不動のものとしていた。生粋の清流派名士というべきだ。

 張は、その当時から袁紹を次代の舵取りとして選んでいたらしい。南陽の名士・可丈ャらとともに、青年たちを集めて一種の袁紹党をつくりあげ、次代を牽引する青年たちを組織していた。

 ところが黄巾の乱があり、董卓の禍が世を覆う頃から、張は少しずつ袁紹の器量才幹の限界を見、急激に曹操の方へ傾倒してゆく。

 これは、と思う人間に対し、必要以上に入れ込むのが張の奇癖であろう。さらに彼は、呂布という豪傑の益荒男ぶりに惹かれ、その事から生涯を踏み誤るに至った。

 ――彼が陳宮・張超らに唆され、呂布とともに曹操の留守を乗っ取った事件の結末は、よく知られる通りである。

 

 南蛮王呂布の配下としての張を、古の蕭何と比する声は、彼の生前から高かったが、いささか先読みし過ぎと言うべきである。確かに彼は常に後方にあって、内国の統治や兵站維持に選任し

てきたが、中央で天下の宰相としての手腕を振るう機会を目前に逝ってしまった。

 彼の政治力83と魅力87は、南蛮王国にとって貴重であったが、稀有というわけでもなく、執政能力だけならば蜀からの臣にも彼を上回る逸材は何人か居た。

 それでも呂布が張を重用し続けたのは、彼が呂布の義兄であった事は措いて、むしろ彼の教化が及ぼす後方の平穏を尊んだためであった。

 ゲーム上での享年、57歳。のちに厳侯と諡され、三公の位が追贈された。

 

………

……

 

胡 姫:――寂しくなりますね。

呂 布:ふん。

 

 并州方面軍の展開を中止し、許にて盛大な葬儀を行った後のことである。

 喪服姿の呂布は、胡姫と忠吉さんを連れて、ひっそりと墓陵へと訪れた。

 呂布にとってははじめての、友と呼べる男の死であった。

 呂布は哭という風習がどうにもわからず、泣いたとしても人前ではなかった。

 妻と愛犬が見守る中、呂布は墓陵の中程に穴を掘り、九泉の下、張が退屈しないよう、「インライブラリー」までを含めた既刊分を安置した。

 棺に入れないのは、新刊が出るたびに墓陵を掘り起こし、死者の魂を驚かせるのを避けるためであった。

 

 さらに天子に上奏して青い蓋を戴き、勅許を得て墓陵に捧げた。

 青蓋の使用は皇帝にしか許されぬもので、呂布でさえ生涯、用いることが無かったため、世の人々は、張一代の誉れであると噂し合ったという。

 

………

……

 

 建安17年3月、刀姫と関羽の率いる軍勢は、壺関を抜け、無慮上党を攻め立て、翌4月、これを陥とした。

 同時期、陳の軍事拠点を奪還するために出撃した下障・フ夏侯惇軍は、見事石陣に惑わされたところを、呂布麾下の高順軍に襲撃され、潰走した。この戦いで夏侯惇は、駿将曹純を失った。

 そして呂布は、張亡きあとの第三軍をふたたび第一軍におさめ、益州を守備していた十四万の軍兵を、益州兵と名付けて洛陽・許の前線に配属させた。

 ――南蛮王呂布による最後の大親征が始まろうとしていた。

42.いきなり官渡決戦

INTERLUDE

 

 

 緞帳をめぐらせた、闇の一室。

 一点の灯もない漆黒の空間に、男たちの呟くような声だけが響いている。

 ぞっとするほど空虚な――そして、冷たい熱気を湛えた一室。

 煩わしげな舌打ち。嘲弄を込めた沈黙。

 …戦乱に膏血を搾られる民、血塗れた戦場で屍山の上を駆ける将兵、帷幄の内に謀をめぐらせる賢者、それらを一身に背負って乱世へ挑む群雄――。

 彼らは到底知り得る筈がなかった。この時この場に居る男たちが、いまの中華の歴史を操る、真の枢軸であることを。

 

 

呂 布:――結論が出ん。

関 羽:出ているではないか。異を唱えているのは殿下のみだ。

呂 布:ああもう!なんでみんな解らないかなあ…

袁 譚:細川可南子は生粋の無口っ娘だ。我々無口っ娘倶楽部が彼女を応援せずにどうします。

呂 布:いやそりゃそうだけど…

 

 ※お題:福沢祐巳の 妹(プティ・スール)は誰だ? 

 

関 羽:借問致す、南蛮王。――いったい可南子のどこがお気に召されぬのか。

呂 布:いや、気に入るとか気に入らないとかじゃなくてだな、俺様は瞳子(ドリル)のほうが相応しいと言っているのだ。だいたい経緯といいキャラ立ちといい将来性といい、瞳子のが妹キャラとして広がりやすいだろう!

献 帝:…確かに一般的に見ればそうかもしれぬが、可南子のような無口っ娘が、今後どのようにして祐巳に心を開いてゆくのか、新しい妹を見つけるのか、そちらのほうが興味深いぞ。

呂 布:うーーーん………。

関 羽:まさか、殿下は「松巳会」の会員ではあるまいな。

韓 玄:「松巳会」!? それはあの伝説の組織のことか…!?

劉 度:知っておるのか韓玄――っ!?

韓 玄:読んで字の如し――すなわち平瞳子×福沢祐を推進する秘密組織だ…! まさかあの組織が本当に存在していたとは…!

呂 布:じゃなくて!つーかそれって松平健のファンクラブだろう。

袁 譚:マツケン……! ――そうか! そういうことか!!

呂 布:な、なんだよ。

袁 譚俺たちはとんでもない思い違いをしていたようだ!何故アニみてのコマーシャルにマツケンサンバIIが繰り返し流れるのか…何か作為的なものを感じてはいたが…! マツケンと、その背後のジェネオンエンターテイメントは、祐巳×瞳子派だったんだ!――俺たちは知らない間に、祐巳×瞳子派の洗脳を受けていたんだ!

一 同:な、何だって――――っ!?

呂 布:いいからマツケンネタからいっぺん離れろ!

 

……

 

献 帝:……南蛮王、以前から気になっていたのだが。

呂 布:何だよ、陛下。

献 帝:思うに王は、無口っ娘原理主義者ではないな。

呂 布:何っ!?

献 帝:王は攻略前のツンツンさと攻略後のデレデレに落差がある娘、すなわち――ツンデレ属性全般に萌えているに過ぎぬ。

 

一 同:……!?

 

献 帝:――王にとって無口っ娘はそのケースの一つに過ぎないのではないか。故に、よりツンデレ属性の強い瞳子に惹かれるのだ。

呂 布:なっ…!?

金 旋:これはしたり。王は、無口っ娘を至上の萌えとして信奉する倶楽部の筆頭会員でありながら、そのような下俗な志操を抱いておいでか?

関 羽:そういえば、以前もキャラよりもシチュなどと言っておられたな。よくぞそれで筆頭を名乗られるものだ。

呂 布:ち、違う! 

関 羽:証拠は?

呂 布:だって…ほら、前だって俺、翠よりも香奈子さん派だったし――って何で俺様がオマエらに言い訳せにゃならんのだ!

一 同:……。

呂 布:だいたい今は妹論争だろう!この絶対可南子主義者どもが! 

 

 呂布、席を蹴倒して立ち上がるや、一同へわめき散らす。 ――が、一同は気まずそうな目で沈黙を保つのみだ。呂布、ますます感情的になる。

 

呂 布:バカ!バカ!満寵!――オマエら全員前線送りだ!これから一生、汗臭い甲胄で汚れまくったお心身でも包んでろ!ばか!

献 帝:取り乱すな、王よ。間もなく発売の新刊(※10月1日)で、おおよその決着が付くであろうから――

 

 …と、そのとき。

 帳を勢いよく払って、ひとりのほっそりとした人影が、暗室に乱入してきた。無言で四囲の壁や窓を覆う緞帳を引っぺがしてまわる。

 夏のまぶしい陽光が、たちどころに室に満ちた。

 

呂刀姫:だからあっ!丞相府でヘンな集会をしないっ!

呂 布:あ、刀姫。

呂刀姫:――いったい何の騒ぎですか!副丞相室まで聞こえてきました!

呂 布:うむ。話せば本気で長くなるのだが――

呂刀姫:じゃあ結構です! ……だいたい袁譚将軍!今わが軍団があなたのとこの高幹軍団と交戦中だって知ってて、此処にいらっしゃるのですか!?

袁 譚:あ、いえ、すぐに帰ります。

呂刀姫:――陛下!なんで陛下のお体を玉体って表現するか、その意味きちんと考えたことあります!?

献 帝:あっはっは、面目ない。

 

 例によって、潔癖な娘の視線が、暗黒の中に蠢いていた無口っ娘倶楽部会員たちを次々と蹴散らしてゆく。

 あたふたと退散してゆく一同の背中を、殺気じみた視線で見送った刀姫は、きっと呂布の方に向き直った。

 

呂刀姫:…お召しにより、ただいま参上いたしました!

呂 布:おう。

呂刀姫:で、ご用向きは

呂 布:うむ。しばらく会ってなかったので、顔を見たいと思ってな。

呂刀姫:…は?

呂 布:小遣いもやろう。これで上手い酒でも買って帰れ。なんと金200だ。

呂刀姫:…それだけですか?

呂 布:なんだ、足らなかったのか。

呂刀姫:お小遣いの話ではありません! 私をわざわざ臨戦体制の前線から召還された理由です!

呂 布:それだけだが、何か?

呂刀姫:………。

 

 

  

 

第四二話 いきなり官渡決戦

 

 

マウスを壊す気か

 

 建安16年9月。

 洛陽駐留の馬超軍が、突如として動いた。

 主将馬超の突騎兵団を中核とした10万近い大部隊が、虎牢関を抜けて東進し、曹操軍の籠もる官渡城塞を囲んだのである。

  

 

 

 第二軍団長たる刀姫がその報を受けたのは、間の悪いことに、世にもばかばかしい理由で許へ召還され、ぷりぷりと肩を怒らせながら、孤影、河内へと帰還している途上であった。

 

呂刀姫:な…! 我々の目標は河北だというのに!

 

 刀姫は呻いた。たとえいま馬超が官渡を陥とそうとも、第二軍団の戦略目標である河北攻略には、直接関係のない武功なのだ。

 正直言えば、官渡など許に駐留する呂布軍団がなんとでも料理できる障害物に過ぎず、そんな攻防に貴重な洛陽の戦力を削られるのは、不本意の限りであった。

 ばか、ばか、馬超――と、呂布の口癖を無意識に呟く刀姫。

 そしてそれに気付いて耳朶まで赤面する刀姫のもとへ、北方から物凄い早さで駆けてくる騎影があった。

 刀姫のもとに護衛はいない。さすがに鋭い視線で彼我の距離を測り、七星をあしらった宝剣の柄に手を掛ける。

 が――見れば、それは河内からの急使のようであった。

 

呂刀姫:なんだ!急報か!

急 使:はッ! 都督!ただいまより、河内郡の収支報告を読み上げます!

 

 

 伝令は、やおら会計帳簿を馬上に広げ、朗々たる声で河内郡の四半期決算報告を始めた。

 刀姫、ぼうぜんと急使の口上を聞く。

 

急 使:――以上!しからば、御免!

呂刀姫:あ…ああ…

 

 嵐のように駆け去ってゆく急使。

 と…その姿の向こうに、さらなる土煙を巻き上げ、各郡からと思われる急使たちが、手に手に財務諸表を携え、刀姫の一身めがけて続々と突進してくるようである。

 長いクリック地獄の始まり――

 そういえば、もう季節は10月であった。

 

 ………

 ……

 河内郡。

 第二軍団本営。

  

呂刀姫:――出陣の支度だ!今日中に出撃する!急げ!

 

 河内に到着した刀姫の第一声は、緊迫したものであった。

 例によって内政報告の順番をぼんやり待っていた諸将が、慌てて戎装しに部署へ駆け戻る。

 刀姫が洛陽を経て河内へ戻るあいだにも、頻々たる早駆けが戦雲の急を告げていた。

 

 ――陳留を出撃した曹操軍十万、官渡城塞へ急行中

 ――馬超軍、官渡城外にて曹操軍と開戦

 

 刀姫は道中、歯噛みをしながらそれらの報を聞いたのである。実は刀姫、官渡城塞を攻囲中の馬超軍を遠望する地点まで接近していたのだが、令箭のある政庁へ戻らなければ、軍団へ撤退命令を下すことが出来ないのだ。

 

徐 庶:ご主君、何人ほどで出る? 河内の防御が気がかりだが――

呂刀姫:構わない、全軍で出撃する。相手は曹操です。

張 任:王にも援軍の要請を。うまくゆけば、官渡で曹操を仕留められますな。

呂刀姫:そういうことです。

 

 刀姫は一瞬だけ、獰猛ともいえる頬笑みを浮かべた。

 彼女の用兵思想は父にもまして苛烈である。今回は確かに馬超の暴走による偶発事故だが、それを奇貨とし、かえって乱世の奸雄・曹操を包囲する罠として設定し直したのだ。

 曹操一人仕留められるならば、結果として河内を失っても構わぬ――

 徐庶と張任は、頼もしげに主君を見やり、視線を交わす。

 建安十六年、十月。呂刀姫率いる第二軍団は、張任や文姫ほか、わずかな留守部隊のみを残し、九万という大軍を率いて河内を発った。

 残念ながら、許の呂布は自ら汝南攻略に出征しており、援軍を出すことが出来なかったが、代わりに長安から韓遂が八万の大部隊を率いて急行する手筈となった。

 

 

限定ジャンケン

 

 刀姫の本軍が官渡城塞に到着したのは、最初の開戦から半月ほどの頃であろう。

 戦場はさぞグチャグチャの乱戦模様――と思いきや、馬超軍はまるで布陣をしたばかりのような状態で、刀姫軍を待っていた。

 

廖 化:俺いつも思うんだがな、援軍で駆け付けたときくらい、途中参加の雰囲気を味わいたいよな。

張 虎:最初から混戦ってのも鬱陶しくないですか?

魏 延:いや、敵味方がズタボロになってるところに、無傷の大部隊で到着するって燃えるだろう。

 

 即座に官渡水沿いに展開する刀姫軍。馬超軍団と合流を果たし、士気は甚だ高い。

 

馬 超:おお、姫様。しばらく見ぬうちに女前を上げたな。顔グラ換えたのか?

呂刀姫:…ツッコミは後ほど。叔父上、曹操は何処に!

馬 超:うむ。あの牙門旗のあたりが、それよ。

 

 馬超が戟の鉾先で指し示したのは、官渡城塞の内部である。

 刀姫は頷いた。

 

呂刀姫:曹操は自ら鉄檻へ籠もったも同然です。叔父上、この戦、必ず勝ちましょう。

馬 超:おう! 

 

 刀姫が右手を振り上げ、振り下ろすや、官渡城塞を囲む呂布軍団が、一斉に前進を開始した。

 

 ――野戦場「官渡」は、マップのど真ん中を長大な官渡水が二条に分かれて流れ、戦場を三分割している。官渡城塞は、マップ中央部の三角州地帯に構築され、南北に流れる急流が容易に接近を許さない。そして曹操軍は官渡城塞外に集結し、三角州上に黒々とひしめきあっていた。

 刀姫軍は、左右の両翼に分かれて渡河を開始する。

 左翼方面、マップでいえば北側の河を渡るのは、馬超率いる洛陽軍。

 右翼方面、マップ手前の南ルートは刀姫率いる河内軍。両軍は一斉にマップ中央部を目指す。

 

廖 化:騎馬全軍、先行しろ!敵は弩兵が前衛だ!近接して蹴散らせ!

馬 岱:っしゃあ!

 

 黄河の急流を極力避け、陸沿いに移動を続けた河内軍は、開戦5日を過ぎる頃、三角州の南岸へ上陸した。軽舟から次々と騎馬軍団が揚陸し、曹操軍の密集陣へ突撃してゆく。

 と――

 

楽 進:射よ!

程 ?:斉射だ!

 

 号令一下、天が暗くなるほどの矢嵐が、騎馬軍団の頭上に殺到した。

 ざあああっ、と豪雨のような音をたてて降り注ぐ飛箭の下、騎兵たちは面白いほどバタバタと斃れてゆく。

 

馬 岱:怯むな! 近接戦に持ち込め!

 

 矢の雨をかいくぐって、生き残った騎兵が弩兵陣へ肉薄する。近接戦ともなれば騎兵が弓兵に破れるはずもない。戦局はふたたび逆転する――と思いきや。

 

呂刀姫:えっ!? 何で!?

 

 後続の軍団が呆気にとられたことに、騎馬軍の突撃に対しても、弩兵陣は猛烈な抵抗を見せ、ついには馬岱軍を撃退してしまったのである。

 残りわずか三〇〇騎まで討ち減らされた馬岱軍は、徐庶の緊急指揮をうけて文字通り命からがら前線を離脱し、歩兵の堅陣へ駆け込んだ。

 

廖 化:おいおい。大丈夫かよ。使えねぇな。

馬 岱:弩兵超強ェっスよ! びびったっスよ!

 

 よほどショックだったのだろう。刀姫軍きっての勇将が、馬の陰に隠れてぶるぶる震えている。

 …この現象を無理矢理好意的に解釈すれば――当時の軽装騎兵は斥候と陽動、後方攪乱が主任務であり、歩兵や弓兵の密集陣に突っ込んで蹂躙する雄姿は、半ば映画や小説が作り出したフィクション。実際の騎兵など、弩兵に突っ込ませても勝てっこない――と、まあ、リアリズムの発現といえなくもない。(ver.1.0当時)

 しかし一同の動揺は激しい。 

 

徐 庶:これが噂に聞くジャンケンシステムか…。

呂刀姫:ジャンケンシステム?

 

 簡単に言えば、兵科特性の相性である。

 騎兵(グー)は歩兵(チョキ)に勝ち、歩兵(チョキ)は弓兵(パー)に勝ち、弓兵(パー)は騎兵(グー)に勝つ。この三竦みが、あたかもジャンケンの如く明確なのが今作の特色である。

 そして現状で言うなら、刀姫軍は騎兵(グー)と歩兵(チョキ)ばかりが多く、曹操軍は圧倒的に弓兵(パー)が多い。

 

呂刀姫:…ということは、作戦を根底から変えなければ。向こうはパーが多いんだから…

徐 庶:左様。こちらはチョキをメインに対応しなきゃならんってことだ。

呂刀姫:しかしチョキの手持ちはわずか4枚…

廖 化:ギャンブル船かよっ!

 

 騎兵による突撃が使えない以上、あとは歩兵による浸透戦術があるのみだ。

 兵力は、曹操軍9万に対して、刀姫軍15万。力押しで勝てないことはない。

 

廖 化:続けっ!早くしろ!

張 虎:…なんか廖化将軍、機嫌悪くない?

魏 延:きっと「下級生2」やっちゃったんだよ。

 

 馬上でひそひそ話す両将、副将廖化の怒号に背中を蹴飛ばされ、歩兵部隊を突進させた。程? 、竇輔ら率いる曹操軍の弓兵部隊は、さすがに勢いに怯む。

 

 

司馬懿を黙らせろ

 

 刀姫軍は、シフトチェンジに成功したといえよう。

 前衛に歩兵が貼り付き、第二陣には弓兵・弩兵が控え、アウトレンジから猛烈な援護射撃を加える。

 その両軍の矢風が頭上を飛び交うなか、弩兵を中核とする刀姫の本隊が前線に到着した。

 

呂刀姫:曹操、出会えっ!

 

 雉羽の綸子をひるがえし、鎧光も燦然と、黄金造りの甲胄に身を固めた刀姫が馬上に戟を振るう姿は、それだけで将兵を陶酔させる。南蛮軍の士気は否応もなく上がる。

 ところが――

 密集したのが仇となったか、翌ターン、敵将司馬懿に混乱させられた張虎隊が、さらに同士討のコンボをくらい、鉾を逆しまに刀姫隊へ襲いかかってしまった。

 今作、同士討ちの威力は凄まじい。

 一万を数えたはずの弩兵部隊は、張虎の歩兵軍団に突撃され、あっというまに半数を失った。

 

呂刀姫ばか――っ!!

張 虎:ごめんなさい――っ!

呂刀姫:なんでこんな時に限って、やたら強いのよ!

馬 岱:「味方であった間は、さまでとも思えなかったが、こうして敵に廻してみると、何さま魁偉な猛勇に違いない(吉川英治「三国志」)」

廖 化:そんな大層なものかねえ。

魏 延:しょせん張虎だしな。

呂刀姫:和むな――っ!

 

 これが、笑い事ではない騒ぎになった。敵将兵法に晦いと見た曹操軍、肉弾戦をやめて、次々と計略を連発し始めたのである。

 ふたたび同士討ちを喰らった張虎、またまた刀姫部隊を蹂躙し、これが致命傷となった。 

 

呂刀姫:…うそ…

 

 刀姫本隊、前線到着4ターンでまさかの全滅。

 さすがに呆気にとられる諸将の前で、ただひとり戦場に立ちつくす張虎、信じられぬと言う顔で呟いた。

 

張 虎:僕は…姉上に勝った…ッ?

呂刀姫ドアホ――っ!

 

 刀姫の一身は、辛うじて無事であった。わらわらと群がり寄る張虎隊の追撃を逃れ、至近まで前進していた支隊に合流する。

 ふたたび「帥」の旌旗が戦場に翻るのをみて、刀姫軍の一同、ほっと一息つく。

 

呂刀姫:虎…アンタ覚えてなさいよ…

徐 庶:…とりあえず知力70以下の武将は他と隣接するな。

廖 化:それってほとんど全員ですよ。

呂刀姫:いいから!早く司馬懿を黙らせろ!

 

 司馬懿、程?など、知力も統率も高い智将タイプは、たとえば呂布のような猛将タイプよりも遙かに厄介だ。「混乱」を三回ほど連続で喰らわせ、直後に「同士討」や「火計」でとどめを刺す、鬼のようなコンボを仕掛けてくるのだ。

 まずは軍師を――の指示に従い、翌ターンから司馬懿、程?の部隊が集中攻撃を受けはじめた。さすがに責任を感じているのか、張虎も人が変わったかのように猛戦し、曹操の支隊を潰走させ、見事官渡城塞に取り付いた。

  一方――

 

馬 超:なんかこっちのルートって遠回りだよなあ。ずっとプカプカ浮いてるカンジだ。

馬雲緑:見た目は近いのにね。

馬 休:三角州は北側から上陸できないからだよ。断崖になってるし。

馬 超:うわっ! 城塞から石弾撃ってきやがった! 卑怯くせえ!

法 正:いいから早く進みなされ。将軍の隊は私の「指揮」でブーストできないんだから。

 

 …と、左翼は優雅なクルージング中であった。到着まで、少なくとも5ターンはかかりそうだ。

 

 

曹操出現

 

 右翼本隊の戦況は、敵味方ともに惨憺たるものであった。歩兵がポカポカ殴り、弓兵がせっせと矢を撃ち込む、という無限の応酬の末、いつのまにやら殆どの部隊とも5000を切っている。

 中でも官渡城塞へ取り付くことに成功した張虎隊は悲惨である。

 官渡城塞の守将は他ならぬ曹操自身であり、しかも率いている軍は青州兵であった。城塞の険に加え、兵科の力量、将帥の能力、あらゆる面で格が違いすぎる。

 おまけに、曹操隊は城塞の中にあって、全くの無傷である。安全地帯から、悠々と計略を連発し、魏延隊を混乱させ、張虎隊を焼き払った。おまけに混乱中の魏延隊、「同士討」にかかって張虎隊を攻撃し、ついには壊滅させてしまった。

 

魏 延:いっとくけど、わざとじゃないからな!

張 虎:うん…わかるわかる。

馬 岱:なんかもう、散々だよな、今回の僕ら。

 

 戦線から脱落し、500足らずの残存兵力をまとめて、安全地帯へ逃げ延びる張虎隊。馬岱隊ともども、官渡水の畔でズラリと体育座りし、観戦の構えであった。

 

 張虎の抜けた穴を埋めるように、刀姫の本隊が城壁へ取り付いた。

 それに伴って各隊もスライドし、城塞を半包囲するような布陣になる。そんな状況を嘲笑うかのように、曹操は官渡で悠々と霹靂車を組み立て、混戦の最中にある刀姫軍へ石弾を撃ち込み始めた。

 被害はさほどでないものの、うなりをあげて飛来する巨石の恐怖は、確実に兵の心を蝕んでゆく。

 

 叩けど叩けどなかなか減らぬ、官渡城塞の守備力。そして無傷一万の曹操軍本隊。

 そろそろ退き時か…と、他ならぬ刀姫もが思い始めた頃、ようやく馬超軍の一部が繞回を果たし、三角州地帯へなだれ込んできた。

 

馬雲緑:ごめん!待たせた!

呂刀姫;雲緑さま!助かります!

馬 超:はっはっは! すまんすまん、今しがた馬休が戦場の外まで流されていってしまった。

呂刀姫:…。

法 正:姫君は、いったん前線から後退されよ。あなたが倒れたら元も子もない。――徐庶殿、あなたも後退して、「指揮」に徹してくれ。

徐 庶:了解した。

 

 櫛の歯が抜けるように後退する刀姫軍にかわり、全く無傷の馬超軍が最前線へ躍り出た。

 ちなみに馬雲緑の本隊は弩兵で、馬超の本隊は騎射を得手とする突騎兵団だ。密集戦の援護も直接攻撃もこなす。

 消耗しきっていた曹操軍は、新手の騎馬軍団によって、苦もなく蹴散らされた。魏延、うらやましそうにその様子を眺める。

 司馬懿、楽進、于禁、程? …と、曹操軍の名だたる名将たちが、続々と上陸してくる騎兵の大軍に飲み込まれ、戦場を離脱してゆく。

 ――曹操、官渡城塞の望楼から戦場を眺め、鋭く舌打ちする。

 

 戦況が一挙に南蛮軍優勢へ傾く中、今度は長安からの援軍が陸続と到着をはじめた。韓遂を主将とする、八万の大部隊だ。

 これが、完全な決定打となった。

 曹操軍は完全に孤軍となって、官渡城塞に取り残された。

 四方八方から、城塞へ激しい攻撃が続けられ、とうとうその一部が倒壊し、突入した馬超軍と激しい戦闘になった。

 それでも、曹操はしぶとい。

 「誘引」と「混乱」、「同士討」、「火計」を連発し、馬超ほか、洛陽軍にも甚大な損害を与えた。やはり密集しすぎたのが裏目に出たのだろう。南蛮軍は、一時手が付けられないほどの混乱に陥った。

 そのためか――影をもとどめぬ迅さで、城塞から突出したたったひとつの騎影を、馬超軍は捕捉し損ねた。

 乱世の奸雄・曹操は、名馬「絶影」を駆り、自軍の数十倍という大軍に囲まれながら、見事、逃げおおせたのである。

 

 

凱 旋

 

 勝敗は決した。

 おそらく、官渡救援というより許急襲のために編成されたはずの曹操の大軍は、ことごとく官渡城塞の周囲に骸と化った。

 が、南蛮軍の被害も大きい。

 馬超麾下の洛陽軍、韓遂の長安軍はともかく、刀姫率いる河内軍はその半数を失い、再建には多くの歳月を要するであろう。

 曹操を討ち取ることが出来なかったという点では、むしろ南蛮軍の失敗と言ってよい結果ではあるが、敗北するよりは万倍もましだ。

 韓遂軍、馬超軍、そして刀姫軍は、凱旋の軍をまとめて、撤退を開始した。

 

魏 延:――なんか俺、大切なこと忘れてる気がするんだけど…

張 虎:? 忘れるくらいなら、大切じゃないんじゃないの?

 

 しきりに首をかしげる魏延を殿軍に、刀姫軍は河内への帰途へ着く。

 ところで…

 この戦闘によって、南蛮軍は軍の有り様について、大きな課題を負った。

 これまで、どちらかといえば騎兵偏重であった南蛮軍は、ここにきて、大いに刷新すべき事態に直面したと言って良い。いわば、

 ――正面火力体制

 を確立する必要が出てきたわけだ。

 今回は野戦であったため、さまでもなかったが、これが攻城戦ともなると、本当に騎兵は役に立たない。何しろ城壁をよじ登ることができないのだ。

 今後の戦いでは、弓兵(というよりイメージ的には砲兵)を充実させ、その護衛として随伴歩兵を出陣させる、という布陣になりそうであった。

 

徐 庶:――ここまで弩兵が強いのは、「IV」以来だな。

呂刀姫:うん。連弩か強弩を揃えるだけで、絶対に勝てたよね。

廖 化:ところでご主君は、シリーズの何作派です?

呂刀姫:わたしは、その「IV」だった。内政がよかったな。軍師殿は?

徐 庶:私は「VI」だな。あの未完成さが心地よかった。

廖 化:やったのは復刻版ですけど、俺は「III」。「II」も名作だって聞きますけどね。

張 虎:僕は「V」。音楽が好き。

魏 延:あ、俺もだ。

馬 岱:同じく「V」。テンポいいよね。

廖 化:…こうしてみると、見事に旧作ばっかだな。

 

 凱旋の軍を率いる諸将は、河内へ戻る途上、馬上でのんびりと旧作を懐かしんでいる。

 ――と、黄河の津にかかる手前で、 徐庶が出し抜けに大声をあげた。

 

徐 庶:あッ!

呂刀姫:――どうされた、軍師殿?

徐 庶:何の疑問も感じずに凱旋してるけど、よく考えたら我々は官渡城塞を攻め潰しに来たんだった!

呂刀姫:あっ! ――ホントだ、まだマップに城塞残ってる!

張 虎:なるほど、途中で「曹操軍の殲滅」に目的が替わっちゃったから、官渡城塞は攻撃対象から外れちゃったんだね。

魏 延:ああ、なんか忘れてると思ったら、それだったか。

呂刀姫:…いったい…我々は何のために…

 

 馬上で、がっくりと項垂れる刀姫。

 

張 虎:あ、 _| ̄|○ のAAそっくり。

魏 延:ホントだ。

廖 化:今回はギャフンENDか。

41.河北を制圧せよ

The old world will burn in the fires of industry…

 

 南蛮の最深部、永昌郡――

 視界を埋め尽くすは、鬱蒼と生い茂る大密林。

 木々の隙間から辛うじて見える空には常に暗雲が立ちこめ、不気味な遠雷が地を震わせる。

 耳を劈くような鳥獣の叫びがそこら中に響きわたり、湿熱の瘴気が沼河から立ちのぼる。

 

 

 南中誌或いは南蛮西南夷列傳に謂う。

 永昌郡は古の哀牢(山名)國也。 洛陽を去ること六千九百里の極西南に在り、八県六万戸が属す。

 地は沃美にして、光珠、虎魄、翡翠、孔雀、犀、象、蠶桑、綿絹、彩帛、文繍を産す、と。

 また永昌人は皆耳鼻を穿つ。渠帥は自ら王者と謂い,其の耳は肩の下三寸まで至る。庶人も肩まで至ったという――。

 

 まさに南蛮王国の最深部に相応しい異観。

 その密林の遙か奥に、「その地」はあった。

 

 …遙々長安から召還され、公孫楼以下、幾人かの将帥とともに兵団輸送の任にあたっていた刀姫は、眼前に広がる光景に思わず息を呑んだ。

 

呂刀姫…これは…!?

公孫楼:――以前よりも大きくなっている…。

 

 長江の源流の一つである怒江を軽舟で遡ること数日めの深夜――

 天から覆い被さるように繁殖していた大密林が突然視界から消滅し、かわりに見渡す限りの大峡谷が姿を現す。

 数十里四方の森という森が伐り払われ、剥き出しの岩肌や峡谷の断崖に、びっしりと櫓が張り巡らされ、立哨の楼が林立し、幾万もの篝火が夜空をも不気味に照らすさまは、まさに要塞である。

 遠目には、蟻が群がっているかのように、数万もの蛮兵たちがうごめいているのが見える。

 

呂刀姫な…何ですか、これは…!?  

公孫楼:ジャングル奥地の秘密基地は男のロマン――とか何とか。

劉 璋:おお。わかるわかる。

 

 夜が昼に為ったような煌々たる篝火の下、数千とも数万と思われる裸形異相の蛮人たちが、わき目もふらず労働している。

 数百本の鎚を打つ音が轟々こだまするなか、赤熱した鉄が水につけられて灼沸し、水蒸気が激しく噴き上がっている。

 水車を利用した牽引機が、軋みをあげて溶鉱炉を引き上げ、また新たな溶鉄を鋳線へ流し込む。

 蛮兵たちが怒声をあげながら、持ち場へ戻って鎚を振るい直す。

 

公孫楼:…ますますアイゼンガルドじみてきた。

劉 循:あー言われてみればっていうか…これって秘密基地と言うよりは…

公孫楼悪の秘密要塞…

呂刀姫……。

 

 

第41話 河北を制圧せよ

 

 

 建安16年、8月。

 所は、再び中原――。

 許の宮闕の内、三公の府にほど近い殿のひとつに、大司馬・南蛮王呂布の幕府がある。

 政庁へ戻った刀姫たちは、鬱陶しそうに直轄都市の収支報告を聞き流している呂布へ、永昌の次第を質問した。

 呂布は一言「超格好いいだろー」と嬉しそうにコメント。続きは職務が一段落したらしい陳宮が引き受けた。

 

陳 宮:かの地は、南蛮のくせに兵器製作所が建設可能でしたからな。教母以下、「技術」持ち武将総動員して、ひたすら開発させておりました。

 

 南蛮は軒並み人口も低く、商業都市としての発展は望めないのだが、永昌に関して言えば、地下資源として銅、鉄、鉛、錫、黄金、銀を産出し、軍資の捻出も容易だ。

 そのためか、非常に珍しい象兵の編成所、そして貴重な兵器工廠が建設可能という、南中経営では欠かせない技術都市たりえるのだ。

 いまや永昌の都市規模は「巨」にまで達し、南蛮王国の全版図の中でも兵廠稼働率は突出している。

 刀姫をはじめ、南蛮の有力な将帥は、順々に兵団を工廠まで輸送し、かつ同地で攻城兵器の配備作業を行っているのだ。

 兵の輸送は一瞬で済むが、将の移動は数週間を要するというシュールな条件の中、南蛮の前線を固める部隊の多くは、強力な攻城兵器を実戦配備し、練度を益々高めている。

 現在、南蛮王国は合縦連合軍と対峙中であり、兵器開発はあらゆる戦線での最優先事項でもあった。

 

 

 

 

…………

……

 

 

 

 

呂文姫ぱんぱかぱーん!

呂刀姫:…はい、毎度おなじみ呂姉妹の解説です。

呂文姫ぱふぱふぱふー!(^O^)<

呂刀姫          呂文姫

 

 

呂文姫顔グラ変わってるッ( ̄□ ̄;)!?

呂刀姫:まあ、私も二十歳になったし、あんたもハイティーンなんだからね。

呂文姫:…もっとロリ顔のグラあったじゃん。

呂刀姫:あれは継母上用。ちなみに旧私用グラフィックは、崔毓美が受け継ぎました。

 

 

呂刀姫:というわけで、今回からゲームの舞台は、光栄「三国志X」に引っ越しました!

呂文姫:「三国志IXpk」だった回って、たった一回だけじゃん!

呂刀姫:あー。ゲームとしてはシリーズでも確かに最高傑作だったんですけどね、「9pk」。ただ、二度目のHDクラッシュでセーブデータと新武将データが飛んじゃってから、再現する気力を失った、ってのが実際。辛うじて崔毓美は本編で拾えたけど…

呂文姫:状況再現の作業、クリックするだけでも2ヶ月かかったしねえ…。

呂刀姫:あと、リアルタイムで進むゲームのメモ取るのが、やってみて解ったけど、死ぬほど面倒くさい、という事情も。

呂文姫:(´・ω・`)

呂刀姫:で! 気を取り直して!三国志10に移行です!

 

 

呂文姫:さて。今回のⅩなわけですが。…シリーズ集大成の感想は。

呂刀姫:どれだけ脳内補完できるか、によって評価が分かれるわね…

呂文姫:うわ。

呂刀姫:ぶっちゃけていうと、ユーザーが妥協できるか否か。もっとハッキリ言えば、どれだけ目を瞑っていられるか。

呂文姫:うーん…

呂刀姫:実際、「これは!」って面白く感じる点も多いんだよ? ただ、いつもの事ながら、練り込み不足。コンセプトが中途半端。あと、素人が見ても解るくらいテスト不足ね。巷で叩かれてるほど酷い出来とは思わないけど、荒は目立つ。

呂文姫:「Ⅸpk」がそれなりに名作だったから、余計に落差は激しいみたいだねー…

呂刀姫:パワーアップキット用に、結婚とか子育てとかの機能を温存してるのだろうけど、そういうユーザーを小馬鹿にした姿勢、正直どうかと思う。そろそろ光栄に見切りをつけた人たちも多いんじゃないかな。

 

 

呂刀姫:それはそれとして!

呂文姫:はいっ!

呂刀姫:今作はマルチプレイ不可ということで、南蛮王の再現も無理かと思われましたが!

呂文姫:ところが!

呂刀姫:例によってKz-8さまの神メモリえぢたーが!武将だけでなく都市のデータ変更その他、フリーソフトには勿体ない多彩な機能を実装!

呂文姫:おお!

呂刀姫:都市エディタがあるということは、兵力を変更できると言うこと!つまりマルチプレイでなくても、ある程度COM勢力を操ることが出来る訳なのよ。滅ぼしたい勢力の兵をゼロにしたり、とかね。

呂文姫:お~。

呂刀姫:それに加えて! 今回は大陸から神エディタが!

呂文姫:大陸!?

呂刀姫:そう。いわゆる「西側ツール」「中華ツール」と呼ばれる、中国のフリーソフト群!これはセーブデータやシナリオデータの、武将配置やら生死フラグ、果てはプレイヤーの担当武将までも途中で変更できるという、まさに神のエディタ! …説明書とかボタンとかも中国語なんだけど。

呂文姫:まあ、漢字なら何とかニュアンスで解るでしょうー。

呂刀姫:2ちゃんねるPCゲーム板の三国志Ⅹ改造スレッドに情報が上がってますので、根性で見つけだしてくださいね。

呂文姫:これらのツールは、制作者様のご好意にり、無料で配布して頂いているものです。間違っても先方の掲示板に利用方法を訊くとか、迷惑をかけないように! 全て自己責任で!

呂刀姫:ちなみに2004年8月15日の段階では(07-v1.11)、中華ツールは最新パッチ(1.02)に対応してませんアップデートで三国志Ⅹのバージョン1.02にした場合、このバージョンの中華ツールは使えませんので注意してくださいね。どうしても我慢できない方は、入会金 1,050円と年会費 1,050円払って光栄のファンクラブに入会し、公式のシナリオエディタを入手してください。

 

 

呂刀姫:というわけで!

呂文姫:はいっ!

呂刀姫:セーブエディタのおかげで、かなり細かいところまで状況を再現!

呂文姫:なんだか蘇生組の人も増えてる気がするけど(^_^;)

呂刀姫:気にしない! ――とにかく、また武将プレイに戻ったわけで!

呂文姫:今回のプレイヤー武将は!

呂刀姫:状況によって父上と私、交代交代で行います!

呂文姫:そりゃまたしんどいことを…(;´Д`)

 

 

 

 

 ――洛陽と黄河を隔てた北岸の地、河内郡。

 黄河以北の覇王たる袁紹と国境を接し、四囲を堅固な関に護られる洛陽にとっては、唯一の咽喉でもある。

 

 その郡治に、刀姫の居城がある。

 先に袁紹麾下の高幹軍団が駐留していたのを、馬超麾下であった刀姫の軍が駆逐して占拠し、以後軍政を統括しているのだ。

 刀姫の留守中は、呂布の盟友でもあり、新蘇生組(※殺し忘れ)でもある張楊が護っている。

 

 

呂刀姫:ただいま戻りました。留守役、ご苦労様です。

張 楊:オオ太守、ご無事で何より。――早速ですが、報告を待っておる者たちが控えておりますぞ。

呂刀姫:うん。先に聞きます。

 

 刀姫が政庁へ足を踏み入れると、待機していた文武の俊傑たちが、いっせいに拝拱の礼をとる。

 張任を筆頭に、関平、馬岱、張嶷、張翼、廖化、魏延、張虎、加えて馬忠、王平、句扶、霍峻といった錚々たる刀姫の家臣団が、一堂に会していた。

 

張 任:将軍、お帰りなさいませ。

呂刀姫:ただいま戻りました。

 

 家宰である張任が一同を代表して挨拶すると、刀姫は軽く頷いた。張任と軍師・徐庶が刀姫の左右に立つ。

 

呂刀姫:――では、各自から報告を聞こう。

 

…………

……

 

 業務報告の後、簡単な追加指示のみを与え、刀姫は一同を連れて政庁を退いた。

 途中、政庁前に掛けてある目安箱をひっくり返し、中身を確認する。すでに何件かの陳情が溜まっているようだ。

 

「道路が悪いから直せ」

「治安が悪いから何とかしろ」

「地場産業を守れ」

「投資しませんか?」

「お米ください」

 

呂刀姫:……。

魏 延:――ま た プ ロ 市 民 か !

張 虎:最後の方のは違うっぽいけど。

馬 岱:お米くださいって…このひとたち、30万の軍が半年戦えるだけの米、何に使うんだろう? 

関 平:全くだよ馬岱たん。彼らって、僕らの四半期分の俸禄の何十倍を、普通に持っていくんだよね。

廖 化:だいたいだな、中間管理職がする仕事だろ、こういうのって。

張 翼:いっぺん役所の職務分掌考え直した方がよくないか?

 

 匿名可にしたせいか、とても一国の太守への陳情とは思えない内容のものばかりだ。もはや苦情処理係といってよい。

 陳情表を手にとって、呆れたように眺める一同を、刀姫は真摯な表情でたしなめる。

 

呂刀姫:――民の声は神の声だ。彼らは、私たちが気付かぬ行政の不備を見つけてくれてるのだから、文句を言うものじゃない。

張 嶷:後から二番目のって、ただの先物っぽくないですか?

呂刀姫:…。私たちの知らない増資のチャンスを教えてくれてるのだから、無碍にもできない。それに、欲出さなければ、そこそこ成功するみたいだし。

張 虎:まあ陳情はリロード効くしねえ。

呂刀姫:ぎろっ

張 虎:ごめんなさい。

 

……

 

魏 延:そもそもだな、太守が戻るまで誰も陳情に手を付けないっつうシステムってどうだろうよ。

張 虎:警備なんか普通に僕らでもやってるのにねえ。

廖 化:それを言うなら、我らヒラ武将なんぞ太守が留守のあいだ、内政報告するためだけに待機してるぞ。その暇で内政の続きやりたいよなあ。

張 嶷:今回って徴兵特に面倒じゃないですか? 何であんな細切れに徴兵するんだろう。

 

 

 等々、めいめいが闊達に今作のシステムを愚痴り合いながら、暮れなずむ河内の大街を練り歩く。通行人たちが、あわてて道を譲っている。

 

 酒場へ繰り出す者は酒場へ、兵舎へ寄る者は兵舎へ、三々五々、一同がばらけた後、刀姫は久々の我が家へと戻った。

 

呂刀姫:いま帰りました!

小間使:お帰りなさいませ、姫さま

 

 小間使いが楚々とした風をくずさずに出てくると、それに続いて巨大な白犬と一緒に妹の文姫が挨拶へ飛び出てくる。

 

呂文姫:姉様、おみやげは――!?( ´∀`)

崔毓美:…お姉さま…

 

 いろいろあって文姫と義姉妹の契りを交わした崔毓美が、情け無さそうな顔で、その後ろに続く。

 門をくぐり、文姫と崔毓美に、永昌名産のフルーツ詰め合わせを手渡しているところ、こんどは魏延と張虎が連れ立ってやってきた。途中で酒屋によって来たのだろう。魏延のほうは手に酒を持っている。

 

呂文姫:あ、虎兄様!

張 虎:や、文姫、フーたん(※犬)、ひさしぶり。――お前、なんか顔変わってないか?

 

 飛びついてきた文姫と白犬の頭を撫でている張虎を後目に、魏延は刀姫や小間使いと雑談している。

 張虎は飲酒年齢に達していないため、酒宴メンバーには加われないのだ。口をとがらせて、どうせオジサンオバサンの話にはついていけないし、と口を滑らせた張虎は、刀姫の殺気だった視線を受け、慌てて逃げ出した。 

 

魏 延:そういや、こないだ近藤真彦(マッチ)が溺れてた男の子を助けたって話だが。

呂刀姫:ニュースでやってたわね。名乗らなかったって話だから、立派じゃないか。

魏 延:でも、そのときマッチが、何て言ったと思う?

崔毓美:――何と言ったのですか?

魏 延お兄ちゃんが助けてやる!

呂刀姫:ぶっ!

崔毓美:あはははははは!

魏 延:40だぜ、40歳! ある意味、格好良過ぎだ!

張 虎:自分だってもうちょっとで30のくせに…(えぢたー済み)

魏 延:男はな、36まではお兄さんなんだよ。

張 虎:その数字はどこから…?

魏 延:でもまあ、えなりが20過ぎて同じ事言ったとしたら、俺はその場で斬り殺すけどな。――要はオッサンの分界は人それぞれかもしれん。

崔毓美:ならば女性は?

魏 延:諸説あるが、そうだな…俺は、スッピンで街歩ける間までだ。

小間使:まあ手厳しい。でも、私はお化粧していませんから…セーフです。

呂刀姫:………。

呂文姫:ふっふっふっふー。姉様はアウトだね~

呂刀姫:な!

呂文姫:こないだ見ちゃったもんねえ。いっちょまえに色気づいちゃって…

張 虎:え。嘘! 化粧してるの!?

呂刀姫:し、してるわけないでしょう!

呂文姫:ふーん…ねえ、白虎、そのへんはどうなの?

小間使:…そうですね、していないと仰ってるのですから、されてないのですよ、きっと。

 

 

 小間使いの涼やかな声に刀姫のムキになった声が重なり、一同の笑声が輪を開く。

 ――それはほとんど市井の日常と変わらぬ光景だが、今この場にいる連中は、後に南蛮王朝の正史に名を刻み、数千年の時代を生き続けることになる英雄たちなのである。

 

 

 ――月が移り、9月。

 許宮闕内にある、丞相府。

 文武の百官が居並ぶ中、南蛮王太子にして漢の副丞相たる呂刀姫は、あらたな王命を帯びようとしていた。

  

呂 布:――西辺の状況が変わったぞ、刀姫。西平、天水に盤踞しておった羌族が、なんかどっかに行ってしまった。よって、長安に大軍を置く必要は無くなった。

呂刀姫:はっ。

呂 布:故に刀姫、お前に命じる。ふたたび洛陽駐留の馬超以下、第二軍団を収めて河内に開府せよ。

呂刀姫:はっ――!

呂 布:加えて命じる。涼・雍それに南中の兵馬を率いて壺口関(壺関)を抜け、河北の地を制圧しろ。期日は五年間だ。

 

 おお、と群臣が響動めいた。

 刀姫に下された命令は、第二軍団の都督として、黄河以北の悉くを制圧せよ、という苛烈なものであった。

40.新たな足音

新たな足音

 

 建安16年、六月中旬。

 長安において南蛮王国の立太子が成ってからはや三月――。

 戦乱の雲は中原を尚厚く覆っていた。

 剣戟の響き、兵馬の絶叫、矢羽の風音が止むことなくこだまし、時折、どおぉん!と攻城兵器の破壊鎚の音が山野に轟いている。

 

 洛陽を指呼の間に臨む虎牢関は、曹操軍による火を噴くような猛攻に晒されつつも、健在であった。虎牢関の防禦力は三国屈指であり、衝車が一台二台突っ込んだところで、小揺るぎもしない。

 陳留からのしつこい波状攻撃に対して、呂布軍も洛陽から陸続と後詰め部隊を回送し、ほとんど泥沼のような消耗戦に突入している。

 

 攻防一月。虎牢関は、依然として陥ちぬ。

 曹操は砂塵の舞う戦場を遠望して鋭く舌打ちをした。

 損耗と疲弊の激しい部隊を後退させ、陳留で次々新手と交代しつつ戦線を維持してきたが、もはや限界のようであった。

 曹操(cv:岸野幸正@無双)は憮然として呟いた。

 

曹 操:おい、トニー。

夏侯惇誰がトニーか。

曹 操:潮時だ。引き上げるぞ。

 

 兵士達の喚声が少しずつ小さくなってきている。

 もはや士気を喪失し、積極的に城壁にとりつくほどの勇者が残っていないと見える。いま彼らの頭にあるのは、如何に生き延びるかという厭戦気分のみであろう。

 

曹 操:今あの関を破るのは、たとえブレイク工業でも不可能だ。次はましな手を考えるとしよう。

夏侯惇:今度はアイウエオ順に離間でもかけるか。

曹 操:口が過ぎるぞ、盲夏侯。

夏侯惇メインカメラがやられただけだが。

 

 毒づく隻眼将軍・夏侯惇の隣で騎首をかえすと、曹操は「解体・解体・ひとやく買いたい」と口ずさみつつ、絶影の馬腹を蹴って戦場から離脱した。この逃げ足の速さは、劉備ら乱世に生き残るタイプ共通のスキルであった。

 さすがに夏侯惇は、撤兵の指揮を執るべく戦場に残る。

 

 ボロボロと崩れるように後退する曹操軍へ、虎牢関から突出した張遼、関羽、関平らが、しつこく追いすがって痛撃を与えるが、陳留からの援護射撃を浴びて引っ返した。

 建安一六年の夏中に繰り広げられた虎牢関攻防戦は、曹操勢の総退却に終わった。

 損失は、傷病兵も含めると呂布軍六万余に対し、曹操軍は推定十万前後であろう。両軍にとって、痛い消耗戦であった。

 

 

 ――帝都・洛陽。

 曹操軍去るの報告を受けた呂布主従は、大いにため息をついた。

 

呂 布:ふゥ、やっと引き返したか~。

陳 宮:はぁ…今回も泥仕合で。

呂 布:なんか、攻められてる時って長いよな、リアルタイム制って。わんこそばみたいに兵追加しなきゃなんないし。

 

 虎牢関から数理離れた洛陽で防戦の指揮をとっていた呂布も、ウンザリした様子である。

 陳宮らが急ぎ虎牢関に修復の指示を出し、各所で兵力の再編成を行う。今回のたった一戦で荊州軍をかなり投入してしまったので、また各地で徴兵し直さねばならぬのだ。

 

呂 布:とにかく、虎牢関でこの有様じゃ、許昌なんかもっとヤバイな。

陳 宮:やっぱり中牟あたりに前進基地でもつくりますか。

呂 布:うーん…

 

 許昌は曹操領州に突出した位置にある大都市で、東方攻略の最重要拠点であるが、そのぶん敵の攻撃をモロに受けやすい。

 各方面への隘路に閉塞物でもつくれば、よい緩衝になりそうなものだが、もし敵に奪われでもしたら、かえって味方の咽喉に突きつけられる刃となってしまう。

 それでも呂布、どうせ作るなら豪華なモノを、とばかりに、中牟に城塞建設の計画を立てる。完成すれば、汝南・陳留に駐留する曹操軍の進撃を一手に食い止めることができる防波堤と成るであろう。

 

陳 宮:…敵地のド真ん中で城作るとは、どういう頭の中身してるんですか。

呂 布:そこをなんとか。

 

 事も無げに言い放つ南蛮王。頭を抱える陳宮。無論、建築途中に攻撃されるに決まっている。

 …となると、隣接する敵領内に安価な野戦陣を即席で築いて数部隊を駐留させ、敵の目を引きつけなければなるまい。城塞完成と同時に、陣は破棄し、駐留軍はそのまま城塞に移る。さらに許昌に十万単位の兵団を常設し、その中牟支城を支援する体制を整える――と、これは築城などと一口で言うほど楽な仕事ではないのだ。

 

陳 宮:そんな手間かけるくらいなら、いっそ陳留なり汝南なりを先制攻撃した方が早いんと違いますか。

 

 呂布、「う゛~ん」と呻りつつゴンゴン頭を叩いて悩む。「許昌要塞化計画」は、検討するほどにボロがでる。だいたい、東を防ぐことが出来ても、南の江夏からの攻撃には全く対応できないのだ。

 

 などと主従が図面を覗き込んで頭を抱え込んでいるところ、今度は西方からの急報が舞い込む。

 

呂 布:…また、羌だと…?

 

 ぞくりと皆が凍り付く、低いつぶやきだ。

 

 場を改め、大評定の席。文武百官がずらりと並ぶなか、陳宮が開陳する馬超の書状を、呂布は無言で聞いている。

 呂布は本気で怒っているらしい。

 陳宮らは気が気ではない。このまま全軍挙げて羌を攻めよ、などと言い出された日には、洛陽一帯を連合軍に奪還されかねない。まさに董卓の再現である。

 

呂 布:陳宮。

陳 宮:はっ。

 

 祈るような目で王を見る陳宮。

 と――呂布は意外なことを訊ねた。

 

呂 布:俺様の通帳には、いくら入っているのだ。

 

 呂布の通帳すなわち国家予算は、じつは大黒字である。

 金収支でいえば、年間ざっと十万ほどの増資が見込まれ、現在も国庫上限百万のキャパを越えるぶんは、兵糧を買い込んだりボーナスとして武将に還元したりと、実に順調な殖産っぷりであった。

 

呂 布:つまり、しばらく羌の連中に恵んでやるぶんに不足はないわけだな。

陳 宮:ぎ、御意…。

 

 どうやら呂布、外交で羌族を懐柔する方針を自ら容認するようである。彼なりに、戦況を色々考えているようであった。

 馬超・韓遂ルートを通じて、羌の実力者と接触する手はずを整えていたブレーン達は、ほっと安堵の表情を浮かべた。

 

呂 布:ただし。

 

 呂布は、またしても皆がぞっとするような声で続けた。

 

呂 布:必ず、奴らを攻め滅ぼす。今からその支度を整えておけ。

 

 言い放つや、席を立って足音荒く退場してゆく呂布。

 残された者たちは、また深刻な顔を見合わせた。

 …民族を滅ぼす、ということは、彼らの屈強極まりない戦士団三十万を殲滅するか、その根拠を蹂躙するしかない。おそらくは一国を攻め滅ぼすよりも手間のかかる事業と成るであろう。

 

 

 

 季節が移り、天下は七月。

 この年は大規模な災害もなく、天下万民が豊穣を祝い合う秋を迎えた。そこら中で収穫祭が行われ、民地能力の高い連中は、方々に立ち上る瑞祥とやらを探索に出かけ、そのつど祭の酒をしこたま飲まされていた。

 

 …一日。

 対孫策の一環として、許昌と新野を結ぶラインの強化案などを検討していた呂布の執務室に、珍しく虎牢関の守将・関羽が訪れた。

 

呂 布:…なんだ。無口っ娘倶楽部の定期総会は来月だぞ? 今度は袁譚とか曹操とか出てこれるかなあ…

関 羽:そうではない。

 

 むっつりと答えた関羽は、その巨体の後ろに隠れている人影をひょいっと前に置いた。

 見ると、利発そうな少女が、緊張のあまり硬直した容子で突っ立っていた。

 

呂 布:なんだ関羽。そっちに転向したのか。ひとこと言ってくれたらいいのに。

関 羽:…違う。

 

 あいかわらず黙然と髭をしごくと、関羽は目前の少女の頭の上に手をおいた。

 

関 羽:兵たちに混じって、この娘が訓練を受けていた。食いはぐれた孤児であろう。

 

 呂布は、しげしげと少女を眺めた。髻ふたつを絹布でくるみ、簡素な衣服は小綺麗だが、いずれも関羽が用意させたのだろう。頬は痩け、身体もガリガリにやせている。数日に一度、食にありつけるか否か、という生活であったにちがいない。

 この戦乱の時代、こういう話は幾十万もある。

 

 そういえば昔、窮乏のあまり城の倉に盗みに入った少女をひっ捕まえた事があった。その時は、なぜか成り行きで幾晩かその婿役を演じさせらる羽目になったものだ。

 ――その少女には盲いた老母がいたが、この目の前の少女は、それすら無いのだろうか。

 

呂 布:…で、情に絆されたのはいいとして、陪臣のお前が直接俺様の所に話をもってくるのはどういう了見だ。

 

 珍しく仕事をしていたのに、と皮肉そうに付け加える陳宮。

 少女は、呂布らの視線に耐えかねたのか、身体を竦めて震えている。

 

呂 布:ふむ。無口っ娘か。

関 羽:――そうではない。化ける可能性はあるが。

呂 布:なるほど。だが、まだ遠い

 

 関羽は無言でうなずくと、なんと、いきなり抜剣して少女に斬りつけた。

 

呂 布:――はあ!?

 

 ギイン! と金属音と火花が部屋に反響する。

 愕然とするよりも早く放たれた呂布の抜き撃ちは、関羽の斬撃を少女の身体寸前で受け止めていた。

 と――

 

呂 布:あれ?

 

 呂布は我が目を疑った。

 少女の姿が、宙を舞っている。

 武力100の自分と、武力98の関羽が手加減無しに斬り合った空間に、棒のように立っていたはずの少女が。

 トン、と、少女は膠着した呂布と関羽の長剣で軽くステップし、ふわりと床に降り立った。

 ――なんという滞空時間!

 まるで曲芸を見ているようであった。

 

関 羽:――こういうわけだ、王。このまま一兵卒にするのは惜しい。字を教え、ゆくゆく兵法を教えて、ひとかどの武者にしてやりたいが、どうか。

呂 布:…なるほど。

  

 過激なデモンストレーションだが、並々ならぬ身体能力は、これで分かった。

 確かに万人に一人も無い素質であろう。

 考え込む呂布の前で、関羽は少女の肩をポンと押した。

 

関 羽:王に挨拶しなさい。

 

 少女は、いまのハプニングで緊張が解けたのか、せいいっぱいお辞儀らしいものをして、「崔毓美(サイ・イクビ)です」と名乗った。

 

呂 布:…微妙なネーミングだな。

陳 宮:ランダムの組み合わせですからねえ。

呂 布:妙に日本人っぽい名前だよな。まあ、卞弁(べんべん)とかよりはマシなわけだが。

崔毓美:……。

 

 いきなり自分の名前についてアレコレ言われるのに面食らったらしく、ふたたび赤面して黙り込む崔毓美。

 呂布は、まあ気にすんな、と気さくに声を掛けると、崔毓美の席を用意させた。

 考える間でもなく、市井の貧民が国王と同席するなど、古今に例もない出来事である。――が、市の酒場でクダをまいているところを夫人の胡姫に引きずり戻されてゆく姿が日常茶飯事の呂布にしてみれば、どうという話ではない。

 

呂 布:さて、崔毓美よ。お前も知っての通り、俺様は人より偉大なぶん大変忙しい。そうは見えんだろうか、実はこの関羽もだ。

崔毓美:は、はい。

呂 布:よって、どこかで退屈してる奴にお前の教育を頼むつもりだが、それで構わんな?

崔毓美:もちろんです。私は…その、ご飯さえ頂ければ、どこでも働きます。何でもいたします。

呂 布:…何でも?

 

 腰を浮かせかけた呂布に肘鉄を食らわした公孫楼が、ゆっくりと立ち上がって崔毓美の肩に手を載せた。

 

公孫楼:…文姫様はどうだろう。年齢も近いし、あの方は諸事心得ている。教師役に適任だと思う。

 

 一同を顧みながら、公孫楼は提案した。なるほど、と関羽たちもうなずく。

 こういう話は、本来なら刀姫が適任だが、彼女こそいま呂布なみに多忙であろう。逆に呂文姫は女官として特にやることが無く、山のような兵法素養を持て余している。この崔毓美であれば、心強い護衛にもなるだろう。

 

呂 布:――というわけで、俺様の娘の一人の下に付ける。みっちりとしごいて貰え。

崔毓美:はい。頑張ります!

呂 布:…まあ、気を付けるんだな。文姫は俺様や刀姫ほど甘くはないからな。

崔毓美:…?

 

 小休止代わりに崔毓美の処置をきめた呂布は、これで一段落、と軽く手を振って一同を下がらせた。痩せこけた一少女の行く末など呂布にとっては些事であり、彼は国主として山のような案件を抱えねばならぬ身であった。

 

 …ともあれ、一人の少女、崔毓美の波乱に満ちた物語は、この日から始まったわけである。

 

 

 

 

 

 

呂文姫ぱんぱかぱーん!

呂刀姫:…はい、毎度おなじみ呂姉妹の解説です。

呂文姫ぱふぱふぱふー!(^O^)<

呂刀姫          呂文姫

 

 

呂文姫取り敢えずみなさま、明けましておめでと――っ!

呂刀姫:…この更新は、順調にいけば2004年1月1日に行われているはずです。

呂文姫:いや~、猪木祭り、盛り上がらなかったよねー!

呂刀姫:…。それはさておき。ご覧の通り、今回からゲームの舞台は「三国志IXパワーアップキット」へと移行いたします。

呂文姫:ずいぶん長いことかかったねえ。

呂刀姫:まあ、事情は色々あるんだけどね。ブランクが開いて違和感あるって方は、ちょっと前から通しで読んでみたら、勘が戻るかも。

 

呂刀姫:さて、このパワーアップキット、色々と無印版からの変更点があるんですが、中でも最も目を惹くのが、兵士抜擢システムです。

呂文姫:う゛ーーーーん。これまた、色々と物議を醸したシステムだったねえ。

呂刀姫:ぶっちゃけKOEIは、システムを練り込まずに導入しちゃうので、後からボロボロ粗が出るという悪循環を繰り返してます。

呂文姫:兵士から抜擢→教育→武将へ…っていうシステムはいいんだけどぉ…。出来てくる武将たちが武力95・妖術持ちとかの化け物だらけとなると、話は別だねえ。

呂刀姫:おまけに強制イベントだから、イヤでも出てくる。十年後には武力100近いオリキャラ連中がゾロゾロゾロゾロ…

呂文姫:アイデアそのものは悪くないんだから、もうちょっと練り込めばねえ…。たとえば在野武将や新武将の登場パターンの一つにするとか。文官抜擢とかバリエーション増やすとかぁ…

呂刀姫:うーん。

 

 

呂刀姫:というわけで、今回抜擢武将システムに対して、多少アレンジを加えます。

呂文姫:ふんふん?

呂刀姫:ズバリ、「全能力-10」。

呂文姫:シンプル・イズ・ベスト!

呂刀姫:彼女たちの能力値については、例によってメモリえぢたーで変更可能。年齢や性別、顔グラフィック、はたまた名前まで、何だって変更可能。もう卞弁とかで悩む必要なし!今回の崔毓美ちゃんも、年齢は15歳にまで下げてたり。

呂文姫:あ、ちなみに11月の光栄公式パッチを当てると、iniファイルを最新の物にしても、そのままじゃえぢたーは使えないから注意!

呂刀姫:11月パッチ対応のiniファイルは記述は、以下の通り。赤字の部分は、ご自分のマシンの環境に合わせて変更・上書きしてくださいね。

 

 

; 三國志IXインストールパス
San9Path=C:\Program Files\Koei\San9\

; 三國志IX実行ファイル(小文字で)
San9Exe=san9pk.exe

; 顔ファイル名
KaoFile=G_FaceS.s9

; 顔ファイル名(PK追加分)
KaoFilePK=G_FacSPK.s9

; 顔ファイル分岐点
KaoPoint=785

; 顔番号最大
KaoMax=835

; 顔用パレットファイル名
KaoPalFile=P_Face.s9

; 武将メモリオフセット (0x00CF7DD0)
BusyoMemOffset=13602256

; 都市メモリオフセット (0x00CECA58)
ToshiMemOffset=13556312

; 軍団メモリオフセット (0x00CF2B18)
GunMemOffset=13581080

; 国号メモリオフセット (0x00F9F6A0)
GouMemOffset=16385696

 

 

呂刀姫:…とまあ、こんなカンジで。

呂文姫:例によって、フリーソフトウェアの使い方に関して、当サイトはもちろん、M(o:)bius strip – メビウスの帯 -さまに対しても、絶対に質問しないこと。全部自己責任でね。

呂刀姫:それではみなさま、また本編でお会いしましょう!

呂文姫ばははーい(^o^)/~~~

 

 

(幕間)刀姫の剣

刀姫の剣

 

 

 長安に暗雲が立ちこめている。
 建安16年(西暦211年)、三月の上旬。

 南蛮王国西部方面総帥の呂刀姫は、暗い精勤を続けていた。一人、また一人と行方不明だった将兵が躯を引きずって長安へたどり着き、現役に復帰してゆくなか、彼女はひとり黙々と戦後処理を続けているのだ。

 後方都市から回送されてくる新兵を再編成し、益・荊両州からも余剰兵力を回して貰い、羌族の再侵攻に備えて城壁を補修する。

 先の敗戦の痕を、癒すのではなく覆い隠すような作業の連続であった。

 

 ――そんな、息が詰まるような時間が続いたある日。

 張虎のもたらした急報によって、刀姫は顔色を失う。

 

呂刀姫:馬超将軍が、こちらへ…!?

 

 刀姫にとって叔父に当たる馬超は、もちろん南蛮王国軍にあっては格上であり、くわえて涼・雍の要害に明るく、さらには羌族の有力者とも繋がりが深い。

 その彼が長安へ入ると言うことは、当然、南蛮の西部運営の方針は、馬超中心のものにシフトすると言うことだろう。

 刀姫は呆然と、筆をおいた。

 

 ――父上に、見放された――!

 

 刀姫には任せられんな――という父の冷たい声が聞こえてくるようだった。目が眩むほどの無念、悔しさが胸にこみ上げた。

 と――だしぬけに、天水城の情景が脳裏を過ぎった。黒煙に包まれながら、力無く翻っていた南蛮の旌旗が。

 許されるはずもない。

 急激に脈拍が跳ね上がり、刀姫は胸を押さえて激しく咳き込んだ。

 

 

 黒々とした十万近い騎馬の大軍は、嘶きひとつ無く、粛々と、しかし圧倒的な速度で長安城へ至り、無音のまま要所要所を制圧した。

 敗残兵と新兵の寄せ集めである呂刀姫軍は、事の成り行きに呆然としたまま、馬超軍団に接収されてしまった。

 その頃、主将の馬超は、剣を佩いた戎装のままで、刀姫が政務を執る殿へ赴いていた。

 

馬 超:姫様。ご無事で何よりだ。

呂刀姫:叔父上こそ、ご健勝です。

 

 刀姫の声は硬い。

 彼女の周辺には、当然居るべき側近の姿も、衛兵の姿もない。宮中を素早く制圧した馬超麾下の兵士らに、拘束でもされたのだろうか?

 刀姫は、たった一人で南蛮最強の男と向き合っていた。

 

呂刀姫:この度は陛下ならびに殿下の御心をお騒がせ奉り、慚愧に耐えませぬ。必ずや隴を安んじ、再び胡に侵されること無きよう精勤いたします。

馬 超:その心意気や佳し。殿下に成り代わって褒辞しておく。

呂刀姫:はっ――

 

 うやうやしく頭を下げながら、刀姫は唇を噛んだ。

 やはり、馬超は刀姫の長上として赴任してきたのだ。刀姫の軍権を剥奪し、指揮下へ置くか、洛陽へ後送するか、その種の王命を帯びてきたに違いない。

 刀姫の名望は、もはや地に墜ちたに等しかった。
 ――私だって、私だって頑張ったのに! 何で…!

 刀姫は再び目眩を覚えた。
 …じわじわと、刀姫の胸の中に擡げてきたのは、抑えようのない怒りであった。

 帰還以後、己自身の無能を罵って止まなかった深い忿怒が、今度は目の前の馬超と、その後背の呂布、そして父娘の絆を変えた継母の胡姫へと向けられたのだ。

 鼓動がふたたび激しくなる。

 息ができない。胸が苦しい。

 

 

 軟禁を解かれた刀姫一党は、それでも巧妙に分散された形で、馬超の将と合流することになった。

 馬超に従うのは、馬休、馬鉄、馬雲緑、趙雲、董ら一門衆のほか、張衛、閻圃、楊任ら漢中組も混ざっている。

 宴の間では、刀姫と馬超は席を対面にし、上ノ座は空席にしていた。

 韓遂、呉懿、呉班ら長安組も含めるので、宴はかなりの規模だ。複雑な表情で従兄を見つめる馬岱の他、家宰格の張任や、若手の魏延、張翼らが不安そうに遠い上座の方を眺めている。悠然と杯をあおっているのは、刀姫の軍師・徐庶ひとりだけだ。

 宴は、最初から、どこか雷雲のような気を孕んでいた。

 一刻あまりの歓談の後、ふと諸人が気づいたとき、楽人の演奏はいつの間にか止まっていた。

 誰彼と無く、自分の声の意外な大きさに驚き、話すのを止める。シンとした静寂が間を支配した。

 

馬 超:――さて、姫様。酒の席で話す事ではないが、今後について決めなきゃならんことが、二,三ある。

 

 席が静まったのを確認して、馬超がズシリと発言した。

 さっきから、海底にいるような心地で空の杯を舐めていた刀姫は、ぼんやりと馬超を見た。

 

馬 超:ひとつは、この方面軍の指揮権だ。南蛮王は、この馬超に一切の判断を委ねると仰せだった。

呂刀姫:……。

馬 超:王命だ。姫様は以後、俺の指揮下に入り、一将として俺を扶けて欲しい。

呂刀姫:……何か…

馬 超:ん?

呂刀姫:…何か、王命を記したものを、提示頂きたい…っ!

 

 諸将は息を呑んだ。

 これは、馬超に対する反抗だ。

 明らかに今の刀姫は錯乱している。たまたま前後数日、情緒不安定な時期が重なったのも災いしているのだが、男にわかるものではない。刀姫のこの発言は直ちに洛陽へ知られ、瑕瑾が亀裂となり、玉は砕かれるであろう。

 徐庶は鋭く舌打ちをして、素早く立ち上がろうとした。

 

呂刀姫:軍師殿!控えられよ!

徐 庶:――。

 

 目の端で捉えたのか、刀姫のヒステリックな叱咤が機先を制した。気迫に押されて腰を下ろし直した徐庶を一瞥して、馬超は刀姫に向き直った。戦場の目だ。

 

馬 超:これを。――王命に反すれば、誰であれこの剣を用いよと。

呂刀姫:……!

 

 刀姫は蒼白になって、馬超が掲げて見せた七星剣を見つめた。その意味するところは、充分以上に知悉している。

 呂布は黄鉞と節を持っているので、漢王朝の五官中郎将である刀姫を任意に処刑する権限があるのだ。

 その正式な代理人である証を、馬超は示して見せている。

 

馬 超:――で。ご返答は如何?

呂刀姫:…嫌です。

馬 超:姫様。短慮は御為にならんぞ。聞かなかったことにするから、諾と言いなさい。

呂刀姫:嫌ですっ。長安は、私が父上からお預かりしたものです!兵馬も!人民も!わ、私が賜ったものです!

馬 超:酔言と聞いておこう。――明日、正式な王使として王命を伝えるから、その時に詳しい話も伺おう。

呂刀姫:明日…

馬 超:姫様もお疲れであろう。ややこしい話は明日にするか。今日はゆっくりと休まれた方がよい。

 

 刀姫は悄然と頷いた。

 

 

 

 ――刀姫の執務室の燭に、ずっと明かりが灯されている。

 衣服を更えもせず、牀に腰掛けて、静かに泣いていた。

 …南蛮の後継者は新王子が担うものとして、それならばせめて、自分は西方で功績を挙げ、父上に誇れる娘として認めてほしかった。

 そのために夜も寝ずに頑張ってきたのに!

 だが、その結果はどうだ。いま刀姫は兵団を剥がれ、自らは味方であるはずの馬超軍に包囲されている。

 刀姫の名望も矜持も粉々にするような、屈辱的な軍権の剥奪。

 しかも劉王后の宝剣を以て、それを行う!

 新王子の立太子を天下に知らしめるのに、これほど分かりやすい方法はないだろう。

 

 ――そんなにこの刀姫が邪魔か

 

 睦み合う父と胡姫の姿を想像すると、悔しさやら悲しさやらで胸が塞がり、涙が溢れてくる。

 あの女が父を奪った!

 王位など、弟にくれてやる。最初から欲しくもない。

 ただ、父に認めて欲しかった。さすが俺の娘と、褒めて欲しかった。……

 ……

 

小間使:――姫様。

 

 小間使いの声。刀姫の、たった一人の友人の声だ。

 

小間使:姫様。お酒をお持ちしました。それと、軍師様がお見えです。お相伴に預かりたいと。

呂刀姫:…欲しくない。

小間使:今飲まずに、いつ飲まれるのですか。…軍師様、どうぞ。

 

 事情は聞いているのだろう。小間使いは、構わずに入ってくると膳を置いた。徐庶も遠慮無く上がってくると、元無頼者らしく、そこらに腰掛けた。

 小間使いは酒瓶を小手にもち、刀姫が盃に手を伸ばすまで、根気よく待っている。

 

 

徐 庶:――まあ、馬超将軍も言っていたが、今日の話は酒の戯言だ。揉み消すよう、私も尽力しよう。

呂刀姫:…もう、いいんです。私は…明日から姫様と呼ばれなくなります。

徐 庶:自棄はよくない。何故、そう突き放して思われる?

呂刀姫:私は、父上にとって必要どころか、邪魔になってるみたいだから…居ない方が、いいのかも…。

小間使:何を仰いますか! 南蛮王の後継者が、今からそんな弱音を吐いてどうします!

 小間使いが、急に大きな声を出した。刀姫は、さすがにびっくりして小間使いの美しい貌を見た。徐庶は視線で小間使いに続きを促した。

 

小間使:文姫様や、軍師様から伺っておりましたので、あるいはと思いましたが…

呂刀姫:……?

小間使:姫様は、南蛮の次の王は、呂燕様に決まったとお考えですね?

呂刀姫:それは…当たり前です。呂燕王子は――男子だし、継母上の御子だし――

 

 と。小間使いは、おそろしく深い色を湛えた瞳で、凝と刀姫を見つめた。刀姫は、視線に耐えきれなくなって、ことばの途中で黙った。

 徐庶がゆっくりとあとを続けた。

 

徐 庶:ご主君。お考えなさい。位階で人を判断するものではないが、呂燕様の傅人は、黒山賊の頭目であった張燕将軍だ。較べて姫様の傅人は、武臣筆頭の高順様ではないか?この格差をどう思われる?

呂刀姫:ち、父上の気まぐれでしょう。現に、今や張燕将軍の屋敷には、諸侯から聘物の使者が訪れ、門前に市を為しているというではないですか。

徐 庶:それこそ、人の勝手というもの。利を貪る者ならば、そのくらいの投資はするだろう。――何故、同名という誼だけで、よりによって張燕将軍を選ばれたのか。張燕将軍の改名の懇願を退けられたのか。ご主君は一度も考えられなかったのか?

 

 徐庶は、強い口調で刀姫をたしなめている。刀姫は徐庶と小間使いの気迫に飲まれて、つい盃に手をやった。

 

小間使:――呂布様は、世界の誰よりも、あなたを愛し、信じていいます。あなたは、それに応えなければいけません。違いますか?

 

 今度は、小間使いが説教するように刀姫へ語ってきた。さすがにむっとして、刀姫は反駁した。

 

呂刀姫:なんだか…父上を、知ったような事を言いますねっ。

小間使:お忘れですか、姫様。私も、王の女の一人なのですよ。

呂刀姫:あ…。

小間使:姫様とは違う目で見ていたから、私にはわかる。今の王は、誰よりも今の后を愛しています。ですけど、同時に姫様をこれ以上なく慈しんでいる。

呂刀姫:でも、王子が生まれました!――継母上が大切ならば、いま私が厭わしいに違いない!

 

 刀姫は頬を膨らませ、強行に言い張った。

 徐庶と小間使いは、顔を見合わせた。無理もない。西方十万の総帥とはいえ、まだ二十歳になったばかりの小娘なのだ。

 小間使いは母親のように優しい顔で言った。

 

小間使:新王子の御諱は、“燕”です。

呂刀姫:…ええ。継母上がそう名付けらました。

小間使:そのことばの意味は?

呂刀姫:繁栄と安らぎ。それに、隣人との睦み。王に相応しい名でしょう!

小間使:胡姫様はそれだけの意味で、ご自分の御子の名にその一字を選ばれたと、お考えですか?

呂刀姫:何を言いたいんですかっ

小間使:刀姫様。――あなたの御諱は?

呂刀姫:あ…

 

 刀姫は、大きく目を見開いた。

 

小間使:南蛮王の子、呂鳳さま。この世に、“鳳”よりも尊い“燕”がありましょうか?

呂刀姫:――――っ!

 

 刀姫は呼吸をすることも忘れて、小間使いの翠玉のような瞳を見つめた。
 この瞬間まで彼女は、全く、気付きもしなかったのだ。

 そしておそらく、世間の誰もが。

 なんと簡明な理屈であろう。

 そして、何と温かい理論であろう。

 ……呂刀姫の諱は“鳳”。

 それは燕雀を遙か下風へ従え、蒼天を飛翔する伝説の瑞鳥の名であった。

 

小間使:…胡姫様は、ずっと前からこの名前を考えていらっしゃったのです。きっと、我が子を身籠もったその瞬間から。

呂刀姫:……。

小間使:おわかりですね? 胡姫様は最初から我が子に王位を襲わせないという意思をお持ちでした。それを肯んじた王もまた、端から姫をこそ世継ぎにと、決めておられたのです。

呂刀姫:……はい。

小間使:姫様は、かくも愛されておいでなのです。お父上と、お継母上の信愛を、一瞬たりとも疑ってはいけません。――あなたはずっと前から、次の王なのですから!

呂刀姫:は、はいっ

小間使:よろしい! それでこそ姫様です。

 

 小間使いは満足げにうなずくと、徐庶に席を譲った。

 

徐 庶:…明朝、馬超将軍に、今日の席の無礼を謝りにゆく。ご主君も、その心づもりはお願いしたい。

呂刀姫:はい! 叔父上に謝って、みんなにも謝って、二度と今日みたいな事がないようにいたします!

徐 庶:…指揮権は、一時馬超将軍にお返ししよう。その上で、彼を扶け、彼の元で功績を挙げ、以前の敗北を雪ぐべきだ。

呂刀姫:よ、喜んで! 

 

 王子誕生の報から続いた数月間の煩悶が、まるで嘘のように消え失せ、刀姫の心はすみずみまで晴れ渡っていた。

 主君の心身に瑞々しい活気が戻ってきたのを確認すると、軍師は立ち上がり、後の世話は小間使いに任せ、一礼して去った。

 

 

 ――翌朝、刀姫は徐庶と張任と馬岱を伴って、馬超の元へ赴いた。

 挨拶もそこそこに、物凄い勢いで謝りだす刀姫を、馬超はしばらく閉口して眺めていたが、一段落したところでニヤリと笑うと、その謝罪を受け入れた。

 これで、西部方面軍の総司令権限は、呂刀姫から馬超へと移行する事になる。

 

 正午、場所と衣服を更え、文武諸官が居並ぶ中で、あらためて刀姫は馬超に挨拶をした。

 いまの馬超は、九錫をもつ南蛮王・呂布の正式な代理人である。

 刀姫はうやうやしく拝跪すると、王命を再度確認し、違背無きことを改めて誓い直した。馬超は鷹揚にうなずくと、立ち上がって刀姫のもとまで歩み寄り、手を取って立たせた。

 

呂刀姫:――?

馬 超:これを受けられよ。殿下よりの下賜である。

 

 怪訝な表情の刀姫に向かって、馬超が差し出したのは、くだんの七星剣であった。

 ぼうぜんとする刀姫に剣を握らせると、馬超は諸将を振り返り、大声で宣言した。

 

馬 超:王の御諚である! 後将軍呂鳳をして王の太子ならしめ、その証として劉氏の宝剣を授けるものとする!

 

 ――誰もが息を飲んだ。

 馬超との修好回復だけで胸いっぱいであった刀姫はもちろん、近い将来このような瞬間があると踏んでいた徐庶でさえ、唖然として馬超を見つめた。

 嘘のように静まりかえる長安城。

 が、次の瞬間には、歓声が爆発した。

 魏延や張虎、張嶷などの子飼いの私臣たちは、涙を流して祝し合っている。女官として控えていた文姫も、飛び出して刀姫に抱きついた。

 兵士らも例外ではない。彼らは盾を擲ち、矛を放り、その場で泣き出している。

 無理もなかった。彼らの殆どは、次の南蛮王は呂燕王子に決まったものと考え、それでもなお、刀姫の真実ある人柄と颯々たる姿に忠誠を誓い、この辺境まで付き従った者どもだからである。

 彼ら一人一人が、まさに歴史の瞬間に立ち会ったという感動に包まれていた。

 やがて、万歳の声が挙がりはじめ、しだいにうねるような合唱となって長安の城中に響き渡った。

 

 建安16年、3月。

 刀姫は、正式に南蛮王国の後継者として冊立されたのであった。

 

 

 

 

 ――――――

 ――――

 

呂 布:本当なら、向こうで功績を挙げてから、ちゃんとした形で剣をやりたかったんだけどなぁ。

陳 宮:まあ、先の敗北で、先物師たちがごちゃごちゃ騒いでましたからねえ。今を逃したら、結構やばかったかもしれませんよ。

呂 布:その先物師だが、張燕はきちんと名前を控えているんだろうな?

陳 宮:ええ。聘物すべての目録と差出人がリストになってます。聘物の幾つかは張燕が使い込んじゃったみたいですけど。

呂 布:なんだよそりゃ?

陳 宮:まあ、あれば欲しくもなるでしょう。ついでに言うと、リストの中には劉備の名前もしっかりありますな。

呂 布:はっはっは。それでこそ耳にょんだ。で、耳にょんは今どこに?

陳 宮:真っ先に長安へ。たぶん今頃、襄陽の高順どののところと違いますか?

呂 布:ううむ。そこまで突き抜けてると怒る気がせんな。

胡 姫:はい、奉先様、軍師様、燗の支度ができましたよー。

呂 布:おう。――で、お前はどう思う。剣を刀姫に渡したこと。

胡 姫:だから、差し上げるときに言ったじゃないですか。…呂布さまがその剣の主に相応しいと判断されたのなら、どうして私が反対しましょう、って。

呂 布:あー。そうだったそうだった。

胡 姫:それに…こうやって、奉先様や燕や忠吉さんと一緒にご飯を食べられるんですから。刀姫様には気の毒ですけど、私と燕にとっては、これが一番幸せな形だなって思うんです。

呂 布:…そう思うべきなんだろうな。うん。

胡 姫:はいっ!

 

呂 布:…ところで、全く話は変わるけど、私たちのトラッキーを返して運動は失敗に終わったみたいだな。

陳 宮:あ、懐かしい。やっぱ失敗ですか。

呂 布:やっぱアレだよ。阪神球団は歴代のミスタータイガースをことごとく捨て石にしてきた緑血生物だから、マスコットキャラの中の人ごときの署名に応じるわけないんだよな。

胡 姫:寂しいものですね…

陳 宮:でも高橋留美子のラムちゃん起用もどうかと思うんですけど。

39.合従・反呂布連合

あまねく天下に、反呂・反南蛮の気勢が漂っている。
 ここ数年にわたる南蛮王の侵略っぷりに、東方諸国がおびえているというほうが、表現として正しい。南中から始まり、涼・雍・益・荊を押さえ、今や関中をも完全に掌握した超大国の南蛮に対し、残る三国はそれぞれ1~3州を押さえる程度である。
 

 ――もはや、東方諸将を挙って会盟し、兵を従(縦)に合わせるより活路無し。

 袁紹、曹操、そして孫策の思慮は完全に合致している。
 反呂布連合発足は、ごく自然の成り行きであると言えた。

 

 …冀州・城。
 黄河より北の天下を統べる北覇の城だ。呂布に逆転されたとはいえ、地味豊かな河北三州を押さえ、袁紹の勢力は天下第二というべきである。

 ――その一室。

 袁家の跡取り候補と言うべき若将軍たちが、仄かな燭火に灯され、激論を交わしていた。
 

袁 尚:やっぱ兄上、絶対連合組むしかないって!

袁 煕:その通り! いったい何を躊躇われるのですか!

袁 譚:だから短慮はよせと言っている。 

 

 むすっとした顔の長子・袁譚を囲んで、次兄・袁煕と末弟・袁尚が畳みかけている。袁譚は孤立していた。

 師父とも仰ぐ筆頭会員・呂布と戦う――「無口っ娘倶楽部」幹部候補生の袁譚にとっては、血よりも濃ゆいアレな絆を絶たねばならず、まさに生涯の決断を迫られていると言ってよい。

 袁譚は、眉間に深い翳を落としながら、何とか反論を試みている。

 

袁 譚:まあ待て。呂氏春秋にもあるが、急いては事を子孫汁といって、思慮無しに結果を急ぐと子孫繁栄に関する汁とかで大変な責任を負う羽目になると言う戒めがあってだな…

袁 尚ゲー帝ネタかよ!

袁 煕:あー、あったなー。

袁 譚:…とにかくそんなわけで、すぐに結論を急ぐなと言うことだ。

袁 尚:詭弁だな、兄上! さては呂布と黙契でもあるのか?

袁 譚:な…に…?

袁 尚:俺は知っているぞ! 兄上は数年前から呂布と個人的な友誼を結んでいると言うことをな!――既に袁家を売ったのか!

袁 譚:尚ッ!ことばが過ぎるぞ!

 

 

 袁譚は蒼白になって立ち上がった。剣把を掴んでいる。

 袁尚も俊敏な若武者らしく、兄の抜き撃ちに備えて素早く距離をとる。二人の危険な火花を頭上に見て、次男の袁煕が慌てて二人を宥めにまわった。

 剣呑な火種をくすぶらせて着席しなおす二人。

 

 

袁 譚:…俺が南蛮王と誼のあることは事実だ。だがそれは個人的な嗜好が一致しているからであって、天下大計のこととは何の関わりもない。

袁 尚:ふん。無口っ娘嗜好か!俺に言わせれば、フラグに一喜一憂する愚者の幻想だな。

袁 譚:きっ…貴様こそいい年をしてオパイ星人ではないか!

袁 尚:ははッ! また兄上の美乳論が始まるのか!

袁 譚:黙れ尚!貴様のように大きさだけを追い求める人間には解らぬ世界があるのだ。サイズ、形、弾力、全てを備えてこそのオパイではないのか!

袁 尚:ふん、九〇点狙いの兄上らしい論法だな。現実のチョイスならともかく、萌えにおいて「大きいか小さいか」以外、つまり真ん中は無い!萌え…あるいは指向性のある嗜好・フェティズムは、大か小かの二つしかないぞ! 

袁 譚:遠い!まだ遠いぞ尚! “大きい”とか“小さい”とか“要するに”とか、何でも無理矢理分かりやすいものにするでない。“萌え”とは、己の愛を極限まで注ぐこと。美乳であることに100%の愛を注ぐ以上、そのポイントはオパイの大小というレールからすれば両端のみにしか存在しえないという道理はない!

袁 尚:兄上、違う! 「美乳」は、「巨乳」「微乳」と違い、「一般論」だ…!「万人を納得させ得る」代わりに「フェティストにそっぽを向かれる」という、「多数派の理論」だ!形のよいオパイ! ちょうど手で包めるくらいのふくらみ!見てよし、触ってよし! それは理想には違いあるまい! だが、そのオパイではダメだ! そのオパイには 心の闇がない。

 

袁 紹:――それまで!

一 同:父上っ!

 

 

 いつまでも平行線を辿るかと思われたこっぱずかしい論争を中断させたのは、三人にとっての父親で、冀州牧を領し、車騎将軍を拝領し、いまや国公にまで迫ろうという天下の棟梁のひとり、袁紹字は本初そのひとであった。

 

 

袁 紹:まずお前達三人。相当キモイ。

袁 譚:はっ!短慮でした!

袁 尚:申し訳ありません!父上!

袁 煕:…私、見てただけなんですけど。

袁 紹:三人のオパイ論を聞く限り、尚は智勇を、煕は武勇を、譚はいわば蛮勇を、それぞれにくわえる必要がある!

一 同:はっ!

袁 紹:では結論は、女性を胸の大きさで判断してはいけません、ということで異存はないな!

一 同:御意!

袁 紹:で、もともと何の話をしていたのだ?

袁 尚:……何だったっけ?

袁 譚:無口っ娘についてだったか?

袁 煕:違います。

 

 

 

 

 

 

合従・反呂布連合

 

 

 

 

陳 宮:組まれましたね。

呂 布:組まれたなあ…。

 

 憮然として報告に目を通している呂布。

 ――反呂布連合
 今や天下の第一勢力となった南蛮王国に対し、諸侯が挙って反呂の旗印を掲げ、合力して南蛮王国の侵略主義を打倒すると盟い合ったのである。
 盟主は河北の覇者袁紹であり、その元に曹操・孫策という顔ぶれが続く。この三カ国連合の兵力を併せれば、呂布の正規軍を遙かに凌ぐのだ。
 

呂 布:どうでもいいけど、叩きスレ立てられるのってこんな気分なんだろうな。

陳 宮:ヤな例えだな。

 

 呂布は地図を見やった。こうしてみると、見事に東西対決のカタチが出来上がっている。この三カ国の軍勢がそれぞれ別方面から南蛮へ侵攻してくるとなると、いよいよ由々しい。

  

呂 布:つーか、早いところ、刀姫の軍団をこっちに戻さんといかんな。数が足りん。

陳 宮:御意。それにしても急に忙しくなるなあ…

 

 ちなみにこの時点では、まだ呂刀姫は本格的に羌族と交戦しておらず、その壊滅的な敗報が届くのは一月後のことだ。

 

 呂布は、荊州方面にかなりの手当を施した。
 正直言って、怖いのは孫策である。比較的交戦ポイントが絞られる曹操・袁紹と較べて、孫策軍は荊州のどのポイントに現れるか予測がつかぬ。

 それ故に、荊州方面には高順軍を中核とする十万近い大部隊を送り込み、襄陽を拠点として防備に当たらせる。この方面の軍師は、相変わらず諸葛亮だ。

 

呂 布:さてと、洛陽は俺様がいるからいいとして、問題は許だな。

陳 宮:ですな。なんか突出してますし。防衛する関もない。

呂 布:どうも潁川のあたりって不安になるよな~。近くに城塞でも作るか?

陳 宮:無意味ですよ。平野の真ん中に作っても防御対象が分散するだけです。

 

 

 二人があれこれ言いながら地図を眺めていると、急報を携えた劉循が飛び込んでくる。

劉 循:袁紹軍が動きました! 渡河の準備を進めているそうです!

 

 呂布と陳宮は顔を見合わせた。

 袁紹軍は黄河対岸の前衛都市上党から、いきなり洛陽のお膝元である孟津を攻めようというのだ。
 ちなみに孟津の港湾設備は初期配備の状態のまま放置されており、兵力は300である。袁紹が狙うのも無理はない。

 

 

陳 宮:…上党からだと、もうそんなに時間がないなあ…。洛陽の軍を一部孟津へ。殿下はどうされます?

呂 布:虎牢関があるから、洛陽はしばらく大丈夫だろ。俺様も出よう――ていうか、全軍出陣させよう。

陳 宮:はぁ?

呂 布:逆にこちらから攻めていって、河内港を落とすというのだ。

陳 宮:あ、いきなりですか?

 

 陳宮は驚いて呂布を見た。

 呂布、見掛けによらず慎重なところがある。実は南中で兵を挙げて以来、敵よりも少ない兵力で出陣した試しがないのだ。まず勝ち、後に戦いを求める――と、案外セオリーに従っている。呂布が無茶をやるのは、いつも戦場に到着してからであった。
 

陳 宮:――つうわけで、大丈夫ですかね?

呂 布:はっはっは。河内港の防衛兵力は2万ちょっとだ。10万もあれば、水上戦闘でも矢戦だけで陥とせるだろう。

劉 循:うわ、先手必勝ですか。

呂 布:うむ、アレだ。こういう出会い頭の作戦はオープニングのテンションで一気にいくべきだよな。耳に余韻が残っている間に。

劉 循:はあ。

呂 布:それで思い出したが、結局『巫女みこナース』ってどんなストーリーなんだ?オープニングだけはやたらと有名なんだが。

陳 宮:あー、そういえば。結構売れたはずなのに、あんまり中身は知られてないですな。

呂 布:うむ。――つまりはそういうことだ、劉循。オープニングのノリは大事なんだぞ。

 

 相変わらず不可思議な例えで煙に巻かれる劉循。
 とにかく、呂布軍の反応は早い。

 呂布を総大将とする四万五千を中心に、徐晃、関羽、陳宮、張遼らがそれぞれ二万ほどを引き連れ、総勢十万を越す軍勢は孟津を発した。

 兵法を斉射に特化し、楼船を含めた火力重視の大艦隊だ。

 やや上流にある河内を射程に収めるや、呂布軍は猛烈な攻撃を開始する。

 連鎖こそ少ないものの、確実に兵法が炸裂し、河内の守備は面白いほど簡単に削られてゆく。

 

呂 布:怖いなー。逆に言えば、港ってのは守りづらいということか。

陳 宮:みたいですねえ。余程大部隊を入れておかないと…

呂 布:それにしても、袁紹軍は何でこないんだろう?

 

 と艦上で呟く呂布の眼前を、袁紹軍の艦隊がスイスイと通過してゆく。

 

呂 布:へ?

陳 宮:あー。そうか、河内じゃなくて、もうちょい向こうの平陽港から出港したみたいですね、彼ら。

呂 布あほう!

 

 呂布艦隊は慌てて反転し、迎撃に転じる。

 ちなみに袁紹軍の指揮官は、黒山の猛将固(※殺し忘れ)であった。張燕や張楊の下で十分に戦慣れしているはずの彼だが、まさか、自国の河内港に群がる大艦隊を、呂布自ら率いる殴り込み艦隊とは思わなかったのだろう。

 数にして七倍というおそるべき敵に正面からぶつかり、ほとんど一瞬で潰走してしまった。
 後続が無いのを見ると、単純に手薄の孟津を攻撃するだけの強襲部隊であったようだ。

 ほどなく、河内は呂布の手に落ちた。河北への、文字通り橋頭堡ともいうべき地点である。

 

呂 布:ようし!せっかくだ! もうちょい遡ってその平陽港も攻め落とすぞ!

陳 宮:だからあ。あんまりメリットないんですってば!

 

 攻略の最中呂布が呟いたとおり、津の防衛能力というものはあまり頼りにならず、その維持が難しい。河内を陥とした以上、上党の至近にある平陽港を無理して陥とす必要は無い。

 本格的に高幹と戦端を開くのならばともかく、今は曹操や孫策の動向にも気を配らねばならず、本腰入れての渡河作戦は控えるべきであった。

 そしておそらく――この方面の作戦を呂刀姫に委ねると、呂布は内定しているのではないか。陳宮はそこまで推測した上で、呂布を説いた。

 呂布、不承不承ながら、洛陽へ引き上げる事を承知する。

 翌日、呂布の搭乗する旗艦を先頭に、南蛮軍は順次撤収を開始した。

 目と鼻の先とはいえ、貴重な河北への足がかりである。河内の守備には五万余が残されることになった。これでしばらくは袁紹も手が出せないであろう。

 

 

 …そして、鼻歌交じりで黄河下りを楽しみ、孟津を経て洛陽へ凱旋した呂布を待っていたのは、呂刀姫軍団壊滅の報であった。

 さすがの呂布も、一瞬蒼白となり、黙って兵の損失状況を聞いていたが、やがて怒気を押さえきれなくなったか、途中で大喝して刀姫の使者を追い返してしまった。

 すぐさま、呂布は人をやって、虎牢関から義弟の馬超を呼び戻した。

 

呂 布:馬超!すぐに長安へ行って、羌の蛮族どもを皆殺しにしてこい!

馬 超:…善処しよう。で、姫様はどうする?指揮権は?

呂 布:最終的に王命に刃向かうならば、この剣で斬れ。

 

 呂布は腰間の剣を無造作に投げ与えた。

 それは、漢室の宝でもあり、今や呂氏の家宝とも言うべき、七星の剣であった。

 馬超は怪訝な顔で、七宝のあしらわれた宝剣を見つめたが、やがて念を押すように呂布を見た。

 

馬 超:…いいのか、義兄上。前に言ってた通りにしても。

呂 布:もう俺様と胡姫が決めた事だ。…予定より早いけどな。

馬 超:後悔はするなよ。

呂 布:するか、バカ。これも燕のためだ。

 

 呂布は、馬超から目をそらし、遙か西方を眺めている。

 馬超は黙礼すると、七星剣を抱いて退室した。
 建安16年、2月のことである。

38.羌族来襲

羌族来襲

 

 

 歳の明けたある一日、許から洛陽へ本拠を戻した南蛮王呂布のもとへ、荊州方面の遊軍を束ねる猛将・張燕が挨拶に伺候した。

 お互い、相手の演技のまずさを咎めるような顔つきで双方の決め口上を聞いていたが、侍臣らが席を外した途端、がらりと態度を変えた。

 

呂 布:何だ飛燕。挨拶なんぞに来ても年玉はつかわさんぞ。

張 燕:うるさいな。大事な話に来たんだよ。

 

 張燕は主君を睨み付けると、意外なことを言い出した。

 

呂 布:――改名する?

張 燕:そうだ。代わりに何か適当にいい名前を考えておいてくれ。

呂 布:画数が悪いとでも言われたか?

張 燕:違う。悟れ。

 

 ――要するに新王子に憚りがある、というのである。

 新王子の名は燕。そしてまた張燕の名は燕。これはマズイということだ。

 貴室の諱を避けるのは当時は当然の風習であり、まして相手は、いずれ屹立することになるであろう南蛮王朝の長子である。張燕としては、当然の配慮であった。

 

呂 布:ふん、変な気ィ遣うなっての。気味悪いなあ。

張 燕:エライさんと名前かぶってるのは落ち着かん。どうせ今の姓も名も偽名だし。

呂 布:まあ、その件はちょっと待て。…逆に、貴様に頼むつもりの話があったんだが。

張 燕:話?

呂 布:そうだ。実は同名のよしみで、貴様に燕の傅人を頼もうと思ってな。

張 燕:はあ!?

呂 布:もとは胡姫のアイデアだけどな。まあ、いいんじゃねーの?

張 燕:あんたの息子の話だろ!? もうちと真面目なビジョンを持てよ!だいたい、何で俺なんだ!?

呂 布:だから同名のよしみと言っただろう。

 

 呂布は言葉を句切ると、ふうと息をついて付け加えた。

「悟れ」

 と。

 張燕は長いこと考えていたが、やがてあることに思い至って、愕然とした。

 彼が宮室を退去するのは、それから半刻ほどしてからだった。

 

 

 

 ――呂刀姫率いる3万余の軍勢は、1月中旬に長安へ入った。

 これで長安に駐留する西部方面軍は11万に達する。涼雍州諸軍の兵馬を併せれば、彼女の指揮下にある兵力は最大25万というところだろう。

 事実上彼女は、呂布・袁紹に次ぐ第三番目の実力者と言うことになる。

 

 長安郊外では、太守の韓遂以下、文武の顕官たちがズラリと並んで出迎えてくれた。

 慌てて馬から降りて、礼に応える呂刀姫。互いに道を譲りながら、並んで歩く。

 

呂刀姫:…さて、現在の状況はどうなっていますか。

韓 遂:非常によくない。間もなくどこかが襲撃を受けますな。

 

 長安太守韓遂は、なかば諦めたような表情で言った。刀姫は顔色を曇らせた。

 羌族の活動範囲はきわめて広い。

 彼らは涼州・雍州はもちろん、漢中や益州にまで出現し、痛撃を与えてくるのだ。

 諸郡を荒らし回る、というのではなく、一城にターゲットを絞って徹底的に破壊しつくし、満足したように引き上げてゆく。それを延々と繰り返すのだから、ほとんどイナゴである。

 

呂刀姫:防ぐ手段はあるだろうか?

徐 庶:奴らの基本戦術はヒット&アウェイを延々と繰り返す波状攻撃だ。防ぐというより、撃退し続ける、という戦になるだろうな。

張 任:面倒だぞ、それは。

 

 主君と家老二人が深刻な顔で呟きあう後ろで、魏延と張嶷と張虎と廖化が一冊の観光ガイドブックに頭を寄せ合って、あれこれ楽しげに話している。馬岱と関平は、ひそひそと嬉しそうに何かを交換し合っているし、張翼は路傍で寝そべっている犬の前で触ろうかどうしようかと迷っている。

 

 

魏 延:――色町と言えば、男は三十になるまで純潔を守れば、魔法使いになれるそうだな。

廖 化:うむ。それがしもそう聞いたことがある。

張 嶷:しかし礼のデフォルトだと男子三十にして嫁を貰うだ。必然的に天下は魔法使いだらけになるのではないのか?

廖 化:それはそれ。きちんと魔法使いを教育する魔法学校があるという話だ。

魏 延:ほう?

廖 化:確か洛陽の銅人の十二本目が入り口になっているらしい。全力で突っ込んでいくと、スルリとすり抜けて、そこには魔法学校行きの木牛が列を成しているとか。

張 虎:本当ですか!?

廖 化:うむ。その魔法学校では「金鰲」と「崑崙」の二つの寮に分かれてだな、お互い魔術の点数を…痛っ!

 

 話の半ばで、廖化がもんどり打って転げ回った。いつの間にか近づいてきた刀姫が、思いっきりすねを蹴り上げたのだ。

 慌ててしゃちほこばる一同。

 刀姫はものすごい視線で魏延と張嶷を睨み付けると、おびえる張虎の耳をひねり上げて無言で連れ去っていった。

 取り残された一同、とりあえず肩をすくめた。

 

廖 化:…ネタだったんだが。

魏 延:うむ。途中で気づいた。

廖 化最初で気づけよ。

張 嶷:しかし、どうも大将は、弟を過保護にしすぎるな。張虎のためにもよくない。

魏 延:張虎も可哀想だぞ。アレは可愛がっているつもかもしれんが、本人は結構なプレッシャーなんだよな。

 

 などと一同、緊張感のカケラもない会話を交えつつ政庁へ入る。

 

 

 「9」になってから、マップ上を輸送部隊や土工部隊がウロウロするのが半リアルタイムで表示されるようになった。comに都市を委任して操作を任せると、そのあたりのことを自動的にやってくれるので、常時マップのどこかを輸送部隊がうろついている。

 

呂刀姫:我々の使命は、あくまで州と青州攻略だ。いつまでもここには居られない。

張 任:はっ。――しかし、何故今頃になって急に異民族が騒ぎ始めたのでしょう。

張 嶷:噂によれば、東呉では山越が、燕では烏丸が暴れ回ってる様子。どこも同じようなものらしいですが。

呂刀姫:うん。私も不思議に思った。彼らは最近になって急に蜂起したんだ。――軍師、これはどういう事でしょう?

 

 確かに、各地方で異民族が蜂起したのは、ここ数ヶ月の間。すなわち、「9」用のプレイデータ作成が終了し、COMに全操作を任せた時期と一致する。

 徐庶は、あっさりと言った。

 

徐 庶:輸送部隊がウロウロしてるからに決まっているだろう。

呂刀姫:あ。

 

 間の抜けた話だった。

 異民族たちが暴れるのは、国内の、それも彼らのテリトリーの周囲で軍団の移動が行われたときである。輸送部隊も建築部隊も、軍団移動と見なされ、異民族を刺激したという判定がなされるのだ。

 

呂刀姫:盲点だった。王に報告しないと…

徐 庶:ついでに言うと、後方都市が兵を集めすぎだな。すぐにメシが足りなくなる。

呂刀姫:はい。すぐに直轄に戻すよう進言します。

 

 ひとまず、許へ詳報を向かわせると、刀姫は割り当てられた巨館へ入った。

 仮住まいのものだが、もう小間使いが完璧に整え終えている。質素にして清雅、剛健。何もかもが呂刀姫好みの館になっていた。あいかわらず人類と思えぬほどに仕事が速い。

 

小間使:明日は休浴の日です。今夜はごゆっくりなさいませ。

呂刀姫:ありがとう。そうします。

 

 実は刀姫は最近、密かに詩とか賦とかの勉強なぞを始めている。ちょっとそういうのに興味のある年頃なのだ。無論それを知っているのは小間使いだけだ。院子に面した室には、きちんとその用意までされている。

 そしてごく最近――胡姫の懐妊が判明した頃から、ほんのちょっとだけ、夜酒もたしなむようになっている。詞藻が胸に湧き出るから、というふうに毎夜小間使いへ説明しているが、実際はどうであろう。

 小間使いは、例の美しい顔で「はいはい」と答えて、毎日適量を用意してくれる。

たまに彼女を酌に呼ぶこともあるが、夜空を眺めながら行儀良く飲む酒だった。

 刀姫はその日も一人、詩歌のテキストを片手に持ちながら、ぼんやりと夜空を眺めていた。

 

 

 ――――

 ――

 

 羌族の侵攻がはじまった。

 続報が次々と入ってくる。その陣容、羌王自らが率いる2万騎を中核とし、部族単位で1万騎程度の軍団を数個、合計五万余という大軍団だ。侵攻ルートにある邑という邑を略奪し、破壊し、一直線に天水の郡城(冀城?)を目指しているという。

 天水には、併せて四万余の軍勢が籠もり、勇将呉班が太守を務めているのだが、これほどの大軍相手では、もはや手も足も出まい。

 それらの報を聞き、刀姫は断を下した。

 

呂刀姫:――出撃する。攻撃目標は天水へ侵攻中の羌軍団!

 

 諸将は一斉に立ち上がり、拱手した

 

魏 延:交渉の余地はありませんかね。

韓 遂:もう無駄だろうな。金3000くらいが、交渉応接のギリギリのラインだった。

徐 庶:ふむ、国家予算規模だな。王が承知するはずがない。

呂刀姫:呉班将軍らは、すでに1万を城へ残して出撃しています。事態は一刻を争います。

 

 呂刀姫は、皆を急かすように軍議を打ち切ると、続々と軍勢を進発させた。

 魏延や張翼ら青年将校たちは、経験が浅く、位階が低いため、1万の軍を率いるのがやっとだ。軍主力は刀姫の3万と、韓遂、楊秋、張任らベテランの大部隊が務めることになる。その数、およそ9万。

 

 戦略フェーズが終わった途端、いっせいに各勢力のユニットが動き出す。

 長安を進発した刀姫らの救援軍が天水を視野におさめるよりも速く、羌軍団が続々と交戦状態に入ったとの報せが届いた。刀姫、唇を噛む。

 ――呉班軍は、文字通り羌軍に飲み込まれた。

 羌武将先鋒が挨拶代わりの突撃で軽く2000ほどの打撃を与えるや、次から次へと、騎射だの突撃だのと高ダメージの兵法が発動し、許靖軍や馮習軍などはひとたまりもなく蹴散らされた。

 羌軍は成宜や馬玩などにも容赦なく襲いかかり、戦線はみるみるうちに破綻してゆく。

 実に長いターン待ちが終わり、翌フェーズ、ようやく戦場へ刀姫たちが姿を現す。

 が、彼女らの目前の光景は惨憺たるものだった。

 もはや戦場に生き残っている南蛮軍は、呉班軍と成宜軍のごく一部のみ。あたりは南蛮の兵馬が累々と積み上がり、祁山を望むこの荒野で、ほとんど一方的な戦闘が行われたのは明らかであった。

 が、天水城は、先発していたらしい羌族武将の攻囲を受けつつも、健在である。

 天水にほど近い西平から急行した馬休軍10000が冀城の守備に加わり、兵力はどうにか1万台まで回復していた。

 

呂刀姫:――間に合った! 全軍! 戦闘用意っ!

 

 猛烈な射撃と落石で抵抗を続ける天水城を遠望しつつ、呂刀姫率いる軍団は、無防備な羌軍の後輩へ一斉に襲いかかった。

 

韓 遂:遠慮するな!突撃じゃ!

羌武将:突撃!突撃!

 

 双方、いきなり突撃を敢行し、数千単位の兵士の生命が一瞬で消し飛ぶ。

 その側方を駆け抜けた魏延、張嶷といった若き勇将たちが、馬岱、廖化などの先輩に後続し、相次いで槍をつけた。

 羌軍は、あざやかに騎首をかえし、整然と迎撃してくる。

 画面中を、立ちのぼる砂塵と武将のセリフが埋め尽くし、見づらい事この上ない。

 そんな横を、何処へ向かっているのか劉?らの輸送部隊がおっとりと通過しようとして巻き込まれ、潰走してゆく。

 

廖 化:ズルくせえ! 兵法戦になったら、絶対、数少ない方が得だ!

 

 廖化が今さらながら毒づくように、兵法発動は兵力の多寡にそれほど左右されず、効果もさほど変わらない。極端な話、たった500騎の突撃で、敵数万騎に3000近い打撃を与えることも可能なのだ。

 両軍とも一進一退を続けるまま、再びターンが変わり、二月。 

 戦場に羌族の大王が到着した。

 

  

 天水近郊は、もはや泥沼の戦場と化していた。

 魏延は立て続けに二人の羌族武将を一騎討ちで討ち取り、戦場の一角をなおも支配して続けていたが、他の戦線は、底なしの消耗戦に疲弊している。

 こちらが潰走させたぶんだけ、羌の本拠地から続々と新手が出撃し、もはや手に負えないのだ。

 最初に戦場に到着し、ギリギリまで戦い続けた韓遂の軍は、羌大王の軍団に鎧袖一触に蹴散らされた。他の南蛮軍も次々と士気低下で後退してゆくなか、ゴキブリの如く次々出現する羌軍の新手は、びっしりと天水城にとりつき、またたくまにその守備兵力を削り取ってゆく。

 戦況不利と見た漢中太守の張魯が、天水に向けて補充兵力を回送してくれるのは有難いが、もはや接近することすらままならぬ状況であった。

 張嶷軍も、廖化軍も、すでに全滅し、主将の行方は杳として知れない

 

 

 激闘、一月余。

 満身、戦塵と泥濘と血漿にまみれ、振り乱した髪をそのままに、刀姫は白煙に包まれる天水城を呆然と見つめていた。

 まだ、城には一千あまりもの兵士が残っている。今日か明日には、味方の大軍が駆けつけて援けてくれる――そう信じて、絶望的な抵抗を続けている。

 …味方の大軍!

 長安を進発したとき、確かに九万を数えた彼女の軍団は、いま全てを掻き集めても、二万に満たぬ。

 そしてその悉くは、戦力になりもしない傷病兵ばかりであった。

 韓遂はどこへいった? 張嶷は? 廖化は? 呉懿は? 呉班は?

 刀姫は、ここに居るはずもない将星の顔を求めて、左右を顧みた。

 

徐 庶:…我が主よ。ここは退かれよ。無念だが勝敗は決した。

 

 自らも傷を負った徐庶が、張虎に肩を抱えられつつ、進言した。――現実にあるのは、もはやこの2人の姿だけであった。

 

徐 庶:いちど長安へ戻り、戦力を蓄え、復讐戦を挑めばよろしい。要は次だ。次に勝てばいい。

呂刀姫:…次とかじゃなくて……今まだ…味方が残っているのに……

徐 庶:……。

 

 放心状態で、天水城を見つめている呂刀姫。

 徐庶はなお強く諫めようとして、唖然なった。刀姫の様子に異変を見たのだ。――意識の崩壊を防ぐための退行がはじまったのだろう、幼女のように細い肩をすくめ、足を小刻みに踏みしめていた。

 

呂刀姫:……まだ…残ってるのに……

 天水の城壁に、所々破れながらもなお翻っている南蛮の旌旗を、刀姫は見つめていたのだ。それは刀姫を信じ、呂布を信じ、彼らの愛する家族を守るために戦い続ける、彼女の兵士たちの象徴だった。

 刀姫は、彼らを最後の最後まで護らなければならないはずだった。

 彼らが全滅したとき。天水の城壁が毀たれたとき。

 刀姫を信じて激戦に堪え続けてきた無力な老若男女は、鉄騎の馬蹄の下に蹂躙される。略奪、誘拐、あるいは虐殺もあるだろう。

 それは総帥である呂刀姫が、無力で無策だったからだ。

 

 細い嗚咽が漏れた。しばらくの間、誰もどうすることも出来ず、凝と下を見るしかなかった。

 

 ――が、ここまで追いつめられもなお、彼女は呂布の娘であることを放棄しなかった。彼女は最高指揮官としての責務を果たそうとした。

 初めて人に見せる涙を横なぐりに拭い棄てると、刀姫は声を振り絞って命じた。

 

呂刀姫:全軍後退! 長安で軍団を再編成する!

徐 庶:はっ――!

呂刀姫:張虎! 後拒の指揮を任せる!

張 虎:はい!

 

 薄汚れた深紅の戦袍をひるがえして、彼女は逃げるように踵を返した。

 煙に包まれ、刀姫を信じてなお激しく抵抗を続ける天水城を見捨てて、呂刀姫の本軍は撤退を開始した。

 

 建安十六年、二月下旬。

 天水郡は事実上、放棄された。

 そしてこの後、徹底的に破壊されて廃墟と化したこの城に、ふたたび南蛮の旌旗が翻るまで、一年の歳月を必要とするのである。

37.涼州の砂塵

――建安15年、冬。
 天下の半ばを制した南蛮王国は、にわかに内訌の兆しを見せている。
 呂布の長女・呂刀姫一党の異動である。彼女とその派閥は中央軍の組織から外され、主に北方と西方の治安維持および制圧を命じられたのだ。
 ちょうど呂布の後妻の懐妊が伝えられた時期でもあり、世間はこれを事実上の追放と見た。
 王命を受けた呂刀姫は、沈んだ、しかし鋭く光る瞳で父王を見据え、命を奉じた。
 空気は凛と凍えている。宮殿の外へ出た呂刀姫は、心配げな顔を並べている幕将たちに一人一人呼びかけた。

 

呂刀姫:張任! 関平! 馬岱! 魏延! 張嶷! 張翼! 廖化! 張虎!

一 同:はっ――!

 

 呂刀姫は、ふっと微笑むと、覇気に満ちた声で言い渡した。

 

呂刀姫:みんな! 頑張ろう!

 
 この瞬間、呂刀姫の修羅の生涯が始まったのである――。

 

 

 

 涼州の砂塵

 

 

呂刀姫:ただいま戻りました――!

 

 堅牢そうな門扉をくぐって、呂刀姫が帰宅の挨拶を投げかける。

 呂刀姫も、最近独立して居館を得ていた。呂布が新しい妻を得る前から城や屯所で寝泊まりすることの多かった彼女だが、呂布が胡姫を娶ったとき、正式に屋敷を与えられたのだ。
 この当時、家を与えられて独立するという意味は大きい。家法を定め、家臣を治め、家財を拡大し、家人を統率する。一家とは、いわば国家の最小単位であると言ってよく、家長とは小さな国家の頭領なのだ。
 平時、家長に成り代わって家臣を統率する、いわゆる家宰の役割は、いまは長老格の張任が執っている。同時に、戦場における副将と参謀を兼ねるであろうから、多忙きわまりない。魏延や張虎、関平などと言った青年たちは、その張任の下で家臣団を形成し、それを補佐している。彼らは刀姫の私臣であり、俸禄は刀姫が支払う。
 刀姫の住まう屋敷は、彼らにとっての城で、刀姫は彼らの主君なのだ。

 

 

小間使:お帰りなさいませ、姫さま。

 

 奥から、刀姫の側に仕える小間使いが、ゆったりとした挙措で出迎えた。

 刀姫よりもいくらか歳上の女性だった。女と思えぬほどの長身で、刀姫よりも頭ふたつ高い。ほとんど化粧をしていないにもかかわらず、不自然なほどに艶やかな貌をしている。

 呂刀姫は、眩しそうに小間使いを仰ぎ見て、「ただいま」と繰り返した。

 小間使いも、磁器でつくったような美貌に笑みを浮かべて「お帰りなさい」と言った。存外、暖かみのある声だ。

 ――実のところ、この小間使いは、呂布が己のハーレムから特に選んで呂刀姫に付けた女である。無論、呂刀姫は少女らしい潔癖さで、父の後宮に居たというこの小間使いを嫌忌していたのだが、ひと月ほど共に暮らすうちに、すっかり懐いてしまった。教母の例もあるし、刀姫はどうも歳上の女性に憧れる傾向があるようだった。

 

呂刀姫:実は、この屋敷を出ることになりました。わが南蛮の北方を預かることになりそうです。

小間使:まあ――

呂刀姫:…父上が何を考えてるか知らないけど、命令には従います。月が遷る前に、荷物をまとめて引っ越すから…えっと、準備を手伝ってくださいね。

小間使:準備を手伝ってください、ではなくて、準備しなさい、と言うべきですよ、姫さま。

 

 美貌の小間使いは、赤面する呂刀姫を楽しそうに見やった。呂布の前では、絶対に見せたことのない笑顔である。呂布がこの事を知れば眉をひそめるに違いなく、それ以前に、こやつにも人間の感情があったのか、と驚くであろう。

 

呂刀姫:――わたしは、不甲斐ないから父上に見放されたのだろうか。

小間使:ふふふ、まさか。

 

 呂刀姫は、彼女の前では妙に饒舌に、気弱な己をさらけ出す。それを受けた小間使いは、呂刀姫の心配を、機械が情報を処理するくらい事も無げに一つ一つうち消してくれる。二人は、そういう仲であった。

 

 

 

 ――呂刀姫軍団の出立は、年が明ける前に慌ただしく行われた。

 胡姫はすでに臨月であり、その子の誕生を見届けてからでも良かろうに――と、誰しも思ったに違いない。呂布の意思か、呂刀姫の意思か、いずれにせよ穏やかではない雰囲気のなか、壮行会が催された。

 南蛮王として盛装する呂布の前に、同じく南蛮風の装束を纏った呂刀姫が、麾下の列将を従えて恭しく跪き、王命に背く事無きを盟った。

 その光景を一望する将兵らは、父娘の容子を遠望し、式典の華麗さや状況の深刻さを忘れ、ただただ南蛮王の姿にため息をついた。

 このところ祭典続きで例の触角姿の多かった呂布だが、この日は特にひどかった。1メートル、2メートル級のキラキラした綸子の束を背中いっぱいに背負い、その重量でよろけているのだ。歴代宝塚トップスター中でも絢爛舞踏と畏れられた鳳蘭でさえ、ここまではやらないだろう。

 努めてそういう父の姿を無視しているらしい呂刀姫、こちらは控えめに二本の触角をゆらめかせているだけだ。

 ――が、いずれ中華の文化から見れば異装に違いない。やはりこの二人は親子である、と参列した者はみな思った。

 

 わずか数日後――。

 呂刀姫軍が許を進発し、洛陽へ向かったのを見届けてから間もなく、呂布は己の屋敷で、そわそわと落ち着かない時間を過ごしていた。

 彼の幼い妻が、いよいよつわりを訴え、宮殿の産室へ移ったのだ。

 この時ばかりは屋敷の燕寝殿を使うとはいわず、呂布は我妻のために、最善と思える方法をとった。

 あわただしく人員が行き交うなか、医術と助産の心得がある教母が、この日から胡姫の姆がわりとして側に仕えることになり、同時に外部との連絡役を務めることになった。

 

呂 布:――くそ、なんかこう、ドキドキするよな。

陳 宮:そりゃわかりますけど、ちっとは自室で落ち着いていられないんですか?

 

 うんざり呂布を眺める陳宮。このところ劉循や公孫楼を引き連れて一日に何度も執務室に顔を出してくるので、正直迷惑なのだ。

 呂布、気づいた風もなく牀の上へ腰掛けると、床が軋むくらいの貧乏揺すりをはじめる。

 と、そこへ、左将軍の劉備が息せき切って駆け込んできた。

 

劉 備:殿下! 殿下! 大変な事になりましたぞ!

 

 劉備の真剣な眼差しに、呂布も陳宮も、公孫楼も劉循も息を呑んだ。

 

呂 布:な、何だっ!?

劉 備:――と、トラッキーの中の人が、阪神球団から更迭されました!(※こちら

呂 布:何っ…!?

 

 呂布と陳宮と劉循は同時に立ち上がった。

 

呂 布:トラッキーは、これまでタイガースのマスコットとして頑張ってきたではないか! なぜ彼がクビになるのだ!

劉 循:族父上、納得いきませぬ!何故ですか!

劉 備:球団のコメントが無いから何とも言えないが…パフォーマンスの度が過ぎたと、クレームがあったらしい…

 

 呂布、苦々しげに首を振って呟いた。

 

呂 布:そうか…。トラッキーの中の人も大変だな。

 

 何故か何度もうなずく公孫楼。

 そのうち、この冗談なのか真剣なのかよくわからないテンションの空間へ、噂を聞きつけた他の幕将たちがゾロゾロと駆けつけ、陳宮の執務室は、なし崩し的に「呂布一党」の溜まり場となってしまった。

 

 何だかんだ言って、ここ数日の間、みな不安と期待で死にそうなのだ。

 生まれてくる呂布の子が男子であれば、南蛮王の正しき世継ぎとなる王子が出現することになるが…あるいは女子の方が波風が立たずによい、と心密かに思う者もあるだろうし、何より母子共に健康で出産を終える、とは限らないのだ。

 とにかく、仕事に手がつかぬ面々、ここで雑談することによって、気を紛らわそうとしているのだろう。

 と――。

 満身に緊張を漲らせた張が、駆け込んできた。

 血相がかわっている。急激にシンとなる一同。

 

 :殿下!――教母殿より急使です。劉王后は、予定より早く、ご出産に入り――

 

 今度こそ、一同本気で息を呑む。

 

 :つい先ほど、立派な御子をお産みになりました! ――男子です!

一 同:……………っ!

呂 布でかしたっ――!!

 

 呂布の絶叫が堂の壁を吹き飛ばすほどに響き渡った。

 

 ――うおおおおおおっ!

 

 一瞬遅れて、どおっ、と、一室がわきかえった。陳宮と張が抱き合い、劉備と孟獲が抱き合った。張遼は公孫楼と強い視線を交わしあい、高順は早くも滝のような涙を流している。

 歓声を聞きつけたのだろう、何事かと文武百官が右往左往し、事情を知って狂喜し、歓声の爆発はさらに宮殿中へ広がってゆく。

 歓声はさらに牆壁を越えて市街にまで広がり、許の辻という辻までが祝賀ムード一色に染まった。

 この日、大いに官庫が開かれて、市民ひとりひとりに酒が振る舞われたという。
 数日前から予定されていた手放しのお祭り騒ぎであるが、刀姫が城にいては、諸人の遠慮があって、ここまでの騒ぎにはならなかったであろう。

 夜、呂布はひとり、妻の産室へ出向き、非公式に我が子と我が妻に対面した。古礼では考えられぬ話だが、胡姫のたっての願いとあって、教母はしぶしぶながら面会を許可した。

 実のところ、出産はとても安産と呼べるものではなく、今でも胡姫はオトコの想像を絶する激痛の中にいるはずなのだ。

 

胡 姫:えへへ…わたし、頑張っちゃいました。

呂 布:…ああ。よくやったな。

 

 呂布といえど、さすがにこの時ばかりは平凡な返事しか出来ぬ。妻の小さい手を無心にさすって、我が子と妻をかわるがわる見つめるだけだ。

 

胡 姫:…奉先さま…。この子のことなんですけど…

呂 布:――何だ?

胡 姫:…前から、考えていた名前があるんです…。聞いてもらえますか…?

 

 

……………………

………………

……

 

 

 …一方その頃。

 間もなく洛陽へ到着という地点で野営をしていた呂刀姫軍団は、西方からの急使によって、その眠りを妨げられていた。

 

呂刀姫:ふむ…東ではなく西からとはな…

呂文姫:何なんだろーねー…ふあ…。

 

 二人とも眠い目をこすりながら、陣屋に急使を迎え入れる。

 不寝番の張虎が警戒する中、急使は呂刀姫に書簡を差し出した。長安太守の韓遂からであるという。

 いわく

 ――西方の羌族居住地に不穏の気配あり。宜しく対処されたし。

 と。

 呂刀姫は形の良い眉間にしわを寄せて考え込んだ。

 彼女の裁量に委ねられているのは、三輔および涼雍二州である。西方の異民族に対する備えも、当然含まれているに違いない。

 となると、曹操軍団と戦端を開くより先に、羌族に対して何らかの手段を講じなければならないのだ。
 呂刀姫は配下に命じて篝火を盛んにし、幕将を集めて臨時の会議をひらいた。

 新たに刀姫のもとへ軍師として附けられた徐庶が、一同に状況を説明している。

 

呂刀姫:それにしても、羌族が何で今頃?

魏 延:というより、このゲームって羌族とか出てきたか…?

呂文姫:ふっふっふ…。

張 虎:な、何だよ?

呂文姫:ふっふっふ! じゃーん! このマップのように、実は中国は3方を異民族に囲まれているのでありました!

 

 

 

呂刀姫:…気のせいか、なんかマップ変わってない?

呂文姫:☆( ̄ー ̄)ニヤリ…

 

 

 

呂文姫ぱんぱかぱーん!

呂刀姫:…はい、またしてもここで呂姉妹の解説です。

呂文姫いえーい!\(^O^)/

呂刀姫          呂文姫

 

 

呂文姫:皆様、お待たせしました! マップ見て頂いたらおわかりになると思いますが、南蛮王シリーズ、この37話から光栄「三国志IX」に舞台を移します!

呂刀姫:登録武将は、例によって玉川様に頂いたり、前回のデータを流用したりしました。

呂文姫:それにしても、今回のシナリオ再現は大変だったねー。

呂刀姫:ああ…。個人プレイでなくなった上に、これまでの作品と何もかも違うから…。

呂文姫:多少整合が取れないところもありますけど、基本的にほぼ忠実に舞台を再現しています!

呂刀姫:今回も、データ改変にはKz-8様のめもりえぢたーや、モロモロのツールを利用させて頂いています!

 

呂刀姫:それにしても、今回も参ったよな…

呂文姫:うん…。またキターってかんじの、光栄マジック。

呂刀姫:プレイの仕方によって多少差はありますけど、放っておくとCOM勢力が兵を集めすぎて、兵糧不足で自滅していくというバグが。

呂文姫:幸い、まだお目にかかってないけど、戦線が膠着状態になる中盤以降がヤバイって話だよね(^_^;)

呂刀姫:顔文字使うな。ともかく、この事態に備えてすぽいらー等メモリエディタを待機しておき、いざ自壊が始まったら、すぐさま都市パラメータを変更して兵糧を足してやる、という準備はしてあります。

呂文姫:敵方のデータまでいじらなきゃならないなんて、面倒…(-_-;)

 

 

呂刀姫:とにかく、これからリプレイ舞台は三国志9の世界ですので、そのおつもりで!

呂文姫:ストーリー的なことに関しては、「8」を引き継ぎますのでご安心を~。それから、一部懐かしの「7」の設定残してるキャラもいますしね。武力110の人外メイド白虎さんとか。

呂刀姫:まあ、何かチャンポンみたいなお話になってますけど、今後ともよろしくお願いします!

 

 

 

 

 

 

 ――建安15年末。

 南蛮王呂布は、吉日を選んで、わが王子の名を世間に公表した。

 

  呂燕

 

 というのが、その名である。

 公示を目にした百官は、皆おお、と声をあげた。

 名に込められた意味を察するに、おそらく父に似て、軽猛驃悍な驍将に育つであろうと、一同祝福し合ったものである。

 

 呂刀姫は長安への途上で、王子誕生の報と、その命名の内容を知った。

 おそらく表情の選択に困ったのだろう。二、三瞬茫然とした後、ようやく使者に笑いかけて言った。

 

呂刀姫:父上と母上にお伝え下さい。――稚い王子の御ため、刀姫は永く西の壁となりましょう、と。

 

 それは、張虎や文姫が聞いたこともない、硬い声だった。

 …呂刀姫はこの瞬間、自らの意思で後継者争いの舞台を降りたと言ってよい。

 張任と徐庶が、一瞬だけ視線を交わした。

 西方の空を、寒風に巻き上げられた砂塵が厚く覆っていた。

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